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かもめ7440

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 店の前は質屋なのだが、
 髭を綺麗に剃った店主と途方に暮れている女に出会う。
 洒脱な趣を持つ老僧と、若さに任せた放恣のはてに腑におちぬ立場へとおちた女。
 頬に触れるだけで、黒ずみ、しぼんで、くたくたになりそうな―――女・・。
 リーディング・ケース
 主 要 判 例 といったところか―――。
    、、、、、、、、、      、、、、、、
 しかし金も味方もない人間というのは、独特の雰囲気があるものだ。
 数奇な運命にもてあそばれた涙の体験、それもこよなき一齣、
 ―――身近な人の冗談や軽口に傷ついたような眼つきをして・・
 彼等は、『筋の通った質問』やまた『筋の通らないような質問』をいくつかした。
 [表情豊かでぬくもりを感じさせる木彫りのドア]
 (さわがしい履物の音は遠い世界の音・・)
 何か大切なことを思い出したかのように口をつぐみ、
 何者かの視線を感じた武道家のような風情で左斜め後方を振り返る。
 ―――顕微鏡で見られる透明なバクテリアみたいに、
 うさぎダービーさながらの猖狂―――。
 ―――啼け!
 無声映画みたいに伝わってくる・・。
 奇抜な印象のエメナルドグリーンの髪で、百七十五センチぐらい、
 金属のワイヤーか何かのように情界の熱き波瀾、
 ―――羊の伝染性海綿状脳症・・
 昼下がりの光をきらきらと反射している。
 小さな子供と樹の影の対比、比較対象物を入れた説明的な写真。
 >>>隣に赤髪のお姫様がいるが。
  インテルプンクトゥム
 ・・・句読点。
 >>>草原地帯に遺伝的に緑髪になる部族がいた気がするが・・。
 ―――偶然の一致かも知れない。
 欧州系の顔立ちをした美人だ。
 武闘服(稽古着かも知れなかったが、)に、
 胸当てと、ナックルダスターがあるのでそう思った。
 、 、 、 、 、 、 、 
 う ま の あ し が た ・・。
 ―――独占・専売というモノラールレコード。
 手首から肘にかけて包帯を意味ありげに巻いていて、
 ―――サポート目的か・・、
 頭に鉢巻をしている。
 [武闘家は、グローブや鉄の爪、鉄球などを装備するが、]
 ―――敗戦で世界に名をはせたマレーの虎。

 ・・・シードは、こいつは気合が入ってるな、と思った。
 多が一の多、一が多の一、動即静、静即動・・。
 どうも『武闘家』のようだ。
 シードは、シシ・リー・ジュリー先生のことを思い出す。
 、、、、 、、、、、、、、、、
 心の隅に、その想いを置いている。  
 太陽をコンパスにする、図案のような鳥の群れ。
 中断することはでき――
 (―――出てくるものは、【好戦的な性格】や【強気】でも・・)
 投石機に載せられた憐れな人のように、フワリと身体が持ち上がり、
 まるで空を飛んでいるような感覚・・
 非力に過ぎる・・化石化した、堪え難い重み・・・。
 あみかけをいくつもかさねたように皮膚の色をかえる。
 意識が路地裏を舐める風になる。
 狭い路地にお互いに張り出した窓・・。
 >>>いま、先生は何をしているだろ―――う・・。
 荒れた自然の呼吸くまま鼓動は昂まる・・。

 [シード・リャシアット]
(女性だが、中々どうして、しっかりした身体つきをしている。)
 
 //“一巻の終わりといった表情の女性武闘家と質屋”
 【scene《軽快な計算機》】
 セーブポイント上で△ボタンを押してミッションを選択せよ。
 蜘蛛の巣のように縦横無尽に残る隈なく駈けめぐる、水の音。
 
 [リオ・サーリャ]
(・・・ついに野宿だー―――)

 茎の奥底に微かながら夏の香りがまだ宿っていて、
 かき消えそうに奥に伝わってくる。
 どこまでも続く路地と雑踏のせいかも知れない。
 かくも恙無く、世にも稀なる書物のように・・。
 「いい筋肉がついてる、ちゃんと修行しているな。」
 シードもストイックな性質だから共感を覚える。
     、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 しかも、しっかりと女性らしさを残していることに好感を覚える。
 弱き器をあつかうようなこわれやすさのなかの焦がれ・・。
 やらしい意味ではないのだが、筋肉で形成されたヒップラインというのはいい。
 [状況に応じてスローからファストまで沈降速度を変える訓練の賜物]
 >>>バルキーではあるけれど、華奢というのは追い込んでいるからだ。
 ***腹部はおそらくバキバキに割れたシックスパック
 さながらモデル台に立ってあらゆる角度の視線の雨を浴びるみたいに、
 ポーズ かど
 姿態に角というものがない。
 認識の裂き難い不審、とりとめのない雲・・太陽を背にしながら、逆光―――。
 少なくとも、“立ち姿”と、遠くの人間を『わずかにうかがう眼』がいい・・。

 “遠くにいる相手に視線を送る”というのは、要するに、
 近い相手に【不意打ち】を食らわすための伏線。
 鞘の中に隠された、匕首のように鋭い爪・・。
 四大の峻烈な意志は生活の残渣や夾雑物を掃き出す・・。
 遠い相手に視線を送りながら別の相手に近づくことは、
 『相手の油断を生む効果』もある。また・・。

 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 正三角形となるポジションに立ってはいけない、
 ―――バランス感覚がいいということ、手の下の手、足の中の足・・
 、、、、、、
 武闘家的直感 と い う も の が あ る な ら 、
 シードはその何気ない立ち姿のなかに才能や実力を嗅ぎとった。
 (相手が格上であれ、自分に弱点があるのであれ、)
 [物資で補う、戦略や方法で抜けきってみせるという地力を感じる・・]
 カメラ・アイ・・・。
 でもそれを見てピグが、
 ・・・ワザトデスヨネ?
 「・・・ご主人様が、お前いい身体してるな、と言ってる。」
 ソリアが露骨に、眉間に皺を寄せる・・。 
 (誰がどう考えても、スケベな男のようにしか思われない・・)
 古い一筋の光のように時の斜面を滑り落ちていく。
 酒でも飲んだように血の色が上がる女性、
 連れ込み宿に連れ込まれた娘のようなぎこちなさで、
 舌の上に黄金のピラミッドが立つ。
 眉や鼻や唇や、やせた頬の肉が一時に集中されたように、顔じゅうが尖るほど、
 女の眼は凝りあがってみえた。
 飛んでいるピストン、昇る圧力計・・!
 躍動あふれるエモーショナルなジェスチャー・・。
 瞳が太古の金粉をまとまってゆく。

 「私は、売り物じゃない!」

 しいんとした午さがりの弱い陽ざしのなかで、
 紅梅の花弁が鮮明だ―――。
 「だから誤解を招くような言い方をするな!」
 ピグ氏、デコピンされる・・。
 (うう・・っつ―――)(れも・・)(らって・・・)

 [ギディオン=ソリア=チャリントン]
(ピグちゃん・・怒るな、あれは・・・)

 相手の一番弱い部分を狙い澄まし、
 一瞬のうちに短い言葉で刺し貫くのは、
 一種の才能かも知れない。
 「褒められるのが嫌なら筋肉を鍛えるな!」
 言った・・! 絞りを開けて周囲をぼかす、集中効果!
 心理的に相手を呑むことにより戦わずして制する・・。

 「ご主人様は、そういう下界畜生道など既に超越されている!」
 「いわば、ドリブルしながら、
 サッカボールは恋人さと投げキッスする馬鹿!
 踊れ、さけべ、足をそろえろ河童!」
 「北京原人に謝れ、民衆の正義!!!」

 (意味がわからない・・)
 ピグ氏、マジギレ・・。
 女性が返答に窮したところで、不条理言語で畳みかけるのがピグ流。
 すなわち宇宙には実にさまざまな意識の段階があるので、
 ときおり、不可思議な誤謬がうまれ、
 エリア51に不法侵入してグレイ型宇宙人と遭遇する・・。

 「ご主人様をなめるなよ、
 へそで茶をわかして鼻スパだし、
 耳からハンバーグだよ! この脳筋女、
 心にダムはあるのかい!
 おとといきやがれ!」
 もう帰れ、と言いたかった。
 シードはピグの頭をむぎゅっと押さえつけ、
 乾いた雲が飾り窓の向こうに貼りつけられたような、眼・・。
 暗い夏の反響する梢の間を彷徨う―――。

 「・・・いや、格好から武闘家だと推察して、
 いい筋肉がついているので、
 きちんとした修行をしているんだな、と思ったんだ。
 これでも武闘の心得がある。つい懐かしくなって、
 ジロジロ見てしまった。
 うちの馬鹿が、アホなことを言ってすまない。」
 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 頭を無理矢理下げさせられる屈辱的なポーズ。

 「・・・ムギュウ、」

 女性の眼が一瞬やわらいだように見えたが、
 やはり微笑というのは得体の知れない意図を無数に含んでいる。
 ここは―――武闘家らしく、自分の力量を知らせ、
 周囲に具体化された様々な人間性を一つに統合しなくてはいけない。
 ―――美しい女だとは思うが、そういう邪な考えは一つもない。

 「・・・武闘家は拳で語り合うもの、」
 シードはおもむろに地面に拳を打ち付け地面に亀裂をはしらせる。
 鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をする、リオ。
 種も仕掛けもない。勘も――常識も、そう言ってる――・・。
 初対面のソリアだったら震えあがったかも知れない・・。
 (シードの口許に微かに浮いたのは、そういう笑み・・)
 でも錆びついた正しさを研ぎださなければいけない。
 一連の動作は自らの訓練によって得たものであり、
 長い時間をかけて身体に覚え込ませた動きの発現である。
 優れた武道家が見せる触感、内部の命、魂の声だ・・。
 描かれた線が、抛物線であることを、祈るばかり――だ・・。
 「―――拳は嘘をつかない。」

 自問自答の末、そこに理屈はもどってゆく。
 受身に失敗して脳震盪を起こしても、また師匠に挑みかかっていく・・。
 頭の中の世界像が歪んだまま固定されていつまでも焦点を結ばない・・。
 ―――感情の制御方法・・。

 「いい拳だ、気に入った、」
 その後、近付いて、シードが軽く拳を近づけると、
 リオも軽く拳を固めて接触させる。
 
 人と人同士は結局分かり合えないから、
 自分の肉体的限界を求める。
 過去の糟粕に拘泥することをやめ、
 一個の人間の意志にならなくてはいけない。

 “接する時の呼吸”というか、『爽やかさは天性』のもの―――。
 まるで[一緒に汗を流し、「一緒の釜の飯を食べた仲間」]のような気がする


 「・・・ありがとう、・・すまない、性差別じゃないんだが、 
 女性で武闘家は珍しいな。シードだ。」
 「いや、よく言われる。リオだ。」
 気持ちのいい笑顔が広がった。
 「俺は焦熱赫怒拳を習っていた。」
 急にテンションが変わる、シシ・リー・ジュリーのお弟子さんか?
 「それはすごい、私はまだ正確に誰かに教えを受けているわけじゃない。
 これが焦熱赫怒拳のボディか―――なるほど、いい身体している・・」
 胴体の力に着目した独自のトレーニングメソッド・・。
 圧倒的な力でねじ伏せるスタイルの焦熱赫怒拳の秘密・・。
 (世界八大拳の一つ、)
 [身体部位の実在感と、身体部位の位置や動きに関する意識体験]
 ―――少女のような年齢かも知れない、とシードはふと思った。
 リオが、嬉しそうな顔をしながらペタペタと、胸や腹部や腕に触る。
 ―――ソリアは、武闘家同士ではありなのかなと思った。

 一瞬、ソリアは自分も格闘技の経験があるのでと、
 嘘をついて触ろうかと思ったが、
 ―――そのあと、弁解する自信がないので、止めた。
 ・・・好きな男性に触りたい、と思うのはどうしてだろう?

 「是非、一度稽古をつけてもらいたい。」
 「稽古はあれだが、稽古の前に冷や水をかぶるだけでも気は引き締まる。」
 ―――というか、いつもそうやってから稽古に入っていた。
 「それに、見たところ、―――動きが散漫だ、
 関節を押さえれば最小限の力で自由を奪えるみたいなことを、
 いつも考えておいた方がいい。」

 ピグに制されたような一瞬を、言ってる。
 対モンスターだったら、油断させた次の瞬間、襲いかかってくる・・。
 そこで陳腐なようだが、きわめて有効な考え方として、
 a.タイミングを外さない 
 b.常に状況を分析する 
 c.直感や閃きの一瞬を意識する
 >>>でも対人間なら、油断もいいかも知れない。
 炎の中に封じた多量の闇は、まず、鈍麻な感性から生まれる。
 (たとえば。ゆっくり動くことで正確な動作を身に付けられる、
 体力的負担の少ない方法で時間をかけて脳にインプットできる。)

