10 / 21
・二の部屋
第10話 過大
しおりを挟む
っ……いつからそこにいた……?
ナオキは全く近づいてきた気配を感じ取れていなかったので面をくらった。怖い……そう思ってしまった。
どうする?……あのサイズのものが入ってきたら逃げ場はないぞ……。
ドア枠の8割ほどを埋める巨大な顔は相応以上に巨大な目の中で、過大な黒目をギョロギョロ動かし部屋の中を見ている。黒目が横側に移動しないと白色が見えないほどに目は深く黒い。
「俺を信じろ。まずは座れ」
男がナオキに頼むように強く言った。
巨大な顔を見せている化け物は部屋に入ってくる様子はない。ただじっと黒い目をわずかな光で輝かせこちらを見ている――。
「お願いします」
ナオキから男と反対側の隣の席に座る短い髪の女がいつの間にか顔を上げていた。その男よりも少し若いくらいの女もまた座ってほしいようだが……。
ナオキは目の前にあるイスの背もたれを掴んだ。
「ゆっくりだ……ゆっくり座れ……」
手が震える中、他に頼るものはないのでナオキは2人を信じてみることにした。男の指示通りゆっくりイスに座る動作を進める――。あの顔と見つめ合いながらだとイスに座るということが難しい。
「いいか?何もしなければ奴も何もしてこない。長い時間になるかもしれんが耐えろ」
ナオキがイスに座り、男がナオキにそう告げると、それを待っていたかのように巨大な顔がじわり……じわり……と部屋の中へ侵入してきた。徐々にその全貌が明らかになる。
顔だけかもしれないと思っていたが、巨大な顔にはちゃんと体がついていた。生えきっていない柔らかい髪、目以外は顔にあった大きさ。その顔を支える首、そして体も大きく、ドアを通り抜けるのが窮屈そうだが、腕が細長い。あの手を広げれば、この部屋の端から端まで支配できそうだ。その細長い腕を蜘蛛のように器用に操り部屋に全身が収まった。
上半身だけ……足がない。
ここからでは部屋が薄暗いこともあり、よく見えないが、足は確認できない。体を引きずりながら腕で進んでいる。
ドッ ドッ
床に腕をつく音は重く、細長いながらもかなり力は強そうだ。まず間違いなくこいつがここの霊。本当に座っていることが正解何だろうか――。
「うーーーあーーーーー」
化け物が言葉ではない声を出した。誰を見ているわけでもなく天井を見上げている。その声は高く無邪気だった。
ドッドッドッドッドッドッ
化け物が急に移動速度を上げてナオキの後ろを通り過ぎた。男の後ろに回り込み、見下ろし、片方の細長い腕を男の頭の上に伸ばした。近くで見る化け物は奇形な体だが人間と同じ質感の肌をしている。
おい――大丈夫か――
その腕が少しでも男の頭に振れたならすぐに走り出して部屋を出るつもりだった――が、化け物は腕を引っ込めまた移動を始めた。テーブルの周りを自分の心臓の鼓動と重なるドッドッという移動音とともに何週も回る――時折止まり、男にしたように座る人、置いてある冷蔵庫やゴミ箱へ手を伸ばし触れることなく引っ込めたり、奇声をあげる。
そんな化け物を観察する片時も気を抜けない時間が数時間続いた。
「またひとりふえた」
部屋を出て行くとき――化け物は低い声でそう言った。
ナオキは全く近づいてきた気配を感じ取れていなかったので面をくらった。怖い……そう思ってしまった。
どうする?……あのサイズのものが入ってきたら逃げ場はないぞ……。
ドア枠の8割ほどを埋める巨大な顔は相応以上に巨大な目の中で、過大な黒目をギョロギョロ動かし部屋の中を見ている。黒目が横側に移動しないと白色が見えないほどに目は深く黒い。
「俺を信じろ。まずは座れ」
男がナオキに頼むように強く言った。
巨大な顔を見せている化け物は部屋に入ってくる様子はない。ただじっと黒い目をわずかな光で輝かせこちらを見ている――。
「お願いします」
ナオキから男と反対側の隣の席に座る短い髪の女がいつの間にか顔を上げていた。その男よりも少し若いくらいの女もまた座ってほしいようだが……。
ナオキは目の前にあるイスの背もたれを掴んだ。
「ゆっくりだ……ゆっくり座れ……」
手が震える中、他に頼るものはないのでナオキは2人を信じてみることにした。男の指示通りゆっくりイスに座る動作を進める――。あの顔と見つめ合いながらだとイスに座るということが難しい。
「いいか?何もしなければ奴も何もしてこない。長い時間になるかもしれんが耐えろ」
ナオキがイスに座り、男がナオキにそう告げると、それを待っていたかのように巨大な顔がじわり……じわり……と部屋の中へ侵入してきた。徐々にその全貌が明らかになる。
顔だけかもしれないと思っていたが、巨大な顔にはちゃんと体がついていた。生えきっていない柔らかい髪、目以外は顔にあった大きさ。その顔を支える首、そして体も大きく、ドアを通り抜けるのが窮屈そうだが、腕が細長い。あの手を広げれば、この部屋の端から端まで支配できそうだ。その細長い腕を蜘蛛のように器用に操り部屋に全身が収まった。
上半身だけ……足がない。
ここからでは部屋が薄暗いこともあり、よく見えないが、足は確認できない。体を引きずりながら腕で進んでいる。
ドッ ドッ
床に腕をつく音は重く、細長いながらもかなり力は強そうだ。まず間違いなくこいつがここの霊。本当に座っていることが正解何だろうか――。
「うーーーあーーーーー」
化け物が言葉ではない声を出した。誰を見ているわけでもなく天井を見上げている。その声は高く無邪気だった。
ドッドッドッドッドッドッ
化け物が急に移動速度を上げてナオキの後ろを通り過ぎた。男の後ろに回り込み、見下ろし、片方の細長い腕を男の頭の上に伸ばした。近くで見る化け物は奇形な体だが人間と同じ質感の肌をしている。
おい――大丈夫か――
その腕が少しでも男の頭に振れたならすぐに走り出して部屋を出るつもりだった――が、化け物は腕を引っ込めまた移動を始めた。テーブルの周りを自分の心臓の鼓動と重なるドッドッという移動音とともに何週も回る――時折止まり、男にしたように座る人、置いてある冷蔵庫やゴミ箱へ手を伸ばし触れることなく引っ込めたり、奇声をあげる。
そんな化け物を観察する片時も気を抜けない時間が数時間続いた。
「またひとりふえた」
部屋を出て行くとき――化け物は低い声でそう言った。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/2/17:『うしろまえ』の章を追加。2026/2/24の朝頃より公開開始予定。
2026/2/16:『おちば』の章を追加。2026/2/23の朝頃より公開開始予定。
2026/2/15:『ねこ』の章を追加。2026/2/22の朝頃より公開開始予定。
2026/2/14:『いけのぬし』の章を追加。2026/2/21の朝頃より公開開始予定。
2026/2/13:『てんじょうのかげ』の章を追加。2026/2/20の朝頃より公開開始予定。
2026/2/12:『れいぞうこ』の章を追加。2026/2/19の朝頃より公開開始予定。
2026/2/11:『わふく』の章を追加。2026/2/18の朝頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる