16 / 88
第15話 勇者科の才女① イルとの再会①
しおりを挟む
教室の入り口付近で、何人かの女の子たちに囲まれているルミナを見つめる視線があったからだ。
ルミナはじっと自分を見つめている気配に気付くと、そちらのほうに視線を向けて問いかける。
「だれ?」
「あっその声っやっぱりル~ちゃんだ♪」
ルミナを見つめていた彼女と同じ青の制服に身を包んでいた少女は、彼女の声を聞くなり嬉しそうにルミナの名を叫びながら、ルミナの周りにいる人ごみを掻き分けて、いきなりルミナに飛びついてきたのだった。
いつものルミナならこのようなことをされようものなら、持ち前の運動神経で瞬時にかわしているはずだ。
だが、抱きついてきた少女の身体能力があまりに高く、さすがのルミナもかわすことが出来ずに、少女に抱きつかれてしまったのだった。
ルミナが自分に抱きつき、嬉しそうに胸に顔を埋めている少女を見つめて、慌てたように問いただした。
「え? 誰?」
ルミナの態度を見ていた小柄な少女はルミナの胸から顔を離すと、自分の顔がルミナに見えるように顔を上に向けながら口を開いた。
「僕だよ僕っイルだよっ」
少しはねた緑色の髪と、大粒のつぶらな瞳を持った少女が、自分の顔を指差しながら答える。
「もしかして、食いしん坊のイル!?」
「うん♪」
イルは心底嬉しそうに緑色の瞳を輝かせながら返事を返すと、再度ルミナの胸に顔を埋めた後、上目遣いにルミナの顔を見上げて心底嬉しそうに口を開いた。
「やっぱりル~ちゃんもこの学校だったんだね♪」
ルミナと再会できたのがよほど嬉しいのか、まるでよく懐いている子猫のように、つま先立ちをしてルミナの顔に頬ずりをする。
「あ、うん。勇者科に入ったのよ」
「勇者科? でもル~ちゃんはまお……」
と声に出して言いそうになったイルの言葉を、ルミナは素早くさえぎり話題を変える。
「魔王饅頭って、おいしいわよね~イル♪」
「え? へ? へ?」
ルミナに強引に話を変えられて戸惑うイル。だがルミナはそれを無視して話を進める。
「じゃ積もる話もあるし、行くわよイルッ」
ルミナはなにごとかを言おうとしているイルの口を塞ぐと、不審げに自分の行動を見つめる同級生たちに愛想笑いをかましながら、イルの小柄な背中を押して、強引に教室の外に連れ出したのだった。
ルミナはじっと自分を見つめている気配に気付くと、そちらのほうに視線を向けて問いかける。
「だれ?」
「あっその声っやっぱりル~ちゃんだ♪」
ルミナを見つめていた彼女と同じ青の制服に身を包んでいた少女は、彼女の声を聞くなり嬉しそうにルミナの名を叫びながら、ルミナの周りにいる人ごみを掻き分けて、いきなりルミナに飛びついてきたのだった。
いつものルミナならこのようなことをされようものなら、持ち前の運動神経で瞬時にかわしているはずだ。
だが、抱きついてきた少女の身体能力があまりに高く、さすがのルミナもかわすことが出来ずに、少女に抱きつかれてしまったのだった。
ルミナが自分に抱きつき、嬉しそうに胸に顔を埋めている少女を見つめて、慌てたように問いただした。
「え? 誰?」
ルミナの態度を見ていた小柄な少女はルミナの胸から顔を離すと、自分の顔がルミナに見えるように顔を上に向けながら口を開いた。
「僕だよ僕っイルだよっ」
少しはねた緑色の髪と、大粒のつぶらな瞳を持った少女が、自分の顔を指差しながら答える。
「もしかして、食いしん坊のイル!?」
「うん♪」
イルは心底嬉しそうに緑色の瞳を輝かせながら返事を返すと、再度ルミナの胸に顔を埋めた後、上目遣いにルミナの顔を見上げて心底嬉しそうに口を開いた。
「やっぱりル~ちゃんもこの学校だったんだね♪」
ルミナと再会できたのがよほど嬉しいのか、まるでよく懐いている子猫のように、つま先立ちをしてルミナの顔に頬ずりをする。
「あ、うん。勇者科に入ったのよ」
「勇者科? でもル~ちゃんはまお……」
と声に出して言いそうになったイルの言葉を、ルミナは素早くさえぎり話題を変える。
「魔王饅頭って、おいしいわよね~イル♪」
「え? へ? へ?」
ルミナに強引に話を変えられて戸惑うイル。だがルミナはそれを無視して話を進める。
「じゃ積もる話もあるし、行くわよイルッ」
ルミナはなにごとかを言おうとしているイルの口を塞ぐと、不審げに自分の行動を見つめる同級生たちに愛想笑いをかましながら、イルの小柄な背中を押して、強引に教室の外に連れ出したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる