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17話。冒険者ギルドの人が角を回収しにきた。あと、俺が領地を相続するのかどうかシャルトットに聞いてみた
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☆ まえがき ☆
途中からアーサーの相続にまつわる、ちょっと難しいお話だから、シャルロットが登場するあたりからすっとばしてもいいよ!
一言でまとめると
「追放された直後に親が死んだアーサー」が新領主になるかどうか、王族のシャルロットでもちょっと分からないという内容です。
それと、アーサーが領地を相続せずに庶民のままシャルロットと結婚すると、「シャルロットは王位継承権を失って気軽な立場になれる」という状況を説明しています。
~~~~~~~~~~
死体処理で何度目かの往復を終え、俺は森の端から出る。
牛頭巨人の頭部の傍らに、冒険者ギルドの関係者っぽい人がいるのが見えた。
ふたり組が2つだ。ペアで角を挟んで巨大のこぎりをひいている。
近づくと、その人たちはみんな、つなぎのような服に大きなベルトをして、そこへ革袋や小型リュックのような物をたくさんぶら下げていると分かった。ハンマーやピッケルらしき工具を背負っている。
俺はその人たちを驚かせないように、近い方のペアに小さめに声をかける。
「こんにちは」
「おや?」
そのペアはのこぎりを引く手を止めて、小柄な方が俺に振り返る。
何かしらの獣人の血が混じっているのか、頬に毛が生えている。
サフィよりも獣度が強めだ。
犬や猫ではない。狸とかアライグマとか、そっち方面の気がする。
20歳くらいだろうか。細い男なのか、胸が小さい女か分からない。
「ああ。聞き間違いではなかった。はい。こんにちは。おや? おや? もしかして貴方が、これを仕留めたというアーサー様で? シャルロットさんの依頼で、解体させてもらってます」
声から察するに女性だ。
「あ、いや、たしかに俺はアーサーだけど、仕留めたのはシャルロットだよ。俺は手伝っただけ」
「なるほど、なるほど。初めまして。私、冒険者ギルド『茨の束』(※)で、素材の剥ぎ取りや鑑定を担当している、スティンと申します。あっちので大きくて無口な方は、ブレージ」
※:茨は1本1本だと棘がある低木に過ぎないが、集めて束ねることにより強固な防御柵を築ける。力を合わせようという、ギルドの基本理念となっている。
ブレージさんがぺこりと大きな頭を下げた。
スティンさんは俺に近づくと手袋を外し、短い茶色の毛に覆われた手を差しだしてきた。
俺は握手をした。
なんだか気持ちいい。
にぎにぎ、ふさふさ。
肉球の弾力も相まってくせになるな……。
ふにふに……。
「あの?」
「あ。すみません。つい」
「いえ、いえ」
俺は名残惜しみながら握手を終えた。
「ところで、査定はどんな感じですか?」
「ああ、はい。はい」
スティンさんは手袋を装着し直し、拳の裏で角を何度か軽く叩く。
「これはなかなか立派なものですよ。はい。立派です。音、分かります? こーんこーんではなく、こんっこんっと鳴ります。中身が詰まっている証拠です。これは良い武器になりますよ。1本10オールで買い取らせていただければと思っております」
お。10体だから100オールか。
すげえ。日本円に換算して100万円だ。
もうワンセット狩れば安めの馬車が買えるぞ。馬は別料金だが。
「10対ですので200オール前後ですね。切り落としてからもう少し詳細に査定いたしますので増減すると思いますが、低くても150はいくでしょうね。うわぶれれば250でしょうか。後ほどギルドに取りに来ていただけばと思います」
「……! はい!」
そうだ。2本あるから倍だ。よっしゃ。
安めの馬車が買えるんじゃね?
「あ。ところで、スティンさんのギルドでは舌や頬肉は買い取りしませんか?」
「えっ?」
スティンさんは、俺に振り返った。ぎょっと目を見開いている。縦長の光彩が細くなっている気がする。
無口なブレージさんも角の向こうから、目を大きくした顔を俺に向けている。
スティンさんはゆっくりと牛頭巨人の頭部に向き直り、また、クルッと振り返る。
「えっ?」
「二度見ならぬ、二度振り返りをするほど俺はおかしなことを言ったのか?」
「え、あ、あーっ。ええ? 牛頭巨人の……舌……。頬肉……。いやー。『茨の束』にはそういうニーズはありませんが……」
スティンさんが顔を向けると、ブレージさんは首を左右にぶんぶんと振った。
「えっと、他のギルドに問いあわせてみます?」
「あ。変なこと聞いてすみません」
「ええ。はい」
スティンさんはのこぎり作業に戻る。
「牛頭巨人の舌は要りませんけど、ドラゴンの舌でしたら珍味ですので、もし、入手したら是非ともご連絡ください。はい。ものにもよりますが、牛頭巨人の角より高く買いますよ。昔から『火竜10体狩れば城が建つ』と言いましてね。ドラゴンに捨てるところはないのですが、魔力コアとなる心臓や血に次いで、舌が高く売れるんですよ。ええ。はい。竜の舌は食べれば寿命が延びると言われていますし、自らの炎で焼けない舌ですからね。どんな歯ごたえでどんな味をしているのか、気になりますでしょう?」
「ええ。なるほど。たしかに焼けない舌の味は気になる……。覚えておきます。では、あっちの死体を捨ててきます」
スティンさんが活き活きと他の部位について語りだしそうだったので、俺は作業に戻ることにした。
体力的には問題なかった。
兵士も手伝ってくれる。
しかし、それでも巨大な胴体10体と、頭部10個を運ぶのは、ひと苦労だった。
昼になると兵士にパンと肉とスープが配られた。
多分、軍の食糧だろう。
「アーサーさん。何してんですか。一緒に食いましょうや!」
「おっ、おう!」
ちらちら見てたら俺も貰えた。
パンを肉に挟んで食べたけど、誰も驚いてくれなかった。
レタス、トマト、肉ソースさえあれば、兵士たちを驚愕させられたのに……!
くっそ。現代知識ぶちかましてえ……!
「……みんな、知ってるか? 人間は、自分の肘を舐めることはできない」
「え? なに言っているんですか、アーサーさん。そんなわけ……」
「んー。本当ですか? あれ?」
兵士たちがもごもごくねくね動き始めた。
よし!
しかし、この程度の知識無双で得られる快楽は一瞬だ。もっとぶちかましてえ。
食後も昼休憩は続く。兵士たちは最小限だけが見張りにつき、残りはそこら辺の地面に寝転がっていた。畑の様子を見に来ていた農民もそこらに転がっている。昼寝文化があるっぽい。
俺、現地人の記憶を継承しているのに、知らないことだらけだなあ。
ゴロゴロしていたら、シャルロットとサフィが様子を見に来てくれた。
俺たちはシャルロットが出してくれた革のマントを路肩に敷いて座り、軽く雑談をする。
「そういや、シャルロットって王族なの?」
「やはり気づいてなかったか。リュミエールの家名を聞いてなんの反応も示さなかったのだから、そうだと思った。私は王弟の娘だ」
「めちゃくちゃ偉い人じゃん」
「アーサーは領主の息子だろ。有力貴族の名前くらいひととおり覚えておけ」
「ええ……。面倒そう……」
「私が王族だからって、変にかしこまるなよ」
「分かっているって。態度を変えたりしないよ。でも、なんで世直しの旅なんてしているんだ?」
「王族というのはけっこう面倒でな。現在の長男にまだ世継ぎが生まれていないから、王弟の娘の私が宮廷の近くにいない方が都合のいい者が大勢いるんだ。家にはいづらいんだから、どうせなら、人助けをする方がいいだろう?」
「なるほど。立派な志だ。いや、それにしても、次の次の世代の王位争いがもう始まってるなんて、宮廷は恐ろしい所だな」
「王族の女の腹が膨らむたびに、赤子より先に新たな権謀術数が生まれるのさ。私の腹に子種を注いだ瞬間、お前にも最下位付近だが王位継承権が生まれる。陰謀に巻きこまれるぞ」
シャルロットは、ふふふっ、からかうような笑みを浮かべた。
そのとき風が吹いて髪がさらりと揺れた。
頬にかかった髪を払う手の所作が美しい。
「いや。アーサーは実家を追放されていたな。今は平民階級か。なら、私たちが正式に挙式をすれば、私は王位継承権を失う。私たちの結婚を祝ってくれる者は多いだろう」
「あっ。そうだ。そのことに関連しているんだけど、聞きたいことがある。ザマーサレルクーズ家は壊滅したんだけど、もし俺の父親の死が確定したら、領主はどうなるの? 兵士が俺のことを新領主って呼んでからかってきたんだけど」
「あ。そうか。アーサーが爵位を得て領主になる可能性があるのか」
「やっぱり、そうなの?」
「ああ。通常この国では、領主に子がいる場合は子が世襲する。領主に子がいない場合は、財産と土地は没収されて国王の物になる。アーサーの場合、つまり追放された子が生きている場合は、その者が相続するはずだ。ただ、追放されたとき、神官が立ち会っていたんだよな?」
「うん」
「二元世界における二大権力が国家と教会であることは分かるな?」
「うん」
俺は分かる。サフィは話について来れず、とっくにシャルロットの膝枕で眠っている。
「ザマーサレルクーズ家の領地は、元々は国王から分配されたものだ。だが、教会の神官がいたのだ。早く対処しないと相続のトラブルになるぞ。教会はザマーサレルクーズ領を『誰のものでもない、神に返却されたもの』であると主張し『信仰の布教のために、教会の所有とする』と言うだろう。一方で国王は『王がザマーサレルクーズ家に与えていた土地だから、領主の死後は、国王に所有権が戻る』と主張するだろう。このようなトラブルはよくある」
「あー……。追放ってそういうトラブルのネタになるんだ……」
「国王はお前を領主にしたがるだろう。一方で教会は、お前の存在が邪魔になる」
「……暗殺とかされちゃう?」
「……可能性がないとは言いきれない」
「マジかよ……。シャルロットほどではないにしろ俺も、面倒な立場なんだな」
「ああ。ふふっ……。サフィのレベルを上げておいて良かったな。暗殺者に襲われても、どうにかなる」
シャルロットがサフィの頭を撫でる。
サフィは気持ちよさそうに「んにゃあ」と鳴いた。」
「俺、牛頭巨人の死体を片付け終えたらシャルロットと一緒に世直しの旅に出るつもりだったんだけど」
「相続関係は片付けておいた方がいいな。国王に魔法伝書鳩を飛ばしておくよ」
おじにはとか。わりとスゲえパワーワードだな。
「しばらくはこの街を拠点にして、周辺の村の様子を見て回ろう」
「おう」
ううん。昼休憩中の雑談にしてはインパクトある話題にしちまったぜ……。
途中からアーサーの相続にまつわる、ちょっと難しいお話だから、シャルロットが登場するあたりからすっとばしてもいいよ!
一言でまとめると
「追放された直後に親が死んだアーサー」が新領主になるかどうか、王族のシャルロットでもちょっと分からないという内容です。
それと、アーサーが領地を相続せずに庶民のままシャルロットと結婚すると、「シャルロットは王位継承権を失って気軽な立場になれる」という状況を説明しています。
~~~~~~~~~~
死体処理で何度目かの往復を終え、俺は森の端から出る。
牛頭巨人の頭部の傍らに、冒険者ギルドの関係者っぽい人がいるのが見えた。
ふたり組が2つだ。ペアで角を挟んで巨大のこぎりをひいている。
近づくと、その人たちはみんな、つなぎのような服に大きなベルトをして、そこへ革袋や小型リュックのような物をたくさんぶら下げていると分かった。ハンマーやピッケルらしき工具を背負っている。
俺はその人たちを驚かせないように、近い方のペアに小さめに声をかける。
「こんにちは」
「おや?」
そのペアはのこぎりを引く手を止めて、小柄な方が俺に振り返る。
何かしらの獣人の血が混じっているのか、頬に毛が生えている。
サフィよりも獣度が強めだ。
犬や猫ではない。狸とかアライグマとか、そっち方面の気がする。
20歳くらいだろうか。細い男なのか、胸が小さい女か分からない。
「ああ。聞き間違いではなかった。はい。こんにちは。おや? おや? もしかして貴方が、これを仕留めたというアーサー様で? シャルロットさんの依頼で、解体させてもらってます」
声から察するに女性だ。
「あ、いや、たしかに俺はアーサーだけど、仕留めたのはシャルロットだよ。俺は手伝っただけ」
