彼の人達と狂詩曲

つちやながる

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たゆたう

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たぷんたぷんと聞こえるのは水音だろうか。
ふわふわと浮かび流れてる気がする。
見える。確かに見えているのは青い空だ。これは分かる。雲も分かる。知っている。

俺、また転生しちゃったな。あは。
この最初に思う何で死んだとか、生まれる前は何だったか思い出せない感じは何回体験しても嫌いだ。悲しい最期も覚えていたいのになあ。

おかしいな。手足がない気がする。臭いも無いし痛くも冷たくも無いし声も出ない。何に生まれ変わったんだろう。

俺は訳も分からないまま、ただ流れる空と雲をぼーっと見ていた。


「アイリ、これなんだと思う?」
「えー…ゴミだろ」
「謎の物体だなあ」
「おい、ルイやめとけよ。つつくなって」

俺、寝てたのかな。体がふよふよ揺れた気がして声がする方を見た。
ブロントとダークグレーの髪の二十歳前後の青年たちがいた。

「うわっ!眼がある!」
「気持ちわりぃ!魔物か?!」

え?俺魔物なの?
喋れないし動くのどうやってするのか分からないんだよね。これ潰されて終わりってやつかなあ。気持ち悪いって久々言われたわ~。新鮮な気分で死ねるのか。あは。
眼を閉じた。眼と耳はあるんだよなぁ。変な生き物だ。短時間な生き様新記録だね。

「あ、眼閉じたし」
「燃やすか?」
「えー、何も悪い事してないのに酷い事いうなよアイリ」

そいだそうだ。アイリってやつ酷いぞー。

「キングスさん魔物詳しかったよね」
「あの頑固親父か。ルイ、ハンカチ出せ」
「あー包んで持って行くわけ?」
「こんなん手掴みしたくねえわ」

え。俺ハンカチ乗るサイズなんだ。
うわーワクワクするな。なんの獣なんだろ。

「大丈夫だって。ほら、眼とじて静かだ」

やっぱり感触が分からないなあ。摘んで伸びた感じがしたのはわかったよ。視界に入ったのは真っ黒なゴムの様な伸縮性がありそうな物体だった。

「あははは!伸びるよコレ。面白い感触!」
「ルイ、大丈夫か?」
「アイリも触ってみなよ。全然大丈夫!」

俺、スライム系統何だろうか。
初めてだなあ。どうなるんだろ。

「おおー。これ面白いな。ルイ、ハンカチに早く包もうぜ」
「あ、そうだね」

ハンカチに包まれて、空も雲も全て見えなくなった。手の温もりも風も分からない。ただ運ばれて歩いているのか、ゆらゆらと揺れているのだけがわかった。
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