武器は棍棒。撲殺系いっぱん羊飼いの俺、スキルXitterで超越者たちと相互フォローになってしまい「力が欲しいか?」とウザ絡みされる

うーぱー

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第14章:Xitter初使用編

14-2. アカウント名を魔王にしている近所のガキとやりとりする

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 俺は魔王を自称する近所のガキんちょを騙して、教訓を与えることにした。

────────────────────
■自分
今、俺は勇者パーティーと戦っていて、不利な状況だ。
魔王様、俺に力を授けてくれ……!
俺に、魔王様を守れるだけの力を……!
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
ほう。どのような力を望む。
山をも砕く剛力か?
大地を焼き尽くす業火か?
空を凍てつかせる氷雪か?
────────────────────
■自分
すべての敵を滅ぼす、圧倒的な魔力を!
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
よかろう。人間よ。
どうやったかは知らぬが、この我に話しかけるだけの胆力があるのだ
我が血を授けるにふさわしいか、試してやろう
────────────────────
■自分
はい。そこまで。
よかろう、ではない
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
なに?
────────────────────
■自分
お前、今、完全に騙されかけていたぞ
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
なんだと?
────────────────────
■自分
金を用意しろとか、力を貸してくれというのは、だいたい詐欺だ。
騙されるな。
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
なに?
────────────────────
■自分
いいか?
家の柵を直す手伝いをしてくれとか、
乳搾りを手伝ってくれとか、そういうのは、頼まれたら手伝え。
お前も遠慮なく草刈りや掃除を頼め。
日常のことなら遠慮はするな。お互いに仲良くしよう
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
……
────────────────────
■自分
だがな、力を貸せ。一緒に戦場に行こう。
あいつらを倒して一攫千金だとか、名誉を得ようとか、
そういうのは、親しい相手から頼まれても、いったん待て。
お前を騙して利用しようとしているんだ
もし、今後、お前が強力な力に目覚めたとする。
そうしたら、
力を貸してくれとか、
魔法を使ってくれとか、
スキルを使ってくれとか、
頼ってくるやつが現れるかもしれない。
そのときは、警戒してくれ。
お前を利用しようとしているだけかもしれない
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
魔王たる我を利用しようというのか
────────────────────
■自分
ああ。
「我らの偉大なる魔王様、お力をお貸しください!」
というのはおかしいだろ?
本当にお前を愛して尊敬しているなら、力を貸せとは言わない。
逆にお前が何も言わなくても、お前が悩んだり困ったりしているときに、
「どうした。力を貸すぞ」と言ってくるやつが、友だ
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
……友?
────────────────────
■自分
ああ。そうだ。
お前はまだガキだから分からないと思うが、
ユーノと一緒にいると楽しいだろ?
大きい石を乗り越えるときに、手を貸したり借りたりするだろ?
それの積み重ねが友情だ
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
ユーノ?
分からない……
────────────────────
■自分
そのうち分かるようになるさ。
もし、ユーノがお前に金をくれと言ったら、俺に相談しろ。
俺がユーノを叱る。
親しくても、金をくれと言ったら駄目だ
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
何を言っている。
お前がなんの話をしているのか、分からない
────────────────────
■自分
心配するな。すぐに分かる。
だから、お前が大人になって自分で正しく判断できるようになるまでは、
魔法やスキルの力を貸してくれと言われても断れ。
そいつらは全部、詐欺だ。お前を騙そうとしてる
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
そうか。我は……
────────────────────
■自分
重い話をしてごめんな。
あまり深く考えるな。
さっきも言ったが、大きな石を乗りこえるときは手を貸せ。
そして、手を借りろ。
パンが1個しかなかったら、半分、ユーノに与えてくれ。
俺はユーノに、お前がパンを忘れてきたら半分譲るように教えている。
もし、貰えなかったら、俺に教えろ。
俺がユーノを叱る。
ふたりとも忘れたときは……。
まあ、ふたりで腹を空かせて、泣きながら家に帰れ
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
我は泣かぬ
────────────────────
■自分
そうだな。お前は強いもんな。
そのうち俺よりも強くなるな
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
ほう。不遜なその言い方。
今の貴様は、我よりも強いのか?
────────────────────
■自分
当たり前だ。
お前が強力なスキルに目覚めない限り、あと10年は俺の方が強い。
だから、誰にも知られずに泣きたいときは、俺を頼れ。
家族に知られたくないことなら、俺に聞け
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
……
────────────────────
■自分
おっと、いけない。夜更かししたな。
俺は明日の朝早くに旅立つから、当分会えないかもしれないが、
このスキルなら連絡が取れるかもしれない。
また、連絡するよ
────────────────────
■ヴォルグルーエル@新たなる魔王
くくくっ。よかろう。
暇つぶしにちょうど良い。貴様のスキルにつきあってやろう
────────────────────
■自分
じゃあな。おやすみ
────────────────────


 俺はスキルを閉じた。

 俺のスキル『Xitterエクシター』は、地球の本家『Xitterエクシター』と一緒で、交流の深い人の他に、著名人をおすすめしてくる仕様だった。
 地球のアプリXitterでアメリカ大統領をおすすめしてくるようなものだ。
 そんなこと知らないから、ガチの魔王を近所のガキだと勘違いしたままフレンドになった。

 まさか、その若き魔王が、俺の言葉をきっかけにして、自分が魔族から都合良く利用されていただけだと気づくなんてこと、知るよしもない。

 俺がなんの打算もなく心を開いて話しかけ続けた結果、のちに『我とお前が、友だ!』と言われるような関係になるのだが、マジで、ただの勘違いだ。

 相手が本物の魔王(著名人)だと知ってたら、DMなんて送らないぞ……。
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