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word23 「姉 弱み」②
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「マウス 取り返し方」
黒いマウスの機能を知ってから最初の検索。本当なら早速、画像検索か動画検索を試してみたいところではあるけれど、僕はこのワードを入力した。
結果にどんなものが表示されるのかは全く分からない。僕の考えでは答えが全く想像つかないから。なるべく楽して、穏便に怪しまれないように取り返すのが求める条件。そんな方法があるだろうか。
分からないけれど、僕は条件を頭に浮かべながら検索を実行した。
『あなたの姉からマウスを取り戻す方法として最もおすすめするのは待つことです。しばらくの間、このパソコンを控えめに使ってあなたの姉からかけられている疑いを薄めればマウスは自然とあなたのもとへ返ってきます。次のあなたの誕生日、「あげるもんないし考える時間も無かったからこれ返すわ」と言いながら投げられるでしょう。』
姉からのマウスの返却方法は置いておいて、僕はそう来たかという感想を持った。待つのが最も正解か。確かになるべく早くという意識は抜けていたけどちょっと求めていたものとは違う。
時間をかけていいのなら1番正しいと思うけど、このパソコンならもっと……いや、少なからず早くマウスを使いたいという僕の気持ちも汲んでいてくれたはず。それでも待つのが正解ということは姉がかなり警戒していて穏便に済ませようとすると待つ以外ないということだろうか。
そうだとしたら我が姉ながら抜け目のなさに驚くしちょっと引く。
まさか姉を殺して奪うだとかそういう物騒な答えが出る訳もないし、検索結果に関しては仕方ないと思う。
けれど、どうしたものかと悩む僕に黒いパソコンから更なる文が届く。
『ちなみにあなたの姉のマウスの保管場所は机の隣にある棚の鍵付きの引き出し。その引き出しの鍵は本棚に並べてある漫画「風神の遠い親戚」の17巻に挟んであります。』
うーん。それを知っても悩みは深まるばかり。隠し場所が分かっても安易に取ってしまうことはできない。逸る気持ちをぐっと堪えて待つしかないのだろうか――――。
――と、そんなことができる訳なくて。次の日僕は姉の部屋の中にいた。
いつもより急いで帰ってきて姉はまだ家にいない。荷物を置いた僕は誰もいないのが分かっていながら忍び足でそっと部屋の中に侵入した。
思えば、姉の部屋に入るのは久しぶり。お互いに良いお年頃になってからは自室で2人きりになるという機会は減った。たぶん高校2年生になってからは初めての入室なんじゃないかと思う。
だから、この姉の部屋の匂いは久しぶりだし家具の配置も少し違っている。いくら姉とはいえ人のプライベートを覗くってドキドキする。僕はちょっとだけ鼓動が早くなって、それを隠すようにまた意味もなく音を立てないように努めた。
我慢できないからマウスを一旦取り返して検索を終えたらまた元の場所に戻すという手段を取ることにした。手間がかかるがそれがいい。もしすぐに返せなくてバレたらバレたでその時に任せる。
たしかこの棚の中にマウスは入っていて、鍵はこの漫画の中。
僕は久しぶりの姉の部屋を何か変わったものがないか見ながらマウス奪還作戦を進めた。
こんな枕カバーだったっけとか、こんな香水つけて学校行ってるんだなんて思いながら僕は棚の前にあった椅子をどかして鍵付きの引き出しへ鍵を差し込む。
このどかした椅子も出る時にまた完璧な場所に戻して置かなければ。姉はこういう細かいところにも気づく。
引き出しを開けると、ノートやらアクセサリーが入っているのが見えて黒いマウスも確かにそこにあった。僕は迷わずそれを手に取る。
しかし、持ち上げるとすぐに手を止めた。
マウスが置いてあった場所の下にメモ用紙が置いてあったのだ。
「取ったらすぐ分かるから。やっぱあんた何か隠してたのね。バーカ」
…………。
その文を見た時に僕の中で徐々に引きのばされていた糸が一気にちぎれてしまった。
ああ、何だやる気かと、そっちがその気ならこっちにも考えがある。僕は怒ったのだった。
大体何で僕が得た物を勝手に奪われたというのにこんなにこそこそとしなければならないのか。間違っている。喧嘩を売られたのなら買ってやろうではないか。
僕はマウスを戻した。盗むのではなくちゃんと奪い返すことに決めたのだ。
すぐに自室に戻って黒いパソコンを取り出す。穏便に済ませようなんて間違っていた。この黒いパソコンを持つ僕と戦えばどうなるか教えてやろう。
「姉 弱み」
僕は怒りのままそう検索した。
黒いマウスの機能を知ってから最初の検索。本当なら早速、画像検索か動画検索を試してみたいところではあるけれど、僕はこのワードを入力した。
結果にどんなものが表示されるのかは全く分からない。僕の考えでは答えが全く想像つかないから。なるべく楽して、穏便に怪しまれないように取り返すのが求める条件。そんな方法があるだろうか。
分からないけれど、僕は条件を頭に浮かべながら検索を実行した。
『あなたの姉からマウスを取り戻す方法として最もおすすめするのは待つことです。しばらくの間、このパソコンを控えめに使ってあなたの姉からかけられている疑いを薄めればマウスは自然とあなたのもとへ返ってきます。次のあなたの誕生日、「あげるもんないし考える時間も無かったからこれ返すわ」と言いながら投げられるでしょう。』
姉からのマウスの返却方法は置いておいて、僕はそう来たかという感想を持った。待つのが最も正解か。確かになるべく早くという意識は抜けていたけどちょっと求めていたものとは違う。
時間をかけていいのなら1番正しいと思うけど、このパソコンならもっと……いや、少なからず早くマウスを使いたいという僕の気持ちも汲んでいてくれたはず。それでも待つのが正解ということは姉がかなり警戒していて穏便に済ませようとすると待つ以外ないということだろうか。
そうだとしたら我が姉ながら抜け目のなさに驚くしちょっと引く。
まさか姉を殺して奪うだとかそういう物騒な答えが出る訳もないし、検索結果に関しては仕方ないと思う。
けれど、どうしたものかと悩む僕に黒いパソコンから更なる文が届く。
『ちなみにあなたの姉のマウスの保管場所は机の隣にある棚の鍵付きの引き出し。その引き出しの鍵は本棚に並べてある漫画「風神の遠い親戚」の17巻に挟んであります。』
うーん。それを知っても悩みは深まるばかり。隠し場所が分かっても安易に取ってしまうことはできない。逸る気持ちをぐっと堪えて待つしかないのだろうか――――。
――と、そんなことができる訳なくて。次の日僕は姉の部屋の中にいた。
いつもより急いで帰ってきて姉はまだ家にいない。荷物を置いた僕は誰もいないのが分かっていながら忍び足でそっと部屋の中に侵入した。
思えば、姉の部屋に入るのは久しぶり。お互いに良いお年頃になってからは自室で2人きりになるという機会は減った。たぶん高校2年生になってからは初めての入室なんじゃないかと思う。
だから、この姉の部屋の匂いは久しぶりだし家具の配置も少し違っている。いくら姉とはいえ人のプライベートを覗くってドキドキする。僕はちょっとだけ鼓動が早くなって、それを隠すようにまた意味もなく音を立てないように努めた。
我慢できないからマウスを一旦取り返して検索を終えたらまた元の場所に戻すという手段を取ることにした。手間がかかるがそれがいい。もしすぐに返せなくてバレたらバレたでその時に任せる。
たしかこの棚の中にマウスは入っていて、鍵はこの漫画の中。
僕は久しぶりの姉の部屋を何か変わったものがないか見ながらマウス奪還作戦を進めた。
こんな枕カバーだったっけとか、こんな香水つけて学校行ってるんだなんて思いながら僕は棚の前にあった椅子をどかして鍵付きの引き出しへ鍵を差し込む。
このどかした椅子も出る時にまた完璧な場所に戻して置かなければ。姉はこういう細かいところにも気づく。
引き出しを開けると、ノートやらアクセサリーが入っているのが見えて黒いマウスも確かにそこにあった。僕は迷わずそれを手に取る。
しかし、持ち上げるとすぐに手を止めた。
マウスが置いてあった場所の下にメモ用紙が置いてあったのだ。
「取ったらすぐ分かるから。やっぱあんた何か隠してたのね。バーカ」
…………。
その文を見た時に僕の中で徐々に引きのばされていた糸が一気にちぎれてしまった。
ああ、何だやる気かと、そっちがその気ならこっちにも考えがある。僕は怒ったのだった。
大体何で僕が得た物を勝手に奪われたというのにこんなにこそこそとしなければならないのか。間違っている。喧嘩を売られたのなら買ってやろうではないか。
僕はマウスを戻した。盗むのではなくちゃんと奪い返すことに決めたのだ。
すぐに自室に戻って黒いパソコンを取り出す。穏便に済ませようなんて間違っていた。この黒いパソコンを持つ僕と戦えばどうなるか教えてやろう。
「姉 弱み」
僕は怒りのままそう検索した。
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