6 / 21
・一の部屋
第6話 <一の部屋>
しおりを挟む
どこからともなく現れたそれは自分を見て笑っている――。口だけが不自然なほど横に伸びている。全身黒ずんだ肌に乱れた長髪、乱れた白い服。髪で隠れて片方しか見えない目は飛び出しそうなほど見開いていた。
向かってくるか?
ナオキは瞬間、部屋全体を見て武器になりそうなものがあるか逃げられる場所があるか探した――。部屋の入り口と反対側、ナオキから見て右後ろには扉がある――。
薄暗くて入った位置からはハッキリと見えなかったがやはりあれは扉だ――。
ちゃんと逃げ道になるか、鍵は開いているか確かめようとしたとき、それは動き出した――。よりいっそう口を裂き上げ、人の頭が入りそうなほど開いたが声を発するわけではなく、重心を低くしてから一気に詰め寄ってくる。狙いは首か頭か――ナオキの顎のほうへ手を伸ばしてきた――。
ドスッ
ナオキはそれを思いっきり蹴り上げた。それは身を反らしのけぞる――
手応えはあった。低い姿勢で向かってきたそれの胸に蹴りが直撃した。ちゃんと質量がありダメージがあったか分からないが物理的な力を受けている。
自分と背丈も変わらない。女というほど柔らかそうな体ではないが男というほどごつい体でもない。このぐらいの強面こわもてならホラー映画でも見た。緊張はしている――全く怖くないと言えば嘘になるが、立ち向かえないほどではない――。
「おらああぁ!」
恐怖を吹き飛ばすためとネットで見た幽霊は大きな音に弱いという情報から大声を出しながらチョッキから取り出したお札を押し付け、その勢いで突き飛ばした。さらに、たたみかけるように数珠を取り出し音を鳴らす。
効いているようにも見える。それは反った体制のまま床まで落ちて、ちょうどブリッジの形になった。このまま消えてくれたら楽だが、目を背けたくなる光景の中で効かなかった場合の次なる手を探る――が、考える暇ほぼもらえず、また不気味な笑顔を見せられた。
それは縮めたバネが元に戻るように一瞬で上体を起こし、そのままの勢いで飛び付いてきた。反応が遅れ、床に背を付けてしまった状態で覆い被される。
逃れる為に腰を捻り、足をバタつかせながら襲ってくる手を防ぐ。掴んだ手から体温は感じないが人の手の形だ。その手は壊れた機械のようにでたらめな力で何度も繰り返し首めがけてしなり伸び固まる。
死にたくない――どけ化け物――
「うおおおおお!!」
殺されてたまるものか。ナオキは再び吠えて、力を絞り出す。
もがき、相手の力が抜けるタイミング、力が入りやすい手の位置を感覚で狙い、手を掴んだまま一撃を食らわすことに成功した。張り倒し、すぐに立ち上がって蹴りを入れる。生きるか死ぬか、殺すか殺されるかだ。
ナオキは最も近く、この部屋の中では唯一武器になりそうな四足のイスを持ち上げ振り下ろした……何度も……何度も……何度も……それが動かぬと確信できるようになるまで。
鈍い音だけがナオキの神経を刺激した。手の感覚もいまいち感じない。ぼーっとぼやけて目に見える光景は悪夢よりもひどい。
………………こいつはいつから動けなかったんだろう?
疲れて持ち上げられなくなったイスを、形を変えた肉塊に預けて、部屋の壁まで下がった。わずかに見えるそれの口元はまだ笑っている――。
だけどもう動かないと分かる。ドアが現れた。入った時に無くなった入口のドアが再び現れた。
操り人形の全身に付いた糸が切られるようにナオキはその場に崩れ落ちた。
向かってくるか?
ナオキは瞬間、部屋全体を見て武器になりそうなものがあるか逃げられる場所があるか探した――。部屋の入り口と反対側、ナオキから見て右後ろには扉がある――。
薄暗くて入った位置からはハッキリと見えなかったがやはりあれは扉だ――。
ちゃんと逃げ道になるか、鍵は開いているか確かめようとしたとき、それは動き出した――。よりいっそう口を裂き上げ、人の頭が入りそうなほど開いたが声を発するわけではなく、重心を低くしてから一気に詰め寄ってくる。狙いは首か頭か――ナオキの顎のほうへ手を伸ばしてきた――。
ドスッ
ナオキはそれを思いっきり蹴り上げた。それは身を反らしのけぞる――
手応えはあった。低い姿勢で向かってきたそれの胸に蹴りが直撃した。ちゃんと質量がありダメージがあったか分からないが物理的な力を受けている。
自分と背丈も変わらない。女というほど柔らかそうな体ではないが男というほどごつい体でもない。このぐらいの強面こわもてならホラー映画でも見た。緊張はしている――全く怖くないと言えば嘘になるが、立ち向かえないほどではない――。
「おらああぁ!」
恐怖を吹き飛ばすためとネットで見た幽霊は大きな音に弱いという情報から大声を出しながらチョッキから取り出したお札を押し付け、その勢いで突き飛ばした。さらに、たたみかけるように数珠を取り出し音を鳴らす。
効いているようにも見える。それは反った体制のまま床まで落ちて、ちょうどブリッジの形になった。このまま消えてくれたら楽だが、目を背けたくなる光景の中で効かなかった場合の次なる手を探る――が、考える暇ほぼもらえず、また不気味な笑顔を見せられた。
それは縮めたバネが元に戻るように一瞬で上体を起こし、そのままの勢いで飛び付いてきた。反応が遅れ、床に背を付けてしまった状態で覆い被される。
逃れる為に腰を捻り、足をバタつかせながら襲ってくる手を防ぐ。掴んだ手から体温は感じないが人の手の形だ。その手は壊れた機械のようにでたらめな力で何度も繰り返し首めがけてしなり伸び固まる。
死にたくない――どけ化け物――
「うおおおおお!!」
殺されてたまるものか。ナオキは再び吠えて、力を絞り出す。
もがき、相手の力が抜けるタイミング、力が入りやすい手の位置を感覚で狙い、手を掴んだまま一撃を食らわすことに成功した。張り倒し、すぐに立ち上がって蹴りを入れる。生きるか死ぬか、殺すか殺されるかだ。
ナオキは最も近く、この部屋の中では唯一武器になりそうな四足のイスを持ち上げ振り下ろした……何度も……何度も……何度も……それが動かぬと確信できるようになるまで。
鈍い音だけがナオキの神経を刺激した。手の感覚もいまいち感じない。ぼーっとぼやけて目に見える光景は悪夢よりもひどい。
………………こいつはいつから動けなかったんだろう?
疲れて持ち上げられなくなったイスを、形を変えた肉塊に預けて、部屋の壁まで下がった。わずかに見えるそれの口元はまだ笑っている――。
だけどもう動かないと分かる。ドアが現れた。入った時に無くなった入口のドアが再び現れた。
操り人形の全身に付いた糸が切られるようにナオキはその場に崩れ落ちた。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/2/17:『うしろまえ』の章を追加。2026/2/24の朝頃より公開開始予定。
2026/2/16:『おちば』の章を追加。2026/2/23の朝頃より公開開始予定。
2026/2/15:『ねこ』の章を追加。2026/2/22の朝頃より公開開始予定。
2026/2/14:『いけのぬし』の章を追加。2026/2/21の朝頃より公開開始予定。
2026/2/13:『てんじょうのかげ』の章を追加。2026/2/20の朝頃より公開開始予定。
2026/2/12:『れいぞうこ』の章を追加。2026/2/19の朝頃より公開開始予定。
2026/2/11:『わふく』の章を追加。2026/2/18の朝頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる