俺はいつも拾われている

つちやながる

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未来へと歩む道

13、これも見本に、なるわけがない

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首筋をねっとり舐められたのが分かり鳥肌がたつ。掴んだ腕に爪を食い込ませる気で力を込め、頭を起こしてノールの肩に思い切り噛みついた。

「いでででっ、このクソガキッ」
「大人気ない嫌がらせですね」

暴れるだけ相手もアドレナリンが出るから冷静が一番だ。俺だって普段笑わない執事で、雪月華とか言われてんだ。何回も死んで生きてきたし、こんな事なんでもない。静かに、冷静に対応すればいい。

ダメなら現実を受け入れるしかない。

レオの言葉にノールは顔を上げニヤリと笑みフィルの噛み跡が残る鎖骨から首の付け根辺りをとんっと触る。

「嫌がらせだとわかってるのか。まあ合格点だな。それでもその生意気な態度は無いな。しっかし、本当噛み跡あんのな」
「……何が合格なのか意味がわかりません。ズボン履きたいし、いい加減重いんで退いて下さい」

本当にただの嫌がらせのようだ。内心ホッとしてノールを見返す。これ以上何をする訳でもなくレオを見つめていた。

「涙目で強がっちゃってまあ、本当に企んでないのか?あいつはエゲツないだろ。お前をダシに何やろうってんだ」

・・・フィル。

どれだけ過去に悪さしたんデスカ。同じ一族二人に色々愚評を貰えるなんて凄いデスネ。そんなに基本の性格は歪んで尖ってトリッキーなんですか?そんな片鱗余り感じてなかったんだけど?企むってなんのことだ。

「しつこいです。知らないって言ってるじゃないですか。噛まれた影響と変化が知りたいだけなんです」
「影響って、そりゃお前……」

ノールは真顔でしっかり身体を起こしてレオの上に座ったが全体重が乗ったらしい。

「いっ、痛い!降りて!」
「あ、ああ折れるな。悪りぃ。……あぁ~?そういう事か?」

レオはやっと解放され急いでズボンを履く。

どういう事か俺はさっぱりだよ!

レオは少しずつノールと距離を開き、着衣を整えて触られない様に警戒して立つ。

「どういう事ですか」
「アンフィルに聞けよ。言っとくけどな、俺はいい感じにボンッと出るとこ出た姉ちゃんが好きなんだ。お前の様な細っこい子供か大人かわからんのは好みじゃないぞ」
「そーですか。手の込んだ嫌がらせ有難うございます」
 
チクショウ!好きで細いんじゃないんだよ。
可愛いし細っこいのは今世のフィル専用チートなんだよ!・・・俺、何言ってんだ。

視線を感じてノールを見た。

「何ですか。あなた方はフィルを嫌ってるのは理解しました。伝鳥飛ばしてフィルが迎えに来るってのも嘘、」
「……そこまで底辺じゃねえよ。見ろよ」

くいと顎で示すノールの視線は道の方角だ。
徐々に大きくなる人の形は走って向かってくる。フィルだ。救世主とばかりに思わず名前を叫び、はやる気持で足が自然に駆け出していた。

「フィル!」

乾いたズボンが濡れようが小川を渡って俺の大好きなフィルの腕に飛び込んだ。

ぎゅうぎゅう抱きつかずにいられるかってんだ。背後には得体の知れないノールさんがいる。安心出来るのはこの腕の中だけだ。

「レオ、大丈夫だな」
「心配かけてごめん」
「素直で結構。怪我は」
「おかげ様で擦り傷だけ。有難う」
「どういたしまして」

見上げるとフィルも身体を斜めに顔が見える角度で俺を見ていた。眉が下がってるのって珍しい。本当に心配かけたみたいだ。

「おいおい、二人の世界作んなよ。たまたまいい場所にいたけど毎回こうは行かねえぞ」
「どうせ暇だろ。報酬弾むと言ったら乗ったのはオマエだ。その分は仕事しろ」
「フラッグの嫌がらせ程々阻止してんだろ。感謝しろよ。あー、酒の席のノリで安請け合いするもんじゃないな。何でまな板胸の恋人なんだよ。旨い汁も吸えやしねえ」

・・・まな板胸。

どゆこと?ノールさんもフィルが嫌いなんじゃないの?フラッグさんの嫌がらせって何?

「ははっ、変な顔もできんじゃねーか。盗賊は無理だったがその後はスムーズな旅だろ。ちったあ俺に感謝しろクソガキ」
「えっ?!」
「ノールは軍関係で昔馴染みだ。表舞台にいる同族の一人。口は悪いが酒があれば仕事をする。エリアルからフラッグが絡んで煩いと連絡があった。昔からそういう時は決まって俺に何かしらしてくるんだ」
「あれは粘着質な根暗貴族。それに比べアンフィルは独裁型。どっちもやだねえ。レオも一癖あるのがわかった。噂以上だな」
「そうか?可愛いだろ」
「あーやだやだ」

ま、また俺の知らないトコでそんな事になってたんだ。足の指を蚊に食われたみたいにモヤモヤするんだけど。

フィルとノールさんの顔を見比べるしか出来なかった。二人と目が会うと微妙な苦笑をされる。

それにあの嫌味ってどういう意図で言ったのかな。本音?ただの嫌がらせのネタ?

「……えーと」
「これもマネジメントだな」
「……は?」
「おいおい、この場合戦略的がつくだろ」
「ノールが使役される側だけどな」
「へいへい」

・・・イライラするの間違いだ。

「……何言ってんの?バルもフィルも大体そうだよね。後出しって酷くない?小出しして最後で全開にするよね。事情くらい教えといて貰わないと執事として側仕えとして困るし全く役に立てないんだけど?信頼する者に情報開示は必要なんじゃないかな!」

フィルとノールはレオの思わぬ大声に目が点になっていた。

そりゃ山滑り落ちたのは俺の不注意だけど。
これはこれ、それはそれって?
表舞台の一族って俺から聞いて全把握するとか執事義務なの?そんな名簿ないだろ。せめて近しい人くらい紹介ないし情報くれるもんじゃないの?聞かず調べずの俺が悪い?

側にいるのに、いつの間にか事態進行して置いてけぼりって意味わからないよ!

「レオ、怒ったか」
「口尖ってんな」
「知りません」
「レオ」
「おおぉ、拗ねたのか。コレ拗ねたのか?」
「駅どっち!?」

憤慨したレオは一人早足で道を進んでいくのだった。


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