ナオキと十の心霊部屋

木岡(もくおか)

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・二の部屋

第8話 類のない家

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「その人はどんな人なの?いつから部屋に入ってるの?」

 他の挑戦者について知っていることについては追い追い聞こうと思っていたことだった。それにユミコが昨日からここに入っているというのも新情報だ。

「…………もうずっと前から入ってます。知り合いだったわけではなくここへ来るときに一緒になったんです。30代中頃のおじさんでした。あんまり友好的ではなくて、おじいさんの話も聞かず部屋の中に入って行って……最初の部屋から出てきたときは放心状態というか、集中しているというか、口に手を当てて大きく息を吐いていました。そして私が話しかけるタイミングを伺っていたらすぐにまた次の部屋へ入って行ってしまって。時間で言えばちょうど24時間前くらいでしょうか」

 30代のおじさんでユミコちゃんに友好的ではなくどんどん部屋に入っていくか……24時間前から入っているならもう……。

「もっと前からここに来た人については何か知ってる?俺は三日前から入っている人もいるって聞いてるけど」

「いえ……私はずっとここに座っていますが一度も見ていません……」

 自分を抱いて震えあがりそうな様子のユミコ。安全が保障されている訳ではない妙な空間でずっと座っているのもメンタルにくるものがあるだろう。

 一度も見ていないならどの部屋まで入っていけたのかも分からないな。最初の部屋に死体はなかったが、死体を転がしっぱなしにしなかっただけかもしれない。

 時計の秒針が奏でる音すらない部屋と廊下だけの空間。ここから出たければ行くしかない、部屋の中へ。

 ナオキも鼓動が早くなってきてしまった。先に入った5人中4人は行方不明か……。

 チョッキの中に手を入れ、服の上から自分の心臓を抑える。落ち着け、折れるな。

 2番目の部屋に入っているというおじさんの行動は理解できる。いちいち休まないほうが良い。深くこの場所について考えることなく、たんたんと次々と部屋を見て言ったほうが賢明だろう――。

 行ってみるか、そのおじさんの様子を見に。おじさんが部屋に入ってからもう何時間も経っているが生きている可能性は0じゃないのでなるべく早く行くべきだ。

「じゃあ俺、助けに行ってみるよ。そのおじさん。生きているかもしれない」

「……ごめんなさい。私はここに座ってるだけで……。私も様子を見に行こうか考えてるんですけど、体が動かなくって……」

「いいよ。怖いなら仕方ない。俺がサクッと行ってくるから待ってて」

 またもやかっこつけてしまった。ユミコは消えそうな小さな声で「お願いします」と言って、座ったままお辞儀をするように頷いた。その時、ほのかにかかる風とともにやってきた良い匂いにも元気をもらって立ち上がる。

 肩をゆっくりと回しながら暗い廊下に向かい、手前から二番目の部屋の前まで歩いた。体の調子は良好だ。あとたったの9個……よし。

 ドアノブを回すと最初の部屋に入った時と同様、不思議な感覚に包まれ体が奥へ引き込まれた。
 そして視界に現れたのはまた廊下。その廊下は味気のないものではなく一般的な一軒家の玄関から見る景色だった。右には階段が見えて左にも奥にも部屋がある。下を見ると、実際に石のタイルがあり革靴や子供物のキャラクターが描かれた靴などがいくつか転がっていて、何か出てきそうな空気もなく、誰かの家へ不法侵入しているみたいだ。

 ナオキは少しだけ迷ったが靴を脱がずに玄関と廊下を隔てる低い段差を越えた。壁に手を置きながら、いつ何が起こっても対処できるよう、どこかに仕掛けられた罠を探すようにゆっくり異常がないか確認しながら進む――。

 何も起きることはなく物音も1つもないまま左側の部屋が覗ける位置までたどり着く。ドアはない。何があるか分からない状態で自分から探りこんでいくほうが勇気がいる。

 顔だけを前に出して部屋を覗いてみる――。

 何の変哲もなかった。廊下と同じでどこにでもある一般家庭、そのリビングといった感じだ。座卓にテレビに掃除機もある。青色のカーペットは夏用のザラザラしているもので薄い緑色のカーテンは半分閉まっていた。

 カーテンの隙間からは光が見えるが、その奥は黒色なのだろうか。電気はついてないがこの部屋と廊下は暗くない。

 しかし、奥のドアのガラスは暗い色をしている。何かあるならあそこ――。

 ナオキは意を決してあえてゆっくりではなく、見慣れた場所に入るように奥のドアに向かい開けてみた。

 人の気配を感じていなかったがそこには4人の人間がいた――。
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