何でも検索できるパソコンを手に入れました。ーBPCー

木岡(もくおか)

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word29 「ゲームのフレンド 顔」④

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 これって安直だろうか。ゲームの中で偶然出会って、優しくしてもらって、プレイヤー名と操作キャラがかわいいという理由だけで、中身もかわいいと思ってしまうのはちょろすぎるだろうか。

 ネット上での振る舞いから想像される容姿と、現実での容姿が大きく違っている場合があるなんて当然のこと。オンラインゲームの話に限らず、SNSや配信で顔を晒すと良いにしろ悪いにしろ驚かれるなんて最近ではよく聞く話だ。

 それでも何だろう……。hinacorin♡さんだけは絶対にかわいいという謎の自信が僕にはあった。いきなり入ってきた地雷初心者に、そうだと分かっていながら優しくするなんて心も顔も綺麗じゃないとあり得ない。

 僕の脳内hinacorin♡さんは芸能人並みの顔に仕上がってしまっていた。

 寝たら昼まで起きないと感じつつも、まだどうしようもなく眠いわけではなかった僕はスマホでSNSのアプリを起動した。hinacorin♡さんのアカウントが見つからないか調べるためだ。

 ゲームに満足いった心地よさと共にベッドに寝転がる。

 アカウントはすぐに見つかった。ゲーム内の名前とゲーム名を検索にかけたら1発だ。それが分かったのはプロフィールにそう書いてあることと、3分前に「見知らぬ初心者さんと遊んだ♡めっちゃかわいかった♡」という投稿があったからだ。

 そして、飛び込んでくるJD2年生という文字。目を大きくした僕は続けて自撮りがないか探る。

 投稿をしばらく遡ってもはっきりと顔が写っているような投稿は見つからない。代わりに見つかったのは料理とか風景の画像。そこに少しだけ手や足が写っているものくらいだった。

 ただ、それだけでもかわいいと確信する。薄ピンクのネイルがキュートな手からはフローラルの香りがしそうだ。

 hinacorin♡さんのSNSを見ていっていると、僕はふとネトゲのあり方に感心した。遠く離れた場所にいる女子大生と僕はさっきまで遊んでいたんだと。

 考えてみれば何の壁もなく合法的に女子中学生だとか人妻なんかとも遊べてしまうのだ。ネトゲでなら。それってよく考えたらとんでもないことではないだろうか。今どきゲーマー女子なんかも珍しくないし、そりゃ出会い厨なんかもたくさんいるわけだ。

 自撮りの画像は無かったけど満足した。ゲームの攻略情報とかも仕入れられたし、暴言や晒しが全くない投稿内容からも性格の良さが伺えて、こんな人とまた遊ぶ約束ができた。

 実際の顔が気になったけれど諦めるしかない。普通ならば。

 けれど、すまん僕は黒いパソコンを持っているのだ――。

「今日遊んだゲームのフレンド 顔」

 収納の奥から黒いパソコンを取り出した僕はすぐさまそのワードを入力した。

 顔は知らないけど名前は知っている誰かの顔の検索。それは画像検索という機能を知ってからいつかやってみたいと思っていた検索だった。SNSだけでの知り合いだとか、資料の残っていない歴史上の人物だとか。

 丁度いい気になり度の今回の対象……その結果は……。

「めっちゃかわいいっ」

 芸能人顔負けのルックスをしている女性の顔が画面に表示される。アイドルや女優の宣材写真のような構図で。前にしょうがなく女優の裸を検索した時と同じ背景に、今回は白いシャツを着た女性。

 芸能人顔負けと言うか本当にこんな顔をした女優がいなかったかと思う。ビックリするほど綺麗な二重の瞳に栗色の髪。でも女子大生というよりは少し大人っぽい気もする。

「ってか……ん?……あれ??」

 どういうことだ。おかしい。画像は2つ表示されたのだけれど、おそらくもう1枚のそれは今日一緒に遊んだもう1人、†黒竜†のもので他ならないはず。

 どこにでもいるアラフォーの中年……よりはちょっと小汚いというか顔面偏差値が低いくらいの男。小太りで固そうな髪。

 別に変じゃないしキモいとかもない。それが†黒竜†だと言われれば、まあこんな感じの見た目っぽいと思うのだが……その中年の画像の上にかかれている文字が†黒竜†ではなく「hinacorin♡」だったのだ。

 逆に女優みたいにかわいい女性の上に書いてある文字が「†黒竜†」。

 これは一体……。僕は間違いかと不審に思って、何が変わる訳ではないけど持っている黒いマウスを操作した。画像をクリックしてみたり、「hinacorin♡」と「†黒竜†」という文字をカーソルでなぞってみたり。

「逆じゃないですよ。」

 すると黒いパソコンから新しいウインドウで文字が表示された。

 頭がゆっくり理解を始める。こっちが「hinacorin♡」で……こっちが「†黒竜†」……。本当にそうなのか。あのかわいくて優しい魔法使いがこのおじさんで……あの痛い中二病みたいなのがこの美女……。

「いやっ。逆!」

 僕は心の中でこだまするほどの勢いでツッコミを入れた。
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