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約束と共に歩む道
番外編 祭り最終日2
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ミナは頬を両手でむうっと挟み、新たな展開に胸を躍らせた。
(な、なんなの、このいい男たち!)
軍服の青年二人に精品たる老齢執事。飛びキツネ仮装の小柄なレオ。そして白いシャツを羽織るだけで鍛えなくとも締まった身体がみえるアンフィル。
「玄関は音が響く。おかげで目が醒めると言うものだ」
「ははっ、それは気付きませんでしたなぁ」
わざとらしい態度のバルモンクに不機嫌に目を細めて笑むフィルに、玄関ホールは一気に温度が下降した。
「レオ、今日は俺と出掛けるのか?それとも執事仲間と出掛けるのか?」
「……えっと、午前午後にわけるのダメ?」
少し間を置いて答えたレオに無表情のフィルは顎を少し上げる。
「ふーん?」
(あ、あ、荒ぶる旦那様キターー!)
ミナの握力で、紙袋に入った母のスコーンは形がどんどん崩れていく。
その荒ぶる主人の視線はどうやらレオの友人達に向いている様だった。
視線の先は勿論繋がれた手だ。リックとニルは予想外のアンフィルの出現に、手を繋いだことは忘れて集中していた。
「あっ、その、出掛ける予定があったのなら俺たちは帰ります。約束もせず突然来たのはこっちなので」
リックは非を訴える。
「えー、でもレオ君は行きたいと思ってるんですよ、大公。二時間以内でどうですか」
「ぉ、おい、ニル」
ニルは遠慮なく告げる。その言葉に眉間にシワを刻みレオに視線をやる。
「レオ」
「うん。二時間だけいい?」
「アンフィル様、今日はロズゴらの小隊も警邏ですぞ」
「……美味しいもの食べて来い。二人も普段からレオに良くしてくれて感謝している。礼を言う。昼からは俺と約束だからな、レオ」
苦笑してフィルはレオに近づき頬を手の甲でスッと撫でる。レオは無意識に少し顔を傾け手にすり寄った。
(……いいわぁ)
二階のミナはレオの自然な甘え動作にきゅんと来たのは言うまでもない。
「うん。有難う」
「……ああ」
「アンフィル様、湯が沸いてますが。昨夜は酒も入り過ぎたしサッパリしましょうぞ」
「じゃレオ君借りますんで!行ってきます」
「お、ぉいニル!すみません、大公!」
二人の絡み合う甘い視線に水を差す様に動き出す男達。
「あはは、フィル、行ってきます」
フィルとバルは軍服に捕縛され連行されている様にしか見えない狐っ子を見送った。
「いい選択ですな」
「縛り付ける気はない。あれは俺が好きだし離れないだろ?俺のだ」
「左様でございますか」
「バル爺」
「おっと。アンフィル様、今日はこれ以上、惚気に付き合い切れませんぞ。酒の抜けが悪くなりましてな、この頭痛は辛いものが」
「はっ、お前もか。さっきサモンと廊下ですれ違ったが同じだったな」
フィルは微笑し小さな袋をバルに差し出す。
「常備薬より強い丸薬だ。効くぞ」
「おお、それは助かりますな。サモンにも持って行きましょう。では後ほど」
「ああ。俺も湯を貰おう」
浴室に向きを変えたフィルはピタと足を止めて顔をあげた。
「ミナ、バルとサモンに渋い茶でも入れてやってくれ」
