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第二章 勇者召喚
え?これから帰るに決まってるだろ!
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「ぅぶ」
プーは魔狼のその顔を隠すが如く飛び付いて頭をホールドして、髪をぐいぐい引っ張り始めた。
顔面は胸と腹で押され、肩に両足をクロスされては首が締まる。さらに力強く両腕で頭部をぐっぐっとホールドする。簡易三角締めかよ。意外と苦しい。なんだ?どーいうことだ?見た感じ三歳前後の幼児で前より縮んでるのは確かだ。
べりっと引き剥がすとプーはシュリの方を向き顔をくしゃりとして舌を出した。完璧なあっかんべー!というやつだった。
「……何やってんだ」
「な、何ですかその子供は、何者!」
シュリは突然の事に驚き、小さな子供にバカにされカチンきたとばかりに声をあげ、それが号令かの様に呆気に取られていた騎士達は女王の側に立つ。
「何だと言われたら、ふわふわ光ってたやつだが」
「まさか聖霊様なのですか!?」
「せ、聖霊さま?」
「え!」
プーを抱っこにしようかと向きを変えていたらよじよじと登り自ら肩車になり、また髪を引っ張り始めた。
「プー痛いぞ、やめないか」
ぺんっ
べしべしっ!
魔狼はどういう返事だか判らず眉間に皺を寄せ首を傾げると一緒にプーも傾き、落ちまいと首や身体が斜めるのをムーッという顔になり耐えきった。
「聖霊かどうかは知らん。大事な友達だ」
ぺんっ!
肯定だった。
「子連れで戦争は危ないだろ。勇者は他をあたってくれ」
うんうんと頭上で頷いてるのだろう。プーの顎が頭にうにうに当たってあるのがわかる。
聖霊とを友達と言い切る魔狼に、また呆然となる女王と騎士達。次々と驚かされ、魔狼が席を立つのを硬直して見送っていた。
パタン
「あ、あの方をここに連れ戻しなさい!」
「はっ」
「は!」
ドアの閉まる音で我に帰ると慌てて呼び戻す様に命令する王女シュリ。同じく騎士も慌てて行動し始めるのだった。
これはチャンスだ。 今ここから逃げるべきだ。いやホントもう疲れたぞ。何が勇者だ戦争だ。勝手にしてくれよ。何の関わりもないのに力を貸せとな。まあよくも勇者になれるもんだ。下手したら死ぬか大怪我だぞ。俺には無理だ。
よし。人化でも本気で走れば人間には感知できまい。
「プー、走るぞ」
ぎゅむと頭をホールドし直したのを感じて走り出した。見事な白い壁をトッと蹴り、足跡を残して次の着地点に足を運び、広い廊下を歩く勤め人を避けては風を起こし走った。
通路の奥の大きな窓。あれがいい。割っては目立ち過ぎる。開いている窓はあそこか。方角を決めてすいすいと進む。そして勢いよく窓から外に跳躍した。
おぉぉぉ!?
ぎゅむと髪を引く力が強まった。飛び出た窓は思いの外高さがあった。ヒューっと落下してるのがわかる。ただ落ちていた。どうやら予想以上の高さがあったようだ。
俺は猫じゃないし魔法も知らない。プーのフォローも期待しないしどうにもならない。だが力ある魔獣で魔狼だからこうしよう。
冷静に落ちるがまま落下した魔狼は、魔力を下肢に集中させて少し動かし空を切ると落下速度が落ち、足から音もなく着地した。
「はあぁ、何とかなった」
プーが頭を撫で撫でしていた。周囲を見渡すとここは丁度城の裏側なのか低めの壁に下り階段がみえた。見上げると聳え立つ城。よし出れた。一刻も早く離れよう。
魔狼は闇夜に紛れ階段を抜け、城壁を幾つもこえ城下の屋根を蹴り空を切り疾走する。澄んだ空気と夜風に新緑の香りを感じ自然と目的地が定まる。
この町を抜けて森か林で一休みしてから次を考える。それでいい。
「プー、いい時に出てきたな。感謝する」
人化のままで走る魔狼に振り落とされない様しっかり頭を抱え込むプーは、顎を使いうにうにして返事を返す。
俺が少し丸くなったとクロウは言っていたが面倒は面倒でしか無い。望んでない事は煩慮でしかない。それは変わらない。
屋根を飛び空を蹴り屋根に戻ってはまた跳躍した。意外と大規模な街のようだ。微かに街を囲む最後と思える城壁が見えてくるが違和感があった。何が違うのか判然としないのは見慣れない街だからか。魔狼は屋根の上でピタと立ち止まり、プーは首を傾げた。
「家が低い。形が古い。河川整備の仕方が一昔前」
抜け出した城を振り返る。建物自体は経年劣化も無く周りの蔦や植物も目立つ高さが無い。魔国と数百年毎に戦争になるのであれば新興国でもない。再興にしても町に多少なりとも新旧の差、古き良き時代のものがあっても良いのではないだろうか。
数百年は生きて来て己が見たこの世界の発達は緩慢だ。犬の姿でたまに人の世に遊びに行っていたから知っている。だが総てにおいて千編一律なこの町自体が旧時代的に感じていた。
一抹の不安が過った。
この国や町がそういった文化で旧時代な特徴を残すのであれば、それでいい話。魔狼はヒュッテの言葉を思い出す。
『ココは過去すぎて』
・・・過去すぎて?
人の召喚は平行世界軸、全くの異世界や時間軸無視、同世界内移動など様々あるとクロウやクルフェルが全く理解不能なうんちくを述べていた。関係ないからと詳細は聞き流したが。あり得る。
「プー、ここは過去だと思うか」
プーは突飛な質問に首を傾げて返答に困惑し、魔狼は暗闇に煌めく変わらない星々に目線を投げた。
プーは魔狼のその顔を隠すが如く飛び付いて頭をホールドして、髪をぐいぐい引っ張り始めた。
顔面は胸と腹で押され、肩に両足をクロスされては首が締まる。さらに力強く両腕で頭部をぐっぐっとホールドする。簡易三角締めかよ。意外と苦しい。なんだ?どーいうことだ?見た感じ三歳前後の幼児で前より縮んでるのは確かだ。
べりっと引き剥がすとプーはシュリの方を向き顔をくしゃりとして舌を出した。完璧なあっかんべー!というやつだった。
「……何やってんだ」
「な、何ですかその子供は、何者!」
シュリは突然の事に驚き、小さな子供にバカにされカチンきたとばかりに声をあげ、それが号令かの様に呆気に取られていた騎士達は女王の側に立つ。
「何だと言われたら、ふわふわ光ってたやつだが」
「まさか聖霊様なのですか!?」
「せ、聖霊さま?」
「え!」
プーを抱っこにしようかと向きを変えていたらよじよじと登り自ら肩車になり、また髪を引っ張り始めた。
「プー痛いぞ、やめないか」
ぺんっ
べしべしっ!
魔狼はどういう返事だか判らず眉間に皺を寄せ首を傾げると一緒にプーも傾き、落ちまいと首や身体が斜めるのをムーッという顔になり耐えきった。
「聖霊かどうかは知らん。大事な友達だ」
ぺんっ!
肯定だった。
「子連れで戦争は危ないだろ。勇者は他をあたってくれ」
うんうんと頭上で頷いてるのだろう。プーの顎が頭にうにうに当たってあるのがわかる。
聖霊とを友達と言い切る魔狼に、また呆然となる女王と騎士達。次々と驚かされ、魔狼が席を立つのを硬直して見送っていた。
パタン
「あ、あの方をここに連れ戻しなさい!」
「はっ」
「は!」
ドアの閉まる音で我に帰ると慌てて呼び戻す様に命令する王女シュリ。同じく騎士も慌てて行動し始めるのだった。
これはチャンスだ。 今ここから逃げるべきだ。いやホントもう疲れたぞ。何が勇者だ戦争だ。勝手にしてくれよ。何の関わりもないのに力を貸せとな。まあよくも勇者になれるもんだ。下手したら死ぬか大怪我だぞ。俺には無理だ。
よし。人化でも本気で走れば人間には感知できまい。
「プー、走るぞ」
ぎゅむと頭をホールドし直したのを感じて走り出した。見事な白い壁をトッと蹴り、足跡を残して次の着地点に足を運び、広い廊下を歩く勤め人を避けては風を起こし走った。
通路の奥の大きな窓。あれがいい。割っては目立ち過ぎる。開いている窓はあそこか。方角を決めてすいすいと進む。そして勢いよく窓から外に跳躍した。
おぉぉぉ!?
ぎゅむと髪を引く力が強まった。飛び出た窓は思いの外高さがあった。ヒューっと落下してるのがわかる。ただ落ちていた。どうやら予想以上の高さがあったようだ。
俺は猫じゃないし魔法も知らない。プーのフォローも期待しないしどうにもならない。だが力ある魔獣で魔狼だからこうしよう。
冷静に落ちるがまま落下した魔狼は、魔力を下肢に集中させて少し動かし空を切ると落下速度が落ち、足から音もなく着地した。
「はあぁ、何とかなった」
プーが頭を撫で撫でしていた。周囲を見渡すとここは丁度城の裏側なのか低めの壁に下り階段がみえた。見上げると聳え立つ城。よし出れた。一刻も早く離れよう。
魔狼は闇夜に紛れ階段を抜け、城壁を幾つもこえ城下の屋根を蹴り空を切り疾走する。澄んだ空気と夜風に新緑の香りを感じ自然と目的地が定まる。
この町を抜けて森か林で一休みしてから次を考える。それでいい。
「プー、いい時に出てきたな。感謝する」
人化のままで走る魔狼に振り落とされない様しっかり頭を抱え込むプーは、顎を使いうにうにして返事を返す。
俺が少し丸くなったとクロウは言っていたが面倒は面倒でしか無い。望んでない事は煩慮でしかない。それは変わらない。
屋根を飛び空を蹴り屋根に戻ってはまた跳躍した。意外と大規模な街のようだ。微かに街を囲む最後と思える城壁が見えてくるが違和感があった。何が違うのか判然としないのは見慣れない街だからか。魔狼は屋根の上でピタと立ち止まり、プーは首を傾げた。
「家が低い。形が古い。河川整備の仕方が一昔前」
抜け出した城を振り返る。建物自体は経年劣化も無く周りの蔦や植物も目立つ高さが無い。魔国と数百年毎に戦争になるのであれば新興国でもない。再興にしても町に多少なりとも新旧の差、古き良き時代のものがあっても良いのではないだろうか。
数百年は生きて来て己が見たこの世界の発達は緩慢だ。犬の姿でたまに人の世に遊びに行っていたから知っている。だが総てにおいて千編一律なこの町自体が旧時代的に感じていた。
一抹の不安が過った。
この国や町がそういった文化で旧時代な特徴を残すのであれば、それでいい話。魔狼はヒュッテの言葉を思い出す。
『ココは過去すぎて』
・・・過去すぎて?
人の召喚は平行世界軸、全くの異世界や時間軸無視、同世界内移動など様々あるとクロウやクルフェルが全く理解不能なうんちくを述べていた。関係ないからと詳細は聞き流したが。あり得る。
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