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終
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ーーきぃ
ドアが開く音がする。
私はゆっくりと振り向く。
「ありがとう。苦しまないように薬を使ってくれたんだね」
「おっしゃる意味が理解できないのですが?」
部屋に入ってきた傑は全てがわかっているかのように礼を口にした。
しかし私には礼を言われるような覚えはなかった。
私達が今いるのは鷹華の部屋だ。
ベッドには鷹華が眠っている。
二度と目覚めない眠りだ。
私は指令通りに鷹華を殺した。
夕食に薬を混ぜ毒殺した。
娘が殺された傑に礼を言われるような覚えはない。
いや、そんな事よりも何故、傑は生きているかの方が重要だ。
「これだよ」
じゃらじゃらとプラスチック製の錠剤入れを私に見せる。
「気づいていたのですね」
「まあね、君という虚ろで完璧な存在が完成したんだ。僕はもうお払い箱さ」
「気付いていながら何故逃げなかったのです? 何故、鷹華を見殺しにしたのです?」
「逃げるね...人類六十億を殺して管理しようとか言っている組織から逃げれると?」
予想通り私を所有する組織は随分とイカれた組織だったようだ。
確かに世界の為に一番良いのは人口を減らす事だろう。
私という『物』を、それは上手く使うだろう。
「まあ、そんな訳だから逃げるきはないよ。この錠剤も冬華ちゃんと話す時間を得るための物だからね」
言って傑は私の隣を無造作に通りすぎ鷹華の眠るベットに腰をかける。
優しい手つきで鷹華の髪を撫でながら傑は独白を始めた。
「鷹華はね、持って半年って処だったかな」
「だから見殺したと?」
「うんまあ、そういう理由もあったけどね、鷹華の意思でもあったんだよ。妹になら...ってね」
「っ! まさか鷹華は知っていたのですか⁉ 自分が殺される事を?」
「僕と同じだね。予測はしていたみたいだよ、妹に殺されるだろうと」
「妹? まさか私達のしていた家族ごっこの事を言っているのですか?」
「違うよ。鷹華は紛れもなく冬華ちゃんのお姉さんだよ」
「一体あなたは何をいっているのです? 私は物だ! 精神論は無用だ!」
私は苛立ちまじりに声を上げた。苛立ち? このイライラする気持ちがそうなのか?
そんな苛立ち戸惑う私を見て傑は微笑み言う。
「鷹華はねNo8、紛れもなく君のお姉さんになるんだよ。感情や精神についてのデータを取るための個体だったんだよ、遺伝子的にも間違いなく僕の娘で君は鷹華の妹だよ」
「!」
いや待て。何を驚く必要がある。
私はNo 27。当然、私の前にも実験体がいるのは当然だ。
そして遺伝子提供者が存在するのも当然の事だ。
それが鷹華で傑だっただけの話だ。
なるほど、これも入れてのテストと言うことか。
「うん。その通りだけどね。でも、今、僕が語っているのは僕の意思でだよ。君が虚ろじゃないと証明してくれたからね」
「すみません。言っている意味がわかりかねます。私は鷹華を殺しました。そして傑、あなたもすぐに死にます。私を家族と呼んでーーいえ、認めましょう、私は家族を殺しました。しかし私には何も感じる心というものはありません。かつてあなたが言った通り、少なくとも私はーー虚ろな物です」
そう、私は物だ。組織の所有物だ。
与えられた指令を果たすだけの物だ。
物に心はない。
それが証拠に私は何も感じることもなく鷹華を殺した。
その事実こそが私が虚ろである証拠だ。
「ならどうして毒殺だったんだい? 冬華ちゃんなら僕達二人を殺すのなんて瞬き一つですんだんじゃないのかい?」
「...殺害方法に指定はありませんでした」
ーーガリガリ
そうだ、指定はなかった。毒殺を選んだのに意味はない。
「それは苦しいね冬華ちゃん。このシチュエーションで毒殺なんて手段を選ぶ必要性は無かった筈だよ。それが証拠に、ほら、僕はまだ生きている。いくら僕でも、その気になれば1日位なら逃げおおせれた。完璧な君がそのリスクに気付いていなかったとは言わせないよ」
ーーガリガリガリ
うるさい! 黙れ! 集中できない!
「君はね、僕達に苦しんで欲しくなかったんだよ。虚ろに近い君は僕達を殺す事に迷いがなかったかもしれない。だけど僕達が一緒に暮らした冬華ちゃんが僕達を苦しめたくないと思ってくれたんだろうね。だから薬を使った。大好きな冬華ちゃんの料理を食べ、そのまま幸せな気持ちで眠りにつけるようにーー」
「黙れ!」
ーーガリガリガリガリ
脳が削れるような音が頭の中で響く。
違う! と否定しようとするたびーー私は物だと思うたびに音が大きくなる。
「認めましょう。完全な虚ろでない私はーー完璧な物ではない。しかし、それを私に自覚させて何になるのです? それは残酷な事ではないのですか? 物ではなく人になれと? 私がどういう目的で造られたかは造ったあなたなら知っている筈だ。それを人として果たせというのですか?」
そうだ、私がこれから進む道はーー死と破壊だけの道だ。
六十億を抹殺する為に私は造られたのだ。
物ではなく、人としてそれをしろと傑は言っているのだ。
「そうだね、僕はとても残酷な事を言っているね。正直迷った。この家にくるまでは君は完全な虚ろだったからね。それなら、このままの方がいいんじゃないかと思った。魂が宿らぬ虚ろな器のままでいいかと思った。だけど鷹華と暮らす君を見ていると本当に虚ろなのかわからなくなった。鷹華は本当に君を愛していた。今までで一番幸せそうだった。魂のない人形をそこまで愛せるとは僕には思えなかった!」
静かに感情を吐露する傑。
一旦、落ち着くように息を吐いて、黙っている私に微笑みかけた。
「だからね、僕はこの薬を用意した。君がもし、虚ろではなく魂があるのなら、この手段を選ぶと思ってね」
「魂ですか? 陳腐なセリフで申し訳ないですが科学者の言葉とは思えません。物に魂が宿る。それこそラノベのお約束ですね」
「確かにそうだね。僕も陳腐なセリフで返すけど物に魂が宿らないとは証明されていないよ。それに君達は誕生するプロセスが違うだけで遺伝子的には人だよ。寧ろ宿らない方がおかしいと僕は思う。それに鷹華、君と同じ存在の彼女に魂が無いと君は思うのかい? 僕はあると思う。鷹華との生活で僕はそれを確信した」
「...」
「ああ...薬が切れてきたようだ...眠くなってきた。ごめん、もう長くは話せないようだ。だから僕の目的を話すよ。僕はね信じてるんだよ、いや信じたいんだよーー魂には終わりがないってね。強い魂は次に繋がるってね」
「待て! 何を言っているのだ? 次とは何だ?」
「はは、ごめん朦朧としてきた...次は次だよ次の人生だよ」
「僕はね、後悔してるんだよ。世界がこのままだとダメなのは事実だけど、方法を間違ったんじゃないかって...君達を生み出しときながら後悔してるんだよ。だから自分を慰める為に次なんて言ってるだけなんだよ。君の心が壊れるかも知れないとわかっているけど、それでも次を信じたいんだよ。報われない君達がーー次こそは幸せになると思わなければ僕は耐えられなかったんだよ。恨んでくれてもいい。だけど君も信じてくれーー次はあると...」
そこまで話すと傑は鷹華に寄り添うように眠りについた。
ーーガリガリ
何も感じる事は無い。
特に後半は支離滅裂で考慮する価値もない。
ーーガリガリガリ
「次だと、そんな物は存在しない。物は壊れれば直すか破棄されるだけだ」
私は吐き捨てるように言った。
◆◆◆
それから数年が経過した。
私の容姿は、あの頃の鷹華と瓜二つだった。
私は、やはり虚ろで完璧な物だったようだ。
私の心とやらは壊れる事もなく指令を完璧にこなし続けた。
しかし、そんな私にも終わりは来るようだ。
おそらく寿命だろう。
最近は培養カプセルに入っている時間が増えてきた。
鷹華の病とやらも寿命だったのだろう。
だから、その日が近い事を私は理解していた。
私は久しぶりに、この部屋にいる。
まだ幼かった容姿の私が訓練と実験で使用した部屋だ。
目の前には幼い頃の私がいた。
私と同じようにナイフと拳銃をもっている。
これから始まるのは模擬戦と言うーー私の処分だ。
鷹華の件と同じだ。
組織は道具を最後まで、大切に無駄にすることなく使い潰す。
鷹華が私のテストに使われたように、私をNo42の糧にするのだろう。
模擬戦が始まる。
スペックでは向こうが上だが経験の差で私は何度も相手を殺せた。
しかし私にはこれは模擬戦と伝えられている、殺す事はできない。
ああ...あの日から止むことの無かった脳を削る音が止んだ。
相手は私の技術を吸収し成長していく。
気づけば私の身体は傷だらけになっていた。
ああ、やっと私は死ねる。次を目指せる。
ずっと願っていた、死ぬ事を。
だけど次を目指すなら自殺はダメだと思った。
問題は何処からが自殺になるかがわからなかった事だろう。
任務を失敗する。
任務を放棄する。
確実に私は処理されただろうが、私には自殺に思えた。
だから、必死に生きた。
避け得ない死を願いながら必死に生きた。
その願いは今叶う。
ナイフが私の首に向けられた。
今の私の体力では交わせないだろう。
やっと、やっと、次にいける。
しかし、最後の最期で私は気づいた。
次を願うだけで、次にどうしたいのか考えていなかった事に。
お姉ちゃんは言った。
なりたい自分になればいいと。
なら私は
「お姉ちゃんみたいにーー」
ドアが開く音がする。
私はゆっくりと振り向く。
「ありがとう。苦しまないように薬を使ってくれたんだね」
「おっしゃる意味が理解できないのですが?」
部屋に入ってきた傑は全てがわかっているかのように礼を口にした。
しかし私には礼を言われるような覚えはなかった。
私達が今いるのは鷹華の部屋だ。
ベッドには鷹華が眠っている。
二度と目覚めない眠りだ。
私は指令通りに鷹華を殺した。
夕食に薬を混ぜ毒殺した。
娘が殺された傑に礼を言われるような覚えはない。
いや、そんな事よりも何故、傑は生きているかの方が重要だ。
「これだよ」
じゃらじゃらとプラスチック製の錠剤入れを私に見せる。
「気づいていたのですね」
「まあね、君という虚ろで完璧な存在が完成したんだ。僕はもうお払い箱さ」
「気付いていながら何故逃げなかったのです? 何故、鷹華を見殺しにしたのです?」
「逃げるね...人類六十億を殺して管理しようとか言っている組織から逃げれると?」
予想通り私を所有する組織は随分とイカれた組織だったようだ。
確かに世界の為に一番良いのは人口を減らす事だろう。
私という『物』を、それは上手く使うだろう。
「まあ、そんな訳だから逃げるきはないよ。この錠剤も冬華ちゃんと話す時間を得るための物だからね」
言って傑は私の隣を無造作に通りすぎ鷹華の眠るベットに腰をかける。
優しい手つきで鷹華の髪を撫でながら傑は独白を始めた。
「鷹華はね、持って半年って処だったかな」
「だから見殺したと?」
「うんまあ、そういう理由もあったけどね、鷹華の意思でもあったんだよ。妹になら...ってね」
「っ! まさか鷹華は知っていたのですか⁉ 自分が殺される事を?」
「僕と同じだね。予測はしていたみたいだよ、妹に殺されるだろうと」
「妹? まさか私達のしていた家族ごっこの事を言っているのですか?」
「違うよ。鷹華は紛れもなく冬華ちゃんのお姉さんだよ」
「一体あなたは何をいっているのです? 私は物だ! 精神論は無用だ!」
私は苛立ちまじりに声を上げた。苛立ち? このイライラする気持ちがそうなのか?
そんな苛立ち戸惑う私を見て傑は微笑み言う。
「鷹華はねNo8、紛れもなく君のお姉さんになるんだよ。感情や精神についてのデータを取るための個体だったんだよ、遺伝子的にも間違いなく僕の娘で君は鷹華の妹だよ」
「!」
いや待て。何を驚く必要がある。
私はNo 27。当然、私の前にも実験体がいるのは当然だ。
そして遺伝子提供者が存在するのも当然の事だ。
それが鷹華で傑だっただけの話だ。
なるほど、これも入れてのテストと言うことか。
「うん。その通りだけどね。でも、今、僕が語っているのは僕の意思でだよ。君が虚ろじゃないと証明してくれたからね」
「すみません。言っている意味がわかりかねます。私は鷹華を殺しました。そして傑、あなたもすぐに死にます。私を家族と呼んでーーいえ、認めましょう、私は家族を殺しました。しかし私には何も感じる心というものはありません。かつてあなたが言った通り、少なくとも私はーー虚ろな物です」
そう、私は物だ。組織の所有物だ。
与えられた指令を果たすだけの物だ。
物に心はない。
それが証拠に私は何も感じることもなく鷹華を殺した。
その事実こそが私が虚ろである証拠だ。
「ならどうして毒殺だったんだい? 冬華ちゃんなら僕達二人を殺すのなんて瞬き一つですんだんじゃないのかい?」
「...殺害方法に指定はありませんでした」
ーーガリガリ
そうだ、指定はなかった。毒殺を選んだのに意味はない。
「それは苦しいね冬華ちゃん。このシチュエーションで毒殺なんて手段を選ぶ必要性は無かった筈だよ。それが証拠に、ほら、僕はまだ生きている。いくら僕でも、その気になれば1日位なら逃げおおせれた。完璧な君がそのリスクに気付いていなかったとは言わせないよ」
ーーガリガリガリ
うるさい! 黙れ! 集中できない!
「君はね、僕達に苦しんで欲しくなかったんだよ。虚ろに近い君は僕達を殺す事に迷いがなかったかもしれない。だけど僕達が一緒に暮らした冬華ちゃんが僕達を苦しめたくないと思ってくれたんだろうね。だから薬を使った。大好きな冬華ちゃんの料理を食べ、そのまま幸せな気持ちで眠りにつけるようにーー」
「黙れ!」
ーーガリガリガリガリ
脳が削れるような音が頭の中で響く。
違う! と否定しようとするたびーー私は物だと思うたびに音が大きくなる。
「認めましょう。完全な虚ろでない私はーー完璧な物ではない。しかし、それを私に自覚させて何になるのです? それは残酷な事ではないのですか? 物ではなく人になれと? 私がどういう目的で造られたかは造ったあなたなら知っている筈だ。それを人として果たせというのですか?」
そうだ、私がこれから進む道はーー死と破壊だけの道だ。
六十億を抹殺する為に私は造られたのだ。
物ではなく、人としてそれをしろと傑は言っているのだ。
「そうだね、僕はとても残酷な事を言っているね。正直迷った。この家にくるまでは君は完全な虚ろだったからね。それなら、このままの方がいいんじゃないかと思った。魂が宿らぬ虚ろな器のままでいいかと思った。だけど鷹華と暮らす君を見ていると本当に虚ろなのかわからなくなった。鷹華は本当に君を愛していた。今までで一番幸せそうだった。魂のない人形をそこまで愛せるとは僕には思えなかった!」
静かに感情を吐露する傑。
一旦、落ち着くように息を吐いて、黙っている私に微笑みかけた。
「だからね、僕はこの薬を用意した。君がもし、虚ろではなく魂があるのなら、この手段を選ぶと思ってね」
「魂ですか? 陳腐なセリフで申し訳ないですが科学者の言葉とは思えません。物に魂が宿る。それこそラノベのお約束ですね」
「確かにそうだね。僕も陳腐なセリフで返すけど物に魂が宿らないとは証明されていないよ。それに君達は誕生するプロセスが違うだけで遺伝子的には人だよ。寧ろ宿らない方がおかしいと僕は思う。それに鷹華、君と同じ存在の彼女に魂が無いと君は思うのかい? 僕はあると思う。鷹華との生活で僕はそれを確信した」
「...」
「ああ...薬が切れてきたようだ...眠くなってきた。ごめん、もう長くは話せないようだ。だから僕の目的を話すよ。僕はね信じてるんだよ、いや信じたいんだよーー魂には終わりがないってね。強い魂は次に繋がるってね」
「待て! 何を言っているのだ? 次とは何だ?」
「はは、ごめん朦朧としてきた...次は次だよ次の人生だよ」
「僕はね、後悔してるんだよ。世界がこのままだとダメなのは事実だけど、方法を間違ったんじゃないかって...君達を生み出しときながら後悔してるんだよ。だから自分を慰める為に次なんて言ってるだけなんだよ。君の心が壊れるかも知れないとわかっているけど、それでも次を信じたいんだよ。報われない君達がーー次こそは幸せになると思わなければ僕は耐えられなかったんだよ。恨んでくれてもいい。だけど君も信じてくれーー次はあると...」
そこまで話すと傑は鷹華に寄り添うように眠りについた。
ーーガリガリ
何も感じる事は無い。
特に後半は支離滅裂で考慮する価値もない。
ーーガリガリガリ
「次だと、そんな物は存在しない。物は壊れれば直すか破棄されるだけだ」
私は吐き捨てるように言った。
◆◆◆
それから数年が経過した。
私の容姿は、あの頃の鷹華と瓜二つだった。
私は、やはり虚ろで完璧な物だったようだ。
私の心とやらは壊れる事もなく指令を完璧にこなし続けた。
しかし、そんな私にも終わりは来るようだ。
おそらく寿命だろう。
最近は培養カプセルに入っている時間が増えてきた。
鷹華の病とやらも寿命だったのだろう。
だから、その日が近い事を私は理解していた。
私は久しぶりに、この部屋にいる。
まだ幼かった容姿の私が訓練と実験で使用した部屋だ。
目の前には幼い頃の私がいた。
私と同じようにナイフと拳銃をもっている。
これから始まるのは模擬戦と言うーー私の処分だ。
鷹華の件と同じだ。
組織は道具を最後まで、大切に無駄にすることなく使い潰す。
鷹華が私のテストに使われたように、私をNo42の糧にするのだろう。
模擬戦が始まる。
スペックでは向こうが上だが経験の差で私は何度も相手を殺せた。
しかし私にはこれは模擬戦と伝えられている、殺す事はできない。
ああ...あの日から止むことの無かった脳を削る音が止んだ。
相手は私の技術を吸収し成長していく。
気づけば私の身体は傷だらけになっていた。
ああ、やっと私は死ねる。次を目指せる。
ずっと願っていた、死ぬ事を。
だけど次を目指すなら自殺はダメだと思った。
問題は何処からが自殺になるかがわからなかった事だろう。
任務を失敗する。
任務を放棄する。
確実に私は処理されただろうが、私には自殺に思えた。
だから、必死に生きた。
避け得ない死を願いながら必死に生きた。
その願いは今叶う。
ナイフが私の首に向けられた。
今の私の体力では交わせないだろう。
やっと、やっと、次にいける。
しかし、最後の最期で私は気づいた。
次を願うだけで、次にどうしたいのか考えていなかった事に。
お姉ちゃんは言った。
なりたい自分になればいいと。
なら私は
「お姉ちゃんみたいにーー」
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