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第5章:王都への旅
5-4. サリナと会話し親睦を深める
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俺は、サリナと同じくらいの声の大きさで、ぼそりと言う。
「この道、でこぼこしているだろ。草がなくて地肌むき出しのところがちらほらとある。羊が食べたんだ。食べ尽くしたら、羊飼いは羊を連れて南へ行く。なぜか分かるか?」
「……暖かいから、草がある」
「正解だ」
即答か。暖かいと草が生える、これは現代人からすると当たり前の知識だが、この世界の教養レベルでは知らない人の方が多い。
寒くなったら南に行けば草が生えているというのは、村では、代々父から子に教えられてきた羊飼いくらいしか知らない専門知識だ。
厳密には俺も知らなかった。
この世界が惑星で球体なのか分からないし、周辺の環境も気候も分からない。南が暖かい、なんてことは日本人の思いこみだ。この世界が地球みたいな環境で現在地が南半球なら、南に行けば寒くなる。
つまり、俺が羊飼いの父さんから教えられた専門知識を、サリナは既に知っていたと言うことだ。かなりの教養がありそうだ。
村の外れで魔術師に育てられているという噂は、本当かもしれない。
しばらくしてサリナの歩き方がぎこちなくなってきた。
俺は荷袋をレストの背中に縛り付けると、サリナの前に出て、しゃがむ。
「俺の背中に乗れ」
「……え?」
「足が痛いんだろ? 初日から無理はしない方がいい。平地になったら楽になるから、それまでは俺が背負って歩く」
「……」
「よく歩く村の人に言っても誰も分かってくれないだろうが、まったく歩かない人間の足が柔らかくてすぐに痛くなることを俺は知っている。君は、足を痛がっている」
「……」
「遅れるわけにはいかない。遠慮は逆に迷惑だ。俺は平気だし、この山道がどれくらい続くか知っているから、体力の配分もできる。君はさっき、俺が持ってきたチーズを見て驚いただろ。あれ2つで君の体重くらいになる。俺は普段、アレを紐で縛って6個くらい背負って、もっと足場の悪い山を歩く。つまり、君を3人背負って、この山の頂点まで登る体力がある」
俺はサリナを説得するために、現代知識というと大げさだが、漫画か何かで知った知識を口にする。
「険しい道がどこまで続くか分からないと心理的負担が大きく、疲労は増大する。君は肉体疲労だけでなく未知への不安にも襲われている。無理はするな。ここは俺にとっては未知ではない」
「……アレルさんは、私の知らないことを知っている……」
「ああ。サリナみたいにいつまでも遠慮している子の考えを改めさせる方法も知っている」
「……どうするの?」
「命令する。俺は旅のプロだ。食糧の自給自足や戦闘を考慮すれば、羊飼いに勝る旅人はいない。素人はプロフェッショナルに従え」
「……ん。分かった……」
「それでいい。一朝一夕で周りと同じペースで歩けるようにはならない。平地に出たら歩く練習をして、少しずつ慣れていこう。大事なのは一定のペースを維持することだ。それと適度な休憩。移動を中断させるわけにはいかないから、適宜俺が背負う」
俺はサリナを背負い歩きだす。
軽い。
メイより身長は高いが、同じくらいの重さだ。
「……アレルさん。これからも私の知らないこと……。教えて……」
「ああ。……そうだな。先ず1つ。メイを背負って山道を歩いたときより、だいぶ楽だ」
「……それはあまり興味深い情報ではない。他に、もっと。私の知らないこと、教えて……」
「そうだな……。とりあえず、その言葉はあまり使うな」
「……え?」
「私の知らないこと教えて……という言葉だ」
「どうして?」
「……村長事件の起きた直後だから、自衛のためによかれと思ってはっきり言うが、誤解するなよ?」
「うん」
「君みたいな年頃の少女に『知らないことを教えて』って言われたら、男は『うぶなお前に、子供の作り方を教えてやろう』となる。つまり、性行為を迫られる」
「……性行為。子供の作り方のこと? 知らない。教えて」
「だから、そういうことを言うな。俺が村長だったら、実践形式で教えることになる」
「……アレルさんは、凄いですね」
「何が?」
「私は人間が嫌い。喋るのも嫌い。……旅では必要最小限のことしか喋るつもりはなかった。……でも、もうたくさん喋ってる」
「喋るのが苦手なら黙っててもいいぞ。俺は、誰とも会わない旅を数ヶ月も続けることには慣れてるからな……」
「……私も羊飼いになればよかった」
「たくさん歩くぞ」
「それは厳しい……」
こうして俺はサリナと仲良くなり、移動中に会話をした。
「この道、でこぼこしているだろ。草がなくて地肌むき出しのところがちらほらとある。羊が食べたんだ。食べ尽くしたら、羊飼いは羊を連れて南へ行く。なぜか分かるか?」
「……暖かいから、草がある」
「正解だ」
即答か。暖かいと草が生える、これは現代人からすると当たり前の知識だが、この世界の教養レベルでは知らない人の方が多い。
寒くなったら南に行けば草が生えているというのは、村では、代々父から子に教えられてきた羊飼いくらいしか知らない専門知識だ。
厳密には俺も知らなかった。
この世界が惑星で球体なのか分からないし、周辺の環境も気候も分からない。南が暖かい、なんてことは日本人の思いこみだ。この世界が地球みたいな環境で現在地が南半球なら、南に行けば寒くなる。
つまり、俺が羊飼いの父さんから教えられた専門知識を、サリナは既に知っていたと言うことだ。かなりの教養がありそうだ。
村の外れで魔術師に育てられているという噂は、本当かもしれない。
しばらくしてサリナの歩き方がぎこちなくなってきた。
俺は荷袋をレストの背中に縛り付けると、サリナの前に出て、しゃがむ。
「俺の背中に乗れ」
「……え?」
「足が痛いんだろ? 初日から無理はしない方がいい。平地になったら楽になるから、それまでは俺が背負って歩く」
「……」
「よく歩く村の人に言っても誰も分かってくれないだろうが、まったく歩かない人間の足が柔らかくてすぐに痛くなることを俺は知っている。君は、足を痛がっている」
「……」
「遅れるわけにはいかない。遠慮は逆に迷惑だ。俺は平気だし、この山道がどれくらい続くか知っているから、体力の配分もできる。君はさっき、俺が持ってきたチーズを見て驚いただろ。あれ2つで君の体重くらいになる。俺は普段、アレを紐で縛って6個くらい背負って、もっと足場の悪い山を歩く。つまり、君を3人背負って、この山の頂点まで登る体力がある」
俺はサリナを説得するために、現代知識というと大げさだが、漫画か何かで知った知識を口にする。
「険しい道がどこまで続くか分からないと心理的負担が大きく、疲労は増大する。君は肉体疲労だけでなく未知への不安にも襲われている。無理はするな。ここは俺にとっては未知ではない」
「……アレルさんは、私の知らないことを知っている……」
「ああ。サリナみたいにいつまでも遠慮している子の考えを改めさせる方法も知っている」
「……どうするの?」
「命令する。俺は旅のプロだ。食糧の自給自足や戦闘を考慮すれば、羊飼いに勝る旅人はいない。素人はプロフェッショナルに従え」
「……ん。分かった……」
「それでいい。一朝一夕で周りと同じペースで歩けるようにはならない。平地に出たら歩く練習をして、少しずつ慣れていこう。大事なのは一定のペースを維持することだ。それと適度な休憩。移動を中断させるわけにはいかないから、適宜俺が背負う」
俺はサリナを背負い歩きだす。
軽い。
メイより身長は高いが、同じくらいの重さだ。
「……アレルさん。これからも私の知らないこと……。教えて……」
「ああ。……そうだな。先ず1つ。メイを背負って山道を歩いたときより、だいぶ楽だ」
「……それはあまり興味深い情報ではない。他に、もっと。私の知らないこと、教えて……」
「そうだな……。とりあえず、その言葉はあまり使うな」
「……え?」
「私の知らないこと教えて……という言葉だ」
「どうして?」
「……村長事件の起きた直後だから、自衛のためによかれと思ってはっきり言うが、誤解するなよ?」
「うん」
「君みたいな年頃の少女に『知らないことを教えて』って言われたら、男は『うぶなお前に、子供の作り方を教えてやろう』となる。つまり、性行為を迫られる」
「……性行為。子供の作り方のこと? 知らない。教えて」
「だから、そういうことを言うな。俺が村長だったら、実践形式で教えることになる」
「……アレルさんは、凄いですね」
「何が?」
「私は人間が嫌い。喋るのも嫌い。……旅では必要最小限のことしか喋るつもりはなかった。……でも、もうたくさん喋ってる」
「喋るのが苦手なら黙っててもいいぞ。俺は、誰とも会わない旅を数ヶ月も続けることには慣れてるからな……」
「……私も羊飼いになればよかった」
「たくさん歩くぞ」
「それは厳しい……」
こうして俺はサリナと仲良くなり、移動中に会話をした。
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