1 / 21
第1話
しおりを挟む
ワイドルク王国の王都。
そこには貴族たち社交場として、よく利用されるレストランがある。
高級な調度品に囲まれた空間で、着飾った人々が料理と会話を楽しんでいる中、店の雰囲気をぶち壊すような大笑いが響き渡った。
「あははははっ! それであいつ、突然ぶっ倒れてさぁ!」
声の主は、明るく長い茶髪を背中に流した女性だ。身につけているドレスや装飾品は貴族のそれではあるが、テーブルに肩肘をつきながら大口を開けて笑うという、貴族が到底するとは思えない態度で会話をしている。
彼女のあまりに酷い態度に、他の客たちが話を止め、冷たい視線を女性に向けたが、周囲からの目線には気づいていない女性は、先ほどと同じ調子で会話を続けようとした。
だが彼女の前に座っている金髪の男性が唇に人差し指を当てて、静かにするようジェスチャーで示すと、ようやく自分に向けられている周囲の視線に気付いたのか、女性は威嚇するように周囲を睨みつけた。
客たちが慌てて視線を外すのを見てフンッと鼻を鳴らすと、呆れたようにグレーの瞳を細め、
「はぁ……アルバート……なんか最近、食事のときにヤイヤイうるさくないかい? 周囲の目なんて気にしてたら飯が不味くなるだろ? なんか結婚してからあんた、変わったねぇ。隣でずっと話さず、黙々と食べてる嫁の影響かい?」
金髪の男性――アルバート・ウォルレインの横に座り、ひたすら食事を続けている女性を軽く睨みつけた。
黒く艶やかな髪を一つに纏めた、小柄な女性だ。美しさを重要視する貴族社会では地味な容姿ではあるが、赤く大きな瞳が見る者の目を惹きつける。
アルバート・ウォルレインの妻であるナディア・ウォルレインだ。
話題を振られたナディアは、口の中に入っていた白身魚のソースがけをゆっくり味わい、何度か咀嚼を繰り返すと、飲み込んだ。そしてフォークとナイフを皿に置き、ナフキンで口元を拭うと、茶髪の女性に向き直り深々と頭を下げた。
「大変失礼いたしました、レナータ・グリン様。食事が終わるまで会話をしないことが、祖国の習わしでしたので……まだここワイドルク王国の生活に慣れない私を、どうかご容赦ください」
素直にナディアが謝罪をしたからか、レナータの瞳がわずかに見開かれ、すぐさま優越感で満ちた笑いへと変わった。
両腕を頭の後ろで組み、体を反らすと、視線を空に向ける。
「いや、あたしは別にそんな小さなこと気にしないから、いいけどさ。ほら、他の貴族連中との飯ってなった時、相手の会話にも参加せず、ずっと黙々と食ってるなんて、アルバートの嫁はおかしな奴って思われてしまうかもだろ? いや、あたしはあんたが隣国から来たって知ってるから気にしないけどさぁー。アルバートはあたしの幼馴染みで、昔っから世話を焼いてきたからさ、そんな風に思われるのは見逃せないっていうかー。ほらっ、アル。昔のあんたはひ弱で、あたしがよく守ってやったよな?」
突然昔話を振られたアルバートは、下唇をグッと噛むと、レナータから視線を外して呟くように言った。
「……昔の話だ」
「あははっ! 何いじけちゃってんの? 一緒に木に登って降りられなくなったときに助けてやったり、狩りに行って一人迷子になったのを迎えに行ってあげたのは、どこも誰だったかなぁ?」
「……もういいだろレナータ。今日は君がナディアに会いたい言ってここに来たんだろ? なのに昔話なんてしたら、ナディアがつまらないだろ」
アルバートがナディアを一瞥した。しかしナディアは、夫に向かって微笑み返す。
「いいえ、とても興味深いお話です。アルバート様は、あまり昔のことをお話してくださらないので」
「ええええ⁉ アル、奥さんに自分の子どもの時の話をしてないのかい?」
ナディアの発言に、レナータは大袈裟に目を見開いた。そしてナディアの方に身を乗り出しながら、ニヤニヤと口角をあげながら言葉を続ける。
「アルってばさ……ほんっと昔はひょろっひょろで泣き虫でさ。見た目も女の子みたいで、皆から揶揄われていたんだよ」
「まあ、そうなんですか」
「ああ。それが今やこんなに大男になって、私の隊に入ってくるとはね。そして副隊長にまで上り詰めるまで成長するとは……いやはや、昔は戦い何て嫌だって言っていたお坊ちゃんだったのに、一体どういう心境の変化なんだか……」
「もういいだろ、レナータ!」
今まで黙って聞いていたアルバートが、語気を荒げた。だがレナータは彼の怒りを間に受けず、軽い調子で手を振りながらカラカラ笑う。
「なんだよ、レナータだなんて他人行儀だね、アルは。あたしがあんたの上官なんてこと気にせず、昔みたいにあたしのことをレナって呼んでくれりゃいいのに」
だが、アルバートはレナータの発言に何も言わなかった。いや、眉間に深い皺を寄せ、口を開こうとしたところを、隣にいたナディアの言葉によって遮られたのだ。
「色々とお気遣い頂きありがとうございます、レナータ・グリン様。今後とも夫婦共々、よろしくお願いいたします。今度の食事のときは、色々とお話出来きましたら幸いです」
「ん」
深々と頭をさげたナディアに、レナータは否定とも肯定ともとれるような端的な言葉を返し、ワイングラスを傾けた。
そして面白くなさそうに、中で揺れる赤い液体を揺らす。
「もし会うとしたら、こんな堅苦しい店はごめんだけどね。正直あたしってさ、貴族のお嬢様たちといるよりも、アルや部下の男たちと一緒にいる方が気楽っていうか、性格的に合ってるっていうか……だってほら、女は面倒くさいだろ? 僻みとか嫉妬とか、本心を隠して笑わないといけなかったりとかさぁ。それに比べて男は、その辺さっぱりとしてるから気楽なんだよね」
一気にまくし立てると、レナータはワイングラスの中身を飲み干した。ワイングラスを置くにしては大きすぎる音と、あくび混じりの大声が店内に響く。
「はぁー、こんなちょびっとのお酒じゃ、酔うことも出来ないし。あたしは安酒でも、こう……キュウーっと効く酒を樽一杯飲みたいんだよ」
次の瞬間、レナータの喉の奥から、ゲフッという下品な音が鳴り、再び周囲の客たちの視線がこちらに向く。
アルバートはそんな視線に耐えられなくなったのか下を向いて黙り、ナディアはただ静かに微笑んでいた。
レナータは、
「この後、部下たちの訓練に付き合うから」
と言って店を出て行った。
ドレスを身につけているというのに、大股で音を立てながら立ち去っていく後ろ姿を見送ったアルバートは、深いため息をつきながら椅子に座った。ため息と同時に全身を脱力し、全体重を椅子に預けている。
ナディアは、途中で止まっていた食事を再開しようとナイフとフォークを手に取った。しかし、どれだけレナータが下品な態度をとっても不快な表情一つ見せなかったナディアの表情が、レナータの皿の上を見て初めて変わった。大きく目を見開き、信じられないと言った驚きを見せている。
出されたときは綺麗に盛り付けられていた白身魚の身が崩され、バラバラに散らばっていたのだ。それも食べるためではなく、手持ち無沙汰でなんとなく崩したのか、魚の身自体は減っていない。
それを見て、今までずっと上に向いていたナディアの口角が真一文字に結ばれ――
「ナディア、大丈夫か?」
少し疲れたような夫の問いかけに、ナディアはハッと息を飲んだ。そしてすぐさま表情を緩めると、アルバートに微笑みかけた。
「大丈夫ですよ、アルバート様。この国に嫁いで来た以上、祖国の習わしを貫くつもりはございません」
口角を上げながらそう答えると、ナディアは自身の皿の上に残った白身魚にフォークを入れた。
そこには貴族たち社交場として、よく利用されるレストランがある。
高級な調度品に囲まれた空間で、着飾った人々が料理と会話を楽しんでいる中、店の雰囲気をぶち壊すような大笑いが響き渡った。
「あははははっ! それであいつ、突然ぶっ倒れてさぁ!」
声の主は、明るく長い茶髪を背中に流した女性だ。身につけているドレスや装飾品は貴族のそれではあるが、テーブルに肩肘をつきながら大口を開けて笑うという、貴族が到底するとは思えない態度で会話をしている。
彼女のあまりに酷い態度に、他の客たちが話を止め、冷たい視線を女性に向けたが、周囲からの目線には気づいていない女性は、先ほどと同じ調子で会話を続けようとした。
だが彼女の前に座っている金髪の男性が唇に人差し指を当てて、静かにするようジェスチャーで示すと、ようやく自分に向けられている周囲の視線に気付いたのか、女性は威嚇するように周囲を睨みつけた。
客たちが慌てて視線を外すのを見てフンッと鼻を鳴らすと、呆れたようにグレーの瞳を細め、
「はぁ……アルバート……なんか最近、食事のときにヤイヤイうるさくないかい? 周囲の目なんて気にしてたら飯が不味くなるだろ? なんか結婚してからあんた、変わったねぇ。隣でずっと話さず、黙々と食べてる嫁の影響かい?」
金髪の男性――アルバート・ウォルレインの横に座り、ひたすら食事を続けている女性を軽く睨みつけた。
黒く艶やかな髪を一つに纏めた、小柄な女性だ。美しさを重要視する貴族社会では地味な容姿ではあるが、赤く大きな瞳が見る者の目を惹きつける。
アルバート・ウォルレインの妻であるナディア・ウォルレインだ。
話題を振られたナディアは、口の中に入っていた白身魚のソースがけをゆっくり味わい、何度か咀嚼を繰り返すと、飲み込んだ。そしてフォークとナイフを皿に置き、ナフキンで口元を拭うと、茶髪の女性に向き直り深々と頭を下げた。
「大変失礼いたしました、レナータ・グリン様。食事が終わるまで会話をしないことが、祖国の習わしでしたので……まだここワイドルク王国の生活に慣れない私を、どうかご容赦ください」
素直にナディアが謝罪をしたからか、レナータの瞳がわずかに見開かれ、すぐさま優越感で満ちた笑いへと変わった。
両腕を頭の後ろで組み、体を反らすと、視線を空に向ける。
「いや、あたしは別にそんな小さなこと気にしないから、いいけどさ。ほら、他の貴族連中との飯ってなった時、相手の会話にも参加せず、ずっと黙々と食ってるなんて、アルバートの嫁はおかしな奴って思われてしまうかもだろ? いや、あたしはあんたが隣国から来たって知ってるから気にしないけどさぁー。アルバートはあたしの幼馴染みで、昔っから世話を焼いてきたからさ、そんな風に思われるのは見逃せないっていうかー。ほらっ、アル。昔のあんたはひ弱で、あたしがよく守ってやったよな?」
突然昔話を振られたアルバートは、下唇をグッと噛むと、レナータから視線を外して呟くように言った。
「……昔の話だ」
「あははっ! 何いじけちゃってんの? 一緒に木に登って降りられなくなったときに助けてやったり、狩りに行って一人迷子になったのを迎えに行ってあげたのは、どこも誰だったかなぁ?」
「……もういいだろレナータ。今日は君がナディアに会いたい言ってここに来たんだろ? なのに昔話なんてしたら、ナディアがつまらないだろ」
アルバートがナディアを一瞥した。しかしナディアは、夫に向かって微笑み返す。
「いいえ、とても興味深いお話です。アルバート様は、あまり昔のことをお話してくださらないので」
「ええええ⁉ アル、奥さんに自分の子どもの時の話をしてないのかい?」
ナディアの発言に、レナータは大袈裟に目を見開いた。そしてナディアの方に身を乗り出しながら、ニヤニヤと口角をあげながら言葉を続ける。
「アルってばさ……ほんっと昔はひょろっひょろで泣き虫でさ。見た目も女の子みたいで、皆から揶揄われていたんだよ」
「まあ、そうなんですか」
「ああ。それが今やこんなに大男になって、私の隊に入ってくるとはね。そして副隊長にまで上り詰めるまで成長するとは……いやはや、昔は戦い何て嫌だって言っていたお坊ちゃんだったのに、一体どういう心境の変化なんだか……」
「もういいだろ、レナータ!」
今まで黙って聞いていたアルバートが、語気を荒げた。だがレナータは彼の怒りを間に受けず、軽い調子で手を振りながらカラカラ笑う。
「なんだよ、レナータだなんて他人行儀だね、アルは。あたしがあんたの上官なんてこと気にせず、昔みたいにあたしのことをレナって呼んでくれりゃいいのに」
だが、アルバートはレナータの発言に何も言わなかった。いや、眉間に深い皺を寄せ、口を開こうとしたところを、隣にいたナディアの言葉によって遮られたのだ。
「色々とお気遣い頂きありがとうございます、レナータ・グリン様。今後とも夫婦共々、よろしくお願いいたします。今度の食事のときは、色々とお話出来きましたら幸いです」
「ん」
深々と頭をさげたナディアに、レナータは否定とも肯定ともとれるような端的な言葉を返し、ワイングラスを傾けた。
そして面白くなさそうに、中で揺れる赤い液体を揺らす。
「もし会うとしたら、こんな堅苦しい店はごめんだけどね。正直あたしってさ、貴族のお嬢様たちといるよりも、アルや部下の男たちと一緒にいる方が気楽っていうか、性格的に合ってるっていうか……だってほら、女は面倒くさいだろ? 僻みとか嫉妬とか、本心を隠して笑わないといけなかったりとかさぁ。それに比べて男は、その辺さっぱりとしてるから気楽なんだよね」
一気にまくし立てると、レナータはワイングラスの中身を飲み干した。ワイングラスを置くにしては大きすぎる音と、あくび混じりの大声が店内に響く。
「はぁー、こんなちょびっとのお酒じゃ、酔うことも出来ないし。あたしは安酒でも、こう……キュウーっと効く酒を樽一杯飲みたいんだよ」
次の瞬間、レナータの喉の奥から、ゲフッという下品な音が鳴り、再び周囲の客たちの視線がこちらに向く。
アルバートはそんな視線に耐えられなくなったのか下を向いて黙り、ナディアはただ静かに微笑んでいた。
レナータは、
「この後、部下たちの訓練に付き合うから」
と言って店を出て行った。
ドレスを身につけているというのに、大股で音を立てながら立ち去っていく後ろ姿を見送ったアルバートは、深いため息をつきながら椅子に座った。ため息と同時に全身を脱力し、全体重を椅子に預けている。
