16 / 220
第15話 襲撃
しおりを挟む
ミディは迷い無く、町を分断する形で通っている大通りを進んでいた。
覆われた兜の隙間から見える青い瞳は、ただ一点をじっと見つめている。その瞳の色からは、彼女が何を思い行動しているのかは、読み取れない。
やがて大通りは、一つの大きな屋敷にぶち当たって終わる。
細々とした家が多い中、ひときわ目立つ屋敷。
マージの権力者――オルタの屋敷である。
町一番の権力者の屋敷とあって、侵入者を防ぐ為の巨大な柵が屋敷の周りを囲み、黒づくめの警備員たちが不審者がいないかと目を光らせている。
普通の人間なら、近づく事すら拒むだろう異様に張り詰めた雰囲気だ。
だが、
「ふーん、ここね。この国で馬鹿な事をしてくれる、愚か者の住処は」
気の抜けた、しかし後半にかけて怒りが滲み出す、そんな声が兜の中から聞こえた。
門の前に立つ王女には、全く緊張感はない。
ミディは、手に持っていた権利証の欠片を一瞥すると、重そうな鉄門に自らの指先を向けた。
* * *
突如起こった爆音と立ち上る煙が、人々をパニックに陥れた。
商品が爆風で飛ばされないよう店員が慌てて体で抑えているのを見ると、爆発がどれだけ大きかったが分かるだろう。
大通りは、現場に向かう野次馬と、一刻も早く逃げ出そうとする人たちが入り乱れ、大変な騒ぎになっていた。
「凄い事になってるなあ……」
立ち上がる煙を見つめながら、ジェネラルは呟いた。側には店員の他、客たちが我先にと窓に集まり、煙の方向に注目している。
ミディの足取りを追って大通りにやってきたジェネラルだったが、丁度この爆発のパニックに巻き込まれて、慌てて近くの店に避難したのである。
店内にはジェネラルと同じく、避難場所を求めてやってきた人々が、乱れた身なりを整えずに窓に張り付いていた。
しばらく無言で煙を見つめていた人々だったが、互いの顔を見合わせると、堰を切ったように口々に自論を披露し始めた。
「おい、あそこってオルタの屋敷の方じゃないかい?」
「オルタ?」
ふと聞き覚えのある名前に、ジェネラルはその名を口にした中年の女性に視線を向けた。女性も、ジェネラルの声に気づいたのだろう。
「あんた、オルタを知らないのかい? もしかして他所の町から来た子?」
「あっ、ええまあ……」
少し言葉を濁し、頷くジェネラル。
まさか女性もこの少年が、他所の町どころか魔界から来たなど、想像だにしないだろう。栄養の行き届いた豊満な体を屈めると、女性は囁いた。
「オルタはね、マージの影の権力者と言われてるの。ああ、もちろん悪い意味でのね。色々な汚い手を使って荒稼ぎしてるのさ」
「そうなんですか……。国は何もしてくれないんですか?」
「証拠がなくってね、中々捕まえることが出来ないのさ。だからきっとこの爆発も、オルタに恨みを持ってる奴の仕業じゃないかい? まあどちらにしても、いい気味ってところさ」
手を叩き、大笑いする女性。
しかしオルタの不幸を喜んでいるのは、女性だけではないようだ。周囲の人々も、オルタの卑怯な噂話をし自業自得だと笑っている。
女性の話と黒尽くめの男たちの話が、ジェネラルの脳裏をよぎり一つの事を導き出した。
“オルタっていう人が今回の事件の黒幕なんだね。お婆さんの土地が欲しさにあんな暴挙……、絶対に許せない!”
憤慨する少年の脳裏に、権利証の欠片を見つめる王女の姿が過ぎる。
そして彼女が去った後の、この騒ぎ。
“って事はまさかこの爆破は!”
