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未来へと歩む道
15、不機嫌、気不味い、自己中
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フィルが初めて怒った。怒ってるというのは不適切だとしても不機嫌だ。
ノールさんが『何か企んでる』としつこかったのも、この旅の違和感があるのも一因。
いつもサプライズだとか最後に何か残してるのが帝国の魔人族の悪い癖だ。
フィルが何も知らない筈が無いと思った事も大まかに話したら不機嫌になった。
『レオは聡い。でもそれは相手の立場で考えたり話し合う余地はあるか?断言は困るな』
苦笑したよね。笑って流したよね。
聞いたのに説明も弁明も無かったんだ。
隠してる。この旅は何かある。
『追々話すから旅を楽しまないか』
追々話す?聞きたいから話したのに。蒸し返しても同じ返答ばかり。喧嘩したい訳じゃないから俺は我慢した。話してくれると約束したし、休暇の旅なんだと楽しむ事を優先すると二人で決めた。
汽車の中も降りてからも無言が増えた。
重い。そう感じるのは俺だけかな。
「フィル、待って」
少し考えると歩幅が小さくなっていた。声を掛けると先に行くフィルは振り返り待ってくれる。追い付くと頭をやんわり撫でて、笑ってくれる。ただ、フィルの言葉数が減った。
距離が出来た気がする。
そう感じるのは俺だけかな。
「ノールさんは?」
「別行動だ」
「そう」
話が続かない。拾われた時も、こんな事は全然無かった。
構い倒し、甘やかすフィル。考えを溜め込むなっていっただろ。聞きたい事を聞いたって良いじゃないか。何でこの旅に限って駄目なんだよ。ノールさんの言ってた企みというやつ?フィルはそんな事は、しなくもないけど俺が知ると何かが不都合って事だよね。
横を歩くフィルを見上げると視線に気付き、フッと微笑んでくれる。
でもそれだけ。
いつもの様に優しい言葉は無い。口数が減るなんて初めてだ。不機嫌としか言いようが無いと思う。
旧帝都は石造りの古き良き街並みだった。観光よりもフィルの横顔が気になって仕方がなかった。時々見上げては気付かれる前に正面を向くのを繰り返す。
段々胸が苦しくなって来た。気分の問題だ。多分眉も八の字になってる。
いつもどうやって話してたかな。
何話してたんだっけ。
フィルがどう返して、俺がどうやって答えたら笑ってくれたっけ。
考えるほどわからなくなって来た。
・・・胸が痛い気がした。
徒歩で到着した場所は誰かの屋敷だった。石造りでいて重厚な造りの二階建は経年変化で薄汚れた石に蔓草が一面を覆い、歴史を感じさせた。
「メルダ、いるか。エウリルだ」
アンフィルがドアノッカーを鳴らすと暫くして大きな木製のドアが開いた。
「暫く振りね」
「眷属について確認したい」
「あらそう。入ったら?」
招き入れるメルダという女性は、腰までの白髪でいて顔は二十代に見えた。彫りの深い目元は大きなブルーアイ。誰もが惹かれる妖艶な容姿だった。
「この子は?」
「……執事だ」
「レオと申します」
「ふふっ、可愛らしいわね。入りなさい」
「……失礼します」
執事。確かに俺は執事。間があったのは何?それに眷属について聞きたいじゃなくて確認って言った。フィルはやっぱり知っている。
何も知らないなんて事は無かったんだ。俺に教えられない事は必要ないと聞かなかった。言われるまで待つのも執事だから主をたてるのも当たり前だ。恋人だからって何もかも総てを知れる訳じゃ無い。わかってる。
でも後から言われて知って傷つくのも俺なんだ。それは嫌なのに。色々矛盾だらけだ。
俺、馬鹿だ。
何かまた自己中心的になってないか?
フィルとメルダは向い合いソファに腰掛け、親しいのか挨拶もなく本題に入った。
執事といわれた俺は、主の許可を確認してから同室に立てる。メルダさんの許可もあり、離れたカウチに座った。
「それで?」
「一族以外の身体変化について知りたい」
「又聞きしか知らないわ」
「それで良い」
「そうね。寿命が延びたりそうで無いのもいて、主が絶対となる者もいたりそうで無かったり。多様で不確かね」
「個体で違うか」
「そう聞いたわ」
「……そうか」
「用はそれだけ?泊まっていくでしょ?」
「まあ、そうだな」
フィルはその答えで満足したのか、それ以上聞かなかった。
個体で違う。何の答えにもなってない気がした。俺はどうなるんだろう。やっぱりこの旅は必要無かった気がしてきた。
「…、ォ、……レオ!」
「っ、はい?」
考え込んでフィルが呼んでたのも気付かなかった。大きな呼名に顔を上げて返事をした。
「部屋へ案内するわ。あなたはこの町初めてでしょ?うちの者に案内させましょう」
「え、あの」
観光ならフィルとしたい。これは休暇だし。今日まで二人で旅してきたし。気まずくても一緒にいたい。
目の前に、この屋敷の従僕なのか男が立ちはだかる。
「では、こちらへどうぞ」
「はい?」
フィルは?
