スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する

うーぱー

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59話。シャルロットの語る推測に、俺は震える

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 ……。

 …………。

 ………………?

 ……なんか口の周りがベトベトする。

「う、うーん……」

「起きたか」

「え? あ……」

 俺は地面に倒れている。すぐ隣にはシャルロットが正座している。俺の方に上半身を傾けているようだ。
 その手には、瓶が握られている。

 どうやら回復ポーションを飲まされたらしい。

 ん?
 意識のない俺がどうやってポーションを飲んだんだ?

 まさか、漫画やアニメでよくある、美少女が主人公に口移しでクスリを飲ませるやつ?!

「シャル。も、もしかして、く、口づ――」

「よく聞け。続きはあとだ」

「続きがあるようなことをしたのか?!」

 俺は上半身を勢いよく起こし、シャルロットの両肩をつかもうとして、また意識を失うわけにはいかないので我慢する。
 力をこめた指先がプルプル震える。

 つ、続きとはいったい……!

 ……ん?

 興奮した俺とは裏腹に、シャルロットは凄く冷静だ。
 治療行為かも知れないが、お、俺とキスをしたのに、ど、どうして、そんなに冷めている……。

「重要なことが分かった」

「え?」

 シャルロットがあまりにも真剣な態度だから、俺もおふざけはやめる。
 いったい何が……。

 シャルロットが立ち上がるから俺も立ち上がる。

「これだ」

 シャルロットが指先でゴロツキAの手元をさす。
 彼は、ベルトが途中からちぎれた首輪を持っている。

「ん?」

 なんだあれ。
 ……あ、そうだ。
 ゴロツキAが首輪をはずそうとしてたとき、俺はシャルロットの尻をぺちっと叩いて意識を失ったんだっけ。

 ということは、意識を失ってから、まだほとんど時間は過ぎていない。

「彼が首輪を破壊したときに魔力が漏れた。私はその魔力に覚えがある」

 シャルロットはゴロツキAに顔を向ける。

「お前達の主は誰だ? 奴隷契約の時に名を聞いただろう」

「それは……」

 ゴロツキAはBとCに顔を向ける。
 ゴロツキたちは怯えたような顔を向けあうと、視線を彷徨わせた。

「すまない。聞くことではなかったな。契約次第では、首輪を付けたままのふたりが何かしらのペナルティを負うかもしれない。ひとつ質問する。可能なら、首で答えよ。お前達の主は奴隷商マダライか?」

 その名はつい数日前に聞いたからまだ覚えている。サフィの元主だ。

 ゴロツキたちは、若干困惑した顔で首を左右に振った。

「やはりな……」

 シャルロットは俺に振り向く。表情は深刻だ。

「お前の父親、この辺りの奴隷商の元締めスボスラ・ザマーサレルクーズは死んだんだよな?」

「ああ。牛頭巨人ミノタウロスに食べられただろうから死体は見つかってないけど」

「本当に死んだのか?」

「え?」

「彼らの首輪はなぜ外れない? 奴隷魔法や奴隷スキルは、主が死ねば解除される」

「何もおかしくないだろ。こいつらの主は、親父じゃないってだけだ」

「サフィが奴隷契約を結んでいた商人マダライを覚えているか?」

「ああ。小汚いおっさんだな。あいつが黒幕なのか?」

「違う」

 シャルロットが俺に近づく。胸が触れそうな距離、というか先端が触れる。ハグしてディープキスする距離だ。

 こ、こんなところで、いきなり続きが始まるのか!

 俺はドキドキして意識を失いそうになる。

 しかし、この接近は、サフィに聞かせないための配慮らしい。

「サフィの首輪から感じる力の気配と、この男が付けていた首輪から感じる力の気配が同じだ」

「え?」

 サフィは主が俺に変わっただけで、まだ奴隷契約が続行中だ。

 シャルロットが俺から離れる。

 俺はゴロツキたちをちらっと見てから、シャルロットに顔を向ける。

「でも、こいつらの主はマダライじゃないんだろ? おかしくないか?」

「ああ。だから、厄介なんだ。私の嫌な予想が的中してしまった」

「え?」

「彼らの主とマダライは、スボスラの奴隷だ。スボスラの奴隷契約スキルは、『奴隷契約能力を付与する』こともできる。奴隷にした部下に命令して奴隷を集めさせた。私はそう推測して、この地を探っていた」

「奴隷に奴隷契約能力を付与する? そんな凄いスキルが存在するのか。チートじゃないか……」

「ああ。300年前にこの地で奴隷帝国を築いた殺戮魔王ヴァバラーグと同じスキルだ。お前の親だし、それくらいのチートスキルが使えても驚かない。案外、お前には殺戮魔王の血が流れているのかもしれないな……。いや、いま言う冗談ではないか」

「親父は……死んだはず……」

「スボスラが死んでいれば、マダライの能力も、彼らの主の能力も消えるはずだ。消えていないということは……」

「10頭の牛頭巨人ミノタウロスに襲撃されたんだぞ?!」

「死体は見ていないのだろう?」

「……!」

「あの屋敷は元々が戦闘城塞だ」

「ああ。兵士も言っていた。ニュールンベージュが敵軍に包囲されたときは屋敷を外部の拠点として使い、包囲軍を攻撃するって」

「アーサーは迫害されていたのだろう? だったら、お前に知らされていない緊急時用の地下通路があったとしても不思議ではない」

「……ッ!」

 シャルロットに近づかれたときに感じた胸の高鳴りは、既に別種の振動に変わっている。温まっていた体は、既に冷え切っている。

 いつの間にか体が小刻みに震えている……。

「つまり、親父は生きていて、未だに奴隷スキルで人々を苦しめているのか」

「ああ。あの屋敷にはスボスラの手下がいて、想像以上に危険なことが起きている可能性がある」

 シャルロットが屋敷の方へ首を向ける。
 俺も同じようにするが、土壁があるから中は見えない。

「さて、理想は、私ひとりで屋敷に突入し、悪人をすべて切り捨てることだが」

「俺も行く」

「親と戦えるのか?」

「へっ。俺は、追放を宣告された直後に、弟に抱きついてリバーブローを喰らわせた男だぜ」

「何をしているんだお前は……。ここに残って、サフィ達を守れ、といっても聞かないだろうな」

「ああ。サフィや、この子や、馬たち、あとついでにこの可哀想な奴隷たちは、俺やお前と一緒にいる方が安全だ。特に、この子は近くにいた方がいい。敵は、この子をモンスターホールに落とそうとしていた。何か嫌な予感がする」

 あのクソ親父が何を企んでいるのか知らないが、その野望は俺が打ち砕いてみせる!
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