 こんな時するのが、常に半身になる、
 相手の片眼を見るという方法だ。
 
 でも―――。
 でも、だ・・。
 
 本当のアドバイスは、
 強さを追求することばかりに気をとられていると、
 見失うものが多いんじゃないか。
    、、、、、、、、、、、、、、、、
 ―――眼の玉を耳の付け根へでもつけとけ、と。
 (気難しい先生だったから、アドバイスの仕方も一癖も二癖もあった。)
 [強くなることとは必ずしも人の心の深さに比例するものではない]
 >>>でも、何かを究めようと思ったら自分の頭で考えるしかない。
 『運動神経』は優れているが『応用力に欠ける』タイプ・・。
 数年、武術の心得がある人に指導されたら解決すると思うが―――。
 もちろん、シード程の腕前を持った者でなければ気付く粗でもないが・・。

 「なるほど、勉強に・・なる。」
 より深い、より確実な感能・・。
 練習熱心なんだな、とシードは思った。心の角度を慧敏に感じ取る。
 でも、これに、ピグが言った。
 「ご主人様は、これでも夜の武闘家。いくぜ、女よ、
 ベッドの上で裸になれ、脳筋女でも締められない場所があるのだ、それは、
 股間の焦熱赫怒拳―――高速ピストンで女性を倒す・・!
 夜の稽古は、もう止められない! 止まらない!」
 ソリアの顔が真っ赤になる。
 リオは後悔と羞恥とのいろを瞬間にたたえたが、
     、、、、、、、、、、、
 まもなく気の強くなったような顔をする。でもエルフ節は止まらぬよ!
 のろま、亀! 遅刻ッツ!遅刻ッツ!遅刻!
 やあ、やあ、めかして何処へどこへ行くのだ・・!
 >>>このエルフ、死にたいのか?
 、、、、 、、、、、、、、、、、、、、、、
 シードは、質屋の店主に細い眼をしながら言う。
 ・・・あの質屋さん、このエルフ売っていいですかね?
 ―――いいよ。

 [ギディオン=ソリア=チャリントン]
 (軽いなあ、この質屋・・)

     、、、、、、
 ソリアがどうかしたの、と聞く。
 ハッと表情が変わったので、第一王女だと気付いたようだ。
 地球のうえにおかれた素足のような存在感・・。
 「でも、質屋に売るなんて、相当切羽詰ってるじゃない。」
 ―――見たところ、リオは働いているように見えない。
 >>>でも家出を疑わないのが、武闘家娘の宿命・・。
 「いやあ―――宿泊費が・・」
 「ちなみに年齢は?」とシード。
 「十九―――です。」
 いつのまにか、喋り方が変わっている。
 どうも『格上の人物』と見做したようだ・・。
 「どこかで働いていたのか?」
 「働いていたけど、尻さわられて―――、
 殴ってクビになった。」
 武闘家だから腕に覚えがある。
 いやいや、そんなことをする奴が最低なんだぞ、と言える社会は遠い。 
 
 「それで何、売ろうとしていたんだ?」
 微妙な思わせ振りの秘密告げ顔・・。
 「そこの、洞窟、―――古代遺跡らしいんだけど、
 ・・で仕入れてきたアイテム・・。」
 どれ、見てやろう、と言うと、
 ひとつお願いします、と相好くずしながら言ってくる。
 ―――見たところ、『魔石』だ。魔石はMPを回復してくれる。
 (ヒースにやったら喜ぶかも知れない。)
 ほかにも能力開発系の種子のようだ。
 たとえば、魔力の流動、伝達がスムーズになる。
 そうすることで、魔法の威力に影響をもたらす。
 ・・・買ってくれるところなら高く買ってくれるが、
 、、、、、、、、
 質屋は違うだろう、というのが見解だった。
 (宝石のついた王冠とか、金の類、
 あるいは鑑定書つきの絵画、レアアイテムなら買ってくれるだろうが、)
 ―――『魔石』や『能力開発系の種子』は・・。

 「・・・道具屋なら買ってくれるんじゃない?」とソリア
 「いやいや、こんな時はピグを売ればいいよ。」とシード。
 「ご主人様もてあそぶだけもてあそんで、
 ・・・・ステテスマワナイデ!」
 「してねえよ!」

 シードはリオの顔を見ながら逡巡する。
 これだけ若いのに普通は嫌がる武闘の道へ進もうとする、
 将来有望な女の子である。
 ―――ここは気前よく買ってやるのが、先達の仕事というものではないか。

 「このアイテム、俺が買い取ろう。」
 「よかったな、脳筋体育会系女、
 ご主人様はお前のような格下にも、
 性奴隷という素晴らしい役目をさずけられたぞ!」
 パチコン、とデコピンしてから・・。
 ふっと、シードの表情が暗くなる。
 、、、、、 、、、、、、、、、、
 体裁が悪く、頭がぐらぐらしてくる。
 何も言わず、精魂込めてつくりあげてきた煉瓦の家が、
 たかだか台風ひとつでふきとんでしまう。
 ピグが何か喋るたびに―――自分の評価が著しく下がるような・・。

 しかし、気を取り直して、心配そうに見つめるリオに言う。
 さすがに身体を求められるというようなことは考えていないと思うが、
 無理難題をふっかけられると思われるのは心外だ。

 「・・・出世払いでいい、シュタイン純金貨10枚と交換しよう。」
 「け、けっ、契約成立・・」
 ちょっと出し過ぎじゃないか、とピグが見ている。
 でもソリアは逆に労力に合っていないんじゃないか、と見ているようだ。
 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 でもそれだけの金があれば当分は修行に専念できるだろう、と思った。
 お金は時間を買うためにある―――ようは・・、
 お金に振り回されながらの修行など修行ではない。

 今度はこういうアイテムを売る時は道具屋へ行った方がいい、
 と真っ当なアドバイスをしてから

 「じゃあ、達者でな。」
 と、気持ち良く別れようとすると、
 一緒についてくる、あれ、立ち止まる・・。
 、、、、、、、、、、、 、、
 わけもなくぎっくりする、リオ。
 おどおどしながら、はじめ半分ばかり見せた顔をだんだんに引っ込めてゆく。
 腎臓の冷えた水音、腸をかけめぐる風―――。
 毒針の刺すような凝視・・。
 一瞬眼が合ったので、目配せして、また歩く。
 一分ぐらい一緒に歩いていたので、
 ・・・さすがにこれは変だなと思い始めてくる。
 だんだん視野に大きく明瞭に入るようになってくる・・。
 うまくいえないが、それは『階段にたくさんいる猫』と話しているような気がする。すうとうすい鉛筆でひいたように薄く流れている斜体を眼の端で見ている。
 と、こらえきれなくなったピグが鳩も驚くようなあけすけな笑い声をして、
 、、、、 、、、、 、、、、 、、、、
 ささくれのささやきのささめきのさざなみのとかいいながら・・、
 「オレイニヨバイシマス?」
 「チョット、ソノツモリ?」
 「ダスモンダサセタオレイニダサセテオク?」

 ―――ピグではないが、一同冗談はともかくそこはやはり気になる。
 こういう時、ピグの好奇心旺盛な精神というのは助かる・・。
 シードは何かあるのだろうと思って聞けないし、
 ソリアは不躾だからと思って尋ねない。

 「違う、こっちに宿が。」
 ―――そこに、ヒースの泊まっている宿が・・。

 単純に、こんな偶然もあるものだろうが―――。
 ヒースが紹介したいと言っていた人物というのは―――女・・?

 「もしかして、ヒースって知ってるか?」
 リオが何か言おうとしながら口を噤んだ。
 表情は瞼の顫えたのをきっかけに、一層の冷たさと蒼白さを加えた。

 「・・・そんな気がしてましたけど、」

 じゃあ、言おうよ、ということにはならない不思議。

 「―――私がそもそも家を出ることになった、
 相棒の魔法使いですね。兄貴分ということになってます。」
 「なってます?」
 「・・フフ、宿賃を酒に女に替える素晴らしい人―――。」

 と、言ってから、おもむろに壁をズガアアアンと殴りつけた。
 左足を半歩前へ。
 、、、、、、
 ソリアが見る、―――シードと同じ瞬間移動しているような不気味な疾やさ。 
 電影的な残像をのこしながら、縫い針、ミシン針がゆく、
 加振により、肘関節が徐々に屈曲する。
 上腕二頭筋の筋紡錘への振動刺激―――。
 関節可動域を超えた位置まで伸展したと錯覚する、
 身体システム内部に想定される中枢と末梢とのあいだで、
 『制御する側』と『制御される側』の主従関係が崩壊する。
 身体反映性が同時複数性を呼び起こす。
 [前足で地面を蹴って後ろ足で粘り強くバネを意識した前進運動が起こっている、
 腹筋で吊り上げられた着地点は弛められた膝の力をも拳にまとわせている。]
 ―――上半身と下半身、膝の角度、手の力、全体の・・。
 (刀を素早く抜刀し野菜や果物などを切断し、素早く納刀してみせるような、)
 [かいしんのいちげき・・]
 ***決定的瞬間のスポットライト、、、

 中心部分に“拳の形”がくっきりと浮かんでおり、
 拳からぱらぱらと壁の破片が散らばっている。
 黒の画用紙にWHITEを散らして花弁を表現するように、
 、、、、、、
 ナイスパンチ、と言いたかった。
 ・・・レールの微かな震えを聴き取る。
 身体の中を漂っていた音楽がしずかに止まる。

 「・・・でもあんな紹介するのも恥ずかしい馬鹿な兄貴分に、
 まさかこんな素晴らしい知り合いがいた、
 とは夢にも思いませんでした。」
 
 夕方から夜になろうとしている。
 トワイライトの時間帯は田園に都会人が生活することを許すもの・・。
 やや煙り始めた空気にすばらしい魔術が廻り始める。
 くんでもくんでも尽きない平明な神秘が宿っている夕方から、
 深く考え抜かれたあとの句読点のように、
 あるいは宿命が与えたほくろのように、それは無言のうちに揺らぎなく、
 夜空のひとつの場所に自らの位置を定めている。

 バクハツするみたいに、
 顔を真赤にして喋っていまし―――た・・。

 「リオ・サーリャです。
 こんな千載一遇は、二度とありません。
 弟子にして下さい。」
 ―――と言われてもなあ、と思ったが、
 こんな熱い言われ方をされて引き下がるのは男ではない。
 [力強い拳、大胆な心、公正な魂、まじめな恐ろしい眼。]
 (―――思い込みが強そうで、)
 在りし日の自分を彷彿させる・・。やせた、虚弱な、色の青い、寡黙で内省的で、
 、、、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 少年で、物質上の欠乏のためにまた精神上の暗黒のために、
 “一つの旗”しか、あげられない人物・・。

 (申請――登録・・の流れ―― 脳内に描かれる場面・・・)
  [武闘家リオ]を≪仲間≫に加えた。

 「いいだろう、ただ・・」 
 「ただ? なんですか?」

 いぬの・・・くびわは・・・つけられない―――。 
 いきりたがりピグ降臨、
 ・・不意に、鼠を救った弁護士。
 バルテルミー・ド・シャサネを思い出す・・。
 パシパシ、とリオの頭をはたく動作をする。
        、、、、、、、、、、、、、、、、、
 注目すべきは、リオの咽喉仏から鎖骨のあたりの変化・・。
 散らかってる火薬を集め―――たような・・。
 いやいや閉じた莟がひとつひとつ脈絡なくひらい―――たような・・。
 「今日からお前、あたしのことを姐さんって呼べよ。
 この脳筋体育会系ムスメ感ただよわせている、
 リオとかいうコムスメ。
 でなけりゃ、三秒で血の海だからな。」
 ヒースにやったからリオにもやる・・。
 (ソリアがそうされたら、頭を撫でていたかも知れない、と思う)
 ―――でも、相手はソリアではない、
 むぎゅっ、とリオがピグを掴まえた。
 ・・・ニューヨークの名門ホテル、ウォルドルフ・アストリアに、
 爆竹を投げつける、キース・ムーン!
 「蚊が・・。」
 ご主人様、ご主人様、これは駄目、これは駄目、と言う。
 本気で殺してしまいそうだったので、制止する。
 「―――やめてやってくれ。」
 

   *


 ヒースとリオが泊まっている宿泊施設の建物は老朽化しているが、
 “冒険者の初心者向け”や“ギルド系の安い宿”という方針でもあるのか、
 ―――と、リオが立ち話をしながら説明してくれたのだが、
 『良心的な値段』だ。
 、、、、、、、、、、
 自分でもここに泊まる。
 二階から酔客の放歌が聞えるのはあれだが・・。
 (何だか意味のわからない歌を合唱している、)
 海老の鬼殻焼きを何故か想像する。
 それにしても・・。
 “長い梯子”を『屋根に立てかけている』のは何故だろう?
 ―――雨漏り?
 でも家というのは不思議なもので、住む人のこころが歴然とあらわれ、
 外観を見ただけで、およその見当がついてしまうものである。
 食堂での、女優の、下品な大きい似顔絵を思い出す。 

