俺はいつも拾われている

つちやながる

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約束と共に歩む道

8 執事という生き方

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「随分と楽しそうだったが」
「……ご婦人達が盛り上がってただけです。これは竜国に提出でいいですか」
「頼む。これもだ」
「はい」

手を出すと腕を掴まれた。

「……何ですか」
「二人きりだが、忘れたのかレオ」
「……言葉遣いですよね。執事はやっぱり、常日頃からこれでいいと思います。主と執事の距離も大事です。アンフィル様」
「今はいい。肩の力を抜け、レオ」
「どういう意味ですか?執事をするのに、そんなに意固地や神経質になってませんよ」

ため息混じりにフィルは話し出す。

「バルが言うんだ。『周りに頼る事を知らない頑固な執事がいつまでたっても自覚せず、いつか倒れそうです。心配で見守る目を増やしたいですな。部下を持ち、総てを抱え込まない仕事の仕方を再度教え直します』とな」

・・・え?

それってやっぱり執事として無理をしてるって思われた?頼るって?バルが今迄一人でやれたのに俺は周りに頼れっていう事?

「レオ、またそうやって考え込む。そんな顔するくらいなら気になるなら聞けばいい」
「手、放してもらえますか」
「レオ」
「俺一人でやれてました。なんで今更仕事を分けるんですか。確かにやる事多くて大変です。バルが一人で出来てたのに何ですか。俺だって頑張ってやって来れました。これからだってもっと効率良くやれる筈です」

フィルは腕を放してくれない。じっと俺を見るから俺も見返す。

「やれる事をやってるのに総てを抱え込まない仕事って何ですか。俺、執事として認められたんじゃ無いんですか」
「執事に拘りすぎだ、レオ」

その一言は衝撃的で、聞いた途端に喉や胸に何かが詰まった気がして息苦しくなる。
執事として頑張って来たのに意味が無い事の様に聞こえた。

フィルの側にいるには執事だと思った。恩を返せると思った。好きだと、愛してると言われて執事として自然と側に立てる事を嬉しく思った。

俺には大事な言葉で職なんだよ?
胸が痛いよフィル。

「拘るのが駄目な意味がわかりません」
「レオ、駄目とは言ってない。執事中心で物を生き方を考え過ぎるな」
「そ、れ、俺を否定することですよ?」

執事中心に生活してきたのに何を今更。何を言ってるのかわからないよ。

「手、放してもらえますか」
「レオ、しっかり話そう」
「朝から寝る前まで執事で生活してきたのに何が生き方の中心だと思ってます?俺は執事です。執事が目標で大事な職なんですよ?」

わかってよ。なんで拘りすぎとか言うんだよ。
鼻水出てきたじゃないか。視界が滲んできた。

「レオ、ソファ座って落ち着こう、な?」

腕を掴んだまま引っ張られる。ここに座れとぐいぐいと腰も持たれる。仕方なくフィルの横に座る。

「レオは俺の執事だ」
「そうです。アンフィル様の執事です」
「これは呪文だ。縛り付けてるんだ」

愛の告白の様な決まり文句の返し言葉になってしまっている事に少し変だとは思うけど呪文?確かにフィルは魔術が使えるらしいけど余程の事がないと使わない。縛り付けるってどういう意味?

「術を使ったってことですか?」
「使ってはないが、この言葉好きだろ?レオが頑張る元凶だ」
「元凶じゃなくて目標で生きる道です」
「バカだな」
「な、なんでですか」

もう、執事が駄目とか俺が駄目とか散々否定されてる気がして来て、更に胸が詰まった。
じわじわと滲み出すのは涙だった。

「泣くなよ、泣くな。レオ」

フィルは俺の頭を胸に抱いたけど、もう訳がわからなかった。涙は胸が痛くて息苦しくて止まらなかった。

「俺が悪かった。俺が原因だ」

なにそれ、執事になっちゃ駄目だった?
もう被害妄想じみてきた。わかんないよ、ただひたすら涙が出てくるんだ。どうすればいいんだよ。

「フィル。俺は、なに?」

胸の中でフィルの服を鼻水と涙にまみれて聞いた。

「俺のレオだ。可愛くて仕方ない。愛してる」
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