彼の人達と狂詩曲

つちやながる

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きず

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レネはモルを指差した。

「あの黒いのに目が有ったような気がして」
「目、ねえ。長年討伐してきたけど、こんな魔物は見た事無いわね」

グレタは先程まで突いていた黒い物体の入った水桶に向かい、その物体をぐわっと両手で掴み上げたと思いきや床に投げつけた。

「そいやっ!てか。おほほほ」

べたん

黒い物体は絨毯の床に跳ねる事無く叩き付けられた。

・・・俺、どうしたらいいんだろう。

「反応無いわね。これならどうかしら」

グレタは腰の短剣を抜き、魔物らしき物に切先を向け振り下ろした。

「何をしている!」

ガッ

「あら?」
「アイリ様!」

アイリの声に狙いがズレたようだが、モルの丸まった身体の端の方にそれはしっかり刺さっていた。

「モル!?」
「あんっ」

アイリはグレタの背を蹴り飛ばした。

「勝手に入ったうえ大事な物に傷つけやがって、どういうつもりだ!」
「あら?マジ切れしちゃったわ。大事な物?それ魔物みたいだから何かされる前に先制しただけよね~。レネ、行きましょう」
「勝手な事を。グレタは兵服来て何しに来やがった。騎馬兵は全員夜間訓練だろが。サボってんじゃんねえぞクソ女」

アイリは短剣が刺さったモルを真剣な顔で見つめた。モルは目を閉じたままだ。スライム系は体液がでないのか?目じゃなくて良かった。傷はどうだ?床まで貫いてるじゃないかクソッ。

「一杯飲んでから行こうと思ったのよ。戦火走り抜けた仲じゃない~」
「床の修理代も請求するからな。出て行け」
「グレタ様お帰りください。アイリ様申し訳ありません」

二人が出て行ったのを確認後モルに声を掛け、急いで剣を抜いたが体液が出る事は無い様だ。

「モル…モル?大丈夫か?人払いしたぞ。刺さった剣は抜いたから動いていいぞ」

刺さってた?痛くないからわからない。

目を開けてずるずると黒い身体をのばして自分を見た。刺し口がわかる傷がはっきりわかったけど体液が出たりしてないから大丈夫だと思った。アイリを見上げると何とも言えない顔をしてる。

俺がここにいるから迷惑かけてごめん。

触手をするりと伸ばしてアイリの手をつんつんした。その触手を握りアイリは謝った。

「モル、大丈夫なんだな。ごめんな」

・・・アイリは悪くない。

謝るアイリをじっと見つめてたら、抱きかかえて撫でてくれた。


俺、感覚ないけど撫でてる手を見るのが好きだ。今はもう手に入らない温もりを思い出すから。

俺は魔獣。

それは揺るがない事実。

人の側にいてはダメなんだろうか。

森に居るべきだろうか。


俺は、今世どこに居場所があるんだろう。
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