14 / 71
せかいはやっぱり広かった
しおりを挟む
「起きてください、雨です、雨」
「………」
寝入った所を起こされた魔狼は不機嫌にクロウを睨む。
雨がなんだというのだ。住処は霧の森だ。天候なんて気にした事もなかった。俺の毛は撥水だ。
天気が悪い位で起こすなと文句のひとつでもと思い男を見ると、びしょ濡れだった。
「なんでそんなに濡れてる」
「え、防御結界に多重構造掛けを試作して、あと召喚に転移組み込んだらどうなるかと夢中で」
「…阿呆だな」
ほんと阿呆だ。街道沿いに漁村がある半島を目指し現時点は手前の高台の森にいる。
雨避けできる場所は無い。巨木の下でさえ大粒の雨は遠慮なく落ちて来る。
仕方ない。
魔狼は犬の姿からジワジワと本来の姿に戻る。
ふさふさと全身をまとう黒緑の毛に大きな体。しっかりとした脚。足先には鋭利な爪。尾もふさふさでよく見るとお先はほんの少しだけ白い。目は澄んだ金色。雄々しさの中。野生の獣で魔物なのに品さえ感じる姿だった。
クロウは勿論見惚れた。
希少な黒鉄魔狼だ。
「…乗れ」
「は?」
「いいから乗れ」
「あ、はい失礼します」
クロウは目を輝かせて滴る服のまま魔狼に跨り、うつ伏せしがみついた。
「はしるぞ」
「は、速い、速いですね!」
地面を蹴り疾走する。クロウは流れる景色の早さに空気の重さに風に驚いた。
「お前を乗せているから遅い方だ」
「そ、そうですか?」
「まだまだ早く走れるぞ」
「は、ははは!」
少し早く土を空を蹴っってみた。魔術師が笑うけど何がそんなに面白いのかはわからなかった。
思ったより長引きそうな旅にげんなりする。
昼間は犬の姿で歩き、森があれば狩りに入る。町があれば宿屋にクロウだけ泊まり俺は厩で寝る。その場合食事は男の奢りだ。焼いた肉は初めて食べたが中々面白い味だった。
数百年振りに森から出た。この男に出されたのだが。俺は前世が人だけど今は獣だ。本能が強い魔獣なのに、どうした事か気が付けば人間のペースに合わせているでは無いか。
それに気付いてまたげんなりする魔狼だった。
「お前いいかげん馬買え」
徒歩だから進まないし進まないいんだよ。
「魔狼様に乗れるじゃないですか」
俺は脚を止めた。
「うわああぁっ!」
「あ」
急ブレーキだった。男が反動で飛んでった。
まあ魔術師だ。怪我しても自分で直せるだろ。
そうだ。なんでフィルを背にのせなきゃいかんのだ。なんで俺も当たり前のように優しく乗せてんだ。
んんん?と首を捻ってたら、木立の間からクロウが半泣きで帰って来た。
「酷いですよ魔狼様!腕骨折したじゃないですか!直したけど痛すぎますよ!」
「俺に乗るとそうなる。危ないから馬を買え」
「ええぇ」
「着いた。もう村が見えるぞ」
潮の香りがする。鼻が利くから少し生臭い感じだ。村の方に顔をふりあごで示した。納得いかない顔をして魔術師は漁村を確認する。
「思ったより大きい村ですね」
「馬が買えそうだな」
「……そうですね」
半目で俺を見るクロウ。
なんだ文句あんのか。
俺はスルスルと小型化して黒犬になった。フンっと鼻息荒く森から街道に出る。
ん?
村の方からくる臭いに脚が止まった。
嗅覚で左右確認し人気が無いので声を出す。
「地図を確認してくれ。方角間違ったかも」
「え、でも村がありますよ?」
「いいから確認しろ」
「えーっと…間違ってませんよ。次の村はウィータです」
地図をくるりと回したり地形を確認して自信満々に答えた。
「海が近いのに家畜が多いのか」
「え?普通に漁村と聞いてますが、なんですかさっきから」
「人の臭いが殆どしないで獣の臭いばかりの村だぞ」
クロウは「ん?」という顔をした。俺もつられて首を傾げたら、ひらめいた様だ。
「ああ。魔狼様は人里を知らないんですよね。ウィータの村はこの大陸では古くて、村人も古代種の血を引く獣人族がいます。だから人間の臭いが少ないんじゃないですか?」
獣人ってあれか。けもみみのっての。俺がMMOアバターで使ってたヤツか?
