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攻め視点~過去~
2話 君がいないと息もできない
人生は減点式で出来ている。
ただそれだけの事だから言われたとおりにすれば何も問題ない。
そんな人生観を途中まで本気で持っていた。
実際、言う通りにすればなんでも上手くいったし、できた。他人からすれば、恵まれた環境ではあったのだと思う。
なにより丸暗記は得意だった。勉強もコミュニケーションも、今では洗練された方法が取り揃っている。
マニュアル通りにすれば、大体が上手くいった。細かい予想外の事もあったけれど、あくまで誤差の範囲でしかない。
中学くらいまでは、本当にそれでいいと思っていた。
言われたとおりに進学して、言われたとおりの相手と結婚して、家を継いで。
それですべて上手くいく。
何を不安に思う事があるだろう。すべてを受け入れればいいだけのことだ。
そんな日常が、息苦しさで窒息しそうになっているのにやっと気づいたのは高校の時だった。
なにもかも上手くいっている筈なのに猛烈な不安感と虚無感に駆られ、人知れず途方に暮れていた。
それでも毎日″求められている自分″は演じ切った。しかし演じていればいるほど、なにもかもが作り物のように感じて、自分が何者なのかわからなくなっていく。
そんな息苦しさで生きていながら、社会の厳しさはどんどん露呈していく。
言われたとおりにやってるだけではダメなのだと。そうでなくても上手くやれている人もいて、普段上手くやれていても一瞬のミスで地に落ちてしまう人すらいた。
何が正解なのか、正解とはなんなのかわからなくなって、世界が歪んで見えた。正解と思っていたものは、未熟ゆえの思い込みだったのだろうか。
ただでさえ息苦しさを感じ始めていた俺には"減点式"の人生観が逆に自分を苦しめ、これから歩いていく先が見えなくなっていた。
──────そんな時に君と出会った。
あの時は誰かと会うのが嫌気がさしていて、人を避けてブラブラと歩いていた。
君のことはよく見かけていた。いつも一人で本を読んでいて、群れずに落ち着いている様子が妙に記憶に焼きついて、目でよく追うようになっていて、気にはなっていた。
「ねぇ、なに読んでるの?」
そう声をかけると、君は少し驚いてから本の表紙を見せてきた。それは俺も良く愛読している作家さんの新作だった。
意外に趣味が合う事が分かると、それからよく話すようになって、段々一緒にいる時間が増えていった。
君と話すと、心が軽くなる。息ができる。酸素が全身に巡っていく。どうしてかわからないけど、一緒に居ればいるほど今まで以上に生きている実感を持てた。
君が笑ってくれると胸が高鳴る。もっと喜んで欲しい。いろいろな表情の君が見たい。何よりずっとずっと一緒にいたくて、君ばかり考えるようになった。
なにより君といる時間は素の自分でいられたのも大きかった。
こんな心地良い人と出会ったのは初めてだったから逆に少し不安も覚える。お互いどこまで踏み込んでいいのかと。
だからあまり踏み込んでなかったし踏み込ませないようにしていたけれど、もっと一緒にいたくて、その事を打ち明けると君も同じだと知った時は嬉しかった。
俺達は似たもの同士で、同じ寂しさを抱えていて、それでもそれを隠して生きていて。君を知れば知るほど、ひとつになっていくような気がして、もっと君に触れたくなっていた。
「───っ…!」
「あ、ごめ………」
我に返ると、吸い込まれるようにその唇を重ねていた事に気づいた。
急いで距離を取ったけれど、一瞬触れただけのその唇の感触が妙に俺の唇にも残ってしまっていた。
もっとこの感覚が欲しい。意思確認もせずに、プライバシーを犯したことの罪悪感よりも、その気持ちが抑えきれなかった。
突然のことで君は目を白黒させながら沸騰するようにみるみる顔ばかりでなく耳まで赤くしている。
可愛い。
申し訳なさよりも、それ以上に、君が愛しくて仕方ない自分に気付いた。
「ねぇ、嫌じゃなかったら───」
もう一回していい?
