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「先に言っておくが。私はあの男から求婚はされたが、受けたわけではない」
「……一体どういうことでしょう、イサリナ殿下?」
セラフィナが慎重に尋ねると、イサリナがにこりと笑う。
「イサリナでかまわないよ」
その小さな体からは想像できないほど堂々とした態度に思わず息を呑む。
彼女の中には、すでに次期女王としての威厳が備わっていた。
それは、アルセインからは感じたことのない王としての風格だった。
「アルセイン殿下から、聞いていた話と違うので……」
セラフィナとリディアは、未だ動揺していた。
美男だらけの出迎えに加え、あまりに砕けた王女の言葉遣い。
何かがずれている――けれど、どこがどう間違っているのか、うまく整理がつかない。
「ヤツから何を聞いたのだ?」
イサリナがふたりに向き直り、楽しげに問いかけた。
アルセイン王太子の話なら、二人とも何度となく聞かされていた。
「イサリナは自由奔放で男好きの尻軽女だ。けれど俺が命じれば、ベッドで誠心誠意尽くしてくれる。指一本触れさせないお前たちとは違う」と。
まるで自慢話のように語られていたが、実際に会ってみた王女の姿は想像していたものと大きく異なる。
セラフィナとリディアは失礼のないよう言葉を選びつつ、アルセインが自分達に語った内容を隠さず伝える。
聞き終えるとイサリナは少し考え込み、それからぽつりぽつりと語り始めた。
「私は他国の文化が珍しくてな……『子犬』たちを連れて、いろんなところへ遊びに行った」
王家の子女は成人するまで国を出ることは許されないしきたりで、今回の留学は建国初の出来事なのだとイサリナが説明する。
「デルでは市井の娼館や酒場の視察は淑女として当然の行いなのだが。どうやらこちらでは風紀を乱す行為だと知ったのは最近でな。申し訳ない」
すると、イサリナのすぐ傍に控えていた美貌の青年が、やや呆れたように言った。
「王女が楽しいお話にしか耳を傾けないのがいけないのですよ」
「ふふっ、ダルス。そう言うお前も楽しんでいただろう」
イサリナがからかうように頬をつつくと、青年――ダルスと呼ばれたその人物も、肩をすくめて微笑む。
その自然なやり取りを見て、セラフィナは思わず問いかけた。
「ダルス様はイサリナ様の、婚約者なのですか?」
「滅相もございません、私は王女の子犬です」
「そう。私を叱ってくれる大切な子犬なのだ」
先程から気になっていた疑問を、セラフィナが口にする。
「イサリナ様……その「子犬」とはどういう意味なのか、教えていただけますでしょうか?」
するとイサリナが、きょとんとした顔で答えた。
「子犬とは……側室のことだ。合っているか?」
ダルスが丁寧に補足する。
「はい。ただし私どもの正式な身分は、側室候補でございます。殿下が即位して初めて、殿下の子犬として認められます。……ご理解頂けましたか?」
「え、ええ」
「とても、分かりやすかったですわ!」
二人は思わず顔を見合わせ、同時にこくこくと頷く。
「……一体どういうことでしょう、イサリナ殿下?」
セラフィナが慎重に尋ねると、イサリナがにこりと笑う。
「イサリナでかまわないよ」
その小さな体からは想像できないほど堂々とした態度に思わず息を呑む。
彼女の中には、すでに次期女王としての威厳が備わっていた。
それは、アルセインからは感じたことのない王としての風格だった。
「アルセイン殿下から、聞いていた話と違うので……」
セラフィナとリディアは、未だ動揺していた。
美男だらけの出迎えに加え、あまりに砕けた王女の言葉遣い。
何かがずれている――けれど、どこがどう間違っているのか、うまく整理がつかない。
「ヤツから何を聞いたのだ?」
イサリナがふたりに向き直り、楽しげに問いかけた。
アルセイン王太子の話なら、二人とも何度となく聞かされていた。
「イサリナは自由奔放で男好きの尻軽女だ。けれど俺が命じれば、ベッドで誠心誠意尽くしてくれる。指一本触れさせないお前たちとは違う」と。
まるで自慢話のように語られていたが、実際に会ってみた王女の姿は想像していたものと大きく異なる。
セラフィナとリディアは失礼のないよう言葉を選びつつ、アルセインが自分達に語った内容を隠さず伝える。
聞き終えるとイサリナは少し考え込み、それからぽつりぽつりと語り始めた。
「私は他国の文化が珍しくてな……『子犬』たちを連れて、いろんなところへ遊びに行った」
王家の子女は成人するまで国を出ることは許されないしきたりで、今回の留学は建国初の出来事なのだとイサリナが説明する。
「デルでは市井の娼館や酒場の視察は淑女として当然の行いなのだが。どうやらこちらでは風紀を乱す行為だと知ったのは最近でな。申し訳ない」
すると、イサリナのすぐ傍に控えていた美貌の青年が、やや呆れたように言った。
「王女が楽しいお話にしか耳を傾けないのがいけないのですよ」
「ふふっ、ダルス。そう言うお前も楽しんでいただろう」
イサリナがからかうように頬をつつくと、青年――ダルスと呼ばれたその人物も、肩をすくめて微笑む。
その自然なやり取りを見て、セラフィナは思わず問いかけた。
「ダルス様はイサリナ様の、婚約者なのですか?」
「滅相もございません、私は王女の子犬です」
「そう。私を叱ってくれる大切な子犬なのだ」
先程から気になっていた疑問を、セラフィナが口にする。
「イサリナ様……その「子犬」とはどういう意味なのか、教えていただけますでしょうか?」
するとイサリナが、きょとんとした顔で答えた。
「子犬とは……側室のことだ。合っているか?」
ダルスが丁寧に補足する。
「はい。ただし私どもの正式な身分は、側室候補でございます。殿下が即位して初めて、殿下の子犬として認められます。……ご理解頂けましたか?」
「え、ええ」
「とても、分かりやすかったですわ!」
二人は思わず顔を見合わせ、同時にこくこくと頷く。
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