スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する

うーぱー

文字の大きさ
17 / 74

17話。冒険者ギルドの人が角を回収しにきた。あと、俺が領地を相続するのかどうかシャルトットに聞いてみた

しおりを挟む
☆ まえがき ☆
途中からアーサーの相続にまつわる、ちょっと難しいお話だから、シャルロットが登場するあたりからすっとばしてもいいよ!

一言でまとめると
「追放された直後に親が死んだアーサー」が新領主になるかどうか、王族のシャルロットでもちょっと分からないという内容です。
それと、アーサーが領地を相続せずに庶民のままシャルロットと結婚すると、「シャルロットは王位継承権を失って気軽な立場になれる」という状況を説明しています。
~~~~~~~~~~


 死体処理で何度目かの往復を終え、俺は森の端リズィエールから出る。
 牛頭巨人ミノタウロスの頭部の傍らに、冒険者ギルドの関係者っぽい人がいるのが見えた。
 ふたり組が2つだ。ペアで角を挟んで巨大のこぎりをひいている。

 近づくと、その人たちはみんな、つなぎのような服に大きなベルトをして、そこへ革袋や小型リュックのような物をたくさんぶら下げていると分かった。ハンマーやピッケルらしき工具を背負っている。

 俺はその人たちを驚かせないように、近い方のペアに小さめに声をかける。

「こんにちは」

「おや?」

 そのペアはのこぎりを引く手を止めて、小柄な方が俺に振り返る。

 何かしらの獣人の血が混じっているのか、頬に毛が生えている。
 サフィよりもケモ度が強めだ。
 犬や猫ではない。狸とかアライグマとか、そっち方面の気がする。
 20歳くらいだろうか。細い男なのか、胸が小さい女か分からない。

「ああ。聞き間違いではなかった。はい。こんにちは。おや? おや? もしかして貴方が、これを仕留めたというアーサー様で? シャルロットさんの依頼で、解体させてもらってます」

 声から察するに女性だ。

「あ、いや、たしかに俺はアーサーだけど、仕留めたのはシャルロットだよ。俺は手伝っただけ」

「なるほど、なるほど。初めまして。私、冒険者ギルド『茨の束』(※)で、素材の剥ぎ取りや鑑定を担当している、スティンと申します。あっちので大きくて無口な方は、ブレージ」

 ※:茨は1本1本だと棘がある低木に過ぎないが、集めて束ねることにより強固な防御柵を築ける。力を合わせようという、ギルドの基本理念となっている。

 ブレージさんがぺこりと大きな頭を下げた。

 スティンさんは俺に近づくと手袋を外し、短い茶色の毛に覆われた手を差しだしてきた。
 俺は握手をした。
 なんだか気持ちいい。
 にぎにぎ、ふさふさ。
 肉球の弾力も相まってくせになるな……。
 ふにふに……。

「あの?」

「あ。すみません。つい」

「いえ、いえ」

 俺は名残惜しみながら握手を終えた。

「ところで、査定はどんな感じですか?」

「ああ、はい。はい」

 スティンさんは手袋を装着し直し、拳の裏で角を何度か軽く叩く。

「これはなかなか立派なものですよ。はい。立派です。音、分かります? こーんこーんではなく、こんっこんっと鳴ります。中身が詰まっている証拠です。これは良い武器になりますよ。1本10オールで買い取らせていただければと思っております」

 お。10体だから100オールか。
 すげえ。日本円に換算して100万円だ。
 もうワンセット狩れば安めの馬車が買えるぞ。馬は別料金だが。

「10対ですので200オール前後ですね。切り落としてからもう少し詳細に査定いたしますので増減すると思いますが、低くても150はいくでしょうね。うわぶれれば250でしょうか。後ほどギルドに取りに来ていただけばと思います」

「……! はい!」

 そうだ。2本あるから倍だ。よっしゃ。
 安めの馬車が買えるんじゃね?

「あ。ところで、スティンさんのギルドでは舌や頬肉は買い取りしませんか?」

「えっ?」

 スティンさんは、俺に振り返った。ぎょっと目を見開いている。縦長の光彩が細くなっている気がする。
 無口なブレージさんも角の向こうから、目を大きくした顔を俺に向けている。

 スティンさんはゆっくりと牛頭巨人ミノタウロスの頭部に向き直り、また、クルッと振り返る。

「えっ?」

「二度見ならぬ、二度振り返りをするほど俺はおかしなことを言ったのか?」

「え、あ、あーっ。ええ? 牛頭巨人ミノタウロスの……舌……。頬肉……。いやー。『茨の束』にはそういうニーズはありませんが……」

 スティンさんが顔を向けると、ブレージさんは首を左右にぶんぶんと振った。

「えっと、他のギルドに問いあわせてみます?」

「あ。変なこと聞いてすみません」

「ええ。はい」

 スティンさんはのこぎり作業に戻る。

牛頭巨人ミノタウロスの舌は要りませんけど、ドラゴンの舌でしたら珍味ですので、もし、入手したら是非ともご連絡ください。はい。ものにもよりますが、牛頭巨人ミノタウロスの角より高く買いますよ。昔から『火竜10体狩れば城が建つ』と言いましてね。ドラゴンに捨てるところはないのですが、魔力コアとなる心臓や血に次いで、舌が高く売れるんですよ。ええ。はい。竜の舌は食べれば寿命が延びると言われていますし、自らの炎で焼けない舌ですからね。どんな歯ごたえでどんな味をしているのか、気になりますでしょう?」

「ええ。なるほど。たしかに焼けない舌の味は気になる……。覚えておきます。では、あっちの死体を捨ててきます」

 スティンさんが活き活きと他の部位について語りだしそうだったので、俺は作業に戻ることにした。

 体力的には問題なかった。
 兵士も手伝ってくれる。
 しかし、それでも巨大な胴体10体と、頭部10個を運ぶのは、ひと苦労だった。

 昼になると兵士にパンと肉とスープが配られた。
 多分、軍の食糧だろう。

「アーサーさん。何してんですか。一緒に食いましょうや!」

「おっ、おう!」

 ちらちら見てたら俺も貰えた。
 パンを肉に挟んで食べたけど、誰も驚いてくれなかった。
 レタス、トマト、肉ソースさえあれば、兵士たちを驚愕させられたのに……!

 くっそ。現代知識ぶちかましてえ……!

「……みんな、知ってるか? 人間は、自分の肘を舐めることはできない」

「え? なに言っているんですか、アーサーさん。そんなわけ……」

「んー。本当ですか? あれ?」

 兵士たちがもごもごくねくね動き始めた。

 よし!

 しかし、この程度の知識無双で得られる快楽は一瞬だ。もっとぶちかましてえ。

 食後も昼休憩は続く。兵士たちは最小限だけが見張りにつき、残りはそこら辺の地面に寝転がっていた。畑の様子を見に来ていた農民もそこらに転がっている。昼寝文化があるっぽい。

 俺、現地人の記憶を継承しているのに、知らないことだらけだなあ。

 ゴロゴロしていたら、シャルロットとサフィが様子を見に来てくれた。
 俺たちはシャルロットが出してくれた革のマントを路肩に敷いて座り、軽く雑談をする。

「そういや、シャルロットって王族なの?」

「やはり気づいてなかったか。リュミエールの家名を聞いてなんの反応も示さなかったのだから、そうだと思った。私は王弟の娘だ」

「めちゃくちゃ偉い人じゃん」

「アーサーは領主の息子だろ。有力貴族の名前くらいひととおり覚えておけ」

「ええ……。面倒そう……」

「私が王族だからって、変にかしこまるなよ」

「分かっているって。態度を変えたりしないよ。でも、なんで世直しの旅なんてしているんだ?」

「王族というのはけっこう面倒でな。現在の長男にまだ世継ぎが生まれていないから、王弟の娘の私が宮廷の近くにいない方が都合のいい者が大勢いるんだ。家にはいづらいんだから、どうせなら、人助けをする方がいいだろう?」

「なるほど。立派な志だ。いや、それにしても、次の次の世代の王位争いがもう始まってるなんて、宮廷は恐ろしい所だな」

「王族の女の腹が膨らむたびに、赤子より先に新たな権謀術数が生まれるのさ。私の腹に子種を注いだ瞬間、お前にも最下位付近だが王位継承権が生まれる。陰謀に巻きこまれるぞ」

 シャルロットは、ふふふっ、からかうような笑みを浮かべた。
 そのとき風が吹いて髪がさらりと揺れた。
 頬にかかった髪を払う手の所作が美しい。

「いや。アーサーは実家を追放されていたな。今は平民階級か。なら、私たちが正式に挙式をすれば、私は王位継承権を失う。私たちの結婚を祝ってくれる者は多いだろう」

「あっ。そうだ。そのことに関連しているんだけど、聞きたいことがある。ザマーサレルクーズ家は壊滅したんだけど、もし俺の父親の死が確定したら、領主はどうなるの? 兵士が俺のことを新領主って呼んでからかってきたんだけど」

「あ。そうか。アーサーが爵位を得て領主になる可能性があるのか」

「やっぱり、そうなの?」

「ああ。通常この国では、領主に子がいる場合は子が世襲する。領主に子がいない場合は、財産と土地は没収されて国王の物になる。アーサーの場合、つまり追放された子が生きている場合は、その者が相続するはずだ。ただ、追放されたとき、神官が立ち会っていたんだよな?」

「うん」

「二元世界における二大権力が国家と教会であることは分かるな?」

「うん」

 俺は分かる。サフィは話について来れず、とっくにシャルロットの膝枕で眠っている。

「ザマーサレルクーズ家の領地は、元々は国王から分配されたものだ。だが、教会の神官がいたのだ。早く対処しないと相続のトラブルになるぞ。教会はザマーサレルクーズ領を『誰のものでもない、神に返却されたもの』であると主張し『信仰の布教のために、教会の所有とする』と言うだろう。一方で国王は『王がザマーサレルクーズ家に与えていた土地だから、領主の死後は、国王に所有権が戻る』と主張するだろう。このようなトラブルはよくある」

「あー……。追放ってそういうトラブルのネタになるんだ……」

「国王はお前を領主にしたがるだろう。一方で教会は、お前の存在が邪魔になる」

「……暗殺とかされちゃう?」

「……可能性がないとは言いきれない」

「マジかよ……。シャルロットほどではないにしろ俺も、面倒な立場なんだな」

「ああ。ふふっ……。サフィのレベルを上げておいて良かったな。暗殺者に襲われても、どうにかなる」

 シャルロットがサフィの頭を撫でる。
 サフィは気持ちよさそうに「んにゃあ」と鳴いた。」

「俺、牛頭巨人ミノタウロスの死体を片付け終えたらシャルロットと一緒に世直しの旅に出るつもりだったんだけど」

「相続関係は片付けておいた方がいいな。国王おじ魔法伝書鳩はとを飛ばしておくよ」

 おじにはとか。わりとスゲえパワーワードだな。

「しばらくはこの街を拠点にして、周辺の村の様子を見て回ろう」

「おう」

 ううん。昼休憩中の雑談にしてはインパクトある話題にしちまったぜ……。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ
ファンタジー
 前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?  「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。  仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。  病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。  「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!  「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」  魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。  だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。  「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」  これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。    伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!    

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...