そう訊きくと、君は顔を赤くしたまま静かにコクリと小さく傾いた。
待ちかねていた俺は、怖がらせないよう、できるだけゆっくりと再び唇を重ねた。
ただそれだけの事だから言われたとおりにすれば何も問題ない。
そんな人生観を途中まで本気で持っていた。
実際、言う通りにすればなんでも上手くいったし、できた。他人からすれば、恵まれた環境ではあったのだと思う。
なにより丸暗記は得意だった。勉強もコミュニケーションも、今では洗練された方法が取り揃っている。
マニュアル通りにすれば、大体が上手くいった。細かい予想外の事もあったけれど、あくまで誤差の範囲でしかない。
中学くらいまでは、本当にそれでいいと思っていた。
言われたとおりに進学して、言われたとおりの相手と結婚して、家を継いで。
それですべて上手くいく。
何を不安に思う事があるだろう。すべてを受け入れればいいだけのことだ。
そんな日常が、息苦しさで窒息しそうになっているのにやっと気づいたのは高校の時だった。
なにもかも上手くいっている筈なのに猛烈な不安感と虚無感に駆られ、人知れず途方に暮れていた。
それでも毎日″求められている自分″は演じ切った。しかし演じていればいるほど、なにもかもが作り物のように感じて、自分が何者なのかわからなくなっていく。
そんな息苦しさで生きていながら、社会の厳しさはどんどん露呈していく。
言われたとおりにやってるだけではダメなのだと。そうでなくても上手くやれている人もいて、普段上手くやれていても一瞬のミスで地に落ちてしまう人すらいた。
何が正解なのか、正解とはなんなのかわからなくなって、世界が歪んで見えた。正解と思っていたものは、未熟ゆえの思い込みだったのだろうか。
ただでさえ息苦しさを感じ始めていた俺には"減点式"の人生観が逆に自分を苦しめ、これから歩いていく先が見えなくなっていた。
──────そんな時に君と出会った。
あの時は誰かと会うのが嫌気がさしていて、人を避けてブラブラと歩いていた。
君のことはよく見かけていた。いつも一人で本を読んでいて、群れずに落ち着いている様子が妙に記憶に焼きついて、目でよく追うようになっていて、気にはなっていた。
「ねぇ、なに読んでるの?」
そう声をかけると、君は少し驚いてから本の表紙を見せてきた。それは俺も良く愛読している作家さんの新作だった。
意外に趣味が合う事が分かると、それからよく話すようになって、段々一緒にいる時間が増えていった。
君と話すと、心が軽くなる。息ができる。酸素が全身に巡っていく。どうしてかわからないけど、一緒に居ればいるほど今まで以上に生きている実感を持てた。
君が笑ってくれると胸が高鳴る。もっと喜んで欲しい。いろいろな表情の君が見たい。何よりずっとずっと一緒にいたくて、君ばかり考えるようになった。
なにより君といる時間は素の自分でいられたのも大きかった。
こんな心地良い人と出会ったのは初めてだったから逆に少し不安も覚える。お互いどこまで踏み込んでいいのかと。
だからあまり踏み込んでなかったし踏み込ませないようにしていたけれど、もっと一緒にいたくて、その事を打ち明けると君も同じだと知った時は嬉しかった。
俺達は似たもの同士で、同じ寂しさを抱えていて、それでもそれを隠して生きていて。君を知れば知るほど、ひとつになっていくような気がして、もっと君に触れたくなっていた。
「───っ…!」
「あ、ごめ………」
我に返ると、吸い込まれるようにその唇を重ねていた事に気づいた。
急いで距離を取ったけれど、一瞬触れただけのその唇の感触が妙に俺の唇にも残ってしまっていた。
もっとこの感覚が欲しい。意思確認もせずに、プライバシーを犯したことの罪悪感よりも、その気持ちが抑えきれなかった。
突然のことで君は目を白黒させながら沸騰するようにみるみる顔ばかりでなく耳まで赤くしている。
可愛い。
申し訳なさよりも、それ以上に、君が愛しくて仕方ない自分に気付いた。
「ねぇ、嫌じゃなかったら───」
もう一回していい?
そう訊きくと、君は顔を赤くしたまま静かにコクリと小さく傾いた。
待ちかねていた俺は、怖がらせないよう、できるだけゆっくりと再び唇を重ねた。
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