「えっ」
ミナは思わず声が出た。
「熱い視線を誰に送っているのかは知らんが休みの日はきちんと休め。また明日からレオが無理しない様頼むぞ」
「はいっ。任せて下さいっ!」
頼もしい返事に満足しフィルは奥に消えた。
階級も気にせず気兼ねなく接する屋敷の主、主への信頼が目に見える老齢元執事長、幼く見えるが気も強くやり手の執事長レオ、その周りを護るように付き添う軍服達。レオを敵視する執事達の存在。
(どこでカップリングしてもいけるわぁ!!萌え要素満載なこの屋敷。決めた。あたし、一生ここで旦那様にお仕えする!レオさんを見守るのもあたしの仕事、もう使命のような気がしてきたわ)
ミナは新たな決意に紙袋をぐっと握り、最後に形の残ったスコーンを握り潰した。
「あ、お茶いれにいかなくちゃ」
「フィル?寝てる?」
珍しく長い足を重ねてテーブルの上に乗せ、ソファに凭れ目を閉じたフィルの側に寄る。
「わ」
ぐっと腕を掴まれ引かれたレオはバランスを崩してフィルの腕の中に容易く囚われた。
フッと口角を上げ開眼するフィルを見上げ、苦笑して横に座り直す。
「起きてたんだ」
「目を休みていただけだ。早かったな。ちゃんと楽しめたのか」
「楽しかったよ。ここ数年で出来た店や、祭り期間の噂のスポット教えてくれたり連れて行ってくれた。それでフィルと行きたいとこが出来たんだ。ヴァンチャーチの塔の上から街を眺めたい。あとで行こうよ」
マスクを外した仮装のままのレオ。この数日は祭りに浮かれ普段より口数が増え、幼く見えた。
「……団体の拝堂か」
「今は団体は無く街の管理で出入り自由だって。塔は展望台でジンクスがあるみたい。それに丘に行かなくても祭りの緑が一望出来るって」
レオの発言に満足そうに笑むフィルを不思議に思い、真顔になる。
「……なに」
「初めて誘われた気がするな」
「そうだっけ」
「ジンクスとは何だ」
「誓いの塔って言って祭り期間に行って告白する場所になるらしいよ。末長い幸福、深愛を得るとか。試そうよ」
「ははっ、試すのか。もう手に入れたんじゃないのか。それに先に塔に行く前にネタをばらすのはいいのか?」
「ふふん」
レオは鼻で笑い立ち上がり、機嫌よく行こうとばかりにフィルの手を引く。
「何だ。珍しい事を……酒飲んだな?」
「ちょっとだけだよ。行こうよ」
それはレオの希望であり、素直に言葉に出来ない告白でもあった。
フィルはそんな事だろうと微笑み、ほろ酔いのレオに引かれるままついて行く。
「リックとニルに礼を言わねばな」
「え?俺、言っといたよ?」
(な、なんなの、このいい男たち!)
軍服の青年二人に精品たる老齢執事。飛びキツネ仮装の小柄なレオ。そして白いシャツを羽織るだけで鍛えなくとも締まった身体がみえるアンフィル。
「玄関は音が響く。おかげで目が醒めると言うものだ」
「ははっ、それは気付きませんでしたなぁ」
わざとらしい態度のバルモンクに不機嫌に目を細めて笑むフィルに、玄関ホールは一気に温度が下降した。
「レオ、今日は俺と出掛けるのか?それとも執事仲間と出掛けるのか?」
「……えっと、午前午後にわけるのダメ?」
少し間を置いて答えたレオに無表情のフィルは顎を少し上げる。
「ふーん?」
(あ、あ、荒ぶる旦那様キターー!)
ミナの握力で、紙袋に入った母のスコーンは形がどんどん崩れていく。
その荒ぶる主人の視線はどうやらレオの友人達に向いている様だった。
視線の先は勿論繋がれた手だ。リックとニルは予想外のアンフィルの出現に、手を繋いだことは忘れて集中していた。
「あっ、その、出掛ける予定があったのなら俺たちは帰ります。約束もせず突然来たのはこっちなので」
リックは非を訴える。
「えー、でもレオ君は行きたいと思ってるんですよ、大公。二時間以内でどうですか」
「ぉ、おい、ニル」
ニルは遠慮なく告げる。その言葉に眉間にシワを刻みレオに視線をやる。
「レオ」
「うん。二時間だけいい?」
「アンフィル様、今日はロズゴらの小隊も警邏ですぞ」
「……美味しいもの食べて来い。二人も普段からレオに良くしてくれて感謝している。礼を言う。昼からは俺と約束だからな、レオ」
苦笑してフィルはレオに近づき頬を手の甲でスッと撫でる。レオは無意識に少し顔を傾け手にすり寄った。
(……いいわぁ)
二階のミナはレオの自然な甘え動作にきゅんと来たのは言うまでもない。
「うん。有難う」
「……ああ」
「アンフィル様、湯が沸いてますが。昨夜は酒も入り過ぎたしサッパリしましょうぞ」
「じゃレオ君借りますんで!行ってきます」
「お、ぉいニル!すみません、大公!」
二人の絡み合う甘い視線に水を差す様に動き出す男達。
「あはは、フィル、行ってきます」
フィルとバルは軍服に捕縛され連行されている様にしか見えない狐っ子を見送った。
「いい選択ですな」
「縛り付ける気はない。あれは俺が好きだし離れないだろ?俺のだ」
「左様でございますか」
「バル爺」
「おっと。アンフィル様、今日はこれ以上、惚気に付き合い切れませんぞ。酒の抜けが悪くなりましてな、この頭痛は辛いものが」
「はっ、お前もか。さっきサモンと廊下ですれ違ったが同じだったな」
フィルは微笑し小さな袋をバルに差し出す。
「常備薬より強い丸薬だ。効くぞ」
「おお、それは助かりますな。サモンにも持って行きましょう。では後ほど」
「ああ。俺も湯を貰おう」
浴室に向きを変えたフィルはピタと足を止めて顔をあげた。
「ミナ、バルとサモンに渋い茶でも入れてやってくれ」
「えっ」
ミナは思わず声が出た。
「熱い視線を誰に送っているのかは知らんが休みの日はきちんと休め。また明日からレオが無理しない様頼むぞ」
「はいっ。任せて下さいっ!」
頼もしい返事に満足しフィルは奥に消えた。
階級も気にせず気兼ねなく接する屋敷の主、主への信頼が目に見える老齢元執事長、幼く見えるが気も強くやり手の執事長レオ、その周りを護るように付き添う軍服達。レオを敵視する執事達の存在。
(どこでカップリングしてもいけるわぁ!!萌え要素満載なこの屋敷。決めた。あたし、一生ここで旦那様にお仕えする!レオさんを見守るのもあたしの仕事、もう使命のような気がしてきたわ)
ミナは新たな決意に紙袋をぐっと握り、最後に形の残ったスコーンを握り潰した。
「あ、お茶いれにいかなくちゃ」
「フィル?寝てる?」
珍しく長い足を重ねてテーブルの上に乗せ、ソファに凭れ目を閉じたフィルの側に寄る。
「わ」
ぐっと腕を掴まれ引かれたレオはバランスを崩してフィルの腕の中に容易く囚われた。
フッと口角を上げ開眼するフィルを見上げ、苦笑して横に座り直す。
「起きてたんだ」
「目を休みていただけだ。早かったな。ちゃんと楽しめたのか」
「楽しかったよ。ここ数年で出来た店や、祭り期間の噂のスポット教えてくれたり連れて行ってくれた。それでフィルと行きたいとこが出来たんだ。ヴァンチャーチの塔の上から街を眺めたい。あとで行こうよ」
マスクを外した仮装のままのレオ。この数日は祭りに浮かれ普段より口数が増え、幼く見えた。
「……団体の拝堂か」
「今は団体は無く街の管理で出入り自由だって。塔は展望台でジンクスがあるみたい。それに丘に行かなくても祭りの緑が一望出来るって」
レオの発言に満足そうに笑むフィルを不思議に思い、真顔になる。
「……なに」
「初めて誘われた気がするな」
「そうだっけ」
「ジンクスとは何だ」
「誓いの塔って言って祭り期間に行って告白する場所になるらしいよ。末長い幸福、深愛を得るとか。試そうよ」
「ははっ、試すのか。もう手に入れたんじゃないのか。それに先に塔に行く前にネタをばらすのはいいのか?」
「ふふん」
レオは鼻で笑い立ち上がり、機嫌よく行こうとばかりにフィルの手を引く。
「何だ。珍しい事を……酒飲んだな?」
「ちょっとだけだよ。行こうよ」
それはレオの希望であり、素直に言葉に出来ない告白でもあった。
フィルはそんな事だろうと微笑み、ほろ酔いのレオに引かれるままついて行く。
「リックとニルに礼を言わねばな」
「え?俺、言っといたよ?」
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