振り向くとメルダさんと顔を寄せ合い親しげに何かを話していた。俺に見向きもしなかった。
胸が変だ。
チクチクする。
「荷を置いて、少し休んだら案内しますよ。さあ行きましょう」
「え、あの、」
ぐいぐいと男に引っ張られ部屋を出ることになる。執事とはいえ普通の客間を一人で使わせてくれるらしい。また呼びに来ると言った従僕はシューと名乗った。
荷を置いて、ベッドに倒れ込んだ。
胸がチクチクする。
これ知ってる。
悲しいとか傷付くとなるやつ。
ジワジワと視界が滲むのがわかった。
何故かフィルが遠く感じた。
ノールさんが『何か企んでる』としつこかったのも、この旅の違和感があるのも一因。
いつもサプライズだとか最後に何か残してるのが帝国の魔人族の悪い癖だ。
フィルが何も知らない筈が無いと思った事も大まかに話したら不機嫌になった。
『レオは聡い。でもそれは相手の立場で考えたり話し合う余地はあるか?断言は困るな』
苦笑したよね。笑って流したよね。
聞いたのに説明も弁明も無かったんだ。
隠してる。この旅は何かある。
『追々話すから旅を楽しまないか』
追々話す?聞きたいから話したのに。蒸し返しても同じ返答ばかり。喧嘩したい訳じゃないから俺は我慢した。話してくれると約束したし、休暇の旅なんだと楽しむ事を優先すると二人で決めた。
汽車の中も降りてからも無言が増えた。
重い。そう感じるのは俺だけかな。
「フィル、待って」
少し考えると歩幅が小さくなっていた。声を掛けると先に行くフィルは振り返り待ってくれる。追い付くと頭をやんわり撫でて、笑ってくれる。ただ、フィルの言葉数が減った。
距離が出来た気がする。
そう感じるのは俺だけかな。
「ノールさんは?」
「別行動だ」
「そう」
話が続かない。拾われた時も、こんな事は全然無かった。
構い倒し、甘やかすフィル。考えを溜め込むなっていっただろ。聞きたい事を聞いたって良いじゃないか。何でこの旅に限って駄目なんだよ。ノールさんの言ってた企みというやつ?フィルはそんな事は、しなくもないけど俺が知ると何かが不都合って事だよね。
横を歩くフィルを見上げると視線に気付き、フッと微笑んでくれる。
でもそれだけ。
いつもの様に優しい言葉は無い。口数が減るなんて初めてだ。不機嫌としか言いようが無いと思う。
旧帝都は石造りの古き良き街並みだった。観光よりもフィルの横顔が気になって仕方がなかった。時々見上げては気付かれる前に正面を向くのを繰り返す。
段々胸が苦しくなって来た。気分の問題だ。多分眉も八の字になってる。
いつもどうやって話してたかな。
何話してたんだっけ。
フィルがどう返して、俺がどうやって答えたら笑ってくれたっけ。
考えるほどわからなくなって来た。
・・・胸が痛い気がした。
徒歩で到着した場所は誰かの屋敷だった。石造りでいて重厚な造りの二階建は経年変化で薄汚れた石に蔓草が一面を覆い、歴史を感じさせた。
「メルダ、いるか。エウリルだ」
アンフィルがドアノッカーを鳴らすと暫くして大きな木製のドアが開いた。
「暫く振りね」
「眷属について確認したい」
「あらそう。入ったら?」
招き入れるメルダという女性は、腰までの白髪でいて顔は二十代に見えた。彫りの深い目元は大きなブルーアイ。誰もが惹かれる妖艶な容姿だった。
「この子は?」
「……執事だ」
「レオと申します」
「ふふっ、可愛らしいわね。入りなさい」
「……失礼します」
執事。確かに俺は執事。間があったのは何?それに眷属について聞きたいじゃなくて確認って言った。フィルはやっぱり知っている。
何も知らないなんて事は無かったんだ。俺に教えられない事は必要ないと聞かなかった。言われるまで待つのも執事だから主をたてるのも当たり前だ。恋人だからって何もかも総てを知れる訳じゃ無い。わかってる。
でも後から言われて知って傷つくのも俺なんだ。それは嫌なのに。色々矛盾だらけだ。
俺、馬鹿だ。
何かまた自己中心的になってないか?
フィルとメルダは向い合いソファに腰掛け、親しいのか挨拶もなく本題に入った。
執事といわれた俺は、主の許可を確認してから同室に立てる。メルダさんの許可もあり、離れたカウチに座った。
「それで?」
「一族以外の身体変化について知りたい」
「又聞きしか知らないわ」
「それで良い」
「そうね。寿命が延びたりそうで無いのもいて、主が絶対となる者もいたりそうで無かったり。多様で不確かね」
「個体で違うか」
「そう聞いたわ」
「……そうか」
「用はそれだけ?泊まっていくでしょ?」
「まあ、そうだな」
フィルはその答えで満足したのか、それ以上聞かなかった。
個体で違う。何の答えにもなってない気がした。俺はどうなるんだろう。やっぱりこの旅は必要無かった気がしてきた。
「…、ォ、……レオ!」
「っ、はい?」
考え込んでフィルが呼んでたのも気付かなかった。大きな呼名に顔を上げて返事をした。
「部屋へ案内するわ。あなたはこの町初めてでしょ?うちの者に案内させましょう」
「え、あの」
観光ならフィルとしたい。これは休暇だし。今日まで二人で旅してきたし。気まずくても一緒にいたい。
目の前に、この屋敷の従僕なのか男が立ちはだかる。
「では、こちらへどうぞ」
「はい?」
フィルは?
振り向くとメルダさんと顔を寄せ合い親しげに何かを話していた。俺に見向きもしなかった。
胸が変だ。
チクチクする。
「荷を置いて、少し休んだら案内しますよ。さあ行きましょう」
「え、あの、」
ぐいぐいと男に引っ張られ部屋を出ることになる。執事とはいえ普通の客間を一人で使わせてくれるらしい。また呼びに来ると言った従僕はシューと名乗った。
荷を置いて、ベッドに倒れ込んだ。
胸がチクチクする。
これ知ってる。
悲しいとか傷付くとなるやつ。
ジワジワと視界が滲むのがわかった。
何故かフィルが遠く感じた。
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