21 / 34
21 衝撃の告白
しおりを挟む
その日の夜、倉木から電話会社かかってきたのは22時を過ぎた頃だった。
秋良の寝かしつけを終え、兄とのんびりテレビを見ていた俺は、スマホに表示された名前を確認して、通話ボタンを押す。
「こんばんは」
『こんばんは。遅くなってしまってすみません。娘の寝かしつけに時間がかかってしまって……』
「いえいえ、事前に連絡もらってましたし大丈夫ですよ。お疲れさまです」
『ありがとうございます~』
兄曰く、子どもというのは早く寝てほしいときほど寝ない生き物らしい。
その説明にいやに熱が入っていたのを見ると、兄にも同様の苦労の経験がたっぷりあるらしい。
「ところで、義姉のことで相談というのは……?」
『あ、あ~……その、なんというか……』
「はい」
『気を悪くされるかも……というか、その、何と言うか……』
「えっと……?」
そこまで言いづらいことなのか?
こっちのほうが不安になってくる。
ひたすら言葉を逃がし続ける倉木にヤキモキしつつも、内容が気になって仕方ない。
兄をチラッとみると、首を傾げている。
どうやら家族ぐるみで親しくしていた兄にも、何の話か検討もつかないらしい。
もしかして、借金か?
義姉が借金をするタイプだとは思えないが、手持ちがないとかで少額の貸し借りがあったのかもしれない。
それか、俺たちの知らない顔があったのか……。
「あ、あの!どんなことでも大丈夫なので、教えてください!」
そんな俺の言葉に、倉木が息を呑むのがわかった。
意を決した様子で、倉木がポツリと話し始めた。
『これは……宗教とか、怪しい勧誘とかではないです』
「え?!……は、はい」
『私の頭がおかしくなったわけでもない……と思いたいです……』
「はぁ」
『あの……あなたは、幽霊を信じますか?』
「……幽霊……?」
目の前の兄を見つめる。
信じるも何も、目の前にいるとはさすがに言えない。
「えっと……いるかもな、とは思います」
言葉を濁した俺に、倉木が悩むように沈黙が流れた。
そして、ようやく決定的な一言を告げた。
『信じてもらえないかもしれませんが、私、視えるんです。美冬さんの、幽霊……』
それは衝撃的だった。
ハンズフリーにして会話していたので、会話内容は兄にも筒抜けだ。
兄も俺と同じく、口を半開きにして呆然としていた。
そして『嘘だろ……』と呟く。
『嘘じゃありません!非科学的なことを言っている自覚はあります!でも……毎晩美冬さんがやってきては泣くんです……。私、私……』
『妻は何と言って泣いているんですか!?会話をすることができますか?』
『会話はできません……。私の言葉は届いていないみたいで……』
『そうですか……。でも何で倉木さんのところに……』
ちょっと待て……。
黙って会話を聞いていた俺の頬を、汗が伝う。
今は、誰と誰が会話をしている……?
『……あれ?あ、あの、妻って……?』
倉木も違和感に気づいたのだろう。
恐る恐るといった様子で、俺の口から出るはずのないワードに問いを投げかける。
その言葉に!兄も何が起こったか把握できたようだ。
『は?』
『……え……?』
『え、倉木さん、俺の声聞こえてます?』
『えっと……聞こえないと会話にならないような……』
兄も倉木も混乱しているようだ。
それに反比例するように、俺の頭は冷静さを取り戻していた。
「倉木さん、信じられないかもしれませんが、あなたが今会話をしていたのは、俺ではなく兄です。事故で死んで、そしてこの家に幽霊として帰ってきた兄です」
『……え、幽霊って……え……?』
「だから、あなたが義姉の幽霊を視たというのも信じます」
『え?え?お、お兄さんもそこに……?え、じゃあ何で美冬さんは私のところに……?』
「義姉はこっちにも来ていたようです。俺は義姉の姿は残念ながら視えないので、兄から聞いた話なのですが」
『え?え?……ええええええええええ!?』
電話口で、倉木が叫び声をあげる。
それから少しの間が空いて『ふえぇ~ん』と子どもの弱々しい泣き声が遠くで聞こえた。
とうやら倉木の子どもが起きてしまったらしい。
倉木はまだ混乱した様子だったが、子どもの世話を優先してもらい、また後日改めて話をすることにして通話を切った。
俺は未だ呆然としている兄に「どういうことなんだよ……」と問いかけたが、明確な反応を得られないことはわかっていた。
秋良の寝かしつけを終え、兄とのんびりテレビを見ていた俺は、スマホに表示された名前を確認して、通話ボタンを押す。
「こんばんは」
『こんばんは。遅くなってしまってすみません。娘の寝かしつけに時間がかかってしまって……』
「いえいえ、事前に連絡もらってましたし大丈夫ですよ。お疲れさまです」
『ありがとうございます~』
兄曰く、子どもというのは早く寝てほしいときほど寝ない生き物らしい。
その説明にいやに熱が入っていたのを見ると、兄にも同様の苦労の経験がたっぷりあるらしい。
「ところで、義姉のことで相談というのは……?」
『あ、あ~……その、なんというか……』
「はい」
『気を悪くされるかも……というか、その、何と言うか……』
「えっと……?」
そこまで言いづらいことなのか?
こっちのほうが不安になってくる。
ひたすら言葉を逃がし続ける倉木にヤキモキしつつも、内容が気になって仕方ない。
兄をチラッとみると、首を傾げている。
どうやら家族ぐるみで親しくしていた兄にも、何の話か検討もつかないらしい。
もしかして、借金か?
義姉が借金をするタイプだとは思えないが、手持ちがないとかで少額の貸し借りがあったのかもしれない。
それか、俺たちの知らない顔があったのか……。
「あ、あの!どんなことでも大丈夫なので、教えてください!」
そんな俺の言葉に、倉木が息を呑むのがわかった。
意を決した様子で、倉木がポツリと話し始めた。
『これは……宗教とか、怪しい勧誘とかではないです』
「え?!……は、はい」
『私の頭がおかしくなったわけでもない……と思いたいです……』
「はぁ」
『あの……あなたは、幽霊を信じますか?』
「……幽霊……?」
目の前の兄を見つめる。
信じるも何も、目の前にいるとはさすがに言えない。
「えっと……いるかもな、とは思います」
言葉を濁した俺に、倉木が悩むように沈黙が流れた。
そして、ようやく決定的な一言を告げた。
『信じてもらえないかもしれませんが、私、視えるんです。美冬さんの、幽霊……』
それは衝撃的だった。
ハンズフリーにして会話していたので、会話内容は兄にも筒抜けだ。
兄も俺と同じく、口を半開きにして呆然としていた。
そして『嘘だろ……』と呟く。
『嘘じゃありません!非科学的なことを言っている自覚はあります!でも……毎晩美冬さんがやってきては泣くんです……。私、私……』
『妻は何と言って泣いているんですか!?会話をすることができますか?』
『会話はできません……。私の言葉は届いていないみたいで……』
『そうですか……。でも何で倉木さんのところに……』
ちょっと待て……。
黙って会話を聞いていた俺の頬を、汗が伝う。
今は、誰と誰が会話をしている……?
『……あれ?あ、あの、妻って……?』
倉木も違和感に気づいたのだろう。
恐る恐るといった様子で、俺の口から出るはずのないワードに問いを投げかける。
その言葉に!兄も何が起こったか把握できたようだ。
『は?』
『……え……?』
『え、倉木さん、俺の声聞こえてます?』
『えっと……聞こえないと会話にならないような……』
兄も倉木も混乱しているようだ。
それに反比例するように、俺の頭は冷静さを取り戻していた。
「倉木さん、信じられないかもしれませんが、あなたが今会話をしていたのは、俺ではなく兄です。事故で死んで、そしてこの家に幽霊として帰ってきた兄です」
『……え、幽霊って……え……?』
「だから、あなたが義姉の幽霊を視たというのも信じます」
『え?え?お、お兄さんもそこに……?え、じゃあ何で美冬さんは私のところに……?』
「義姉はこっちにも来ていたようです。俺は義姉の姿は残念ながら視えないので、兄から聞いた話なのですが」
『え?え?……ええええええええええ!?』
電話口で、倉木が叫び声をあげる。
それから少しの間が空いて『ふえぇ~ん』と子どもの弱々しい泣き声が遠くで聞こえた。
とうやら倉木の子どもが起きてしまったらしい。
倉木はまだ混乱した様子だったが、子どもの世話を優先してもらい、また後日改めて話をすることにして通話を切った。
俺は未だ呆然としている兄に「どういうことなんだよ……」と問いかけたが、明確な反応を得られないことはわかっていた。
20
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
いつまでもドアマットと思うなよ
あんど もあ
ファンタジー
二年前に母を亡くしたミレーネは、後妻と妹が家にやって来てからすっかり使用人以下の扱いをされている。王宮で舞踏会が開催されるが、用意されたのは妹のドレスだけ。そんなミレーネに手を差し伸べる人が……。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる