俺はいつも拾われている

つちやながる

文字の大きさ
17 / 74
これが俺の生きる道

17 お前は俺のものについて

しおりを挟む
 引掛る。こう喉に小骨がある感じが続く。

「バルモンクさん」

 俺を放置して雑用をこなす執事を捕獲した。

「今日こそ執事の仕事を見習い執事として従僕たる面子にかけて教えて貰いたい、デス」
「おやおや。よく言えましたな」

 バル爺に頭を撫で撫でされた。

「…おい」
「おや、上司に対して」
「…仕事教えろ」

 あ、口が滑った。ぬっとバル爺の手が伸びニコニコと俺の頬を摘み捻った。

「あだだだ!」
「ふふ。口の悪い子ですな」

 うああ。なんて容赦の無い捻り。この狸爺め。頬をさすり恨めしげに見上げた。

「礼節の無い執事は駄目ですよ。勉学と常識を学びなさい」
「……常識」
「この国では来賓の茶は右から、帝国では左から。竜国の一族は隠然、帝国の魔人は隠滅の一族。そういった小さな事を沢山ですな」
「……何年も掛かる」
「だから見習いでしょう」

 …そんな先の見えない見習いなのか?今まで仕事を見てる方だったから知らなかったぞ。ちょい待てコラ。

「まさか…一生かかるとか」
「…かも知れませんね」
「まじ。だからそれを上司が教え、」
「レオ。私は忙しいです」
「だから手伝う」
「執事たるもの、上司の邪魔はしてはなりません。引き際や身の程を弁えるのも礼節ですな」
「…狸じじぃ」

 あっ。また口が滑った。バルモンクの目がキラリ。今度は両頬をぐにににっ、伸びる伸びる!

「あわわわ!」
「最近のレオは悪い子ですな。ふふ」

 お願いしてるのに。こうやっても何日も仕事を教えてくれない。おかしいだろ。その常識が足りないから教えて欲しいのに。勉強しろ勉強しろって母親か。酷すぎる。もう逆にストレスだ。俺は大人しくしてたのに。のんびり対処しながらいこうって。会社内のイジメかよ。我慢の限界だ。仕方ないから上司の上司フィルに直訴してやる。


 仕事がひと段落した頃を見計らい、夕刻フィルの部屋におしかけた。

「ははは」
「笑うな。仕事くれ」
「それで頬が赤いのか。可愛くなってる」
「いや、だから仕事を」
「俺は執事見習いの仕事は知らないな」

 クソ。何なんだ。転生パターンかっ飛ばして今が有るのに。これでも納得して妥協したんだ。なのに。どうにも自分がどうしたらいいのか。執事見習いって何なんだ。本当に俺は雇われてんのか。やっぱり上手いこと言って騙されてんのか。ぐぬぬぬ。

「俺、フィルの執事なんだろ」
「そうだな。俺の執事だな」

 それだ。フィルは当たり前の様に言う。通じて無い。フィルが言ったんだぞ。俺はジワジワとフィルの前にたった。

「レオ?」

 お前の執事なのに役に立ってないじゃ無いか。

「俺、何も出来ない事にイラついてんだよ」
「レオはちゃんと頑張ってるだろ」

 仕事が無くて飢えた。何も無い事に悔しくて意地になって。今も同じじゃないか。何なんだよ。わかれよ。手がわなわな震えて拳になった。

「フィルの執事…」
「俺の可愛いい執事だ」

 だから、だからそれだよ。なんか悲しくなって来たぞ、おい。

「レオ?」
「…役に立ちたいんだ」
「え、レオ?あ、あれ?」
「俺だって働ける。何か出来る。お前の執事なのに何も出来ないのは嫌だ。俺だって、仕事できる…俺は大人だ、て、何で、蔑ろにするん、だ、う…っ」

 結局はそれだ。お前ら子供扱いしやがって。俺は傷ついたぞ。俺は認められてない事に涙が溢れた。ただ泣いた。

「あ、ああ、レオ、レオごめん。泣くな」
「子供、扱い、やめ、ろ」

 顔を上げて訴えた。見た目は子供だが中身は転生マイスターの俺だぞ。馬鹿にしやがって。鼻水はでるわ。声は震えるわ。口はへの字だろ。そんな事はいいんだ。フィルは困った様な顔をした。俺の方がガチで困ってんだよ。

「レオ…」
「お前らが、俺を困らせ、てんだ。わかれ、よ。馬鹿に、すんなっ。俺だって、働けるんだっ」

 フィルはゴメン、悪かったと繰り返し言い続けて、俺を強く抱きしめた。

 俺は年甲斐も無く、いや十七だけど、もう悔しくて情けなくて。

 フィルの腕の中で溜めたものを吐き出す様に、大声でわんわん泣き続けたのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する

スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。 そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!

夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。  ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

処理中です...