私が勇者であんたが魔王よ!

四ノ宮士騎

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第19話 学期末試験

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 聖魔道学園には毎年恒例の行事がある。それは年に三度ある各学期の終わりに、各自の実力を確認するための試験がかせられることだった。

 普通の学校などで行われる期末テストのようなものだと思ってもらえればいい。

 ただこの期末テストが普通の学校などと違うところは、習っているものが勉強ではなく戦うため強くなるための技術だけあって、そのテスト自体が命がけ、ということだけだ。

 それは勇者科と魔王科に籍を置く同学年の生徒たち限定で、勇者科は他科目もしくは同科目のクラスメイトたちとパーティを組んで、魔王科は自分で呼び出した魔物を率いて、学園東にある試しの塔に挑むのである。

 そこで一番初めに塔の頂上に到達した生徒たちのリーダーには、各学期の主席が与えられる。

 勇者科の生徒たちも魔王科の生徒たちも、自分たちの力が試せる試験を前にして意気揚々としていたのだが、その中で一人だけハァ……などというため息をつきながら、一人学園の裏庭で木に寄りかかりながら黄昏れている生徒がいた。

 魔王科の落ちこぼれであるカナタ・ユア・モーティスである。

 カナタがなぜ一人黄昏ているのかというと、カナタには試しの塔に挑むときに魔王科の生徒たち皆が呼び出しているパーティを作るための魔獣や魔物の類が一切呼び出せなかったからだ。

 いくら学園内の施設である試しの塔とはいっても、そこには生徒たちの力を試すための仕掛け、つまるところ教師たちの用意した魔獣や魔物の類が蠢いているのである。

 そんなところに自分を守るはずの魔獣や魔物の類もなく、武器を持たない魔王科の生徒が単独で行けば、結果はわかりきっている。

 そんな理由もあって、生粋の魔王科落ちこぼれであるカナタは途方にくれていたのである。

 そんな彼を尻目に他の魔王科の生徒たちは次々と、自らが呼び出した魔獣や魔物を従えて意気揚々と試しの塔へと向かっていた。

 その中でもいの一番に学園を飛び出したのが、ドゥルグである。

 ドゥルグはまるで一切の魔獣や魔物の類を呼び出せず、ろくにパーティも組めないカナタを馬鹿にしているのか、まるで彼に見せ付けるかのようにして、自らが呼び出した総勢二十あまりのスケルトンレギオンを従えて、意気揚々と学園をあとにしたのだった。

 自分を小馬鹿にして学園をあとにしたドゥルグを、魔獣や魔物の類を一切呼び出せないカナタは、何も出来ずにただ見送っていた。

 だが、そんな彼に一筋の光明がもたらされた。

 それはルミナ・ギルバート・オデッセリアによるある一つの提案だった。

 その提案とは勇者科一年のルミナ・ギルバート・オデッセリアが、道中の荷物もちをカナタが引き受ければカナタ・ユア・モーティスを、自分のパーティに組み込むというものだった。

 実は荷物持ちというのは建前で、ルミナが幼馴染であるカナタを気遣って自らのパーティに加えようとしたのだ。

 もちろん途方にくれていたカナタにこれ以外の選択肢はなく、道中の荷物もちと引き換えに、ルミナ率いる勇者科のパーティに加わることになった。

 そして即席の幼馴染パーティを組んだルミナたちは、試しの塔に向かっているのだった。
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