やらかさなかったと女神様に怒られた

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二章 冒険者学校

6話

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 初めての実地訓練が終わり新な課題が生まれました。

 後一人パーティメンバーをどうにかしないとダメだとの結論です。

 私、グレン、クレアの三人は問題は無かったのですが......訓練は四人から六人以内でパーティを組むのが原則です。結局、後一人が見つからず、最後まであぶれていた生徒と組む事になりました。
 まさか『侍』であるクレアさんというカードより......『無能者』である私への忌避間が上回るとは予想外でした。
 
 そして迎えた訓練は......まあ、結果は予想通り......あれなら三人の方が間違いなくマシでしたね。不満を漏らすだけなら問題は無いのですが......連携も役割も考えず動かれては無駄な被害が出ます。
 まあ、急なアクシデントに対応する訓練と考えれば良い訓練だったと思えたのですが......クレアとグレンの二人は、それでは納得がいかなかったようです。

 そんな訳で私達は後一人、メンバーを探さなくてはいけないのです。
 私達のパーティの構成から考えれば――遠距離攻撃が得意な人物、理想的なのは......魔法を使える人物でしょう。
 まあ、魔法を使える生徒は希少なので、すでに売約済みでしょう。
 やはり、弓が得意で私と組んでくれる相手を探すべきですね。

 そんな事を思案していた、ある日

「むぅ......やはり拙者この時間はグレン殿と――」

「ダメです。いくら魔法が苦手でも、私と違い『侍』という時点で魔法にも適正があるのですから授業は受けなさい」

 今、私が何をしているかと言うと――毎度のごとく、選択授業を模擬戦に費やそうとするクレアを魔法授業に引っ張っている処です。

 この学校の授業システムは一日八時間を五十分毎に区切り授業を受けるシステムです。そして選択授業とは一日の三時間、好きな受業を受ける事が出来ます。冒険者の仕事は幅広い、人には適正がある訳ですから得意な分野、苦手な分野は人ぞれぞれです。この三時間は自分の適性を考え選択して受業を受ける事が出来るのです。

 そんな訳で私はクレアさんを魔法授業に連行中なのです。

「そうは言うでござるが、拙者、師匠にも『お前に魔法を教えるのは儂には無理だ』と、言われておるでござる。才能が無いのでござるよ。ならば無駄な事はせずに拙者は刀を振るのでござるよ」

「ふぅ、何故そこで嬉しそうに言うのですか......。アナタの師匠が言っているのは才能ではなく性格の事を言っているのでしょう」

「むっ、性格でござるか?」

「ええ、魔法とは――体内の魔力をに変換させイメージを放出する技術です。それをするには精神の安定性が必要です。それは才能では無く――性格によるものが大きいのです。アナタは揺れ幅が激しいのです」

 ようは落ち着きが無いという事です。

「むむむむ......悔しいでござるが、確かにシレン殿のいう通りでござるな。拙者、どうも魔法を使おうとすると集中できぬでござるよ。刀ならばいくらでも集中して振っていられるのでござるが?」

「それは簡単な事ですよ。同じ集中でも工程が違うからです。刀を振る――という行為は一度の集中力を持続させるだけですみます。しかし、魔法を使うには――魔力をマナに変換させる、イメージする、放出させる。――と、三つの工程があり、短い時間で工程事に切り替えなければいけません」

 私の説明にクレアは「......なるほど、一工程と三工程でござるか」と蒙が開かれたかのように、しきりに頷いたかと思うと自分の指先にマッチ程の炎を作りました。

「おぉっでござるよ!! ――なるほどでござる。グレン殿の言う通り工程を意識すれば普段より簡単に出来るでござるな。......しかし......これでは戦闘には役に立たぬでござる。戦闘中にこのような手順をする余裕等、拙者には無いでござるよ」

「慣れれば出来ます」

「な、何を言うつもりでござるか!? む、無理でござる! ......拙者はシレン殿とは違うでござるよ! その言葉で済ますのはシレン殿の悪い癖でござる!! せ、拙者は刀を極めるでござるから、この件は終わらすでござるよ!!」

 弱気な声を出したクレアを励ましたつもりだったのですが......ここは廊下で他の生徒も居るというのに必死な声を出して――心当たりの無い事を言われました。
 なんとも失礼な話です。
 そもそも私は、まだ何も言っていないのですが?
 私は母様や彼等と違い――無理な事は無理と分かっていますよ。
 多少の無茶は言いますが――無理な事はさせた覚えはないのですが?

「まあ、落ち着いて下さいクレア。ここは廊下ですよ」

「む、む、無理でござる! 今度は何をやらせようと言うのでござるか!? 人は空間を蹴って移動できたりしないのでござる!! 木剣で鉄塊は斬れぬでござる!!」

「何を言っているのですかアナタは......? 『侍』であるアナタに出きない訳がないでしょう? 私の知っている刀使いはクラス等持っていませんでしたが余裕でやってましたよ」

「う、嘘でござる! もう騙されないでござるよ! 師匠殿にも確認したでござる! そのような御仁の話など聞いた事もないと言っていたでござるよ!!」

 それはそうでしょう、この世界の人物では無いのですから。

「ふぅ、ヤレヤレですね。実際アナタ――一歩だけなら稀にですが成功してますし、木剣の方も斬り筋を入れる程度は出来ているじゃないですか」

「......確かに......そうでござるが......。いやいや、無理でござる! これ以上は無理でござるよ!! これ以上、あの訓練を続けたら間違いなく死ぬでござるよ!!」

 まったく、普段の修行バカとは思えないセリフですね。そもそも修行方法を聞いてきたのはクレアの方なんですがね。それに、ちゃんと死なないように監督しています。――まあ怪我の心配はありますが、そこは問題はありません。

「ハァー、あの程度で死ぬなど大袈裟ですよクレア。――しても多少の怪我ですみます。幸いな事に『聖女』様に、いざという時の治療を受け持って貰えると了承を得ていますから安心して下さい」

「それは『聖女』殿でなければ治せないと言う事でござるか!?」

 サポートは万全――本来なら安心すると思うのですが? 逆に万全すぎて怪しむ心境なのでしょうか?
 
 まあ、確かにクレアの言う通り『聖女』様がいなければ時間のかかる方法を選びましたが――居るのだから問題は無いでしょう。結果が同じなら早い方が良いに決まっています。 

「まあ、その話は置いといて今は魔法の話ですよクレア」

 私の言葉に「いや、置かないで欲しいでござる!」と言ってきましたが時間は有限なのです。そろそろ移動時間の十分が終わりそうですし、その声は流す事にします。

「そもそもクレアが恐れているような訓練ではありませんよ。怪我などの心配もありません」

「ほ、本当でござるか?」

「ええ、本当ですよ。そもそも精神を鍛える修行ですから本来なら座禅や瞑想を勧める処なんです」

「む、むむむむ......その手のは苦手でござる」

「ええ、そうでしょうね。アナタには向きません。だから――」

 と、言葉を続けようとした時、シャツを軽く引っ張られました。引っ張られた先を見ると――ピンクの前髪で眼を隠している小柄な少女が私のシャツを摘まんでいました。

「何か私に用でも?」

「私も話に混ぜて」

 これが私と『魔法使い』ノーラとの初めての会話でした。 
 
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