 (旅行案内にも載っていないような小さな宿―――。)
 >>>だが、こういうところに限ってサービスがいい。
    、、、、、、、、、、、、
 なお、サービスというのは二通りある。
 一つは愛想がよく、こまやかな接客をしてくれる。
 [シーツの交換のほかに服の洗濯もしてくれる]
 (この類の人は面倒見がいい人なので、道具の補充も請け負ってくれたり、
 欲しいものを揃えてくれたりする。)
 ―――なお、面倒見がいいとは言ったが、それだけではなく、 
 それが『客商売』である・・。
 新参者や故郷はなれたところからきた冒険者にはこれが、むやみやたらにきく。
 この手の客商売をするうえで欠かせないのは、
 1、温かい家庭であること
 2、優しくて頼りがいのおばさんがいること
       、、、、、、、、、、、、、、、、、
 もう一つは、二人組で泊まれば食事が無料になる類のことだ。
 (ピグはカウントしてくれなさそうな気もしたが・・)
 [格安の宿泊費こみの食事付きは何しろ有り難い、]
 こういう“痒いところに手が届くサービス”をするのは何も『利益第一』だからではない、この手の場合はわけあり系で、過去にそういう知り合いがいたとか、
 、、、、、、、、、、、
 親戚や両親がという場合などがある。

 一度シードが宿泊したところなどでは、 
 自分の恋人がそうだったからというのもあった。
 ほかにもやたら冒険者や、モンスター情報の話に詳しく、
 武器や防具の話も豊富、世界中の土地の情報を有している例もあった。
 なんだったらギルド系まがいの仕事の斡旋までしていて、場合によっては、
 それで飯食えるんじゃないかという人もいる。
 
 安くしようとかサービスしようと考える人というのは、
 どこかに、奉仕精神なり、人付き合いの最良の部分を持っていると言える。

 しかし、大通りがあれほど人間でごった返しているのに、
 ―――大きな街の舞台装置の熱気を演出するエキストラではないだろうか?
 古い羅紗のすりきれた風采の上がらぬ服、仮綴じの本の頁・・。
 こういうところは人を寄せつけない磁場のように人通りがほとんどない。

 その時だった・・
 ズズン――

 地の底から轟くような響き、建物が軋む不吉な音、
 そして、全身を揺さぶる強烈な振動。
 夕明りがまだ漂っている中空に、
 くらい蝙蝠が暗を縫いながら低く地べたをすれすれに馳ったりしていた。
 「じ、地震だっ!?」
 誰かの叫びは、この状況を実に的確に表していた。

 黄色の小さなゴム毬のようなものが草の中をぴょんぴょん跳ねている。
 何だと思ったら―――鳥・・。
 山の方の空が黒く染まった・・巨大ひらめのような影・・集団移動―――。
 それは一枚の紙きれにすぎない死んだような白さとは対照的なものだった。
 “心理学の定義”も、
 『不幸というものの限界』をよく云いあてた言葉であるみたいに。

 そういえばさっき、『竜が飛んでいた』ことを思い出した。
 、、、 、、、、、、、、、、、、、、
 あれは、地震の前触れだったのだろうか、と思った。

 揺れが止むと、また何事もなかったかのような日没間際の気の緩みが襲う。
 梢に光る黄昏の光が、蛸の肢のように揺れ、
 黄色い水飴みたいにいつまでも引き延ばされている。
 シェーマン・シェファーの後戻りの盗塁・・。


    *


 ヒースはまだ帰ってこないのか、とシードが聞く。
 「多分、もっと夜だと思いますよ。」
 (アイツ、何してるんだ・・)
 しかしシードは感情を流露させる声で言った。
 それは“競馬場の芝生の上を走る馬”を想像させた。
 突風が吹いた―――。
 人生の次の段階へ進んでいこうとさせる、風・・。
 「じゃあ、ここで、ソリア、召喚の儀式をやろうか。」
 「道具とかは?」と首をねじるようにして振り向くソリア。
 背中を波立たせ深く息を吸う・・。
 コンキスタドール
 新大陸征服者―――の心持ちだろう・・か・・表情フィードバック、初々しい・・。
 
 「必要ない。そういう古典的な方法も、嫌いではないが。」
 、、、、、、、、、、、、、、、、 
 大宇宙が意識に満ちあふれる魔法陣。
 それは『神の円環』であり、
 そこにおける“記号や魔法文字”は《大宇宙の縮図》だ。
 
 ―――これは“願望実現”としての『呪文』の効果に似ている。
 ありきたりの言葉は“表層意識”が跳ね返すが、
 普段聞きなれない言葉が“潜在意識”や“集合的無意識”へと、
 這入っていくのに似ている。
 絢爛豊満な黄金時代を現出させるというといささか誇大妄想気味だが、
 奇術師が帽子から鳩や兎や万国旗を引っ張り出すようなもの・・。
 (錯覚や思い込みといえば聞こえは悪いが、けして似て非なるものではない、)
 舞台装置を用意するのは、『奇術における仕込み』
 それは燃性を密封するようなものと考えれば分かり易い、
 ―――魔術も奇術も揺れる水の壁を越えていかなくてはいけない。
 (水晶球に魔法鏡、身に着ける円牌、供物、手には魔法杖、
 また明るいよりも暗い方が精神的傾向を強めるから、蝋燭―――香を焚く・・。)
 >>>現実から非現実へと遠ざかる帆・・
 そしてできうるなら、身体を浄め、一時間は精神集中をし、
 分厚い魔法書を持ち、長口舌の呪文を威厳たっぷりに唱えれば、
 、、
 最高―――スフィンクスの白々しい微笑。
 原因と結果の間にまた無数の過去の原因と結果が
 前後しつつひしめき合い崩れ合う。
 シアノアクレリート
 強力接着剤・・精密な配置と手順の再現性が要求されるが・・・。
 我々には『魔法言語』というものがある。
 魔素のエレメンタムを形成する平行調の音符・・。
 [ある事物の呪術的資質、呪術的事物、呪術的存在、呪術的作用・・]
 ・・宇宙のことわりをあらわす手法に、道具はもはや必要ない。
 と、ピグが余計なことを言う。
 「・・・ご主人様は、大魔法使いのマーク・フェルド先生仕込みだから。」

