何でも検索できるパソコンを手に入れました。ーBPCー

木岡(もくおか)

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word20 「未来 変えられる」②

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 今日という日にどうしても未来を検索したくなったのは夢を見たからである――。

 未来の自分の夢だ。僕は今日夢の中で未来の自分を経験した。おそらく20代後半くらいになった時の自分。

 夢の中の僕はスーツを着たサラリーマンだった。かなり苦労している様子で、中間管理職と呼ばれるほどまで偉くなっているかは分からなかったけど、とにかく上司には色々と怒られて後輩へは指導とミスのフォローを要求される。

 ひたすら会社での苦しい経験を見せられる夢の中で、僕は厳しそうな顔をしたおじさんや禿げたおじさんに何度も頭を下げた。昼休みの休憩中にはずっと転職を考えたり、机に伏せながら全て投げ出して楽になってしまおうかなんて考えていた。

 トイレの中でそんな大人になったときの自分の顔を鏡で見た時はその陰の濃さに驚いた。

 本当にただ苦しい場面が繰り返される夢だったからあの僕に心を安らげられる友人や恋人がいたかなんて分からないけど、きっといない。あの僕を見たら分かる。辛い感情を経験したから分かる。孤独でつらい仕事に追われるだけの生活。

 そんな絶望的な未来を見た後に起きた僕は思ったのだ。

 僕の未来はこんなのじゃないっ。僕にはバラ色の未来が待っているのだと。

 小学生の頃から美人なお嫁さんとそこそこな収入を手に入れる未来を思い描いているのだ。何度もシミュレーションしているから夢じゃなくて目を閉じただけでもまぶたの裏にはっきりと見える。そんな未来があるはずがない。

 それを証明したくて未来の検索を決意した。誰に見せる訳でもないけど自分を落ち着かせるためだ。起きてからまだ1時間足らず、モヤモヤする気持ちを何とかしたい。

 時間が経てば忘れると思うけど、未来の検索から逃げるのも終わりにしたい。だから、忘れないうちに――。

 僕は「10年後 自分」と入力済みの画面を見ながら、Enterキーに置いた人差し指へ力を入れた。

 あとはたぶん、わずか数ミリ指を下げるだけ……。

 だけど、ダメだ……やっぱり怖いっ。

 僕は寸前のところで、また腕を引いてパソコンから指を離した。

 ああ。もう怖いからからやめてしまおうか。今日は休日、ゲームのバグ技でも調べてダラダラしよう。

 机から離れてゲーム機へ手を伸ばす。

 そうやってまた未来の検索から離れかけた時、僕の頭の中に1つの妥協案が浮かんだ――。

「未来 変えられる」

 自分の未来を知りたい、けれど知るのが怖い。その間に生まれた妥協案のワードだった。

 まずは直接未来の話を知るのではなく、検索した結果の未来が変えられるのかについて検索する。

  これを知っておけば、いざ未来を検索するときに心に余裕を持てる。どんな結果が出ても絶対に変えられる。それなら勇気はいらない。

 変えられるとは思うけど変えられなかった時が一番怖い。だからまずそれを確定させておけば……。

「未来 変えられる」

 さっきまでとは違って楽な気持ちで入力して、検索を実行するのもすぐだった。とりあえずはこれを知ったところで何も自分に変化はないから。

「変えられる未来と変えられない未来があります。あなたから遠く、関りの無い人の近い未来ほど既に確定しまっていて何をしても変えることはできません。あなた自身の未来で10年後、20年後等であればいくらでも変えることはできるでしょう。

 また、未来を知ることができるのがこのパソコンだけである以上、未来を変えたと認識できるのもこのパソコンを持つ人間だけなので、未来を変えることができるのは実質このパソコンを持つ人間だけです。」

 少し難しく書かれた文が表示された。けれど、とにかく自分の未来は変えることができるということでいいんだよな。

 僕は表示された文を見て嬉しく思った。特に利益が得られた訳でもないけれど、なんだか気分が上がった。

 しかし、その気持ちは続けて表示された文で少し濁る。

「もう1つ、どんなに親しく身近な人のどんなに遠い未来でも変えられない未来もあります。これは人間が生まれた時から既に決まっているもので、日本語で言うなら運命でしょうか。運命はこのパソコンでそれを知ってどれだけ変えようとしてもかえられないものです。人によって人生の中で絶対通らなければならない道がいくつか用意されています。その最たる例は死。人間は生まれた時から死ぬ日が決まっています。」

 僕は正確に理解できないも、知ってはいけない何かを知ってしまった気がして放心状態になった。

 人間は既に決まっている変えられない運命の中にいること、僕もその1人でこの先に何かが待っていること。

 それも知りたいことの1つになった。けれど、それもまた今度向き合うことにした。面倒くさいから。

 僕はそういう人間だ。
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