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これが俺の生きる道
9 これはデートではない
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久しぶりに見る石畳の道。街並みは美しかった。飢えてた時は石の冷たさに打ち拉がれたのに。
「…綺麗なトコだね」
「周りは丘陵だから石を切り崩し拡げた街なんだ」
「それで煉瓦とか石」
「ほら、あの店だ」
「…え」
相変わらず手を繋いだままのフィル。まじか。俺は目を見開き、興奮して見上げた。この香ばしい焼きたての匂いはあれだ。目が合うとクスッと笑むフィル。お、おお、お前は、いい奴だ!俺はウズウズし始めた。
「好きなんだろ?」
「パン屋だ!」
「レオ!」
俺は手を離して駆け出した。芋と葉野菜ばかりで育った。この町の施しは硬いパンだった。フィルの屋敷に来て、この世界でフワフワのパンを食べた時の衝撃ったら。これはたまらん。鼻腔の奥通過して脳天直撃だ。はやく、早く食べたいっ!
ガッ、ズベッ
「…にゃっ!」
…転けた。むくりと起きる。何だクソ。お約束か。にゃって何だ。初めて言ったわ。あぁ…手からいったな。擦りむいたのは手と膝か。服は破れてない。地味に痛い。フィルが駆け寄った。
「レオ、大丈夫か。急に走ったりは無理だ。足が反応鈍いだろ」
「…嬉しさの余り」
「あぁ、鼻先擦りむいてる。ほら立てるか」
「パン…」
「はははっ。余程好きなんだな」
立った。俺は立った。玉座に座るパンは光り輝いている。その純白の神々しい姿に会う為に。苦難を乗り越え、障害があろうと何度でも立つんだ。目の前に焼きたてのパンが待ってるぜ。あ、違う世界に逝ってた。フィルが服の汚れをぱんぱん払ってた。
「ほら、手はやっぱりいるだろう」
「…あ、うん」
大人しく手繋ぎに戻る。足は思ったよりリハビリ不足な様だ。ランニングでもするか。
俺の目は絶対キラキラしてる。パン屋で選んでるときは鼻息が荒かった。好きなだけ買っていいと言われたけど一個にした。そして街の広場のベンチでパンを見つめる。今待てをされたハァハァしてる犬だった。
「フィル、た、食べていいか?」
「どうぞ」
「いいかほり。はぁ。むっ、あ、は」
匂いを確かめて、齧る。噛みしめた。はぁああ、焼き立ては外はパリッと中はフワフワだぁ~。小麦粉の香りがたまらない。ああ…幸せだ。カンパーニュだよコレ。素朴なパンを齧る。切らずに貰って大きさは俺の顔と同じだ。
「美味しい。フィル、美味しいよこれ!」
「はは。良かったな」
屋敷にいた時にしたこと無い顔だと自分でも思う。だってフィルが凄く嬉しそうだからな。そしてひたすら食った。俺は勢いで丸々一個食った。フィルが驚いてた。
カフェバーもあった。俺は甘すぎるラテだ。ブラックも飲めそうだとフィルのを味見した。
「ゔぇ…」
「ははは、濃いだろ」
ここのは濃厚で無理だった。
船も見た。帆船だ。今までも前世で見た記憶あるけど、それは運河に入る用の蒸気機関だった。フリゲートで大砲載ってるのもあった。車もあったしホント近代的だった。出稼ぎに来た時は必死で食い繋ぐ事しか考えて無かった。余裕があると全てが違って見える。
「なんか視線感じる」
さっきからすれ違う人達な。チラチラ俺見てる気がする。何なんだ。
「レオが可愛いからだよ」
「…は?」
「今日は笑顔で更に可愛い」
「…はぁ?」
鳥肌でた。見て見て、この鳥肌。そうだ、俺は美少年。服も慣れてきて気にして無かったが、今日もヒラフリ王子だ。シャツは袖口と襟がフリッてるし、腰横から布紐ついてて背後で結び長いリボンになってる。バル爺が屋敷出るとき結び直してたやつな。容姿相応に自覚しろってか。いや俺は俺だ。何も変えなくていい。今までも中身は俺のままで生きた。これでいい。そのはずだ。栄養ついたら成長して、王子から王様にチェンジアップする予定なんだ。可愛いのは今だけだ。
考えていると、真顔でいつも少しだけ小首を傾げている癖に気付かないレオ。フィルは微笑ましく見つめていた。
「…何?」
「いや、そろそろ帰るか」
「ぁ…うん」
「道はこっちだ」
見たことが無かった笑顔を知った。普段呼んでくれない名前を沢山言った。今日のレオはいつもより素直だ。普段大人だというが、今日は十代らしく子供っぽい。可愛い。本当に可愛い。俺はどうしたんだろうな。はは。子煩悩か。いや、息子にはそんなこと思わなかったな。レオのいう変態ってやつか?まぁ、レオに文句をいわれ、怒られながら過ごすのも楽しいからな。ああ、退屈しない。
思い思いに考えながら、手を繋ぎ歩くのだった。
「…綺麗なトコだね」
「周りは丘陵だから石を切り崩し拡げた街なんだ」
「それで煉瓦とか石」
「ほら、あの店だ」
「…え」
相変わらず手を繋いだままのフィル。まじか。俺は目を見開き、興奮して見上げた。この香ばしい焼きたての匂いはあれだ。目が合うとクスッと笑むフィル。お、おお、お前は、いい奴だ!俺はウズウズし始めた。
「好きなんだろ?」
「パン屋だ!」
「レオ!」
俺は手を離して駆け出した。芋と葉野菜ばかりで育った。この町の施しは硬いパンだった。フィルの屋敷に来て、この世界でフワフワのパンを食べた時の衝撃ったら。これはたまらん。鼻腔の奥通過して脳天直撃だ。はやく、早く食べたいっ!
ガッ、ズベッ
「…にゃっ!」
…転けた。むくりと起きる。何だクソ。お約束か。にゃって何だ。初めて言ったわ。あぁ…手からいったな。擦りむいたのは手と膝か。服は破れてない。地味に痛い。フィルが駆け寄った。
「レオ、大丈夫か。急に走ったりは無理だ。足が反応鈍いだろ」
「…嬉しさの余り」
「あぁ、鼻先擦りむいてる。ほら立てるか」
「パン…」
「はははっ。余程好きなんだな」
立った。俺は立った。玉座に座るパンは光り輝いている。その純白の神々しい姿に会う為に。苦難を乗り越え、障害があろうと何度でも立つんだ。目の前に焼きたてのパンが待ってるぜ。あ、違う世界に逝ってた。フィルが服の汚れをぱんぱん払ってた。
「ほら、手はやっぱりいるだろう」
「…あ、うん」
大人しく手繋ぎに戻る。足は思ったよりリハビリ不足な様だ。ランニングでもするか。
俺の目は絶対キラキラしてる。パン屋で選んでるときは鼻息が荒かった。好きなだけ買っていいと言われたけど一個にした。そして街の広場のベンチでパンを見つめる。今待てをされたハァハァしてる犬だった。
「フィル、た、食べていいか?」
「どうぞ」
「いいかほり。はぁ。むっ、あ、は」
匂いを確かめて、齧る。噛みしめた。はぁああ、焼き立ては外はパリッと中はフワフワだぁ~。小麦粉の香りがたまらない。ああ…幸せだ。カンパーニュだよコレ。素朴なパンを齧る。切らずに貰って大きさは俺の顔と同じだ。
「美味しい。フィル、美味しいよこれ!」
「はは。良かったな」
屋敷にいた時にしたこと無い顔だと自分でも思う。だってフィルが凄く嬉しそうだからな。そしてひたすら食った。俺は勢いで丸々一個食った。フィルが驚いてた。
カフェバーもあった。俺は甘すぎるラテだ。ブラックも飲めそうだとフィルのを味見した。
「ゔぇ…」
「ははは、濃いだろ」
ここのは濃厚で無理だった。
船も見た。帆船だ。今までも前世で見た記憶あるけど、それは運河に入る用の蒸気機関だった。フリゲートで大砲載ってるのもあった。車もあったしホント近代的だった。出稼ぎに来た時は必死で食い繋ぐ事しか考えて無かった。余裕があると全てが違って見える。
「なんか視線感じる」
さっきからすれ違う人達な。チラチラ俺見てる気がする。何なんだ。
「レオが可愛いからだよ」
「…は?」
「今日は笑顔で更に可愛い」
「…はぁ?」
鳥肌でた。見て見て、この鳥肌。そうだ、俺は美少年。服も慣れてきて気にして無かったが、今日もヒラフリ王子だ。シャツは袖口と襟がフリッてるし、腰横から布紐ついてて背後で結び長いリボンになってる。バル爺が屋敷出るとき結び直してたやつな。容姿相応に自覚しろってか。いや俺は俺だ。何も変えなくていい。今までも中身は俺のままで生きた。これでいい。そのはずだ。栄養ついたら成長して、王子から王様にチェンジアップする予定なんだ。可愛いのは今だけだ。
考えていると、真顔でいつも少しだけ小首を傾げている癖に気付かないレオ。フィルは微笑ましく見つめていた。
「…何?」
「いや、そろそろ帰るか」
「ぁ…うん」
「道はこっちだ」
見たことが無かった笑顔を知った。普段呼んでくれない名前を沢山言った。今日のレオはいつもより素直だ。普段大人だというが、今日は十代らしく子供っぽい。可愛い。本当に可愛い。俺はどうしたんだろうな。はは。子煩悩か。いや、息子にはそんなこと思わなかったな。レオのいう変態ってやつか?まぁ、レオに文句をいわれ、怒られながら過ごすのも楽しいからな。ああ、退屈しない。
思い思いに考えながら、手を繋ぎ歩くのだった。
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