 世界で五本の指に入る、魔法使い・・。
 世界で初めての魔法も開発した人物―――。

 しかし、そう言うと、ソリアが不思議そうな顔をした。
 「・・・それならどうして、召喚魔獣を持っていないの?」
 答えは簡単である。
 シードはピグを見つめた。底辺を蹴って浮き上り、今は人間性を展らくばかり。
 「・・・こんな生意気な口のきき方をするエルフはすぐに、
 喰われてしまう。」
 ソリアが笑った。
 ピグは静電気を起こしたように直立している。
 「本当に・・・?」
 「まあ、必要性を感じなかっただけだ。」
 と言ってから周囲を見渡す。
 さすがにこんなところで召喚の儀式は目立ちすぎる。 
 宿の庭でやろうと裏へまわると大きな子供三人に、
 小さな子供がいじめられている場面に遭遇した。
 下ぶくれの、泣きそうな顔に心を揺らされる。
 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 嫌な気分が水の中の蛭のように靴の底に空いた穴から這い上がってくる気分・・。

 1、正面対決
 2、距離を置く
 3、計画的問題解決
 4、肯定的再評価

 ―――表情の険しさを承認した時の窗ガラスに叩きつける雨脚・・。
 まるで頬に電極を刺され、電流を流されたような引き攣った顔。 
 黴の生えた昔、おぼろげな遠い昔の記憶・・。
 (狐みたいな細い顔つき、坊主頭でいかつい顔、広く平べったい顔の三人と、
 憂鬱で小柄な顔の一人・・。)
 >>>痩せていて、ひょろひょろしている・・。
 ――最初はふざけているのかと思ったが、
 「金持ってこいって言っただろ。」と穏当ではない表現が出たり、
 金属質の咽喉笛・・・
 ―――少し上向き加減の尖った鼻さき・・。
 げじげじ虫でも這うような厭な掻くような音をたて、
 「オラオラ。」
 と殴る蹴るをやり始めたのでそう判断した。
 フィールド上のカードを破壊する効果・・・。
 呼気―――肺―――横隔膜・・。
 ソリアは、唇や眼が意志の強さのように引き締まるのを見つめた。
 シードのつめたい亀のように瘠せた皺が額のところに寄った。
 ―――そんなのは友達ではない。
 相手が格下なら何をやってもいいと思ってる手合い。
 よく出ればシニカルな現実主義者の性格を形成、
 悪く出れば臆病で引っ込み思案。
 ・・・丸い眼が―――身体と不相応に大きくて・・
 (・・特別な人間などこの世界中の何処にもいない。)
 ―――そこにあるのは何処かへ運ばれていくためのツールだ。
 ・・・胸から腹へと辿る、硬いしこり、凹んだ臍・・。
 共同生活をおくる上で当然発生するであろう軋轢・・。
 スケープゴート、スクールカースト・・
 発達プロセスを適切に踏むことと、コミュニケーションの地形効果・・
 つながりの社会性が顕在化したコミュニケーションの連鎖―――。
 うん、と言ってみる・・
 >>>君は幾何学的な模様を見ている
 ***個人が自力で拠り所とする小さな物語を
 決断的に選び取らなければならない状況
 こういう人間が大人になったら、どうなるんだろうと思う。
 暴力や戦争が―――類人猿に退化させる・・。
 [ゴキブリやクモやフナムシ][イジメの常習者][要注意人物]
 >>>でも人間の世界は【支配】だ・・。
 シードは、手出しをしない。
 逃げる場所 も こころ の なか――
 知的で冷静なタイプと―――お嬢様タイプ、体育会系タイプ・・。
 ソリアとリオが、見ていられなくなって手出しをしようとする。
 ・・・慈愛にみちた人間、世の中のわずらいごとに手出しするの図。
 >>>お利口さん達はこれだから困る。
 (脳筋はこれだから、困る、とピグ・・)
 ・・・でも、金平糖みたいにキラキラしてる、言葉も、感性も・・。
 、、、、、、
 シードが制止する。
 「余計な真似をするな!」
 ピグに行け、と命じる。
 「シードの言葉とは思われない!」
 「師匠はあんなのを平気で見過ごす人ですか!」
 とりたてて、リオのキレ方がすさまじい。まるで親の敵でも見つけたような勢いだ。二人は抗議したが、シードがぴしゃりと言う。
 
 「俺達が手を出したって解決しない、と言ってるんだ。
 冷静になれ・・大人が、子供の世界に立ち入るなら、
 全部面倒を見る時だけだ。そうでなきゃ、近い将来、
 また同じことが繰り返される。根を断つことが、
 一朝一夕で出来ると言うなら、やって来い!
 そんなのが優しさなら、街頭にでも立って喧伝してこい、
 生兵法は怪我のもとだ! 立派な考え方に潜む、 
 押し付けがましい意見の正体もわからないのか! 
 目先のことにとらわれていると、現実解決能力が身に着かない。
 アイツは、そのことでまた言葉を失うんだ、
 みじめになるんだ、しかも、眼の前の障害は、
 絶対になくなることはないんだ!」
 シードは熱い人だ、とソリアが引き下がる。
 リオはふてくされてはいたが、一理あると思ったのか、 
 、、、、、
 一歩下がる。
 ピント・フリーズ・・!
 チッ、と舌うちしたリオに微笑みかける・・。
 自由 な 君が わる いわけじゃな い、
 、、、、、、 、
 正直にぶつか る ―――
 ――非合意反応や特異反応・・
 「人間の善意を信じてること、それが強さで正しさだ、
 ―――リオ、お前の武闘家としての在り方を、
 否定するものじゃない。」
 リオが頬を染める・・。

 気が付くと梯子段から踏み外したような常識の上で、
 尻餅をついているリオ。
 胸にこみあげる疑惑―――短い断想・・その純粋に徹底した態度。
 鳴りやまない警報が――する・・!
 
 「・・・お前たちは、そういうのとかかわらない人間だから、
 よくわかってないんだ。世の中は粘着質で、怯懦で、 
 心の中に蛆虫をうごめかせてる奴なんざわんさかいるんだよ」
 バッサリといく、シード。
 「・・・まあ、ピグに任せれば大丈夫だ。」

 力はただ振るっても意味がない。
 それは感覚の鈍磨であり、心地よい忘却である。
 それはいつも【簡単な事務】のように処理されてゆく―――。
 わき腹のほねが規則正しく波をうつ。都市の泥濘こそ地の大法。
 羞恥も顧慮も無い、平明な、むしろ嫌厭するような顔をして、
 そうだ―――。
 そうだろう・・。
 シードの眼には城下町を取り囲む壁―――。
 凹凸し、錯雑し、鋸形をし、入り組み、広い裂け目を入り口の門とする、壁。
 でも、閉めたあとまでさきの姿が眼にのこっていて離れない。
 だが間もなく車の輪のやすむようにばったり停った。

 「おいおい、コノヤロ、弱い者いじめとか許さねえぞコラ。
 お天道様が許しても、世界の神様が許してもな、
 このピグ様が許さねえぞ、コラ!」
 ピューッツ、と子供たちの前で、よじれた手袋みたいな格好で、
 おいおい待たせたな、
 いきりたがりピグ降臨。
 かっきり描かれた、いもりのような腹赤な唇。喧囂状の化石。
 でもいじめられていた小さな子供には、
 ・・・勇気、それがどんなにかすれた無造作な線だったとしても、
 小さな小さな太陽がオリンポスの殿堂のように生まれて、
 身体の内部をあたたかく照らしていく。
 ―――いやそれは大袈裟だろう・・。
 (なんでこんな頼りない奴が、と思ったかも知れない・・)
 でも、掌サイズのすんなりとした生き物が波の浸食を緩める。
 ・・・こう聞こえなかったか?
 名状し難い騒擾の声を雲の中まで立ち上らすような、
 激励に・・未知のその先は、やっぱり消え失せているかも知れないけど、
 胸が熱くならなかったか・・。
 
 ともあれピグは、やる気満々。
 電熱コイルにスイッチがはいった感じで、眦が釣り上がり、
 ツリ目キャラにアプローチ。
 シモネタキャラ、姐さんキャラ、妖精神拳、
 ―――ついにツリ目キャラ!
 
 「何だこいつ小さいくせに!」
 「なめてんじゃねえぞコラ!」
 何しろ、彼らの目の前に立つ者が誰か、はっきりしたからだろう。
 ―――なだらかな擂鉢状・・。
 引き込む―――。
 「・・・ピグ様の強さを拝みやがれ!」
 ぐらぐらした苛立った癇癪が額に筋を立てる。
 、、、、、
 戦闘モード・・。
 でも、ピグは小さいけれどすばしっこいうえ、実は強烈な蹴りを持っている。
 “より早い瞬間”から“より遅い瞬間”へと向かう―――。
 小さいといって馬鹿にしているとやられる。
 武闘の師範級のシードが、ピグに喧嘩の指導をしているのだ。
 >>>ソリアやリオが心配するのもわかる・・。
 確かに体格差が圧倒的な相手に勝つことは難しい。
 それはゆるがしがたい事実であり事態であるが、
 これはあからさまに純粋に書き記された通りの説明・・。
 そう、『意表はつけないか』と・・。
 またパンチ力や、キック力は確かに劣るかも知れない。
 でも、『急所にあてればダメージを与えられないか』と。
 ―――シードはピグに勝つための方法をいくつも教えた。
 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 正常は不可能な性格を同化吸収してしまう性質。

 戦いは始まっているのだ!
 握っていた手が殆ど無感覚になるほど、永くつかんでいた。
 タイミングを見計らってそこを叩く!

 [ギディオン=ソリア=チャリントン]
 (あれが―――妖精神拳・・)
 ***違いますよ!!!

 シュオオン!
 狐みたいな細い顔つきの子供の耳にバシュッと蹴りを入れる。アイタッ!
 相手を見て、直感で感じ取る力。
 自分がどのように振る舞うと、相手は一体どんな風に応じてくるのか。
 二撃、三撃―――耳をおさえて蹲る、刺されたような鈍痛・・。
 何やってんだよ、と坊主頭でいかつい顔のリーダー格の子供、
 おそらくそれに追従する広く平べったい顔の子供が不思議がる。

 でもすでに小さな者は弱いという信仰を愚かに受け取っている・・。

 「おい、コドモ! 金玉蹴り上げろ!」 
 、、 、、、、、、、、、、
 瞬間、ピグに言われてやった。
 立派な反則技だが、この場合はよい。
 「ああああああっつ!」と悶絶する。
 ナイスキック!!!
 そのまま、ピグが耳をガブッと噛んでいる。
 いたいいたい・・泣き出した―――。
 オラオラ、とさらにピグが頭部に強烈な蹴りをいれている。
 ソリアは、ピグちゃんがあまりにも可愛いので笑った。
 あやしげな洞窟に突入せよ、ジャングルクルーズ!
 「・・・コノヤロ、お前もこうだ。」
 大柄で、坊主頭でいかつい顔のリーダー格の子供、
 そいつの鼻を『瞬殺ピグ蹴り』する。
 鼻血がピューッと出てくる。うわあ、痛い・・情けない声。

 [リオ・サーリャ]
 (偏見抜きで見れば―――あの蹴り、相当痛いぞ・・)

 リオはすっかりピグに感心する。
 (世界一のパンチ力を持ったモンハナシャコの話・・)
 さっきはわざと自分に捕まえられていたのかも知れない。
 (多分、シードに甘えていたのだろう・・)
 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
 術中にはまって凡庸な才能を鍍金した墓場にはいるところだった。

 コミカルな動きや、ファンシーな姿かたちに眼を眩まされていた。
 その小ささや、口先だけの印象に決定的に隠蔽されていた本質・・。
 仮にも、焦熱赫怒拳の使い手と旅をしてきたエルフである―――。

 >>>どんな人物か見定める狙いもあったのだろう。
 本気でやっていたら、掴まえるのも難しかったかも知れない。
 と、言葉を慎重に発音し、言葉と言葉のあいだに長く間をとって、
 [自分の声の妙に「分別ある結論に到達しようとする考え」]を取り除いた・・。
 力でねじ伏せようとすれば術中にはまって余計にカッカするだろう。
 ―――何故そうしたか?
 簡単だ、油断があった自分をあのエルフは的確に見抜いた、
 メンタルに難のあることなど容易に分析され・・た、
 そういう傲慢にも似た意識は理性や拡がりを持たない。
 ・・・攻撃できなければ、相手を倒すことなど出来ないのだ。
 どうりで、行かせるわけだ、と思う。
 リオは、ピグのことを見直した―――。
 
 そんなリオの表情を見てシードが見込みありだな、と顎に手を置いて思う。
 ソリアはいまだにピグが可愛くて、ちょっと強いだけの生き物だと思ってる・・。
 そうじゃない、その気になれば、ピグはリオにだって勝てたのだ・・。
 (ヒースには勝てない、魔法の攻撃は、ピグには回避できないからだ・・) 
 (遠距離攻撃に難があるからこそ、一番あやうい接近攻撃に出て活路を作る。)
 すさまじい逆転の発想・・あのエルフがどんな修行をしたかよく考えればわかる、
 ―――けれど、リオはそう言っているが、
 油断と精神攻撃の二点が取り除かれれば、
 ・・・ピグは、リオに勝つことは出来ないだろう。

 でも、小さなモンスターが、
 ありえないぐらい強いかもしれないという教訓は、
 身に着けておかなければならない。
 
 「おい、コドモ、いまだ、こいつの頭をタコナグリだ!」

 ぶんぶかぶんぶか・・。
 これに、ピグがマジギレ内燃機関する。言い訳無用の展開。

 「もっと本気で殴れよ! 眼血走らせて殴れ、
 感情の泡を炸裂させろ、
 アドレナリン噴出させろ、
 力こめて、うおおおおいいながら殴れ!
 小さいからって馬鹿にするような奴なんか絶対に許すな!
 そんな、へなちょこパンチがきくか! 腰いれろ!」
 小さな軍曹にテコ入れされて、眼を怒らせて殴る。
 先程よりも、攻撃力はついているようだ。
 それにしても、ピグのスタミナは凄い・・。
 あれだけ動き回っているのにちっともくたびれた様子を見せない。
     、、、、、、、、、、、
 しかも、あのぴいぴい声に息切れが混じることはない。

 「そしてお前もこうだ!」
 ピグ、眼に砂を入れる。ヒールの試合みたいだった。
 これにはシードが苦笑した。
 そんなこと、教えてないぞ・・。
 ―――でも、まあ、大目に見よう。
 (小さな生き物が大きな生き物に勝とうと思ったら、
 まともな方法では駄目だ、眼つぶしも立派な戦法だ・・)
 >>>なりふり構わないから勝てる!
 “火傷”をするのは、『火をこわがること』から始まる・・。
 「よし、コドモ、顔面に蹴りを入れろ!」
 「えっ、でも!」
 「いいからやれ! やり返さないとつけあがるぞ!
 とことんやれ! チンコついてるのか!」
 (ピグ式喧嘩術!)
 どこからか砂がこぼれ落ちるらしい音・・。 
 勇気を振り絞ったような顔をして、
 バコンと、顔に蹴りを入れる。
 「よし!」とピグが言う。

 数分後の結末―――。
 いじめていた全員がもんどりを打ってる。
 それが―――先程まで大きな石のようにのさばっていたとは思えないほどに、だ。
 きらきらと輝きながらざわめき立つ、勝利―――。
 線香花火の最後の玉が落ちるように、
 ―――最後の仕上げといこう、
 「・・・よし、ソリア、行け。」
 うん、とソリアが肯いた。

 オミソレシマシタ・・
 リオが、見事な手腕でした、と頭を下げて言う。
 でも、わりと二人とも柔軟な思考をしているらしい。
 水戸黄門的役どころが照り出され、
 これ以上、なにも語らずとも、次の瞬間に起こることは決まっていた。

 「ねえ、僕達―――、
 一部始終見ていたよ・・。
 エルフ相手に、何やってるの?」
 「そ、そんな・・」
 明らかに、ボコボコにやられているのは、そいつらの方である。
 でも、自分たちがいなければ、小さな子供にそうしていたのは間違いない。
 勧善懲悪、自業自得―――。
 強情強気一点張自己中心独善的・・釘の音だ、
 ピグは、ソリアの鈴を鳴らすようなきれいな声と、小さな子供の笑い声が、
 交互に聞こえてくるのを耳で楽しんでいた。
 それとともにスケッチ帳を閉じてふところに収めた・・。
 と、ここで、大柄で、坊主頭でいかつい顔のリーダー格の子供が気付く。
 ―――白くにおう歯ならび、美貌、特徴的な赤い髪・・
 「・・・第一王女のソリア様だ。」
 「まずい、逃げろ。」
 子供たちが、眼についた蚤をぷちぷちと潰すように消えて行った。
 ケーキの底紙と帯紙、またはオープンペーパーを寸法に合わせて切ってから、
 敷き込むように、いつか、理想の夜が古典的なルールを教えた。
 思春期をこじらせた結核・・
 ブレイクボール・・。
 
 ピグが小さな子供に言った。
 一歩ずつ黒ずんだ姿を運んでくる。
 そして小さな子供は大人の群れに囲まれていた。
 スケールアウト――、
 スケールアウト――・・・。
 小さな手に背中を叩かれた・・!
 「おいなんだよなんだよ、やれば出来るじゃないか。
 ナイスファイト!」
 革命を決意した子供はそうやって朝を迎えるのかもしれない、
 そういう、はにかみ方をしていた。
 「ありがとう。」
 「・・・でも、力を誇示するなよ。本当に強い奴に立ち向かえ、
 弱い奴に力なんざ使うな。」
 「うん・・ありがとう―――な、名前は?」
 「名前なんてありゃしねえよ。
 あるとすりゃ、明日は明日の風が吹く、あたりか・・」
 めちゃくちゃいきりまくっていた・・。
 シードも、何だかこの小さな生き物を姐さんと呼びたい気がした。

 深いのか浅いのかも/もう/
 分からない/
 、、、、、、、
 プラネタリウムが、
 、、、、、 、、、、、、、、、、、
 星座の名前や星座の線や絵を表示する―――。

 「明日もがんばれよ、じゃあな。」
 本当の戦いは明日だろう、でも、負けるな、とシードは思った。
 ・・・殴られた頬の火照りより熱い心臓の鼓動、
 人間のプライド、生きる意味、本当の強さ、
 ―――いまはわからなくても、そんなことを知ってくれたら・・。
 「うん。」
 子供は―――いまはもう風となった少年は足早に去って行った。
 牛乳を飲んで胃に膜を作れば、アルコール分の吸収がゆるやか・・
 極度の疲労と凝視との世界から赦放された一同・・。
 [街の混鬧のなかに紛れない色別をその姿に見出す]
 そしてぱたぱた、シードのところへ戻るとピグはおとなしくなり、
 ―――なにか、頭撫でてほしそうな顔をしていた。意思疎通。
 シードがよくやったな、と頭を撫でると、嬉しそうな犬の顔・・。
 それから、
 「ご主人様、あたしがんばったから、オムレツ食べたい。」と言った。
 シードが肯いたが、ソリアが、
 お城で作ってもらえるようにするわ、と言った。 
 そしてリオが、ピグに近づいて、
 「何だよ。」と警戒しているピグに、
 「尊敬するよ、小さいのに心はすごく大きいんだな。」
 「というか、小さいは余計だ! 
 姐さんって呼べ、うやまえ、この脳筋女!」
 「それは嫌だ。」
 ―――まあしかし、二人の仲も少しはよくなったのかも知れない。


    *


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