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52 狼
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「さてと、そろそろ仕上げにかかりましょう」
彩愛が視線を三葉へと移す。
「お前の力は特別なのよ。良い餌になるわ」
彩愛の声は底冷えするような残酷さを孕んでいた。唇に浮かぶ笑みは、まるで新しい玩具を前にした子供のようだ。
「良かったな三葉。やっとお前も、羽立野家の一員として役に立てるんだぞ。彩愛に感謝しろよ」
薄笑いを浮かべた明興が三葉に手を伸ばす。しかし明興の手が触れる寸前、胸元でブローチが閃光を放つ。
「っ……」
光に手を弾かれた衝撃に明興は後ずさった。驚愕に目を見開き、三葉と己の手を交互に見遣る。
「今のはなんだ?」
「異国の術です。そんなものまで加護にするなんて……忌々しいこと」
彩愛が扇子で口元を隠しながら吐き捨てるように言う。
「ったく、三葉のくせに驚かせやがって。悪あがきもいい加減にしろ!」
威勢良く罵る明興だったが、ブローチの光が余程恐ろしかったのか三葉からさりげなく距離を取る。
強がるばかりの明興を冷ややかに一瞥し、彩愛はうつろな表情を浮かべて控えている下男に命じる。
「閉じ込めてある者たちを全員ここへ連れていらっしゃい。お前の心が折れれば、そんな加護など意味を成さないわ」
愉悦を孕んだ紅の唇が、不気味な笑みを刻んだ。
(このままじゃ、ハルさんや若子さんたちも殺されてしまう……)
三葉は全身の震えを押し殺し、必死に声を絞り出す。
「……弘城さん!」
声は掠れていたが、それでも必死に祈りを込めて彼の名を呼ぶ。
「あら、『遠吠えの術』を使えたのね。褒めてあげるわ。でも無駄よ。ここには強力な結界が張ってあるの」
彩愛が嗤って続ける。
「それにもう遅いわ。シエキは完成してるの」
その言葉に応じるかのように、巨大な蛇の影が暗がりから身を起こした。骨の軋む音が響き、白い顎がゆっくりと三葉へ迫る。
三葉は血の気が引いていくのを感じた。
(弘城さん、助けて――)
だが、次の瞬間。
金色の光が倉の中を駆け抜けた。
「狼……?」
三葉の目の前に現れたのは、逞しい四肢と銀灰の毛並みを持つ獣だった。
狼が低く唸り、三葉を守るように彩愛との間に立つ。
「三葉に触れるな」
その声は確かに弘城だった。
「弘城さん!」
彩愛が視線を三葉へと移す。
「お前の力は特別なのよ。良い餌になるわ」
彩愛の声は底冷えするような残酷さを孕んでいた。唇に浮かぶ笑みは、まるで新しい玩具を前にした子供のようだ。
「良かったな三葉。やっとお前も、羽立野家の一員として役に立てるんだぞ。彩愛に感謝しろよ」
薄笑いを浮かべた明興が三葉に手を伸ばす。しかし明興の手が触れる寸前、胸元でブローチが閃光を放つ。
「っ……」
光に手を弾かれた衝撃に明興は後ずさった。驚愕に目を見開き、三葉と己の手を交互に見遣る。
「今のはなんだ?」
「異国の術です。そんなものまで加護にするなんて……忌々しいこと」
彩愛が扇子で口元を隠しながら吐き捨てるように言う。
「ったく、三葉のくせに驚かせやがって。悪あがきもいい加減にしろ!」
威勢良く罵る明興だったが、ブローチの光が余程恐ろしかったのか三葉からさりげなく距離を取る。
強がるばかりの明興を冷ややかに一瞥し、彩愛はうつろな表情を浮かべて控えている下男に命じる。
「閉じ込めてある者たちを全員ここへ連れていらっしゃい。お前の心が折れれば、そんな加護など意味を成さないわ」
愉悦を孕んだ紅の唇が、不気味な笑みを刻んだ。
(このままじゃ、ハルさんや若子さんたちも殺されてしまう……)
三葉は全身の震えを押し殺し、必死に声を絞り出す。
「……弘城さん!」
声は掠れていたが、それでも必死に祈りを込めて彼の名を呼ぶ。
「あら、『遠吠えの術』を使えたのね。褒めてあげるわ。でも無駄よ。ここには強力な結界が張ってあるの」
彩愛が嗤って続ける。
「それにもう遅いわ。シエキは完成してるの」
その言葉に応じるかのように、巨大な蛇の影が暗がりから身を起こした。骨の軋む音が響き、白い顎がゆっくりと三葉へ迫る。
三葉は血の気が引いていくのを感じた。
(弘城さん、助けて――)
だが、次の瞬間。
金色の光が倉の中を駆け抜けた。
「狼……?」
三葉の目の前に現れたのは、逞しい四肢と銀灰の毛並みを持つ獣だった。
狼が低く唸り、三葉を守るように彩愛との間に立つ。
「三葉に触れるな」
その声は確かに弘城だった。
「弘城さん!」
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