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第26話 試の塔攻略① ドゥルグと幽霊とアンデッド①
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ドゥルグとの会話の後、カナタが目的の塔の入り口である、ちょっとしたゴーレムなら通れるほどの大きさの、開ききった両開きの扉を見つめてルミナに問いかける。
「とりあえず、これからどうすればいいんだ。ルミナ?」
「そんなことも知らずにカナタ、あんた私に付いて来たわけ? そんな事言ってるのあんただけよ? 他のみんなはこれからなにをするかぐらいわかって……」
何かいやな予感に捕らわれながらも、他のパーティメンバーに視線を向けながら声をかける。
「る。わよね? イル?」
「ん? 僕は知らないよ? 僕はル~ちゃんについて来ただけだし」
「なら、いの一番で飛び出していったんだし、さすがにあんたは知ってるわよね? ドゥルグ?」
「は? 君はなにを言ってるんだね。僕がそんなこと知るわけないじゃないか」
当然とばかりに、わははははとやたらえらそうに高笑いをあげながら言うドゥルグ。
「じゃあなんでいの一番に飛び出していったのよ?」
「そんなの決まってるじゃないか。一番が良かったからだ」
「つまりあんたは目的地は知ってても目的は知らず、ただ一番になりたかったから飛び出していったと?」
「うむ」
やたらえらそうに頷くドゥルグに、思いっきり小ばかにした感じに言うルミナ。
「あんたってもしかして……馬鹿?」
「ちょっ言うに事欠いて失礼じゃないかね! この名門クアーズ家の子息である僕を捕まえて!」
「いや、この場合名門とか関係ないだろ?」
というカナタの突っ込みはとりあえずおいておくとして。
「で、結局のところクアーズ家の子息様は、目的地に着いたらどうするつもりだったのよ?」
「そんなの決まってるじゃないか。とりあえず」
「とりあえず? 塔を攻略するとでも言うのかしら?」
「眠いし、学園の寮に帰って寝る」
「馬鹿かあんたは!」
当たり前のように言うドゥルグの答えに、ルミナは思わず大声を出して突っ込んでいた。
「君に馬鹿と言われる筋合いはさすがにないと思うんだがね!?」
「これを馬鹿と言わずしてなにを馬鹿っていうのよ! そもそも目的地まで来て何もせずに帰るなんて」
「仕方ないじゃないかね。アンデッド使いである僕の本領が発揮できるのは夜だ」
「なら、夜まで待てばいいじゃない」
「ふぅ、わかってないな。君は」
「?」
「いいかい夜まで待ったら」
「待ったら?」
「暗くて怖いじゃないか!」
「はっ?」
「それに」
「それに?」
「もし幽霊が出たらどうするんだね君!」
「あんた……アンデッドマスターでしょうが!」
「確かに僕は将来アンデッドマスターかネクロマンサーキングになるだろう。が、幽霊は怖い」
「いや、あのゾンビ使役してる奴が幽霊怖がっても」
カナタが突っ込めば、わかってないな君は? といった感じにドゥルグが持論を並べ立てる。
「アンデッドと幽霊は違うんだよ。君」
「その差は?」
「アンデッドは多少冷たいかもしれないが、触れる!」
「いや、私冷たい時点でだめだと思うんだけど」
ルミナが突っ込みを入れるが、それにはおかまいなしにドゥルグがことさら強い口調で言う。
「だが、幽霊は触れないじゃないか!」
「「そーゆー問題かっ!?」」
その場にいるルミナとカナタが声を重ねて突っ込んだのだった。
「それに目的もわからないしね。『世界の大事』ならともかく、たかがいっかいの学園行事風情に危険は冒せないさ。なんと言っても僕を失うということは世界の損失に繋がるからね」
ハァ~と、話を聞いていなかったイルと当人のドゥルグを除くパーティメンバー全員が、呆れたような疲れたようなため息を吐き出していた。
まぁパーティメンバー全員といっても、イルとドゥルグを除けばルミナとカナタの二人しかいないのだが。
「まぁとにかく、ここまで来た以上あんたがなんて言おうが目的は果たすわよ。それに、この様子からして先客もいるみたいだし、急がないと塔の最上階に一番のりできなくなるしね」
試しの塔の開ききった両開きの扉を見つめながら言うルミナ。
ルミナやカナタの見ている薄暗い両開きの扉の向こう側の内部を見て、
「なら僕は帰るぞ。もうすぐ夜になるしね。当初の予定通りにさっさと寮に帰って寝る」
「勝手に帰れば?」
「…………」
「それから今回の試しの塔の目的は、誰よりも早く最上階に到達することよ。だからさっさと行くわよ。カナタ、イル」
言うなりルミナが初めに試しの塔の入り口へと向かう。
イルやカナタもそれに習って、ルミナと同じように塔の入り口に向かって歩を進めるが、ドゥルグのみ塔の入り口から薄暗い内部を覗き込み、その場から一歩も動こうとせずにいた。
「あんな薄暗い陰湿な場所へなど、僕は行かないからな!」
ルミナたちの背中に向かって叫ぶ。だが返事はない。
「…………」
結局一人学園の寮に帰ると言い張っていたドゥルグのみが塔の外側に取り残される。
外を見渡せば今朝旅立ったとき朝日が照らし出していた空は、西に太陽が傾き今は黄色い色に染まりつつあった。もうしばらくすれば空にさんさんと光を降り注いでいる太陽は、完全にその姿を消し夜の帳が周囲を覆い尽くすはずだ。
そんな時ヒュ~ッと冷たい夜風がドゥルグに向かって吹きつける。
ゾクゾクゾクッと彼の背中を悪寒が駆け巡った。
