俺はいつも拾われている

つちやながる

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これが俺の生きる道

16 カエルの子は、ってやつ

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 この声はフィルとバル爺だ。ランスの動きが止まった瞬間、俺は腕を振り払った。見るとバル爺の横に、先程の女の人も玄関先に並び立っていた。

「やば。年寄りがきた」
「レオ。こっちおいで」

 はあ…。やっと解放された。フィルに向かって歩く。なんなのこの男。年寄りって何。バル爺の子供?フィルも早足で俺に向かって来たと思ったら、膝下に腕を入れ抱き上げた。なんだなんだ、軽々とむかつく。

「良く言った。あれが真性の変態だ」
「…なんなの。降ろせ」
「あら、本当だわ。これは可愛らしいわね」
「奥様、そのうえ賢いですよ」
「あらら、バルが褒めるなら相当ね」
「レオ、なんかされたか」
「え、何?頬にちゅーって、早く降ろせ」
「何だと」

「俺って無視されてる?変態って酷いな~」
「ランス…」
「ランス様…」

 全員の冷たい視線を浴びてもなおマイペースなランス。肩を竦めるが反省の色も見せないのだった。


 応接間で皆が揃い、バルモンクが茶を入れる。俺も手伝うと言ったがフィルが駄目だと言う。悲しい事にフィルの隣に座らされ、腰にがっつり手を回されていた。何だこの手は。つねっても「めっ」て言われた。新しいなオイ。どういう扱いだ。

「我が子ながら節操のない子ね」
「だって、こんな可愛い子滅多にいないよ。年寄りには勿体ないだろ」

 ランスはフィルに向かって年寄りという。

「誰が年寄りだ。お前も十分もう歳だ」
「そうねぇ。父親の三割も生きれば十分爺だと思うわ。いつまで生きるのかしら」
「レオも飲み物どうぞ」

 バルモンクがチョココーヒーをくれる。

「レオっていうのか。俺の小姓になれよ」
「……いやです」

 マジしつこい…。

「近くに来たから寄って見れば相変わらず女っ気がないのね。レオがいるなら仕方ない気もするわ」
「仕事するのに女は今はいい。それにレオは執事見習いだ」
「えっ執事なのか?小姓じゃなくて?」
「バルが賢いって褒めてたわよ」
「バルが褒めたのか?そ、それは凄いな」
「レオは賢いし可愛い。愚息には絶対にやらん」
「そうですな。上司の私も許可しません」
「おほほほ。残念だったわね」
「くうう」

 飛び交う会話に、視線を左右させながらカップを傾け聞き入る。この三人って元夫婦と親子か。濃いな。濃いすぎる。息子ねぇ…。変態の子は変態か。

 ふと会話が途切れ皆が俺を見た。

「…なに」
「飲み物がついて、おヒゲになってるわよ」
「え、ヒゲ?」

 思わずフィルを見た。何でデレてる?

「うふふ…これは癒されるわねえ」
「だろう?レオ、口の上だ。ついてる」
「…ああ、そのヒゲの事」

 テーブルにあったナプキンを渡され口を拭く。茶色い泡が付く。今日のはカプチーノみたいによく泡立ってたからな。なんだよ皆にこにこして。まだ付いてんのか。

「…全部ふけたか?」
「いや、ここに付いてる」

 やっぱり付いてるらしく、フィルがナプキンを奪い口横を拭く。もの凄い笑顔だ。

「あらあら、これは暫く退屈しないわね。さあ用事も済んだから帰るわよランス」
「え、俺まだ残るから、先帰っていいよ」
「愚息は帰れ」
「えー」
「主が滞在を許可してません。お帰りを」
「おほほほ。連れて帰るわね。レオ、また会いましょうね」
「レオまた会いに来るよ~」
「え、うん」

 見送りはいいとフィルとバル爺に止められた。バル爺だけが玄関に向かった。それでいいのか。俺、執事見習い出来てないぞ。

 静かになった。まさしく台風一過だ。

「…明るくて、いい家族だな」
「息子が悪かった。あれは見境が無いぞ。気をつけろよ」
「…そうっすか」

 節操無しか。それは危険だな。新たなる刺客かよ。フィルがなんで離婚したとかは聞かない。それより腰の手もそろそろ退けて欲しいな。またつねるか。チラッと見ると、俺を真顔で見てた。

「…さっきから何」
「息子とはいえ、あれは腹が立った」
「は?」
「…レオは俺の執事だ」
 見習いだと言おうとフィルの方を向いた。

 ちゅ。

 頬にキスするつもりだったな。俺が横向いた為にズレた。口角付近のキスになった。ちっ。なに満足そうに何笑ってんだ。

「…何してんだ、おっさん」
「……おっさん」
「…あの子にしてこの親」
「何だと」
「何でもないです」

 頬にちゅーくらいは許す。あれだ。家族とかの親愛の挨拶だ。これ位は気にしない。これは多分息子への対抗心だろ。自分の物に何すんだって。わかりやすいな。

 ん?自分の物…?…俺がフィルの物?

 違う。違うぞ。

 ……そうなの?




 元奥さんエリアルさんは旅行好き。この大陸以外の世界を見る外遊船旅中この港町に寄港。土産を渡しに来たんだって。歳は凄く怒るから聞かない方がいいらしい。五十年ぶりに会ったそうだ。

 俺、次会う時この世にいないと思った。

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