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第39話 試の塔攻略⑭ ドゥルグとスカルンとゴーレムとフィフス
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その頃ドゥルグはと言うと、一階で背後の壁と前方のゴーレムに挟まれた折ギリギリゴーレムの又下をくぐって脱出に成功して未だに逃げ回っていた。
「人が手加減しておればいい気になりおって! こうなったら僕の奥の手を見せてやる!」
彼は一階の狭い通路を走りながら精神を集中して魔力を高めると、足を止めて背後から追いすがってくるゴーレムに向き直り、パチンッと指を鳴らしてニヒルに決めポーズをとりながら一気に高めた魔力を解放した。
召喚を補助する役目を担っているサモンルームでもないのに開放された魔力は、彼の目の前に瞬時に魔法陣を描き出す。
「出でよっスカルドラゴン!」
そして、次の瞬間には描かれた魔法陣の中から、全身が骨で構築されたアンデッド。スカルドラゴンが呼び出されていたのだった。
「どうだ! 僕のスカルンは! このドラゴンはなぁ僕の父上が僕がこの学園に入学するに当たって入学祝にくれたものなのだ! どうだっすごいだろう! 貴様ごときゴーレム風情が敵う相手ではないぞ! わっはっはっはっはっ」
反り返りながら馬鹿笑いに興じる。
まるでそれに呼応するかのように、一階の狭い通路に呼びだされたスカルドラゴンが時の声を上げる。
「アンギャアアアアアアアアア!」
次の瞬間身体を広げ通路の壁や天井を壊しながら声高に叫んだドラゴンの崩した塔の瓦礫がドゥルグの上へと降り注ぐ。
「なっなんだとぉぉぉっ!?」
予想外の出来事に素っ頓狂な叫び声を上げながら、ドゥルグは瓦礫の下敷きになっていた。
くっだがまだだ! そう叫びながらドゥルグは、最後の力を振り絞り何とかそこから這い出ようと、腹ばいになって瓦礫からの脱出を試みるが、腹ばいになっている背中に何か巨大なものが覆いかぶさってくる。
腹ばいになって瓦礫から這い出ようとしているドゥルグにそれをよけることなど到底できるはずもなく、彼は未だ感じたことがないほどの重量を背中に受けてグヘッと言いながらプチッと言う音と共にその生涯の幕を閉じたのだった。
ちなみにこんなにもあっさりと彼の生涯の幕引きをしたのは、彼が先ほど自らこの場に呼び出したスカルドラゴンである。
スカルドラゴンは運の悪いことにドゥルグによって思わぬほど狭いところに呼び出されてしまったため、自らの足場を探そうと足掻いたあげく、不可抗力によりドゥルグをプチッと踏んづけて、踏み潰してしまったのだった。
つまるところ彼があっさりとこの場で生涯を終えた理由は、場所もわきまえずにこんな狭いところであんなものを呼び出してしまった自分自身に全責任があったのである。
とはいえ自らを呼び出した主人を思わぬ形で踏んづけて亡き者にしてしまったスカルドラゴンは、頬骨に一筋の汗のようなものをたらしながら、あまりの出来事にどうしたらいいのか分からず固まってしまっていた。
そしてその現場を間近で目撃したゴーレムも同じようにして戸惑っていた。
本来ならこの場で両者は互いの存亡をかけ一戦交えるはずだったのである。それが思わぬ形で幕引きをしたのだから、両者がこうなるのも致し方ないことなのであった。
「…………」
「…………」
そんな両者が気まずくなりながら互いにどうしていいかわからずに思わず見詰め合っていると、そこへ女性のものと思しきゴーレム解除と召喚獣強制返還スペルが響き渡る。
「ディスペル・イズ・ゴーレム! イズ・アンチ・アンデッド・ドラゴン!」
彼女の声が響くと同時にその場を銀色の魔力の光が包み込んだ。
先ほどまでドゥルグを追いかけていて、今はスカルドラゴンと見つめあい戸惑っていたゴーレムは、ただの土くれへと帰り、ドゥルグに呼び出されたスカルドラゴンも元々いた世界へと強制返還されてしまった。
先ほどプチッといった感じにあっさりとその生涯を終えたドゥルグが、再生復活を果たしながら目にしたのは、先ほど自分を襲ってきたゴーレムと自らがかなりの魔力を使い呼び出した二体もの魔物を一度に強制返還してしまうほどの強力な銀色の魔力を放つ女性の後姿だった。
彼女は未だ復活を果たしたとはいえ、半分以上瓦礫に埋もれてしまっているドゥルグのほうを振り返ると、心底呆れたような口調で、いつものように右手の甲で魔鏡と呼ばれる眼鏡を直しながら声をかけてくる。
「で、あなたはいったいそんなところでなにをしているのですか?」
声をかけられながらその顔を目にしたドゥルグは、なぜこんなところに彼女がいるのだろうと思いながら口を開く。
「ん? なんで君がこんなところに?」
「その疑問はもっともですが、その前に早くその瓦礫から出てきなさい。ドゥルグ・ムド・クアーズ。それから教師を君呼ばわりしない!」
「はっはい! 失礼しました! ティーチャーフィフス!」
魔王科担当教師のフィフスに叱咤されたドゥルグは、勢いよく瓦礫の下から這い出して来ると、すぐさま直立不動で立ち上がり返事を返した。
それを見返したフィフスは瞬時に口の中で何事かスペルを呟いた。すると彼女の前方に銀色の魔法円が描かれる。
「とにかく緊急事態です。あなたも私と共に来なさい」
「はっはいであります!」
あっさりと復活したドゥルグは敬礼をしながら返事をすると、フィフスが自ら生み出した銀色の魔法円の中へと彼女と共に姿を消したのだった。
「人が手加減しておればいい気になりおって! こうなったら僕の奥の手を見せてやる!」
彼は一階の狭い通路を走りながら精神を集中して魔力を高めると、足を止めて背後から追いすがってくるゴーレムに向き直り、パチンッと指を鳴らしてニヒルに決めポーズをとりながら一気に高めた魔力を解放した。
召喚を補助する役目を担っているサモンルームでもないのに開放された魔力は、彼の目の前に瞬時に魔法陣を描き出す。
「出でよっスカルドラゴン!」
そして、次の瞬間には描かれた魔法陣の中から、全身が骨で構築されたアンデッド。スカルドラゴンが呼び出されていたのだった。
「どうだ! 僕のスカルンは! このドラゴンはなぁ僕の父上が僕がこの学園に入学するに当たって入学祝にくれたものなのだ! どうだっすごいだろう! 貴様ごときゴーレム風情が敵う相手ではないぞ! わっはっはっはっはっ」
反り返りながら馬鹿笑いに興じる。
まるでそれに呼応するかのように、一階の狭い通路に呼びだされたスカルドラゴンが時の声を上げる。
「アンギャアアアアアアアアア!」
次の瞬間身体を広げ通路の壁や天井を壊しながら声高に叫んだドラゴンの崩した塔の瓦礫がドゥルグの上へと降り注ぐ。
「なっなんだとぉぉぉっ!?」
予想外の出来事に素っ頓狂な叫び声を上げながら、ドゥルグは瓦礫の下敷きになっていた。
くっだがまだだ! そう叫びながらドゥルグは、最後の力を振り絞り何とかそこから這い出ようと、腹ばいになって瓦礫からの脱出を試みるが、腹ばいになっている背中に何か巨大なものが覆いかぶさってくる。
腹ばいになって瓦礫から這い出ようとしているドゥルグにそれをよけることなど到底できるはずもなく、彼は未だ感じたことがないほどの重量を背中に受けてグヘッと言いながらプチッと言う音と共にその生涯の幕を閉じたのだった。
ちなみにこんなにもあっさりと彼の生涯の幕引きをしたのは、彼が先ほど自らこの場に呼び出したスカルドラゴンである。
スカルドラゴンは運の悪いことにドゥルグによって思わぬほど狭いところに呼び出されてしまったため、自らの足場を探そうと足掻いたあげく、不可抗力によりドゥルグをプチッと踏んづけて、踏み潰してしまったのだった。
つまるところ彼があっさりとこの場で生涯を終えた理由は、場所もわきまえずにこんな狭いところであんなものを呼び出してしまった自分自身に全責任があったのである。
とはいえ自らを呼び出した主人を思わぬ形で踏んづけて亡き者にしてしまったスカルドラゴンは、頬骨に一筋の汗のようなものをたらしながら、あまりの出来事にどうしたらいいのか分からず固まってしまっていた。
そしてその現場を間近で目撃したゴーレムも同じようにして戸惑っていた。
本来ならこの場で両者は互いの存亡をかけ一戦交えるはずだったのである。それが思わぬ形で幕引きをしたのだから、両者がこうなるのも致し方ないことなのであった。
「…………」
「…………」
そんな両者が気まずくなりながら互いにどうしていいかわからずに思わず見詰め合っていると、そこへ女性のものと思しきゴーレム解除と召喚獣強制返還スペルが響き渡る。
「ディスペル・イズ・ゴーレム! イズ・アンチ・アンデッド・ドラゴン!」
彼女の声が響くと同時にその場を銀色の魔力の光が包み込んだ。
先ほどまでドゥルグを追いかけていて、今はスカルドラゴンと見つめあい戸惑っていたゴーレムは、ただの土くれへと帰り、ドゥルグに呼び出されたスカルドラゴンも元々いた世界へと強制返還されてしまった。
先ほどプチッといった感じにあっさりとその生涯を終えたドゥルグが、再生復活を果たしながら目にしたのは、先ほど自分を襲ってきたゴーレムと自らがかなりの魔力を使い呼び出した二体もの魔物を一度に強制返還してしまうほどの強力な銀色の魔力を放つ女性の後姿だった。
彼女は未だ復活を果たしたとはいえ、半分以上瓦礫に埋もれてしまっているドゥルグのほうを振り返ると、心底呆れたような口調で、いつものように右手の甲で魔鏡と呼ばれる眼鏡を直しながら声をかけてくる。
「で、あなたはいったいそんなところでなにをしているのですか?」
声をかけられながらその顔を目にしたドゥルグは、なぜこんなところに彼女がいるのだろうと思いながら口を開く。
「ん? なんで君がこんなところに?」
「その疑問はもっともですが、その前に早くその瓦礫から出てきなさい。ドゥルグ・ムド・クアーズ。それから教師を君呼ばわりしない!」
「はっはい! 失礼しました! ティーチャーフィフス!」
魔王科担当教師のフィフスに叱咤されたドゥルグは、勢いよく瓦礫の下から這い出して来ると、すぐさま直立不動で立ち上がり返事を返した。
それを見返したフィフスは瞬時に口の中で何事かスペルを呟いた。すると彼女の前方に銀色の魔法円が描かれる。
「とにかく緊急事態です。あなたも私と共に来なさい」
「はっはいであります!」
あっさりと復活したドゥルグは敬礼をしながら返事をすると、フィフスが自ら生み出した銀色の魔法円の中へと彼女と共に姿を消したのだった。
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