「耳ついてるやつか」
「そうですね」
「尻尾も」
「付いてますね」
「そうか。納得したぞ」
「では行きましょう」
異世界でまさかケモミミ獣人に会えるとは思わなかったぞ。
俺は少し足取り軽く村に向かった。
「………」
寝入った所を起こされた魔狼は不機嫌にクロウを睨む。
雨がなんだというのだ。住処は霧の森だ。天候なんて気にした事もなかった。俺の毛は撥水だ。
天気が悪い位で起こすなと文句のひとつでもと思い男を見ると、びしょ濡れだった。
「なんでそんなに濡れてる」
「え、防御結界に多重構造掛けを試作して、あと召喚に転移組み込んだらどうなるかと夢中で」
「…阿呆だな」
ほんと阿呆だ。街道沿いに漁村がある半島を目指し現時点は手前の高台の森にいる。
雨避けできる場所は無い。巨木の下でさえ大粒の雨は遠慮なく落ちて来る。
仕方ない。
魔狼は犬の姿からジワジワと本来の姿に戻る。
ふさふさと全身をまとう黒緑の毛に大きな体。しっかりとした脚。足先には鋭利な爪。尾もふさふさでよく見るとお先はほんの少しだけ白い。目は澄んだ金色。雄々しさの中。野生の獣で魔物なのに品さえ感じる姿だった。
クロウは勿論見惚れた。
希少な黒鉄魔狼だ。
「…乗れ」
「は?」
「いいから乗れ」
「あ、はい失礼します」
クロウは目を輝かせて滴る服のまま魔狼に跨り、うつ伏せしがみついた。
「はしるぞ」
「は、速い、速いですね!」
地面を蹴り疾走する。クロウは流れる景色の早さに空気の重さに風に驚いた。
「お前を乗せているから遅い方だ」
「そ、そうですか?」
「まだまだ早く走れるぞ」
「は、ははは!」
少し早く土を空を蹴っってみた。魔術師が笑うけど何がそんなに面白いのかはわからなかった。
思ったより長引きそうな旅にげんなりする。
昼間は犬の姿で歩き、森があれば狩りに入る。町があれば宿屋にクロウだけ泊まり俺は厩で寝る。その場合食事は男の奢りだ。焼いた肉は初めて食べたが中々面白い味だった。
数百年振りに森から出た。この男に出されたのだが。俺は前世が人だけど今は獣だ。本能が強い魔獣なのに、どうした事か気が付けば人間のペースに合わせているでは無いか。
それに気付いてまたげんなりする魔狼だった。
「お前いいかげん馬買え」
徒歩だから進まないし進まないいんだよ。
「魔狼様に乗れるじゃないですか」
俺は脚を止めた。
「うわああぁっ!」
「あ」
急ブレーキだった。男が反動で飛んでった。
まあ魔術師だ。怪我しても自分で直せるだろ。
そうだ。なんでフィルを背にのせなきゃいかんのだ。なんで俺も当たり前のように優しく乗せてんだ。
んんん?と首を捻ってたら、木立の間からクロウが半泣きで帰って来た。
「酷いですよ魔狼様!腕骨折したじゃないですか!直したけど痛すぎますよ!」
「俺に乗るとそうなる。危ないから馬を買え」
「ええぇ」
「着いた。もう村が見えるぞ」
潮の香りがする。鼻が利くから少し生臭い感じだ。村の方に顔をふりあごで示した。納得いかない顔をして魔術師は漁村を確認する。
「思ったより大きい村ですね」
「馬が買えそうだな」
「……そうですね」
半目で俺を見るクロウ。
なんだ文句あんのか。
俺はスルスルと小型化して黒犬になった。フンっと鼻息荒く森から街道に出る。
ん?
村の方からくる臭いに脚が止まった。
嗅覚で左右確認し人気が無いので声を出す。
「地図を確認してくれ。方角間違ったかも」
「え、でも村がありますよ?」
「いいから確認しろ」
「えーっと…間違ってませんよ。次の村はウィータです」
地図をくるりと回したり地形を確認して自信満々に答えた。
「海が近いのに家畜が多いのか」
「え?普通に漁村と聞いてますが、なんですかさっきから」
「人の臭いが殆どしないで獣の臭いばかりの村だぞ」
クロウは「ん?」という顔をした。俺もつられて首を傾げたら、ひらめいた様だ。
「ああ。魔狼様は人里を知らないんですよね。ウィータの村はこの大陸では古くて、村人も古代種の血を引く獣人族がいます。だから人間の臭いが少ないんじゃないですか?」
獣人ってあれか。けもみみのっての。俺がMMOアバターで使ってたヤツか?
「耳ついてるやつか」
「そうですね」
「尻尾も」
「付いてますね」
「そうか。納得したぞ」
「では行きましょう」
異世界でまさかケモミミ獣人に会えるとは思わなかったぞ。
俺は少し足取り軽く村に向かった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる