俺はいつも拾われている

つちやながる

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約束と共に歩む道

7 夫人たちと真偽

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「失礼します。そろそろバークリー夫人が来られますが、出迎えを」
「レオ、入りますよ」

ミナが執事室から出て来ないレオを呼びに来たがノックをしても返事がない。何かあってはとバルモンクを呼び共に部屋に入る。

ソファの縁に首だけ仰いで座ったまま爆睡しているレオを見て、顔を見合わせホッとするバルモンクとミナ。

「レオ、レオ、昼寝なんて珍しいですなあ。ほら、しっかりしなさい。起きなさい」
「……ぅ、ん?もうそんな時間?」
「バークリー夫人のお出迎えお願いします」
「……うん」

寝起きでぼーっとするレオに苦笑する二人。

『心配の種が多い執事の部下を探している』と話がきて、どこぞの見栄っ張りで甘やかされたワガママな貴族子息が周りを振り回す困った執事。と思いつつ高給に惹かれ面接で受かり雇われてみれば。

美人で皆に心配されてる無自覚執事だと知り複雑な心境のミナ。

「これで五つも歳上とは……」
「何か言いましたかな、ミナ?」
「いいえ、バルモンクさん」



バークリー夫人は早くも二着仮縫いを終わらせ微調整に持参した。見に来たのに殿方は邪魔だと追い出されるバルモンクとフィル。

「さあ、これでどうかしら!」
「まあぁ!これは本当に精霊様だわ!」
「可愛らしいわあっ、ねえ、これもつけませんこと?あっ、こっちの髪飾りは?」

バークリー夫人は友達まで連れて来ていた。
こんなに女性に囲まれるのは久し振りです。

「あの程々でいいです。都にはいかないし、屋敷の近所で楽しむだけなんです」
「ダメよ!皆本気で目立つ祭りこそ気合!」
「そうよ!私達もまた奮発しちゃって」

試着して座って。脱いで着て、これ祭り衣装じゃないのもあるよねこれ。俺、完全着せ替え人形になってるんだけど。

「あ、お茶冷めますし、入れ替えます」

ミナがそれを制し、ポットを奪う。

「私がします。レオさんは衣装が汚れても困りますので座ってて下さい」

「あの、バークリー夫人、これに仮面が付くんですよね」
「そうね、レオ君なら目元だけか片目マスクかしらねえ」

一つの肩で被り着る様々な明度の緑の布が羽毛の様に重なり、非対称ながらもAラインで地につく長さのロングドレス型をしている。腰は枝と花々の冠がモチーフの細いベルトは余りを長く垂らす。そこには花が咲き乱れていた。

「これ女性向けじゃないんですか?」
「精霊様に仮装するのに性別は無くってよ」
「そうよ?皆好き好き似合うのを着るの」
「大公が惚れ惚れするわね!」
「そうよ!これは惚れ直すわよ!」
「可愛さにやられるわよ。楽しみねえ」

「……なんで、アンフィル様、ですか?」

正直そこでフィルの名前が出るとは思わず、ドキッとした。バークリー夫人達は目を交わしてクスクスと笑い合うい、少しばかり小声で話し始めた。

「だって溺愛されてるんでしょ?」
「婚約パーティーしたって聞いたわよ?」
「伴侶なんでしょ?」
「え……」
「……ぶっ」

最後のはミナだ。

「な、なんで婚約パーティー?!」

ど、どーいう事??

「帝国帰った時にしたんでしょう?」
「そうよ、もう皆知ってるわよ?パーティーの間中ずっと手を繋いでたって、もうっレオ君なら大公とお似合いだからいいわぁ!」

手を繋いでたことは事実。だってあの時は離れたくないし離したくなかったんだよ。
思い出したらカーーッと顔に血が集中したのが分かった。

「お、俺、執事だけど婚約も無いし伴侶じゃないです」
「「「キャーーッ!!」」」
「可愛いー!真っ赤よレオ君」
「照れちゃってやだわぁ!」
「違うって、あのっ」

メイドとして待機するミナがニヤッと笑ってる所に目が合った。はだけたシャツにキスマークを見られたのを思い出す。話と共に減っていく茶菓子を冷静に足すミナ。

「え、その、え?皆知ってるって?」

更にカーーッと全身から発熱しそうな感じがして手に汗を握り目を泳がせた。

「雪月花の君に虜だって数年前から噂が凄かったのよ」
「そうよ、必要以上に公務に連れ出さないし、軍内部でしかなかなか会えないって」
「多分、その頃は後継問題だったので……、あの衣装は仮縫いこれでいいですか?」

ご婦人達はうんうんと続きを促す様にレオを見つめる。え、何?仮縫い、は?

「好きなのよね?もう公認なのよ?」
「愛されてるわねえ」
「農家出身で王族に愛されるなんて、なんて夢の様な人生だわぁ。幸せよねえ」
「えっ!?」

ため息混じりに目を輝かせ、いや、最早ギラギラと食いついてレオの話を催促していた。

こ、こわい・・・。

それよりも気になる言葉が。

「……公認?」
「なあに?知らないの?ラルフ総監が承認したって聞いたわよ?」
「え?私は帝が式に参加するって」
「あら、そうなの?」
「それ、違いますから。絶対無いですから」

もうガックリ項垂れるしかなかった。

執務より疲労感が凄いよこれ。俺って執事以外の立ち位置が既に真偽はともかく、そんな事になってるなんて知らなかった。世間には公認なんだ。

公認……。


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