「おお~いっまってくれ~君たちぃっ!」
同時に内心の恐怖に押し出され叫び声を上げると、ドゥルグは塔の中へと消え行くルミナたちの背中を追って駆け出していた。
「とりあえず、これからどうすればいいんだ。ルミナ?」
「そんなことも知らずにカナタ、あんた私に付いて来たわけ? そんな事言ってるのあんただけよ? 他のみんなはこれからなにをするかぐらいわかって……」
何かいやな予感に捕らわれながらも、他のパーティメンバーに視線を向けながら声をかける。
「る。わよね? イル?」
「ん? 僕は知らないよ? 僕はル~ちゃんについて来ただけだし」
「なら、いの一番で飛び出していったんだし、さすがにあんたは知ってるわよね? ドゥルグ?」
「は? 君はなにを言ってるんだね。僕がそんなこと知るわけないじゃないか」
当然とばかりに、わははははとやたらえらそうに高笑いをあげながら言うドゥルグ。
「じゃあなんでいの一番に飛び出していったのよ?」
「そんなの決まってるじゃないか。一番が良かったからだ」
「つまりあんたは目的地は知ってても目的は知らず、ただ一番になりたかったから飛び出していったと?」
「うむ」
やたらえらそうに頷くドゥルグに、思いっきり小ばかにした感じに言うルミナ。
「あんたってもしかして……馬鹿?」
「ちょっ言うに事欠いて失礼じゃないかね! この名門クアーズ家の子息である僕を捕まえて!」
「いや、この場合名門とか関係ないだろ?」
というカナタの突っ込みはとりあえずおいておくとして。
「で、結局のところクアーズ家の子息様は、目的地に着いたらどうするつもりだったのよ?」
「そんなの決まってるじゃないか。とりあえず」
「とりあえず? 塔を攻略するとでも言うのかしら?」
「眠いし、学園の寮に帰って寝る」
「馬鹿かあんたは!」
当たり前のように言うドゥルグの答えに、ルミナは思わず大声を出して突っ込んでいた。
「君に馬鹿と言われる筋合いはさすがにないと思うんだがね!?」
「これを馬鹿と言わずしてなにを馬鹿っていうのよ! そもそも目的地まで来て何もせずに帰るなんて」
「仕方ないじゃないかね。アンデッド使いである僕の本領が発揮できるのは夜だ」
「なら、夜まで待てばいいじゃない」
「ふぅ、わかってないな。君は」
「?」
「いいかい夜まで待ったら」
「待ったら?」
「暗くて怖いじゃないか!」
「はっ?」
「それに」
「それに?」
「もし幽霊が出たらどうするんだね君!」
「あんた……アンデッドマスターでしょうが!」
「確かに僕は将来アンデッドマスターかネクロマンサーキングになるだろう。が、幽霊は怖い」
「いや、あのゾンビ使役してる奴が幽霊怖がっても」
カナタが突っ込めば、わかってないな君は? といった感じにドゥルグが持論を並べ立てる。
「アンデッドと幽霊は違うんだよ。君」
「その差は?」
「アンデッドは多少冷たいかもしれないが、触れる!」
「いや、私冷たい時点でだめだと思うんだけど」
ルミナが突っ込みを入れるが、それにはおかまいなしにドゥルグがことさら強い口調で言う。
「だが、幽霊は触れないじゃないか!」
「「そーゆー問題かっ!?」」
その場にいるルミナとカナタが声を重ねて突っ込んだのだった。
「それに目的もわからないしね。『世界の大事』ならともかく、たかがいっかいの学園行事風情に危険は冒せないさ。なんと言っても僕を失うということは世界の損失に繋がるからね」
ハァ~と、話を聞いていなかったイルと当人のドゥルグを除くパーティメンバー全員が、呆れたような疲れたようなため息を吐き出していた。
まぁパーティメンバー全員といっても、イルとドゥルグを除けばルミナとカナタの二人しかいないのだが。
「まぁとにかく、ここまで来た以上あんたがなんて言おうが目的は果たすわよ。それに、この様子からして先客もいるみたいだし、急がないと塔の最上階に一番のりできなくなるしね」
試しの塔の開ききった両開きの扉を見つめながら言うルミナ。
ルミナやカナタの見ている薄暗い両開きの扉の向こう側の内部を見て、
「なら僕は帰るぞ。もうすぐ夜になるしね。当初の予定通りにさっさと寮に帰って寝る」
「勝手に帰れば?」
「…………」
「それから今回の試しの塔の目的は、誰よりも早く最上階に到達することよ。だからさっさと行くわよ。カナタ、イル」
言うなりルミナが初めに試しの塔の入り口へと向かう。
イルやカナタもそれに習って、ルミナと同じように塔の入り口に向かって歩を進めるが、ドゥルグのみ塔の入り口から薄暗い内部を覗き込み、その場から一歩も動こうとせずにいた。
「あんな薄暗い陰湿な場所へなど、僕は行かないからな!」
ルミナたちの背中に向かって叫ぶ。だが返事はない。
「…………」
結局一人学園の寮に帰ると言い張っていたドゥルグのみが塔の外側に取り残される。
外を見渡せば今朝旅立ったとき朝日が照らし出していた空は、西に太陽が傾き今は黄色い色に染まりつつあった。もうしばらくすれば空にさんさんと光を降り注いでいる太陽は、完全にその姿を消し夜の帳が周囲を覆い尽くすはずだ。
そんな時ヒュ~ッと冷たい夜風がドゥルグに向かって吹きつける。
ゾクゾクゾクッと彼の背中を悪寒が駆け巡った。
「おお~いっまってくれ~君たちぃっ!」
同時に内心の恐怖に押し出され叫び声を上げると、ドゥルグは塔の中へと消え行くルミナたちの背中を追って駆け出していた。
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