私が勇者であんたが魔王よ!

四ノ宮士騎

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第13話 デュエル⑨ カナタVS魔人アイシャ 瞬殺

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 フィフスはイルが係員たちによって運ばれていくのを見届けると、次なる決闘を始めるために声を上げる。

「次、魔王科一年カナタ・ユア・モーティス!」

 名前を呼ばれた無手のカナタが決闘の場に進み出る。

「同じく魔王科三年、アイシャ・イナミナ・ギルフォード!」

 長いウェーブのかかった赤黒い髪と、燃えるような赤い瞳を持った女子生徒が決闘の場に進み出る。

 女子生徒はスタイル抜群で、見た目に妖艶な雰囲気を漂わせているものの。どう見ても、見た目は普通の女子生徒にしか見えなかった。

 だが見るものが見れば、それがただの人でないことは明らかだった。

「魔人……こんなもんまで……ここには普通にいるのかよ?」

 決闘の場に進み出てきたアイシャを目にしたカナタが小声で呟いた。

 普通の人ならば感じ取ることすら出来ない魔人の気配を、正当なる勇者の血族たるカナタは感じ取っていたのだった。これは……素手だときついかもと、思ったカナタが声を上げる。

「ルミナ!」

 ルミナはカナタの意図を汲み取ってコクリと頷くと、今は自分の元にあり少し前までカナタの持っていた薄手の長剣を放り投げる。

 それを見て、いつのまにか戦い終わって他のデュエルの観戦に来ていたドゥルグが文句を飛ばす。

「ルミナ君。君は馬鹿か?」

 こともあろうか超絶美少女と目下評判の新入生一、二の容姿を誇るルミナを馬鹿呼ばわりして周りの反感を買う。

「君も見ていただろう。僕の戦いを? 魔王を目指すものは、他人の作った武器などに頼らず己自身の力によってのみ戦うのだ。他者の作った武器を使うなど、その者の力への冒涜に過ぎない。ゆえに魔王科の生徒が、こんななまくら剣など使うわけがあるまい?」

 言うなりドゥルグは、せっかくルミナがカナタに向けてほうり投げた剣を空中で掴み取ると、あさっての方角へ向けてほうり投げてしまう。

「あ!?」

「へ!?」

 ルミナとカナタの二人があっけに取られた声を上げると同時に、容赦なくデュエル開始の掛け声がこだました。

「両者構えて、始め!」

 で、結果。ドゥルグによって剣を放り投げられて、自分の剣技を一切封じられてしまったカナタはというと、お間抜けな声を上げている間に、ボコボコにされてあっさりと敗北し決闘を終えたのだった。

 その後決闘でのダメージで意識を失ったカナタはというと、ヒーリングルームと呼ばれる。学園で言う保健室へと運ばれていった。

 そのカナタの姿を見つめてフィフスは、自分の淡い期待が裏切られたことを知り、疲れたようなため息を吐き出したのだった。

 結局新入生の中で善戦したのは、不死身で勝敗がつかずドロー(引き分け)となったドゥルグと、見事上級生に勝利したルミナとイルの三人だけだった。
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