156 / 220
第155話 略奪
しおりを挟む
ジェネラルの口元が、緩んだ。
次の瞬間、まばゆい光が謁見の間にいる人々の目をくらました。あまりの眩しさに、反射的に瞳を庇う人々。
光の影響がなくなり閉じた瞳を開いた時、人々が見たのは。
「ミディ!?」
「みっ、ミディ王女!!」
謁見の間にいる者たちが、口々に王女の名を呼んだ。
それもそのはず。
瞳を開き、真っ先に視界に入っていたのは、王女を抱きかかえるジェネラルの姿だったからだ。抱きかかえられているミディは、状況が把握できてない様子で瞳を見開き、言葉なくジェネラルを見上げている。
ライザーは素早く立ち上がると、キャリアを守るように傍に立った。さらにその彼を守るように、数人の護衛が剣を抜いて立つ。
この状況に、部屋の外で控えていた兵士たちが、大きな足音と武器を鳴らしながら謁見の間に乱入してきた。そして魔王の傍にいたモジュール家の兄弟を引き離すと、素早く剣を抜き、ジェネラルの周りを取り囲む。
しかしそれが無駄な努力だという事は、ここにいる誰もが知っている。
一体これから何が起こるのかと、皆緊張の面持ちで魔王を見つめていた。
そんな緊張感に包まれる空間の雰囲気に対し、ジェネラルには余裕すら感じられる。たくさんの剣を突きつけられているのにも関わらず、彼の表情には笑みが浮かんでいた。
そして、ぽつりと呟く。
「ちょっと、数が多すぎて邪魔かな」
次の瞬間、兵士たちの手から剣が落ちた。もちろん、彼らの意志で剣を取り落としたわけではない。
ジェネラルが魔法を使って、兵士たちの剣をちょいっと動かしたのだ。
魔王が使うには小さな魔法であったが、兵士たちの混乱を引き起こすには十分だった。その混乱の乗じ、ジェネラルはミディを抱き上げたまま、魔法で兵士たちの頭上を飛び越えた。
軽く兵士達の包囲網を抜け出すと、バルコニーに飛び出す。
「にっ、逃がすな!」
護衛の声に、人々が導かれるようにジェネラルたちの後を追う。
魔王はバルコニーの柵を背に、自分を追って来た人々を待っていた。
追い詰められているのに、彼から焦りや恐怖心は、全く感じられない。
ジェネラルの瞳が、すっと細められた。
彼がドラゴンと共に降り立った時と同じ、只ならぬ雰囲気がその場を支配する。
口元に薄く笑みを浮かべると、彼は言い放った。
「エルザの華――ミディローズ・エルザは、我が貰い受ける。返して欲しければ、我を倒しに来るがよい」
凛とした声が、人々の鼓膜を振るわせる。
次の瞬間、物凄い風が人々を襲った。バルコニーからせりあがる巨大な黒い姿に、人々は悲鳴を上げる。
やって来たのは、一体の巨大なドラゴンだった。巨大な四肢と鋭い牙と爪、人々に恐怖を与えるには十分な姿だ。
恐怖に慄き、足を止めている人々を後目に、魔王は魔法で簡単に柵を乗り越えると、衝撃なくドラゴンの上に飛び乗った。
凶暴そうな未確認生物の存在を恐れ、この国の王女が連れ去られると分かっていても、誰も魔王に近づくことは出来ない。
彼は、ドラゴンの上から紙きれを飛ばした。
紙きれは魔力によって、護衛に守られるようにバルコニーに立ちすくむライザーの前にやってくる。魔力に守られたそれにライザーが受け取ったのを見届けると、魔王は口を開いた。
「四大精霊によって作られた、魔界とプロトコルを繋ぐ『道』を示す地図だ」
「四大精霊の……地図だと……?」
王の手には、ミディが四大精霊から授かった『道』を指し示す地図が握られていた。魔界に来る時に使えという事だろう。
魔王は、エルザ王の言葉に一つ頷くと、この場にいる全てに聞こえるよう言葉を発した。
「どのような者がミディローズを救いに来るのか、楽しみに待っている。……我が全力を以て、相手することを約束しよう」
魔王の全力。
目の前の青年は笑いを浮かべているが、後半の言葉には手加減なしの本気を感じさせた。
この言葉に、マジでヤル気だ…という気持ちが、得体の知れない恐怖と共に人々の心を満たす。
ドラゴンが、翼を大きく開いた。強い風が再び人々に襲い掛かる。未確認生物ドラゴンは、魔王と王女を乗せたままバルコニーの上で数回旋回すると、そのまま飛び去っていった。
次の瞬間、まばゆい光が謁見の間にいる人々の目をくらました。あまりの眩しさに、反射的に瞳を庇う人々。
光の影響がなくなり閉じた瞳を開いた時、人々が見たのは。
「ミディ!?」
「みっ、ミディ王女!!」
謁見の間にいる者たちが、口々に王女の名を呼んだ。
それもそのはず。
瞳を開き、真っ先に視界に入っていたのは、王女を抱きかかえるジェネラルの姿だったからだ。抱きかかえられているミディは、状況が把握できてない様子で瞳を見開き、言葉なくジェネラルを見上げている。
ライザーは素早く立ち上がると、キャリアを守るように傍に立った。さらにその彼を守るように、数人の護衛が剣を抜いて立つ。
この状況に、部屋の外で控えていた兵士たちが、大きな足音と武器を鳴らしながら謁見の間に乱入してきた。そして魔王の傍にいたモジュール家の兄弟を引き離すと、素早く剣を抜き、ジェネラルの周りを取り囲む。
しかしそれが無駄な努力だという事は、ここにいる誰もが知っている。
一体これから何が起こるのかと、皆緊張の面持ちで魔王を見つめていた。
そんな緊張感に包まれる空間の雰囲気に対し、ジェネラルには余裕すら感じられる。たくさんの剣を突きつけられているのにも関わらず、彼の表情には笑みが浮かんでいた。
そして、ぽつりと呟く。
「ちょっと、数が多すぎて邪魔かな」
次の瞬間、兵士たちの手から剣が落ちた。もちろん、彼らの意志で剣を取り落としたわけではない。
ジェネラルが魔法を使って、兵士たちの剣をちょいっと動かしたのだ。
魔王が使うには小さな魔法であったが、兵士たちの混乱を引き起こすには十分だった。その混乱の乗じ、ジェネラルはミディを抱き上げたまま、魔法で兵士たちの頭上を飛び越えた。
軽く兵士達の包囲網を抜け出すと、バルコニーに飛び出す。
「にっ、逃がすな!」
護衛の声に、人々が導かれるようにジェネラルたちの後を追う。
魔王はバルコニーの柵を背に、自分を追って来た人々を待っていた。
追い詰められているのに、彼から焦りや恐怖心は、全く感じられない。
ジェネラルの瞳が、すっと細められた。
彼がドラゴンと共に降り立った時と同じ、只ならぬ雰囲気がその場を支配する。
口元に薄く笑みを浮かべると、彼は言い放った。
「エルザの華――ミディローズ・エルザは、我が貰い受ける。返して欲しければ、我を倒しに来るがよい」
凛とした声が、人々の鼓膜を振るわせる。
次の瞬間、物凄い風が人々を襲った。バルコニーからせりあがる巨大な黒い姿に、人々は悲鳴を上げる。
やって来たのは、一体の巨大なドラゴンだった。巨大な四肢と鋭い牙と爪、人々に恐怖を与えるには十分な姿だ。
恐怖に慄き、足を止めている人々を後目に、魔王は魔法で簡単に柵を乗り越えると、衝撃なくドラゴンの上に飛び乗った。
凶暴そうな未確認生物の存在を恐れ、この国の王女が連れ去られると分かっていても、誰も魔王に近づくことは出来ない。
彼は、ドラゴンの上から紙きれを飛ばした。
紙きれは魔力によって、護衛に守られるようにバルコニーに立ちすくむライザーの前にやってくる。魔力に守られたそれにライザーが受け取ったのを見届けると、魔王は口を開いた。
「四大精霊によって作られた、魔界とプロトコルを繋ぐ『道』を示す地図だ」
「四大精霊の……地図だと……?」
王の手には、ミディが四大精霊から授かった『道』を指し示す地図が握られていた。魔界に来る時に使えという事だろう。
魔王は、エルザ王の言葉に一つ頷くと、この場にいる全てに聞こえるよう言葉を発した。
「どのような者がミディローズを救いに来るのか、楽しみに待っている。……我が全力を以て、相手することを約束しよう」
魔王の全力。
目の前の青年は笑いを浮かべているが、後半の言葉には手加減なしの本気を感じさせた。
この言葉に、マジでヤル気だ…という気持ちが、得体の知れない恐怖と共に人々の心を満たす。
ドラゴンが、翼を大きく開いた。強い風が再び人々に襲い掛かる。未確認生物ドラゴンは、魔王と王女を乗せたままバルコニーの上で数回旋回すると、そのまま飛び去っていった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます
珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。
そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。
そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。
ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる