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27話。逃げてきた2頭の馬に乗っていた人間がイキりだした
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背に人間を乗せた馬が二頭逃げてきた。
背後の決着を知らないから、まだ馬は恐怖している。落ち着かせて止めてあげよう。
「サフィ。あの馬を止める。馬の正面には立たないで。街道から出て」
「みゃ」
馬は目が顔の横にあるから、広い範囲を見渡せる反面、正面の視界が限られている。だから、真正面に立つと衝突の危険がある。
基本的に肉食獣は正面の獲物を狙うために、目が顔の前についている。猫とかライオンとか。正面に2つの目は、距離感を掴みやすい配置と言える。
馬やカピバラのような襲われる側の草食獣は、目が顔の横についていて視野が広くなっている。危険な猛獣が近づいてきたら、いち早く気づくことができる。その一方で、正面があまり見えていない。
餌やり体験をすると、人間は草食獣の口の前に餌を差しだしたがるが、動物がそれを見えてなくて指をかむ恐れがあるから、餌やりは横からの方が安全だ。
草食獣には臆病な動物が多いので、彼らから見えづらい正面からではなく、横方向から近づくと警戒されにくい。触れあいや餌やりは、横。
とはいえ、真っ正面から走ってくる馬に進路を譲ると、止めることができない。恐怖で暴走しかけているから、早く止めてあげたい。
馬は暴走しすぎたりストレスを感じすぎたりすると、死んでしまうこともある。
俺は敢えて街道のど真ん中に立ち、二頭の中央に陣取る。
「ステータスオープン。弱く点滅!」
ポスターのような巨大なステータスウインドウを出し、驚かさない程度に光量を絞ってゆっくり点滅させ、馬に俺の存在をアピールする。
正面の障害物に気づいた馬が、全力疾走から速歩に緩める。
俺は後方に歩きながら馬と歩調を合わせ、優しく声をかけ続ける。
「大丈夫だ。モンスターは退治した。もう安全だよ。どーう。どう。どーう、どう」
馬に安心感を与えるに、俺は穏やかに声をかける。
「みゃあみゃあ」
サフィも何か言っている。馬語だろうか。
馬は勢いを落としていき常歩になり、やがて脚を止めた。
「よーしよし。賢い子だ。もう大丈夫だぞ」
さいわいなことに俺は貴族の息子として乗馬経験があったようだ。
馬の暴走を止めたいという一心で行動していたが、馬の扱いには慣れていたようだ。止める知識があって良かったあ。
「ブルルルル」
「馬がありがとうって言ってるみゃ」
俺はサフィと一緒に馬の頭をやさしく撫でる。
「可愛いなあ。よしよし」
「可愛いみゃあ。よしよし」
俺たちが馬を可愛がっていると――。
「この、馬鹿馬!」
ガッ!
馬の背中に乗っていた人間が、いきなり馬の後頭部を殴りやがった。
「いきなり暴走しやがって! 僕やキャスリンの服が泥だらけになったじゃないか! この馬鹿!」
男が再び腕を振り上げる。
「やめろ! ステータスオープン!」
「ぐわあああああああああっ! 目があああああっ! うわっ、ぎゃあああっ!」
ドサッ!
顔を押さえながら仰け反った男は、落馬した。足が鞍の鐙に引っかかったままなので、男は下半身が浮いた半吊り状態になる。
「きゃあ! マーク! なんてことするのよ、この乱暴者!」
もう一頭の馬に乗っていた女が喚いた。
馬が悲しそうな顔で、耳をぺたーんと下げる。
「あのなあ。お前ら。馬が逃げてくれたおかげで、熊モン(※)に殺されずに済んだんだぞ。足場が悪いんだし、熊モンは多分だけど短距離なら馬より速いぞ」
※:熊モンスター略して熊モン。九州のゆるキャラとは関係ない。
「知らないわよ! 買ってもらったばかりのお気に入りの服が泥だらけよ! 泥地を走るなんて馬鹿よ! すれ違った白馬の女が、私たちの進路を妨害したのよ! 参事会役員(※)のパパに言いつけてやる!」
※:都市の政治を担う偉い人。現代日本だと、市議会議員に近い。参事会役員は裁判権や徴税権も持つため、議員より権力が強いと言える。また、選挙で選ばれたわけではなく、金持ちやギルドの長など、権力者がその地位に就く。
「そ、そうだ! 僕もパパに言いつけてやる! 僕のパパはニュールンベージュの衣料品問屋のボスなんだからな! ぼさっとしてないで、早く俺の足を鐙から外せ! この馬鹿!」
「お、おう……。つまり、おふたりはニュールンベージュのお偉いさんの子どもってわけね」
俺、そこの元領主の息子だし、次の領主になるかも知れないんだが……。
いや、まあ現状だとただの職業不詳の無職だが。
背後の決着を知らないから、まだ馬は恐怖している。落ち着かせて止めてあげよう。
「サフィ。あの馬を止める。馬の正面には立たないで。街道から出て」
「みゃ」
馬は目が顔の横にあるから、広い範囲を見渡せる反面、正面の視界が限られている。だから、真正面に立つと衝突の危険がある。
基本的に肉食獣は正面の獲物を狙うために、目が顔の前についている。猫とかライオンとか。正面に2つの目は、距離感を掴みやすい配置と言える。
馬やカピバラのような襲われる側の草食獣は、目が顔の横についていて視野が広くなっている。危険な猛獣が近づいてきたら、いち早く気づくことができる。その一方で、正面があまり見えていない。
餌やり体験をすると、人間は草食獣の口の前に餌を差しだしたがるが、動物がそれを見えてなくて指をかむ恐れがあるから、餌やりは横からの方が安全だ。
草食獣には臆病な動物が多いので、彼らから見えづらい正面からではなく、横方向から近づくと警戒されにくい。触れあいや餌やりは、横。
とはいえ、真っ正面から走ってくる馬に進路を譲ると、止めることができない。恐怖で暴走しかけているから、早く止めてあげたい。
馬は暴走しすぎたりストレスを感じすぎたりすると、死んでしまうこともある。
俺は敢えて街道のど真ん中に立ち、二頭の中央に陣取る。
「ステータスオープン。弱く点滅!」
ポスターのような巨大なステータスウインドウを出し、驚かさない程度に光量を絞ってゆっくり点滅させ、馬に俺の存在をアピールする。
正面の障害物に気づいた馬が、全力疾走から速歩に緩める。
俺は後方に歩きながら馬と歩調を合わせ、優しく声をかけ続ける。
「大丈夫だ。モンスターは退治した。もう安全だよ。どーう。どう。どーう、どう」
馬に安心感を与えるに、俺は穏やかに声をかける。
「みゃあみゃあ」
サフィも何か言っている。馬語だろうか。
馬は勢いを落としていき常歩になり、やがて脚を止めた。
「よーしよし。賢い子だ。もう大丈夫だぞ」
さいわいなことに俺は貴族の息子として乗馬経験があったようだ。
馬の暴走を止めたいという一心で行動していたが、馬の扱いには慣れていたようだ。止める知識があって良かったあ。
「ブルルルル」
「馬がありがとうって言ってるみゃ」
俺はサフィと一緒に馬の頭をやさしく撫でる。
「可愛いなあ。よしよし」
「可愛いみゃあ。よしよし」
俺たちが馬を可愛がっていると――。
「この、馬鹿馬!」
ガッ!
馬の背中に乗っていた人間が、いきなり馬の後頭部を殴りやがった。
「いきなり暴走しやがって! 僕やキャスリンの服が泥だらけになったじゃないか! この馬鹿!」
男が再び腕を振り上げる。
「やめろ! ステータスオープン!」
「ぐわあああああああああっ! 目があああああっ! うわっ、ぎゃあああっ!」
ドサッ!
顔を押さえながら仰け反った男は、落馬した。足が鞍の鐙に引っかかったままなので、男は下半身が浮いた半吊り状態になる。
「きゃあ! マーク! なんてことするのよ、この乱暴者!」
もう一頭の馬に乗っていた女が喚いた。
馬が悲しそうな顔で、耳をぺたーんと下げる。
「あのなあ。お前ら。馬が逃げてくれたおかげで、熊モン(※)に殺されずに済んだんだぞ。足場が悪いんだし、熊モンは多分だけど短距離なら馬より速いぞ」
※:熊モンスター略して熊モン。九州のゆるキャラとは関係ない。
「知らないわよ! 買ってもらったばかりのお気に入りの服が泥だらけよ! 泥地を走るなんて馬鹿よ! すれ違った白馬の女が、私たちの進路を妨害したのよ! 参事会役員(※)のパパに言いつけてやる!」
※:都市の政治を担う偉い人。現代日本だと、市議会議員に近い。参事会役員は裁判権や徴税権も持つため、議員より権力が強いと言える。また、選挙で選ばれたわけではなく、金持ちやギルドの長など、権力者がその地位に就く。
「そ、そうだ! 僕もパパに言いつけてやる! 僕のパパはニュールンベージュの衣料品問屋のボスなんだからな! ぼさっとしてないで、早く俺の足を鐙から外せ! この馬鹿!」
「お、おう……。つまり、おふたりはニュールンベージュのお偉いさんの子どもってわけね」
俺、そこの元領主の息子だし、次の領主になるかも知れないんだが……。
いや、まあ現状だとただの職業不詳の無職だが。
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◇
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