「なるほど、なるほど。初めまして。私、冒険者ギルド『茨の束』(※)で、素材の剥ぎ取りや鑑定を担当している、スティンと申します。あっちので大きくて無口な方は、ブレージ」
※:茨は1本1本だと棘がある低木に過ぎないが、集めて束ねることにより強固な防御柵を築ける。力を合わせようという、ギルドの基本理念となっている。
ブレージさんがぺこりと大きな頭を下げた。
スティンさんは俺に近づくと手袋を外し、短い茶色の毛に覆われた手を差しだしてきた。
俺は握手をした。
なんだか気持ちいい。
にぎにぎ、ふさふさ。
肉球の弾力も相まってくせになるな……。
ふにふに……。
「あの?」
「あ。すみません。つい」
「いえ、いえ」
俺は名残惜しみながら握手を終えた。
「ところで、査定はどんな感じですか?」
「ああ、はい。はい」
スティンさんは手袋を装着し直し、拳の裏で角を何度か軽く叩く。
「これはなかなか立派なものですよ。はい。立派です。音、分かります? こーんこーんではなく、こんっこんっと鳴ります。中身が詰まっている証拠です。これは良い武器になりますよ。1本10オールで買い取らせていただければと思っております」
お。10体だから100オールか。
すげえ。日本円に換算して100万円だ。
もうワンセット狩れば安めの馬車が買えるぞ。馬は別料金だが。
「10対ですので200オール前後ですね。切り落としてからもう少し詳細に査定いたしますので増減すると思いますが、低くても150はいくでしょうね。うわぶれれば250でしょうか。後ほどギルドに取りに来ていただけばと思います」
「……! はい!」
そうだ。2本あるから倍だ。よっしゃ。
安めの馬車が買えるんじゃね?
「あ。ところで、スティンさんのギルドでは舌や頬肉は買い取りしませんか?」
「えっ?」
スティンさんは、俺に振り返った。ぎょっと目を見開いている。縦長の光彩が細くなっている気がする。
無口なブレージさんも角の向こうから、目を大きくした顔を俺に向けている。
スティンさんはゆっくりと牛頭巨人の頭部に向き直り、また、クルッと振り返る。
「えっ?」
「二度見ならぬ、二度振り返りをするほど俺はおかしなことを言ったのか?」
「え、あ、あーっ。ええ? 牛頭巨人の……舌……。頬肉……。いやー。『茨の束』にはそういうニーズはありませんが……」
スティンさんが顔を向けると、ブレージさんは首を左右にぶんぶんと振った。
「えっと、他のギルドに問いあわせてみます?」
「あ。変なこと聞いてすみません」
「ええ。はい」
スティンさんはのこぎり作業に戻る。
「牛頭巨人の舌は要りませんけど、ドラゴンの舌でしたら珍味ですので、もし、入手したら是非ともご連絡ください。はい。ものにもよりますが、牛頭巨人の角より高く買いますよ。昔から『火竜10体狩れば城が建つ』と言いましてね。ドラゴンに捨てるところはないのですが、魔力コアとなる心臓や血に次いで、舌が高く売れるんですよ。ええ。はい。竜の舌は食べれば寿命が延びると言われていますし、自らの炎で焼けない舌ですからね。どんな歯ごたえでどんな味をしているのか、気になりますでしょう?」
「ええ。なるほど。たしかに焼けない舌の味は気になる……。覚えておきます。では、あっちの死体を捨ててきます」
スティンさんが活き活きと他の部位について語りだしそうだったので、俺は作業に戻ることにした。
体力的には問題なかった。
兵士も手伝ってくれる。
しかし、それでも巨大な胴体10体と、頭部10個を運ぶのは、ひと苦労だった。
昼になると兵士にパンと肉とスープが配られた。
多分、軍の食糧だろう。
「アーサーさん。何してんですか。一緒に食いましょうや!」
「おっ、おう!」
ちらちら見てたら俺も貰えた。
パンを肉に挟んで食べたけど、誰も驚いてくれなかった。
レタス、トマト、肉ソースさえあれば、兵士たちを驚愕させられたのに……!
くっそ。現代知識ぶちかましてえ……!
「……みんな、知ってるか? 人間は、自分の肘を舐めることはできない」
「え? なに言っているんですか、アーサーさん。そんなわけ……」
「んー。本当ですか? あれ?」
兵士たちがもごもごくねくね動き始めた。
よし!
しかし、この程度の知識無双で得られる快楽は一瞬だ。もっとぶちかましてえ。
食後も昼休憩は続く。兵士たちは最小限だけが見張りにつき、残りはそこら辺の地面に寝転がっていた。畑の様子を見に来ていた農民もそこらに転がっている。昼寝文化があるっぽい。
俺、現地人の記憶を継承しているのに、知らないことだらけだなあ。
ゴロゴロしていたら、シャルロットとサフィが様子を見に来てくれた。
俺たちはシャルロットが出してくれた革のマントを路肩に敷いて座り、軽く雑談をする。
「そういや、シャルロットって王族なの?」
「やはり気づいてなかったか。リュミエールの家名を聞いてなんの反応も示さなかったのだから、そうだと思った。私は王弟の娘だ」
「めちゃくちゃ偉い人じゃん」
「アーサーは領主の息子だろ。有力貴族の名前くらいひととおり覚えておけ」
「ええ……。面倒そう……」
「私が王族だからって、変にかしこまるなよ」
「分かっているって。態度を変えたりしないよ。でも、なんで世直しの旅なんてしているんだ?」
「王族というのはけっこう面倒でな。現在の長男にまだ世継ぎが生まれていないから、王弟の娘の私が宮廷の近くにいない方が都合のいい者が大勢いるんだ。家にはいづらいんだから、どうせなら、人助けをする方がいいだろう?」
「なるほど。立派な志だ。いや、それにしても、次の次の世代の王位争いがもう始まってるなんて、宮廷は恐ろしい所だな」
「王族の女の腹が膨らむたびに、赤子より先に新たな権謀術数が生まれるのさ。私の腹に子種を注いだ瞬間、お前にも最下位付近だが王位継承権が生まれる。陰謀に巻きこまれるぞ」
シャルロットは、ふふふっ、からかうような笑みを浮かべた。
そのとき風が吹いて髪がさらりと揺れた。
頬にかかった髪を払う手の所作が美しい。
「いや。アーサーは実家を追放されていたな。今は平民階級か。なら、私たちが正式に挙式をすれば、私は王位継承権を失う。私たちの結婚を祝ってくれる者は多いだろう」
「あっ。そうだ。そのことに関連しているんだけど、聞きたいことがある。ザマーサレルクーズ家は壊滅したんだけど、もし俺の父親の死が確定したら、領主はどうなるの? 兵士が俺のことを新領主って呼んでからかってきたんだけど」
「あ。そうか。アーサーが爵位を得て領主になる可能性があるのか」
「やっぱり、そうなの?」
「ああ。通常この国では、領主に子がいる場合は子が世襲する。領主に子がいない場合は、財産と土地は没収されて国王の物になる。アーサーの場合、つまり追放された子が生きている場合は、その者が相続するはずだ。ただ、追放されたとき、神官が立ち会っていたんだよな?」
「うん」
「二元世界における二大権力が国家と教会であることは分かるな?」
「うん」
俺は分かる。サフィは話について来れず、とっくにシャルロットの膝枕で眠っている。
「ザマーサレルクーズ家の領地は、元々は国王から分配されたものだ。だが、教会の神官がいたのだ。早く対処しないと相続のトラブルになるぞ。教会はザマーサレルクーズ領を『誰のものでもない、神に返却されたもの』であると主張し『信仰の布教のために、教会の所有とする』と言うだろう。一方で国王は『王がザマーサレルクーズ家に与えていた土地だから、領主の死後は、国王に所有権が戻る』と主張するだろう。このようなトラブルはよくある」
「あー……。追放ってそういうトラブルのネタになるんだ……」
「国王はお前を領主にしたがるだろう。一方で教会は、お前の存在が邪魔になる」
「……暗殺とかされちゃう?」
「……可能性がないとは言いきれない」
「マジかよ……。シャルロットほどではないにしろ俺も、面倒な立場なんだな」
「ああ。ふふっ……。サフィのレベルを上げておいて良かったな。暗殺者に襲われても、どうにかなる」
シャルロットがサフィの頭を撫でる。
サフィは気持ちよさそうに「んにゃあ」と鳴いた。」
「俺、牛頭巨人の死体を片付け終えたらシャルロットと一緒に世直しの旅に出るつもりだったんだけど」
「相続関係は片付けておいた方がいいな。国王に魔法伝書鳩を飛ばしておくよ」
おじにはとか。わりとスゲえパワーワードだな。
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