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word27 「過去も 変えられる」①
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僕は今日の学校である失敗をした。午後の授業を受けていた時のことである。
心地よい天気の日の5限目、昼ご飯を食べてほどほどに時間が経った高校生には睡魔がやってくる。それは席についてリラックスした状態ではどう頑張っても撃退できる気がしないほどで、少し気を抜けば身を委ねて机に突っ伏してしまいそうになる。
今日の5限目もそうであった。落ち着いた声をした教師の話だけが雑音として流れて……ほとんどノートを取るようなペンの音も聞こえず……クラス全体から眠気が感じられた。
僕も漏れなくそうだった。もう睡魔と戦うことも諦めてほぼ目を閉じながら意識を失いかけていた。ノートの上のシャーペンや消しゴムを片付けて、いつ力尽きても良いように準備もしていた。
しかし、そんな時クラスの状況は変わった。
「ちょっと皆眠そうだから、問題あてていこっか――」
教壇に立つ先生がそんなことを口走ったのだ。いつもはそんなことをしない定年退職間近のお爺さん先生だけど、今日は機嫌が悪かったのか単にだらしない生徒への指導心に火がついたのかは分からない。けれど、とにかくそれで生徒の態度は変わった。
皆が一斉に教科書とノートを整え始めて、教室が騒がしくなった。
そこで今日の僕にとって問題だったのが、睡魔が強敵過ぎてすぐにエンジンがかからなかったことだ。先生のセリフを夢かもと勘違いしてまだ指すら動かさずに呆けていた。
「じゃあ、まず最初の問題を――」
さらに問題だったのが……最初に当てられたのが僕であったことである……。
自分の苗字を呼ばれて僕はようやく目を開けた。正面にいる先生と目が合い、どの問題を問われているのかどころか、何で名前を呼ばれているのかもすぐには分からなかった僕は動揺した。
あるミスで一番前の席になり、にもかかわらず目を閉じていた僕は焦りに焦った。
どうしよう。このままでは怒られてしまう。勘で答えてみるか。そうやって急速に頭を巡らしたけど、諦めるしかなかった僕はそこで正直なことを言った。
「すみません。ぼーっとしてしまってて……どの問題ですか?」
バツが悪そうな雰囲気を体から発生させて、軽く頭を下げながら。
でも、そんな僕へ次に浴びせられたのは怒声でも許しの言葉でもなく、笑い声だった。
教室から笑い声が沸々と起こって、振り返るとやはり僕の方を見てクスクスと笑う男子が数人。
「当てたのは竹中さんですよ。寝ぼけとんな。ははっ」
……最大のミスがこれだった。実は当てられていたのは別のクラスメイトだったのだ。1つ後ろの席に座る女子。
しかもその子は僕と全く違う名字で、どうして聞き間違えたのか自分でも全く分からない――。
先生が笑うと、つるんでる男子だけでなくクラス全体が笑い始めて、僕は顔を赤らめた。何も考えられなくなって自分も笑って誤魔化したりすることもできず、ただじっと笑いが収まるのを待った。
そして授業が終わった後も友達に謎のミスをからかわれて、あだ名が竹中さんになりかけているし、学校を出た後も恥ずかしさと後悔の気持ちが収まらなかった……。
そんな災難があった日に帰ってきた僕は黒いパソコンを取り出して、机の前に座っている。
「過去 変えられる」
画面のワードボックスにはその言葉が入力されていた。
心地よい天気の日の5限目、昼ご飯を食べてほどほどに時間が経った高校生には睡魔がやってくる。それは席についてリラックスした状態ではどう頑張っても撃退できる気がしないほどで、少し気を抜けば身を委ねて机に突っ伏してしまいそうになる。
今日の5限目もそうであった。落ち着いた声をした教師の話だけが雑音として流れて……ほとんどノートを取るようなペンの音も聞こえず……クラス全体から眠気が感じられた。
僕も漏れなくそうだった。もう睡魔と戦うことも諦めてほぼ目を閉じながら意識を失いかけていた。ノートの上のシャーペンや消しゴムを片付けて、いつ力尽きても良いように準備もしていた。
しかし、そんな時クラスの状況は変わった。
「ちょっと皆眠そうだから、問題あてていこっか――」
教壇に立つ先生がそんなことを口走ったのだ。いつもはそんなことをしない定年退職間近のお爺さん先生だけど、今日は機嫌が悪かったのか単にだらしない生徒への指導心に火がついたのかは分からない。けれど、とにかくそれで生徒の態度は変わった。
皆が一斉に教科書とノートを整え始めて、教室が騒がしくなった。
そこで今日の僕にとって問題だったのが、睡魔が強敵過ぎてすぐにエンジンがかからなかったことだ。先生のセリフを夢かもと勘違いしてまだ指すら動かさずに呆けていた。
「じゃあ、まず最初の問題を――」
さらに問題だったのが……最初に当てられたのが僕であったことである……。
自分の苗字を呼ばれて僕はようやく目を開けた。正面にいる先生と目が合い、どの問題を問われているのかどころか、何で名前を呼ばれているのかもすぐには分からなかった僕は動揺した。
あるミスで一番前の席になり、にもかかわらず目を閉じていた僕は焦りに焦った。
どうしよう。このままでは怒られてしまう。勘で答えてみるか。そうやって急速に頭を巡らしたけど、諦めるしかなかった僕はそこで正直なことを言った。
「すみません。ぼーっとしてしまってて……どの問題ですか?」
バツが悪そうな雰囲気を体から発生させて、軽く頭を下げながら。
でも、そんな僕へ次に浴びせられたのは怒声でも許しの言葉でもなく、笑い声だった。
教室から笑い声が沸々と起こって、振り返るとやはり僕の方を見てクスクスと笑う男子が数人。
「当てたのは竹中さんですよ。寝ぼけとんな。ははっ」
……最大のミスがこれだった。実は当てられていたのは別のクラスメイトだったのだ。1つ後ろの席に座る女子。
しかもその子は僕と全く違う名字で、どうして聞き間違えたのか自分でも全く分からない――。
先生が笑うと、つるんでる男子だけでなくクラス全体が笑い始めて、僕は顔を赤らめた。何も考えられなくなって自分も笑って誤魔化したりすることもできず、ただじっと笑いが収まるのを待った。
そして授業が終わった後も友達に謎のミスをからかわれて、あだ名が竹中さんになりかけているし、学校を出た後も恥ずかしさと後悔の気持ちが収まらなかった……。
そんな災難があった日に帰ってきた僕は黒いパソコンを取り出して、机の前に座っている。
「過去 変えられる」
画面のワードボックスにはその言葉が入力されていた。
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