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10話。ロイヤリティで儲けるぞ! それはそうと商人の「俺の呼び方」がどんどん格下げされていくんだが?
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マルシャンディが目を細め、口にうっすらと笑みを浮かべる。
「そちらのお嬢さんと、獣人少女」
「?」
「それにアーサー様、私、カル。老若男女とはいきませんが、女の子から大男まで、貧乏人から貴族子弟までが、その味を高く評価したのです。しかも、作ってから、しばらく時間が経っているのに、私もカルも美味しく感じた。これは大量生産する価値があります」
「なるほど。そこまで考えていたのか」
「ええ。これは是非とも、商売にしたいと思いました。莫大な金の匂いがしますよ。それこそ\カーン!(工事の音)/この小汚い\カーン!/市街地を更地にする\カーン!/くらいの莫大な利益\カーン!/を生み出せる……!\カーン!/くくくっ。この街から\カーン!/貧乏人の\カーン!/居場所\カーン!/をなくしてやる\カーン!/」
すぐ近くの城壁工事現場から、石工たちが石にくさびを打って槌で叩き割る音が響いてきた。
どうする?
途中から小声だったし、工事現場の音のせいで最後を聞き逃したが、不審なことは言っていなかったよな?
この街の流通量を考慮すれば、そんな大規模な商売はできないだろうし、レシピを売ってお金を貰う?
でも、やはり、製法を教えてロイヤリティを貰って大もうけしたいという欲がムクムクムックですぞ~。
「……ロイヤリティをもらえますか?」
「ロイヤリティですか。ですが、この貧乏人ばかり暮らす街や、私の商取引の範囲だけでは、それほど大きな儲けにはならないと思いますが……」
「ん? アーサー。ロイヤリティがほしいのか?」
黙って話を聞いていたシャルロットが会話に加わってきた。
「ああ。ハンミャーミャーを売るならロイヤリティの方がいいと思ってな」
「なるほど。たしかあった。ふふっ。インベントリに入れておくと腐らないから、ついうっかり忘れていた」
ん?
なんのことだ?
シャルロットはアイテム収納の革袋から、お高そうな白いティーカップを取りだした。
カップには琥珀色の液体が入っており、湯気が出ている。
「ほら。アーサー。1杯しかないから、サフィにも分けてあげてくれ。熱いぞ。舌を火傷するなよ」
「……あ。ロイヤルティー(※)か」
※:ちょっと豪華なティーパーティーで紅茶を飲むこと。おしゃれなテーブルクロスのかけられた丸テーブルの中央にティースタンドがあって、1段目にサンドウィッチ、2段目にスコーン、3段目にケーキが載っているような、あのティーパーティーの豪華版。ドレスを着たレディが集まって、豪華なティースタンドを囲む。そうやって紅茶を飲むことをロイヤルティーという。
「シャルロット。ごめん。勘違いさせた。紅茶は関係ない。ロイヤリティって言うのは、商契約のことだ。例えば、ハンミャーミャーの作り方を金貨1枚で売ってそれっきりにするか、今後ずっと1個売れるごとに銅貨1枚をもらうことにするか、みたいな違いだ」
俺はサフィに紅茶を「熱いから気をつけて」と渡した。
「なるほど。紅茶が飲みたかったわけではないのか。銅貨にすると最初の儲けは少ないが、ハンミャーミャーの人気が出てたくさん売れれば売れるほど儲かるというわけだな?」
「お。理解できたか。そういうこと」
「む。ちょっと馬鹿にした?」
「してないよ。初めて聞く概念を理解したことに対して、素直に関心したんだよ」
「ふむ。分かった。ハンミャーミャーは間違いなく流行るぞ。家の伝手を使って知りあいにも広めよう。ソースは(貴族の)家ごとに製法がある。今回使ったのは他家の物だから製法は聞き出せないかもしれないが、そこはリュミエールの料理人にハンミャーミャーにあうものが作れないか聞いてみよう」
「あ。それは助かるかも。口コミが大事だし、ソースは超重要だからな」
「……ッ! と、ということは、ソースの製法を聞くために私は実家に戻り、アーサーを、\カーン!/り、両親に\カーン!/紹介し、\カーン!/け、けけ、結婚\カーン!/の報告。そ、そして、しょ、\カーン!/しょしょ、\カーン!/初夜\カーン!/で、あっ、ああっ! はあはあ」
城壁の工事現場が近いから何言っているのかさっぱりだ。
「ま、まま、待ってください!」
マルシャンディがいきなり慌てだす。
目を見開いてシャルロットの顔を凝視している。
視線を下げて体までじろじろと。まさか、エロ目線で見ている?
だったらステータスウインドウだが……。
む?
マルシャンディは、サフィに視線を移した。
ロリ獣人が紅茶を舌先でペロペロ舐めている様子を見ているようだ。
サフィはふーふーペロペロしている。猫舌なんだろう。可愛い。両手でカップを包むようにして持つ手つきも可愛い。何もかもが可愛い。
まさか、マルシャンディはロリコン?
ぶちのめし案件か?
俺が警戒心を強めていると、彼は視線をシャルロットに戻した。
「金彩で彩られた磁気のティーカップ! 模様は、月と太陽! それに、お名前がシャルロット様! ま、まま、まさか! 貴方はリュミエール家の!」
「む。そういえば名乗っていなかったかな。シャルロット・リュミエールだ」
「リュッ、リュリュ! リュミエール家のご令嬢が、このようなところに! 大変失礼をいたしました!」
ドッ! ゲザアアアッ!(マルシャンディが地面に膝をついて頭を下げた効果音)
「あれ。もしかしてシャルロットって、思っている以上に良い家の出身?」
「アーサーさん、失礼ですよ! 地方領主の息子が話しかけて良い相手ではないのですよ!」
マルシャンディの俺に対する呼び方が、アーサー「様」からアーサー「さん」に格下げされた!
「いや、かしこまらなくて良い。立ってくれ。今の私は元王国騎士団の旅人に過ぎない」
「そうだよな。過去や家柄より、『今』『何者か』が大事だよな?」
「あ、ああ……。い、今、私はお前の\カーン!/お、お嫁さん\カーン!/だし……\カーン!/」
シャルロットが何か言ったが、工事の音で聞こえなかった。
マルシャンディが立ち上がりながらぶつぶつ言う。
「\カーン!/王族\カーン!/のコネがあれば外国からトゥメイトのような希少な野菜を輸入することもできる……。他家の領地への販路の開拓も期待できる……。ハンミャーミャーを国中に……。\カーン!/王族の後ろ盾があれば\カーン!/この小汚い\カーン!/貧乏人の街を\カーン!/消すことができる……! \カーン!/金があれば\カーン!/私の作る新たな街が\カーン!/できる。なるほど。たしかに、これは凄い可能性を秘めている! アーサー君。シャルロット様のご協力を前提に、ロイヤリティ契約をお願いしよう!」
「お、おう」
俺の呼び方がついに「君」まで下がった!
「そちらのお嬢さんと、獣人少女」
「?」
「それにアーサー様、私、カル。老若男女とはいきませんが、女の子から大男まで、貧乏人から貴族子弟までが、その味を高く評価したのです。しかも、作ってから、しばらく時間が経っているのに、私もカルも美味しく感じた。これは大量生産する価値があります」
「なるほど。そこまで考えていたのか」
「ええ。これは是非とも、商売にしたいと思いました。莫大な金の匂いがしますよ。それこそ\カーン!(工事の音)/この小汚い\カーン!/市街地を更地にする\カーン!/くらいの莫大な利益\カーン!/を生み出せる……!\カーン!/くくくっ。この街から\カーン!/貧乏人の\カーン!/居場所\カーン!/をなくしてやる\カーン!/」
すぐ近くの城壁工事現場から、石工たちが石にくさびを打って槌で叩き割る音が響いてきた。
どうする?
途中から小声だったし、工事現場の音のせいで最後を聞き逃したが、不審なことは言っていなかったよな?
この街の流通量を考慮すれば、そんな大規模な商売はできないだろうし、レシピを売ってお金を貰う?
でも、やはり、製法を教えてロイヤリティを貰って大もうけしたいという欲がムクムクムックですぞ~。
「……ロイヤリティをもらえますか?」
「ロイヤリティですか。ですが、この貧乏人ばかり暮らす街や、私の商取引の範囲だけでは、それほど大きな儲けにはならないと思いますが……」
「ん? アーサー。ロイヤリティがほしいのか?」
黙って話を聞いていたシャルロットが会話に加わってきた。
「ああ。ハンミャーミャーを売るならロイヤリティの方がいいと思ってな」
「なるほど。たしかあった。ふふっ。インベントリに入れておくと腐らないから、ついうっかり忘れていた」
ん?
なんのことだ?
シャルロットはアイテム収納の革袋から、お高そうな白いティーカップを取りだした。
カップには琥珀色の液体が入っており、湯気が出ている。
「ほら。アーサー。1杯しかないから、サフィにも分けてあげてくれ。熱いぞ。舌を火傷するなよ」
「……あ。ロイヤルティー(※)か」
※:ちょっと豪華なティーパーティーで紅茶を飲むこと。おしゃれなテーブルクロスのかけられた丸テーブルの中央にティースタンドがあって、1段目にサンドウィッチ、2段目にスコーン、3段目にケーキが載っているような、あのティーパーティーの豪華版。ドレスを着たレディが集まって、豪華なティースタンドを囲む。そうやって紅茶を飲むことをロイヤルティーという。
「シャルロット。ごめん。勘違いさせた。紅茶は関係ない。ロイヤリティって言うのは、商契約のことだ。例えば、ハンミャーミャーの作り方を金貨1枚で売ってそれっきりにするか、今後ずっと1個売れるごとに銅貨1枚をもらうことにするか、みたいな違いだ」
俺はサフィに紅茶を「熱いから気をつけて」と渡した。
「なるほど。紅茶が飲みたかったわけではないのか。銅貨にすると最初の儲けは少ないが、ハンミャーミャーの人気が出てたくさん売れれば売れるほど儲かるというわけだな?」
「お。理解できたか。そういうこと」
「む。ちょっと馬鹿にした?」
「してないよ。初めて聞く概念を理解したことに対して、素直に関心したんだよ」
「ふむ。分かった。ハンミャーミャーは間違いなく流行るぞ。家の伝手を使って知りあいにも広めよう。ソースは(貴族の)家ごとに製法がある。今回使ったのは他家の物だから製法は聞き出せないかもしれないが、そこはリュミエールの料理人にハンミャーミャーにあうものが作れないか聞いてみよう」
「あ。それは助かるかも。口コミが大事だし、ソースは超重要だからな」
「……ッ! と、ということは、ソースの製法を聞くために私は実家に戻り、アーサーを、\カーン!/り、両親に\カーン!/紹介し、\カーン!/け、けけ、結婚\カーン!/の報告。そ、そして、しょ、\カーン!/しょしょ、\カーン!/初夜\カーン!/で、あっ、ああっ! はあはあ」
城壁の工事現場が近いから何言っているのかさっぱりだ。
「ま、まま、待ってください!」
マルシャンディがいきなり慌てだす。
目を見開いてシャルロットの顔を凝視している。
視線を下げて体までじろじろと。まさか、エロ目線で見ている?
だったらステータスウインドウだが……。
む?
マルシャンディは、サフィに視線を移した。
ロリ獣人が紅茶を舌先でペロペロ舐めている様子を見ているようだ。
サフィはふーふーペロペロしている。猫舌なんだろう。可愛い。両手でカップを包むようにして持つ手つきも可愛い。何もかもが可愛い。
まさか、マルシャンディはロリコン?
ぶちのめし案件か?
俺が警戒心を強めていると、彼は視線をシャルロットに戻した。
「金彩で彩られた磁気のティーカップ! 模様は、月と太陽! それに、お名前がシャルロット様! ま、まま、まさか! 貴方はリュミエール家の!」
「む。そういえば名乗っていなかったかな。シャルロット・リュミエールだ」
「リュッ、リュリュ! リュミエール家のご令嬢が、このようなところに! 大変失礼をいたしました!」
ドッ! ゲザアアアッ!(マルシャンディが地面に膝をついて頭を下げた効果音)
「あれ。もしかしてシャルロットって、思っている以上に良い家の出身?」
「アーサーさん、失礼ですよ! 地方領主の息子が話しかけて良い相手ではないのですよ!」
マルシャンディの俺に対する呼び方が、アーサー「様」からアーサー「さん」に格下げされた!
「いや、かしこまらなくて良い。立ってくれ。今の私は元王国騎士団の旅人に過ぎない」
「そうだよな。過去や家柄より、『今』『何者か』が大事だよな?」
「あ、ああ……。い、今、私はお前の\カーン!/お、お嫁さん\カーン!/だし……\カーン!/」
シャルロットが何か言ったが、工事の音で聞こえなかった。
マルシャンディが立ち上がりながらぶつぶつ言う。
「\カーン!/王族\カーン!/のコネがあれば外国からトゥメイトのような希少な野菜を輸入することもできる……。他家の領地への販路の開拓も期待できる……。ハンミャーミャーを国中に……。\カーン!/王族の後ろ盾があれば\カーン!/この小汚い\カーン!/貧乏人の街を\カーン!/消すことができる……! \カーン!/金があれば\カーン!/私の作る新たな街が\カーン!/できる。なるほど。たしかに、これは凄い可能性を秘めている! アーサー君。シャルロット様のご協力を前提に、ロイヤリティ契約をお願いしよう!」
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