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第3話
預かった物を手に城を出ると、春の陽気が私を包み込む。
「良い天気」
朝からずっと部屋に引きこもっていたから春の暖かい太陽の光に気分が上がってくる。春は暖かく気持ちよくて、一番好きな季節だ。
「あ、アニエス先輩!」
王門を出たところにある騎士団の建物へと歩いていると、敷地内の広場で訓練をしている騎士団の中からこちらに走ってくる犬、いや人に声をかけられた。
「ダヴィット」
「もー、昔みたいにダヴィって呼んでください。お使いですか?」
「うん。殿下から騎士団長に」
「なら僕が案内しますよ!」
「……いいの?」
「はい!ちょっと待っててくださいね」
彼はそう言ってまた広場へと駆けて行き、副団長へ話しかけている。そしてすぐにまたこちらに走ってくる。本当に犬みたいだ。
「じゃあ行きましょう!」
ダヴィはそう言って私の手を取り、騎士団の建物の中へと向かう。
黒毛の人懐っこく笑う彼は学院時代に入っていた剣術クラブの後輩だ。
貴族学校なのに何故かクラブ入部必須で、どうせ異世界に来たのなら前世では体験できなかったことをしようと思ってこのクラブに入った。
本当は魔法があったら良かったのだけど、どうやらこの世界には魔法という概念が存在しないらしい。残念。
クラブは苦手な男の人ばかりだったけど、前世では運動部に入っていたので何とか周りに着いていき二年生になる頃にはそれなりの剣の腕前になっていた。
そして次の年に新しくクラブに入ってきた彼の面倒を私が見ることになり、親しくなった頃に近衛騎士団に入るのが夢だと語ってくれた。
子爵家令息なのに下の貴族位の私にも気さくで優しく、前世でも今世でもいないのだが弟のようですごく可愛くて、私の唯一の異性の友達だ。
「騎士団はどう?」
「訓練は厳しいですけど楽しいですよ。それに先輩といつでも会えますし!」
にぱっ!と満面の笑みで笑うダヴィは尻尾が生えてたら絶対ブンブンと振りまくっていたに違いない。ワンコ系男子とはまさに彼のことを言うのだろう。
彼は在学中に言っていた夢をちゃんと叶えて近衛騎士団見習いとして頑張っている。久しぶりに会った彼は、人目があるにも関わらず抱きついてきて驚かされた。
世間話をしていると団長の部屋の前に辿り着いた。楽しい時間はあっという間ということだ。
「それじゃあまたね。訓練頑張って――」
別れを告げて部屋に入ろうとした時、繋いでいた手を強く握られて引き止められる。
「先輩、今度の休日の日は予定入ってますか?」
「え?ううん。入ってなかったはずだよ」
「僕も休みなので良かったら一緒に街に遊びに行きませんか?」
「もちろん良いよ」
「やった!デート楽しみにしてます!」
「で、デート!?」
「それじゃあ!」
とんでもない発言に驚いているとダヴィは止める間もなく走っていってしまった。
デートだなんて言われて思わずドキリとしてしまった。きっと彼の冗談なのだろうけど、勘違いしてしまうのが喪女の性質なのだ。
少し熱くなった頬を冷まし、深呼吸をして部屋をノックすれば返事があり「失礼します」と声をかけて部屋の中に入る。
「こちら王弟殿下より騎士団長へお預かりしたものをお持ちしました」
「あぁ、アニエス嬢。ありがとうございます」
男性の色気たっぷりの微笑みに思わず変な声が出そうになってなんとか堪える。ユーリ殿下とは違う優しい物腰の騎士団長は女性に人気なのだ。私はどちらかというと殿下のような男らしい方が好みだけど。
「さっきまでダヴィットの声が聞こえてましたが」
「あ、はい。彼にここまで案内してもらったので」
「なるほど。彼とは旧友とか」
「はい。学院の後輩で慕ってくれています」
「彼とはよく話をするのですが貴方の話ばかりしていますよ」
「え!?そ、それは申し訳ありません……」
自分の知らないところで自分の話を聞かされていると知って、あまりの羞恥に思わず謝罪してしまう。これ以上団長に迷惑かけないためにも、彼には強く言い聞かせなくては。
そんなことを考えていると、団長はクスクスと笑う。
「…殿下も強力なライバルがいて大変ですね」
「え?」
「いいえ。申し訳ないのですがこちらの書類を殿下に渡してもらってもよろしいでしょうか」
「はい。お預かりします」
「よろしくお願いします。そうだ、今度あなたのオススメの本を教えてくれませんか?」
「はい、勿論です!それでは失礼いたします」
団長に頭を下げて部屋を出る。団長も殿下の影響か本好きなので、こうやってお願いされると嬉しくなる。
鼻歌を歌いたくなるのを我慢しながら建物を出て来た道を歩いていると、騎士団の集団の中にダヴィの姿を見つけた。今度は私に気づくことなく真面目に訓練をしているようだった。
前に団長がダヴィは筋が良いから将来は有望な騎士になるだろうと褒めていた。このまま行けば順調に見習いから一人前の騎士になるだろう。
もう手元を離れたけれど後輩の成長が嬉しくて、頬を緩ませながら急いで職場へと戻った。
「良い天気」
朝からずっと部屋に引きこもっていたから春の暖かい太陽の光に気分が上がってくる。春は暖かく気持ちよくて、一番好きな季節だ。
「あ、アニエス先輩!」
王門を出たところにある騎士団の建物へと歩いていると、敷地内の広場で訓練をしている騎士団の中からこちらに走ってくる犬、いや人に声をかけられた。
「ダヴィット」
「もー、昔みたいにダヴィって呼んでください。お使いですか?」
「うん。殿下から騎士団長に」
「なら僕が案内しますよ!」
「……いいの?」
「はい!ちょっと待っててくださいね」
彼はそう言ってまた広場へと駆けて行き、副団長へ話しかけている。そしてすぐにまたこちらに走ってくる。本当に犬みたいだ。
「じゃあ行きましょう!」
ダヴィはそう言って私の手を取り、騎士団の建物の中へと向かう。
黒毛の人懐っこく笑う彼は学院時代に入っていた剣術クラブの後輩だ。
貴族学校なのに何故かクラブ入部必須で、どうせ異世界に来たのなら前世では体験できなかったことをしようと思ってこのクラブに入った。
本当は魔法があったら良かったのだけど、どうやらこの世界には魔法という概念が存在しないらしい。残念。
クラブは苦手な男の人ばかりだったけど、前世では運動部に入っていたので何とか周りに着いていき二年生になる頃にはそれなりの剣の腕前になっていた。
そして次の年に新しくクラブに入ってきた彼の面倒を私が見ることになり、親しくなった頃に近衛騎士団に入るのが夢だと語ってくれた。
子爵家令息なのに下の貴族位の私にも気さくで優しく、前世でも今世でもいないのだが弟のようですごく可愛くて、私の唯一の異性の友達だ。
「騎士団はどう?」
「訓練は厳しいですけど楽しいですよ。それに先輩といつでも会えますし!」
にぱっ!と満面の笑みで笑うダヴィは尻尾が生えてたら絶対ブンブンと振りまくっていたに違いない。ワンコ系男子とはまさに彼のことを言うのだろう。
彼は在学中に言っていた夢をちゃんと叶えて近衛騎士団見習いとして頑張っている。久しぶりに会った彼は、人目があるにも関わらず抱きついてきて驚かされた。
世間話をしていると団長の部屋の前に辿り着いた。楽しい時間はあっという間ということだ。
「それじゃあまたね。訓練頑張って――」
別れを告げて部屋に入ろうとした時、繋いでいた手を強く握られて引き止められる。
「先輩、今度の休日の日は予定入ってますか?」
「え?ううん。入ってなかったはずだよ」
「僕も休みなので良かったら一緒に街に遊びに行きませんか?」
「もちろん良いよ」
「やった!デート楽しみにしてます!」
「で、デート!?」
「それじゃあ!」
とんでもない発言に驚いているとダヴィは止める間もなく走っていってしまった。
デートだなんて言われて思わずドキリとしてしまった。きっと彼の冗談なのだろうけど、勘違いしてしまうのが喪女の性質なのだ。
少し熱くなった頬を冷まし、深呼吸をして部屋をノックすれば返事があり「失礼します」と声をかけて部屋の中に入る。
「こちら王弟殿下より騎士団長へお預かりしたものをお持ちしました」
「あぁ、アニエス嬢。ありがとうございます」
男性の色気たっぷりの微笑みに思わず変な声が出そうになってなんとか堪える。ユーリ殿下とは違う優しい物腰の騎士団長は女性に人気なのだ。私はどちらかというと殿下のような男らしい方が好みだけど。
「さっきまでダヴィットの声が聞こえてましたが」
「あ、はい。彼にここまで案内してもらったので」
「なるほど。彼とは旧友とか」
「はい。学院の後輩で慕ってくれています」
「彼とはよく話をするのですが貴方の話ばかりしていますよ」
「え!?そ、それは申し訳ありません……」
自分の知らないところで自分の話を聞かされていると知って、あまりの羞恥に思わず謝罪してしまう。これ以上団長に迷惑かけないためにも、彼には強く言い聞かせなくては。
そんなことを考えていると、団長はクスクスと笑う。
「…殿下も強力なライバルがいて大変ですね」
「え?」
「いいえ。申し訳ないのですがこちらの書類を殿下に渡してもらってもよろしいでしょうか」
「はい。お預かりします」
「よろしくお願いします。そうだ、今度あなたのオススメの本を教えてくれませんか?」
「はい、勿論です!それでは失礼いたします」
団長に頭を下げて部屋を出る。団長も殿下の影響か本好きなので、こうやってお願いされると嬉しくなる。
鼻歌を歌いたくなるのを我慢しながら建物を出て来た道を歩いていると、騎士団の集団の中にダヴィの姿を見つけた。今度は私に気づくことなく真面目に訓練をしているようだった。
前に団長がダヴィは筋が良いから将来は有望な騎士になるだろうと褒めていた。このまま行けば順調に見習いから一人前の騎士になるだろう。
もう手元を離れたけれど後輩の成長が嬉しくて、頬を緩ませながら急いで職場へと戻った。
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