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word36 「お隣さん 何やってた」②
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おもむろに自販機の前で四つん這いになるアラフォーの男性。さらに地面についているんじゃないかというほど頭を下げて覗き始める。
僕が角を曲がってちょうどお隣さんを発見したと同時くらいの出来事であった。「あ、お隣さんだ」と思ったらすぐこれである。
僕はそのあまりの光景に足を止めた。止めてしまった。
百歩……いや千歩……いやいや万歩譲って、大の大人が自販機の下を覗くのはいいとしよう。でも、奥に普通に歩いている人がいるんですがそれは――。
奥から歩いて来た人がお隣さんの横を通り過ぎていく。知らないおばさんだった。そのおばさんは当然おかしな人を見る目でお隣さんのことを見て、数秒後にあんまりこういう人を見るもんじゃないという風に反対方向を見ながら去っていった。
そうやって通行人が通り過ぎる間もお隣さんはずっと自販機の下を見続けて、僕もなんだかそこから動くことができなかった。
一体何をやっているのか……。普通に考えれば小銭を落としてしまったとかだろう。10円玉くらいなら大抵の人は諦めるものであるが、100円玉とか500円玉が運悪く自販機の下に行ってしまったのなら取ろうとする人もいるであろう。
でも、その場合でもあんなに地面まで頭を下げないし、僕にはそういう風には見えなかった。
お隣さんは財布を取り出してジュースを買おうとしていたでもなく、直立不動の状態からあの態勢になったのだ。
じゃあ何だ……相当金欠なのだろうか。自販機の下の小銭に頼らないといけないくらい。そんなことあるのか、宇宙人なのに。もしそうだとしても人目を気にして、深夜に行くとかしてくれ。
見てるこっちも恥ずかしいので、心の中で叫ぶ――。
僕は周囲を見て、これ以上誰かがお隣さんの恥ずかしい姿を目撃しないか確かめた。車やバイクの音はしないし、どうやら今のところ人は近づいてきていない。
それが分かると……一安心。一安心なのだけど、こっから僕はどうしよう。
話しかけてみるか、「何してるんですか」と。こんな状況黙って見過ごせる訳が無いし、お隣さんのあの行動の理由はめちゃくちゃ気になる。だってまだ覗き続けているんだぞ。
僕は1歩踏み出しては、1歩下がり。前を向いては後を向いた。
けれど、結局遠回りして別の道から帰ることにする。お隣さんとは関わらないと前に決めたのだから――。
曲がろうとしていた道を横切って、2歩3歩。道の中央までやってくる。そして、そんなタイミングでお隣さんが顔を上げた。
「やあ」
四つん這いの状態で僕を見つけたお隣さんはそう言った。
さらに立ち上がり、いつもの両手バイバイの状態に入る。
「あ、どうも……」
溢れる気持ちを抑えながら会釈をして、笑顔を作る。
僕は足を止めずにさっさとその場を後にした。早歩きに切り替えて、なるべく早く遠く進む。そして、次の角を曲がったら……。
「ああああああああああああ!!!」
心の中で全力で叫んだ。
結局見つかるなら聞けば良かったじゃないかっ。そもそもあの人マジであんなところで何してたんだよっ。
その勢いのまま僕は相当早いペースで歩いて家まで急いだ。もう今日やった勉強のことも頭から抜け落ちてしまった気がする。さっき考えていた地理の問題とかも忘れた。あるのは「お隣さん 何やってた」、これだけだった――。
「ああああああああああああ!!!」
家に帰って自分の部屋に着くと、まず実際に叫んだ。枕に向かってだけど。
そして、黒いパソコンを使って検索をする。
もうお隣さんについては詮索しまいと思っていたが、致し方なし……。
「お隣さん 何やってた」
僕が角を曲がってちょうどお隣さんを発見したと同時くらいの出来事であった。「あ、お隣さんだ」と思ったらすぐこれである。
僕はそのあまりの光景に足を止めた。止めてしまった。
百歩……いや千歩……いやいや万歩譲って、大の大人が自販機の下を覗くのはいいとしよう。でも、奥に普通に歩いている人がいるんですがそれは――。
奥から歩いて来た人がお隣さんの横を通り過ぎていく。知らないおばさんだった。そのおばさんは当然おかしな人を見る目でお隣さんのことを見て、数秒後にあんまりこういう人を見るもんじゃないという風に反対方向を見ながら去っていった。
そうやって通行人が通り過ぎる間もお隣さんはずっと自販機の下を見続けて、僕もなんだかそこから動くことができなかった。
一体何をやっているのか……。普通に考えれば小銭を落としてしまったとかだろう。10円玉くらいなら大抵の人は諦めるものであるが、100円玉とか500円玉が運悪く自販機の下に行ってしまったのなら取ろうとする人もいるであろう。
でも、その場合でもあんなに地面まで頭を下げないし、僕にはそういう風には見えなかった。
お隣さんは財布を取り出してジュースを買おうとしていたでもなく、直立不動の状態からあの態勢になったのだ。
じゃあ何だ……相当金欠なのだろうか。自販機の下の小銭に頼らないといけないくらい。そんなことあるのか、宇宙人なのに。もしそうだとしても人目を気にして、深夜に行くとかしてくれ。
見てるこっちも恥ずかしいので、心の中で叫ぶ――。
僕は周囲を見て、これ以上誰かがお隣さんの恥ずかしい姿を目撃しないか確かめた。車やバイクの音はしないし、どうやら今のところ人は近づいてきていない。
それが分かると……一安心。一安心なのだけど、こっから僕はどうしよう。
話しかけてみるか、「何してるんですか」と。こんな状況黙って見過ごせる訳が無いし、お隣さんのあの行動の理由はめちゃくちゃ気になる。だってまだ覗き続けているんだぞ。
僕は1歩踏み出しては、1歩下がり。前を向いては後を向いた。
けれど、結局遠回りして別の道から帰ることにする。お隣さんとは関わらないと前に決めたのだから――。
曲がろうとしていた道を横切って、2歩3歩。道の中央までやってくる。そして、そんなタイミングでお隣さんが顔を上げた。
「やあ」
四つん這いの状態で僕を見つけたお隣さんはそう言った。
さらに立ち上がり、いつもの両手バイバイの状態に入る。
「あ、どうも……」
溢れる気持ちを抑えながら会釈をして、笑顔を作る。
僕は足を止めずにさっさとその場を後にした。早歩きに切り替えて、なるべく早く遠く進む。そして、次の角を曲がったら……。
「ああああああああああああ!!!」
心の中で全力で叫んだ。
結局見つかるなら聞けば良かったじゃないかっ。そもそもあの人マジであんなところで何してたんだよっ。
その勢いのまま僕は相当早いペースで歩いて家まで急いだ。もう今日やった勉強のことも頭から抜け落ちてしまった気がする。さっき考えていた地理の問題とかも忘れた。あるのは「お隣さん 何やってた」、これだけだった――。
「ああああああああああああ!!!」
家に帰って自分の部屋に着くと、まず実際に叫んだ。枕に向かってだけど。
そして、黒いパソコンを使って検索をする。
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「お隣さん 何やってた」
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