俺は帰りたいんですが。

つちやながる

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ぬるい会話も大事だろ

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ここは港町エウルス。海上要塞とまでいわれる程、突出した半島で城壁が囲む海上交易の町。帆船が行き交い商業が盛んらしい。
そして冒険者組合ギルドの前庭で、伏せって俺と向かい合わせでゴロゴロと行ったり来たり、転げては目の前に戻って来るのはクルフェル。服が砂まみれだ。

「……」
「わーんーこー」
「……」
「うーんーこー」
「……」
「き、ん、こ」
「……」
「金ザクザク、うはうは、ねー?」
「うるさいぞ熟女」
「…なぜ、しってる」

険しい顔になって這って近づいて来た。
賊の賞金を貰いに来たら、クルフェルが余りにも変わり果てた獣人の姿だったため、本人確認が証明書だけで信じてもらえなかったのだ。何のための証明書だか。
今はクロウが手続きから出てくるのを待っている。

「なーぜー、しっているー」
「寄るな。旅の商人が言ってたぞ熟女」
「ちっ」
「なんだ、若返って気にいってるのか。さっさと人に戻れ」
「…犬、お前、思考かたい、がんこ。人っぽい。主張主義もってる獣、面白い」
「……」
「魔狼、無益な殺生、きらい知ってる、でも、古い本のってるだけ。黒鉄魔狼《ブラロ》、とはなんだ」

パピヨンの顔をしたオバさんが鼻をすぴすぴ言わせながら話すんじゃねぇ。こいつに限り目元モザイクで横に(四十三歳)とかテロップが見えるわ。俺の耳がしんなり倒れた。
しかも魔狼とは何だ、だと?俺が知りたい。

黒鉄魔狼ブラロと名付けたのは人間だ。本に載ってるならそれを見ろ。お前らが知らないことを俺が知るわけない」
「ふーん」
「魔獣で狼で話せるだけだ。住処に帰りたい」
「犬、もっと、世界をみろ。勿体ない」
「…俺は獣だ」
「あっはは!がんこ!人の世いる間、少しは人のルール、知るの大事」

郷に入ってはってやつか?少し首を傾げた。

「俺は犬だが」
「ちがう、ちがう。ただ、たくさん、色々見ろって、こと!それで得る物も、あるってこと」
「…獣に何をさせたい」
「おお…、魔狼、かしこい。個体差あるのか」
「…自分で調べろ」
「けち、だな」
「古竜や古い獣は知能高いし話せるだろ。そいつらに聞け」

そういうとポカーンとなって固まったパピヨンオバさん。え?なんか俺マズイ事いったか?

「え?古獣、って、はなせる?」
「じゃあ今お前と話してるのは何だ。人が嫌いで聞き流すのも多いが理解してるぞ。だから大昔はテイマーが多かったんだろ」
「ふ、ふふっ」

笑ったが目が獰猛に捕食者になったな。これはエサあげてしまったというのか、何だ。失敗したか?
嗅ぎ慣れた臭いが風に乗って来た。クロウだ。
近くに来たクロウはクルフェルと俺の距離を見て、ん?という顔をした。

「お待たせしましたー。仲良くなったんですか?」
「いや、四十三歳がしつこいだけだ」
「三十五歳、だし!」
「微妙だな」
「ですよね」
「うるさい!」

俺が話した事が、収穫になったようで機嫌がよくなったクルフェルは一冊の本をくれた。
ヒネリない題は「黒鉄魔狼」だった。クロウに読んでもらえだと。
魔狼含め古獣対象に拡大研究だ云々と対価以上だと満足したらしく、礼に二つ向こうまで明日転移してくれる事になった。

今日はこのエウルスに泊まる。

ああ、俺はもうすっかり昼夜逆転だ。
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