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119 まるで映画のような
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集落へ侵入した父たちは、まずは穂高さんの居所を突き止めることにした。
紅葉ちゃんも集落で行われている「お仕置き」の詳細は知らなかったから、怪しいところに目星をつけてしらみつぶしにあたっていくことにしたらしい。
しかし集落内を探索していた父たちは、農作業をしている集団の中から、すぐに穂高さんを見つけることができた。
おそらく監禁されているのだろうと踏んでいたが、年寄りの多い集落では、若い男は働き手として重宝される存在だ。
拘束するよりも限界以上に働かせるほうが合理的だと判断されたらしい。
ほとんど水も食事も与えられない状態で、昼夜問わず穂高さんは働かされていた。
疲労と空腹で倒れこむと、石を投げつけられ、木の棒で殴られる。
それを大の大人が笑いながらやっていたと聞いたときは、怒りで握りこむ拳が震えた。
穂高さんをすぐに見つけられたのは僥倖だったが、問題は監視の目が途絶えないことだ。
常に2~3人以上の人が穂高さんを監視しているため、隙が生まれない。
人目を盗んで、こっそりと連れ出すことは難しいだろう。
穂高さんを連れ出すには、監視の目をそらす必要がある。
そのために、父と雨音さんと悠哉さん、そして恭太さんとマスターの2組にわかれることにした。
恭太さんたちが監視の注意を引いている間に、父たちが穂高さんを救出する。
ちなみに組み分けは、集落の人間に顔が知られている者と知られていない者で振り分けたらしい。
この作戦に、父は最初反対したそうだ。
陽動を買って出た恭太さんとマスターが危険に晒されることを危惧して。
時間はかかるが、深夜になれば監視が減るかもしれない。
それまで待つべきだと。
しかし長く集落にとどまれば、人目に触れる可能性はどうしたって高まる。
救出前に姿を見られれば、監視の目が強まって救出がより困難になる可能性がある。
ただでさえ、こっちで紅葉ちゃんが私たちと行動を共にしていることは知られている状況だ。
なるべく性急に事を進める必要があると説得されれば、父もそれ以上反対はできなかった。
それでも「手加減しなきゃダメだよ」と悠哉さんが口にしたことが気がかりだったそうだけど。
黒いマスクと目深にかぶったキャップで顔を隠し、勢いよく飛び出していった二人は、それはそれはすごかったらしい。
何がって、躊躇いのない暴力が。
「あんっなさぁ、飛び出していった勢いのまま、飛び蹴りかますなんてどこのヤンキー漫画だよ!!相手年寄りだぞ?下手したら死ぬって!!」
「いや、一応手加減してたぜ?」
「してなかった!!ころころ転がってたし!っていうか監視の目をそらす作戦なのに、騒ぎを聞きつけて人がめちゃくちゃ集まってきたし!」
「あれなー。意外と数いるんだなって驚いた」
「向かってくるやつをちぎっては投げ、ちぎっては投げ。なんなら逃げ出すやつ追いかけ回してるしっ」
熱弁する父に対して、マスターの相づちがあまりに軽すぎる。
父はじっとりとした目つきでマスターを睨みつけながら、さらに不満を垂れ流す。
「監視の目をそらすってのは、手当たり次第に人を気絶させることじゃないからな。あっちに不審なやつがいるからちょっと見てこよう、みたいな感じで追いかけさせるやつのことだから。俺、あんなアクションシーン見たの生まれて初めてなんだけど。一瞬、あ~俺、映画の世界に入っちゃったのかな?とか思っちゃったんだぞ」
「えー、なんか照れるな」
「なんで照れるんだよ……。反省してくれよ……」
「んん?だって、映画みたいにかっこよかったってことだろ?やっぱギャラリーいると燃えるよな」
そう言ったマスターの顔はキラキラ輝いていて、父はさらに頭を抱え込んでしまった。
紅葉ちゃんも集落で行われている「お仕置き」の詳細は知らなかったから、怪しいところに目星をつけてしらみつぶしにあたっていくことにしたらしい。
しかし集落内を探索していた父たちは、農作業をしている集団の中から、すぐに穂高さんを見つけることができた。
おそらく監禁されているのだろうと踏んでいたが、年寄りの多い集落では、若い男は働き手として重宝される存在だ。
拘束するよりも限界以上に働かせるほうが合理的だと判断されたらしい。
ほとんど水も食事も与えられない状態で、昼夜問わず穂高さんは働かされていた。
疲労と空腹で倒れこむと、石を投げつけられ、木の棒で殴られる。
それを大の大人が笑いながらやっていたと聞いたときは、怒りで握りこむ拳が震えた。
穂高さんをすぐに見つけられたのは僥倖だったが、問題は監視の目が途絶えないことだ。
常に2~3人以上の人が穂高さんを監視しているため、隙が生まれない。
人目を盗んで、こっそりと連れ出すことは難しいだろう。
穂高さんを連れ出すには、監視の目をそらす必要がある。
そのために、父と雨音さんと悠哉さん、そして恭太さんとマスターの2組にわかれることにした。
恭太さんたちが監視の注意を引いている間に、父たちが穂高さんを救出する。
ちなみに組み分けは、集落の人間に顔が知られている者と知られていない者で振り分けたらしい。
この作戦に、父は最初反対したそうだ。
陽動を買って出た恭太さんとマスターが危険に晒されることを危惧して。
時間はかかるが、深夜になれば監視が減るかもしれない。
それまで待つべきだと。
しかし長く集落にとどまれば、人目に触れる可能性はどうしたって高まる。
救出前に姿を見られれば、監視の目が強まって救出がより困難になる可能性がある。
ただでさえ、こっちで紅葉ちゃんが私たちと行動を共にしていることは知られている状況だ。
なるべく性急に事を進める必要があると説得されれば、父もそれ以上反対はできなかった。
それでも「手加減しなきゃダメだよ」と悠哉さんが口にしたことが気がかりだったそうだけど。
黒いマスクと目深にかぶったキャップで顔を隠し、勢いよく飛び出していった二人は、それはそれはすごかったらしい。
何がって、躊躇いのない暴力が。
「あんっなさぁ、飛び出していった勢いのまま、飛び蹴りかますなんてどこのヤンキー漫画だよ!!相手年寄りだぞ?下手したら死ぬって!!」
「いや、一応手加減してたぜ?」
「してなかった!!ころころ転がってたし!っていうか監視の目をそらす作戦なのに、騒ぎを聞きつけて人がめちゃくちゃ集まってきたし!」
「あれなー。意外と数いるんだなって驚いた」
「向かってくるやつをちぎっては投げ、ちぎっては投げ。なんなら逃げ出すやつ追いかけ回してるしっ」
熱弁する父に対して、マスターの相づちがあまりに軽すぎる。
父はじっとりとした目つきでマスターを睨みつけながら、さらに不満を垂れ流す。
「監視の目をそらすってのは、手当たり次第に人を気絶させることじゃないからな。あっちに不審なやつがいるからちょっと見てこよう、みたいな感じで追いかけさせるやつのことだから。俺、あんなアクションシーン見たの生まれて初めてなんだけど。一瞬、あ~俺、映画の世界に入っちゃったのかな?とか思っちゃったんだぞ」
「えー、なんか照れるな」
「なんで照れるんだよ……。反省してくれよ……」
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そう言ったマスターの顔はキラキラ輝いていて、父はさらに頭を抱え込んでしまった。
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