脳裏に横切るだけではなく、不安の種が撒き散らされ、それは見る見るうちに芽を出し、花を咲かせる頃には確信へと変わっていた。
「みっ、ミディ――———!!」
王女の名を絶叫し、ジェネラルはまだ煙の立ち上るその場所へ、一目散へと向かったのだった。
覆われた兜の隙間から見える青い瞳は、ただ一点をじっと見つめている。その瞳の色からは、彼女が何を思い行動しているのかは、読み取れない。
やがて大通りは、一つの大きな屋敷にぶち当たって終わる。
細々とした家が多い中、ひときわ目立つ屋敷。
マージの権力者――オルタの屋敷である。
町一番の権力者の屋敷とあって、侵入者を防ぐ為の巨大な柵が屋敷の周りを囲み、黒づくめの警備員たちが不審者がいないかと目を光らせている。
普通の人間なら、近づく事すら拒むだろう異様に張り詰めた雰囲気だ。
だが、
「ふーん、ここね。この国で馬鹿な事をしてくれる、愚か者の住処は」
気の抜けた、しかし後半にかけて怒りが滲み出す、そんな声が兜の中から聞こえた。
門の前に立つ王女には、全く緊張感はない。
ミディは、手に持っていた権利証の欠片を一瞥すると、重そうな鉄門に自らの指先を向けた。
* * *
突如起こった爆音と立ち上る煙が、人々をパニックに陥れた。
商品が爆風で飛ばされないよう店員が慌てて体で抑えているのを見ると、爆発がどれだけ大きかったが分かるだろう。
大通りは、現場に向かう野次馬と、一刻も早く逃げ出そうとする人たちが入り乱れ、大変な騒ぎになっていた。
「凄い事になってるなあ……」
立ち上がる煙を見つめながら、ジェネラルは呟いた。側には店員の他、客たちが我先にと窓に集まり、煙の方向に注目している。
ミディの足取りを追って大通りにやってきたジェネラルだったが、丁度この爆発のパニックに巻き込まれて、慌てて近くの店に避難したのである。
店内にはジェネラルと同じく、避難場所を求めてやってきた人々が、乱れた身なりを整えずに窓に張り付いていた。
しばらく無言で煙を見つめていた人々だったが、互いの顔を見合わせると、堰を切ったように口々に自論を披露し始めた。
「おい、あそこってオルタの屋敷の方じゃないかい?」
「オルタ?」
ふと聞き覚えのある名前に、ジェネラルはその名を口にした中年の女性に視線を向けた。女性も、ジェネラルの声に気づいたのだろう。
「あんた、オルタを知らないのかい? もしかして他所の町から来た子?」
「あっ、ええまあ……」
少し言葉を濁し、頷くジェネラル。
まさか女性もこの少年が、他所の町どころか魔界から来たなど、想像だにしないだろう。栄養の行き届いた豊満な体を屈めると、女性は囁いた。
「オルタはね、マージの影の権力者と言われてるの。ああ、もちろん悪い意味でのね。色々な汚い手を使って荒稼ぎしてるのさ」
「そうなんですか……。国は何もしてくれないんですか?」
「証拠がなくってね、中々捕まえることが出来ないのさ。だからきっとこの爆発も、オルタに恨みを持ってる奴の仕業じゃないかい? まあどちらにしても、いい気味ってところさ」
手を叩き、大笑いする女性。
しかしオルタの不幸を喜んでいるのは、女性だけではないようだ。周囲の人々も、オルタの卑怯な噂話をし自業自得だと笑っている。
女性の話と黒尽くめの男たちの話が、ジェネラルの脳裏をよぎり一つの事を導き出した。
“オルタっていう人が今回の事件の黒幕なんだね。お婆さんの土地が欲しさにあんな暴挙……、絶対に許せない!”
憤慨する少年の脳裏に、権利証の欠片を見つめる王女の姿が過ぎる。
そして彼女が去った後の、この騒ぎ。
“って事はまさかこの爆破は!”
脳裏に横切るだけではなく、不安の種が撒き散らされ、それは見る見るうちに芽を出し、花を咲かせる頃には確信へと変わっていた。
「みっ、ミディ――———!!」
王女の名を絶叫し、ジェネラルはまだ煙の立ち上るその場所へ、一目散へと向かったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~
スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。
何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。
◇◆◇
作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。
DO NOT REPOST.
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる