俺は帰りたいんですが。

つちやながる

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ろうがいとはよく言ったもんだ

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「ふ、ふふ…あははは!まさかこれ程とは思いませんでしたよ!」

ラズは気色の悪い笑みを浮かべニヤついた。

「俺もまさかの強さだな」
「ル、ループス凄すぎ、る…」

クロウは銀華の君と名のもとになった銀髪は更に短く焦げて今や短髪になっていた。服も肌も勿論、煤けたり破けていたりする。

被害拡大防止とメルヘンランド跡地死守の為必死で結界を張り防御に重きを置いて、攻撃魔術を繰り出したクロウ。防御は頑張ったが守りだけでは師に勝てるはずも無かった。

「まさかの全属性耐性ですよ!あはははっ!何ですかその有り得ない身体は!」
「知らん。魔術で攻撃なんぞ受けた事無かったからな。どうやら物理の方がまだ有効らしい。それでも負ける気がしないが」

そうなんだ。何の攻撃魔術もピリッとか、何となく熱や冷気がわかる程度でアレー?って首を傾げることとなった。

勿論結界内は焦土と化した。所々は亀裂で底が見えなかったりもする。ラズも半ば本気だったのか放出魔力の渦が巻いて見えた。そりゃあもう喜々として乱発して周りがブレて凄かったぞ。

「ちょっと内部から術受けてみますか。こう呪詛とか破裂系とか派手に炸裂するのなんて圧巻ですね。お勧めです。スッキリします。今なら混合でお試しできます。どうです?」

ラズはハァハァと興奮して次のシェフの本日のお勧めを淡々と伝えてくる。

「遠慮する。遊んで気が済んだろ。とにかくだ。あそこに居座るのは辞めろ。プーの復活の地だ。もう小屋を建てるな」

魔狼は顎でくいと指し示した。

「そ、そうですよ!もう十分楽しんだでしょう!あそこはダメです」

その時膨大な魔力を感じ鳥肌がたったラズ。魔狼も毛がブワッと広がり、それがあると感じた空を見上げた。

先程夜中だと思っていた空は朝焼けを呈し、霧の上空を舞うは青白い炎を纏い空気を揺らめかせて滑空する白い巨大な古竜だった。それは魔狼達に向かってとうとう着地した。巨大なのに無音である。澄んだ黄金色の瞳でその場にいるものをジロリと確認する。

「ほほう、もしやこれが炎竜とな!」

ラズは感嘆した。

「やっぱり魔狼か。数百年ぶりかの。なにやっとんじゃ。うるさくてかなわんかったわ」
「…迷惑掛けて悪いな、リリーちゃん」

俺は素直に謝った。森で頂点でもその上がいる。この大陸の一番は炎竜リリーちゃんだ。
雌だ。名前は遥か昔誰ぞに貰ったらしい。

「周りの村魔物いっちゃったわー、あれはダメやろ。遊ぶなら他でやってや。うるさいのキライいうたやん。…オマエ、魔人?この大陸は魔人キライなん多いんよ。帰れやー」

魔狼の三倍以上ある顔を近づけてラズに睨みをきかせた。

「これはお嬢さんでしたか。美しい貴女に私の術で迷惑をかけた事反省します。これはお詫びの品です。して、良ければお茶でも?」

ラズは新たな獲物をロックオンした。炎竜の前脚と爪にキラキラと美しく七色に輝きを放つ石を繋げたリングを「さあどうぞ」と術で装着して見せた。

ニコニコと微笑むラズ。リングを見つめる炎竜。どうするんだろうと伺うクロウと俺。

「…なんなん。めっちゃキレイやん!これ貰っていいん?そんなら茶でもするー?上いこや。昔仲良かった導師が建てたんあるんよ、そこ多分まだ使えるんよ!」
「ほほう導師様とな!これはまた素晴らしい発見です!是非お邪魔させて欲しいです!」

あははは!うふふふ!と怪しい目をしたラズとリリー。ラズは竜と共に山頂に転移した。俺には悪代官と越後屋にしか見えなかった。

「…ループス」
「…なんだ」
「あれが大陸の守護獣、炎竜殿ですか」
「竜と呼ぶと何故か怒る。あの青白い炎を飛ばして来て燃やされるぞ。大昔、兄貴達が揶揄って森が半分消えた事がある」
「え、ええぇ…。そうだ。あの師が帰ってこないと自分の魔力だけでこの距離を転移して帰る自信無いんですが」
「…多分すぐ戻るぞ。一休みしたら魔狼の本を読んでくれるか、クロウ。人間から見た噂とか生態が載ってるんだろ?魔術が効かないとかちょっとチートだしな。自分に驚いてたらキリがない」
「は?チートって?」
「何でもない。気にするな」

半笑いしたつもりで牙を少し見せた。

徹夜のクロウは数分で疲労困憊なのか転がり爆睡していた。俺はプーが復活しないかと草地を時々見ては惰眠を貪るかと住処の周りに転がる石を前脚でぺっぺと薙ぎ払っていた。

・・・山頂から変な音がするな。

妙な地響きと変な音を耳は拾っていたりするが気にしない事にした。

当たり障りなく生きていたいのに動くと何かが起こる。

ここは霧の森。俺の縄張り。
静かに暮らしたいだけなんだ。
魔狼はつかの間の安息を堪能するのだった。


「こいつイヤ!最低!あたしの鱗剥げとか再生力試したいから尾を切ってとか最低やん!魔人やっぱりダメやった!イライラする!」
「あははは!中々の古術ですね!素晴らしいですよ!もう一度お手合わせ願いたいです!いたた…!」

半刻もしないうちに、リリーは血塗れの捕縛硬化術などで固定したラズを咥えて降りて来たのだった。

・・・やっぱりな。

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