私が勇者であんたが魔王よ！

第８０話 冥界王ハデス① イージスの盾

　そう誰もが思った瞬間、それは何の前触れもなく起こったのだった。

　あと少しで完全に門が閉じきると思われた瞬間に、いきなり門の内側から巨大な力の塊が吐き出されたのだ。

　しかもそれは門の内側にいた二体のゲートキーパーの身体を巻き込み跡形もなく消し去りながら、門の外へと向かって一直線に突き進んだ。

　もちろん、今冥界の門の外側には、黒竜と一体化しているドゥルグやルミナたち。そして、戦勝に湧くド・オデッセリアの人々がいた。

　だが、門の内側から打ち出だされたとてつもない破壊力を持つ巨大な力の塊は、そんなことなどお構いなしに、巨大な冥界の門を内側から突き破るとその大半を崩壊させながら、門の外側にいる黒竜とルミナたち。そして、戦勝で湧くド・オデッセリアの人々へと襲い掛かったのである。

「な！？」

「へ！？」

「やばい！　ルミナ――ッ！」

　二人の危機を察したカナタがとっさに怒鳴り声を張り上げたのだが、全てが終わったと思い込んで気が緩んでいた二人は、まったく予期していなかった出来事に対して、とっさに回避行動をとることが出来ずにいた。

　そして突如として門を破壊して現れた巨大な力の塊を前にして、二人は無防備な状態で身体を晒してしまう。

　これでいっかんの終わりかと思いルミナとドゥルグの二人が目をつぶりかけた矢先、ルミナたちの眼前。つまりブラックドラゴンの前面に、瞬時に光り輝く半透明の巨大な光の盾が出現したのだった。

　出現した巨大な半透明の光の盾は、ルミナたちを直撃するはずだった巨大な力の塊を危機一髪防ぐことに成功したのであった。

　突如目の前に出現して、自分たちの危機を救った巨大な光の盾を見つめながら、これはまさか……イージスの盾？　こんな高度な聖属性魔法を扱えるのは……と思いめぼしをつけた人物のほうを振り返ると、案の定その視線の先には、学院の外壁の上で激しく肩で息をするフィフスの姿があった。

　どうやら間一髪フィフスが学院に流れ込んでいる地脈の力を使い、イージスの盾を作り出して、今の一撃を何とか防いだようだった。