ナディアは、途中で止まっていた食事を再開しようとナイフとフォークを手に取った。しかし、どれだけレナータが下品な態度をとっても不快な表情一つ見せなかったナディアの表情が、レナータの皿の上を見て初めて変わった。大きく目を見開き、信じられないと言った驚きを見せている。
出されたときは綺麗に盛り付けられていた白身魚の身が崩され、バラバラに散らばっていたのだ。それも食べるためではなく、手持ち無沙汰でなんとなく崩したのか、魚の身自体は減っていない。
それを見て、今までずっと上に向いていたナディアの口角が真一文字に結ばれ――
「ナディア、大丈夫か?」
少し疲れたような夫の問いかけに、ナディアはハッと息を飲んだ。そしてすぐさま表情を緩めると、アルバートに微笑みかけた。
「大丈夫ですよ、アルバート様。この国に嫁いで来た以上、祖国の習わしを貫くつもりはございません」
口角を上げながらそう答えると、ナディアは自身の皿の上に残った白身魚にフォークを入れた。
1,784
あなたにおすすめの小説
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい
冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」
婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。
ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。
しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。
「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」
ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。
しかし、ある日のこと見てしまう。
二人がキスをしているところを。
そのとき、私の中で何かが壊れた……。
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
平民とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の王と結婚しました
ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・ベルフォード、これまでの婚約は白紙に戻す」
その言葉を聞いた瞬間、私はようやく――心のどこかで予感していた結末に、静かに息を吐いた。
王太子アルベルト殿下。金糸の髪に、これ見よがしな笑み。彼の隣には、私が知っている顔がある。
――侯爵令嬢、ミレーユ・カスタニア。
学園で何かと殿下に寄り添い、私を「高慢な婚約者」と陰で嘲っていた令嬢だ。
「殿下、どういうことでしょう?」
私の声は驚くほど落ち着いていた。
「わたくしは、あなたの婚約者としてこれまで――」
大好きな婚約者に「距離を置こう」と言われました
ミズメ
恋愛
感情表現が乏しいせいで""氷鉄令嬢""と呼ばれている侯爵令嬢のフェリシアは、婚約者のアーサー殿下に唐突に距離を置くことを告げられる。
これは婚約破棄の危機――そう思ったフェリシアは色々と自分磨きに励むけれど、なぜだか上手くいかない。
とある夜会で、アーサーの隣に見知らぬ金髪の令嬢がいたという話を聞いてしまって……!?
重すぎる愛が故に婚約者に接近することができないアーサーと、なんとしても距離を縮めたいフェリシアの接近禁止の婚約騒動。
○カクヨム、小説家になろうさまにも掲載/全部書き終えてます
年上令嬢の三歳差は致命傷になりかねない...婚約者が侍女と駆け落ちしまして。
恋せよ恋
恋愛
婚約者が、侍女と駆け落ちした。
知らせを受けた瞬間、胸の奥がひやりと冷えたが——
涙は出なかった。
十八歳のアナベル伯爵令嬢は、静かにティーカップを置いた。
元々愛情などなかった婚約だ。
裏切られた悔しさより、ただ呆れが勝っていた。
だが、新たに結ばれた婚約は......。
彼の名はオーランド。元婚約者アルバートの弟で、
学院一の美形と噂される少年だった。
三歳年下の彼に胸の奥がふわりと揺れる。
その後、駆け落ちしたはずのアルバートが戻ってきて言い放った。
「やり直したいんだ。……アナベル、俺を許してくれ」
自分の都合で裏切り、勝手に戻ってくる男。
そして、誰より一途で誠実に愛を告げる年下の弟君。
アナベルの答えは決まっていた。
わたしの婚約者は——あなたよ。
“おばさん”と笑われても構わない。
この恋は、誰にも譲らない。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる