俺はいつも拾われている

つちやながる

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これが俺の生きる道

番外編 疑惑と距離 1

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アンフィル・グラウダ・エウリル大公。
帝国でその名を知らない者はいない。エウリルは魔人族の始祖と言われ帝国の礎となった魔術一族の由縁から王族に位置する。アンフィルは公に貴族として表立ち、裏では軍幹部として暗躍する数少ない一族の一人。千年をも時を超え存在すると語り継がれるのは嘘か誠か。血の薄まるばかりの魔人種の平均寿命は二百年にも届かず事実を知る術はない。

そして仕える執事は栄誉であり一族の誇り高き職とまでなっていた。


風除けのゴーグルは皮臭く当たる風は髪を舞わせ撒き散らし、砂塵と鳥の糞は容赦無く直撃していた。

「…微妙ですね」
「何だ。乗りたかったんだろ」
「…速度と屋根が無いのが微妙です」
「どうやっても今の技術じゃ本気で駆ける馬の方が速いからな。これはこれで玩具で最先端だと思えば楽しいだろ、レオ」
「…運転する方は楽しいでしょうね」
「途中で馬に変えるからそんな顔するな」

フィルは竜国に実に百年超えで滞在のため、帝国に久し振りに帰郷して所用を済ます予定で車移動中だ。

あれですよ。知ってます?人間の最高時速は三十七キロですよ。この蒸気自動車って体感三十キロも出てないって微妙としか言えないでしょ。チャリを立ちこぎ疾走してる小学生に追い抜かれる速度ですよ?
異世界慣れの俺でも微妙過ぎて眉間にシワもより口も尖りますって。

「運転中はレオを見たり触れたり出来ないから楽しさは半減かな」
「…そのまま前だけ見ときやがれデス」
「ははっ、仕事中じゃないから丁寧に話さなくてもいいんだぞ」
「バルが『執事たるもの常に執事たれ』と名言をめてきたので見習おうかと」
「っレオ!掴まれ!」
「あっ?!」

ガクンッ!

ゴッ!

「っ!」
「レオ大丈夫か……何者だ」

やや弧を描いた急ブレーキの反動でこめかみを強打したレオ。食い込んだゴーグルを外しフィルの声にゆっくり顔をあげた。
車を囲むように見たことが無い軍服の男達が馬で旋回していた。十人近くいるだろうか。

「エウリル大公とその執事レオと見受ける。此度竜国出身レオに対する帝国へのスパイ容疑で拘束しに参じた。正式な調査裁判を執り行う。帝国への入国拒否も否めない。よってここで引き渡し願おう」
「なんだと?」
「…え?」
「大公、これは皇帝と王族承認の召喚状です。どうかレオを引き渡し下さい。ご確認を」

フィルに書を差し出す男から腹立たしく毟り取り確認するフィル。

「…確かに。どういうつもりだ」
「我々は任を遂行するのみ。どうか大公、嫌疑が晴れるまではどうか罪人を、
「誰が罪人だ…」

フィルは聞いたことの無い低い声で呟き腕をすぅと振りかざした途端、野太い声が次々と上がった。

「う、わっ!」
「は?」
「ぎゃっ!」
「あ、あぁっ!」

何かに押されたように次々と落馬する軍人達に馬も驚いて嘶き始め騒然となる。

「大公!」
「エウリル大公!どうか!」
「…煩い」
「雪月花の君に危害は加えません!」
「大公!どうか!」

ど、どーいう事?えっ?俺スパイなの?そんなわけ無いじゃん。なんの陰謀?てゆかフィル魔法使った?キレてるよね?何コレ。

「ふ、ふぃる、俺、」

予想外の展開にさすがに動揺してフィルの腕を掴んだ。

「レオ…」
「フィル、俺、どうなる?」
「レオ、直ぐ迎えに行く。正式な書には公にして動く俺は帝国人として倣う必要がある。だからすまない。すまない。時間をくれ」

フィルはぎゅうとレオを抱き締めた。強く強く抱き締めた。
・・・な、に?
言ってる事がわかるけど理解できなかった。

「大公、引き渡しを」
「どうか」

身体を離しフィルはレオに触れるだけのキスをする。こめかみの傷に手を添えると温かさを感じた。魔術で傷を治した様だった。
見たことが無い怒りと困惑と苦悩のない交ぜになった顔だった。

「…連れて行け」
「フィル!?」

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