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第1話 悩み
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「その程度の強さで私を妻にしたいなんて、身の程知らずもいい所ね」
小馬鹿にしたかのような笑いを含んだ女性の声が、城内の中庭に響き渡る。
それと同時に強力な太刀をくらい、男性は地面に倒れた。
思いっきり顔から飛び込んだ為、顔から胸、ひざに掛けて、土まみれになっている。せっかく身に着けている高級な服が、台無しだ。
痛みを堪え、立ち上がろうとした時、彼の視界に鋭い剣先が映った。
突然の事に、男性の体が驚きの為に止まる。
見上げると、そこには。
――女神がいた。
腰まであるだろう青く長い髪が風になびき、髪の一本一本が太陽の光を受けて輝いている。
長い睫に縁取られた深い青の瞳は、まるで星の光を宿したかのように小さな光を持ち、その下には、すっと通った鼻筋、紅をつける必要のない桃色の唇が続く。
頬から顎にかけ、贅肉はいっさいなく、綺麗な輪郭を描いている。
肌は白く、しみやそばかすはもちろんホクロ一つない。
自らが持っている美の認識を、根本から覆されるだろう美しさ。
気まぐれに向けられた笑顔ですら、全てを魅了してやまない、その容貌。
それが目の前の女性――エルザ王女ミディローズ・エルザである。
ちなみに剣を向けられている青年は、無謀にも彼女に結婚を申し込んだ、それなりに力を持つ貴族の青年である。
この国の王女-ミディに求婚した者はまず、優雅に趣味のお話……ではなく、彼女と剣を交え、その実力が図られる。
彼女が出した条件を、クリアしているかを確認する為に。
ミディは、半分口を開けて自分を見ている求婚者から剣を引いた。
そして、つまらなそうにため息をつく。
「勝負はついたわね。まあ弱くもないけれど、大して強くもなかったわね」
その表情には、期待外れだという気持ちが隠しもされずに出ている。どうやらこの男性は、「失格者」とされたらしい。
ミディが男性から離れた瞬間、
「だっ、大丈夫ですかあああ! おっ、お怪我はありませんかああ!?」
青年のお付きの者がすばやく駆け寄った。薬やら包帯やらを取り出し、主人の世話を焼こうとする。
が……。
「ミディ王女!! お待ちください!!」
青年は従者の手を払って立ち上がると、汚れた服を調える事もせず、立ち去ろうとしたミディの後姿に声を掛けた。
はっきりと自分を呼び止める強い声に、王女の足が止まる。
その隙に、青年はミディの前で走り寄った。女神と見紛うその顔をまっすぐ見つめ、青年は彼女の前で片ひざを立てて跪いた。
「確かに……、私があなたを妻にするなど、おこがましいにも程がありました……。
あなたを妻に迎える事を諦めます。……ですが、せめて!!」
みるみるうちに青年の瞳に怪しい光が宿るのを、ミディは見逃さなかった。
嫌な予感が横切り、一歩後ろに引いた。
怪しく光る瞳でミディを見つめながら、青年は彼女の細い手を取った。
「『お姉さま』と呼ばせて下さい!!」
「……四大精霊の名の下に、破滅よ来たれ!!」
ミディの指先から光が発された瞬間、
「うわあああぁぁぁぁ~~~~……」
彼女が発した魔法により青年の体が吹き飛び、中庭に植えられている小さな森に消えた。半分混乱した様子で、従者が青年の後を追う。
彼を吹き飛ばした当の本人は、音を立てて両手を叩くと、振り向きもせず城内に消えた。
兵士が、恍惚ともいえる満足そうな表情を浮かべて気絶している青年を発見したのは、1時間後だったと言う……。
小馬鹿にしたかのような笑いを含んだ女性の声が、城内の中庭に響き渡る。
それと同時に強力な太刀をくらい、男性は地面に倒れた。
思いっきり顔から飛び込んだ為、顔から胸、ひざに掛けて、土まみれになっている。せっかく身に着けている高級な服が、台無しだ。
痛みを堪え、立ち上がろうとした時、彼の視界に鋭い剣先が映った。
突然の事に、男性の体が驚きの為に止まる。
見上げると、そこには。
――女神がいた。
腰まであるだろう青く長い髪が風になびき、髪の一本一本が太陽の光を受けて輝いている。
長い睫に縁取られた深い青の瞳は、まるで星の光を宿したかのように小さな光を持ち、その下には、すっと通った鼻筋、紅をつける必要のない桃色の唇が続く。
頬から顎にかけ、贅肉はいっさいなく、綺麗な輪郭を描いている。
肌は白く、しみやそばかすはもちろんホクロ一つない。
自らが持っている美の認識を、根本から覆されるだろう美しさ。
気まぐれに向けられた笑顔ですら、全てを魅了してやまない、その容貌。
それが目の前の女性――エルザ王女ミディローズ・エルザである。
ちなみに剣を向けられている青年は、無謀にも彼女に結婚を申し込んだ、それなりに力を持つ貴族の青年である。
この国の王女-ミディに求婚した者はまず、優雅に趣味のお話……ではなく、彼女と剣を交え、その実力が図られる。
彼女が出した条件を、クリアしているかを確認する為に。
ミディは、半分口を開けて自分を見ている求婚者から剣を引いた。
そして、つまらなそうにため息をつく。
「勝負はついたわね。まあ弱くもないけれど、大して強くもなかったわね」
その表情には、期待外れだという気持ちが隠しもされずに出ている。どうやらこの男性は、「失格者」とされたらしい。
ミディが男性から離れた瞬間、
「だっ、大丈夫ですかあああ! おっ、お怪我はありませんかああ!?」
青年のお付きの者がすばやく駆け寄った。薬やら包帯やらを取り出し、主人の世話を焼こうとする。
が……。
「ミディ王女!! お待ちください!!」
青年は従者の手を払って立ち上がると、汚れた服を調える事もせず、立ち去ろうとしたミディの後姿に声を掛けた。
はっきりと自分を呼び止める強い声に、王女の足が止まる。
その隙に、青年はミディの前で走り寄った。女神と見紛うその顔をまっすぐ見つめ、青年は彼女の前で片ひざを立てて跪いた。
「確かに……、私があなたを妻にするなど、おこがましいにも程がありました……。
あなたを妻に迎える事を諦めます。……ですが、せめて!!」
みるみるうちに青年の瞳に怪しい光が宿るのを、ミディは見逃さなかった。
嫌な予感が横切り、一歩後ろに引いた。
怪しく光る瞳でミディを見つめながら、青年は彼女の細い手を取った。
「『お姉さま』と呼ばせて下さい!!」
「……四大精霊の名の下に、破滅よ来たれ!!」
ミディの指先から光が発された瞬間、
「うわあああぁぁぁぁ~~~~……」
彼女が発した魔法により青年の体が吹き飛び、中庭に植えられている小さな森に消えた。半分混乱した様子で、従者が青年の後を追う。
彼を吹き飛ばした当の本人は、音を立てて両手を叩くと、振り向きもせず城内に消えた。
兵士が、恍惚ともいえる満足そうな表情を浮かべて気絶している青年を発見したのは、1時間後だったと言う……。
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