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第二章 派手に、生まれ変わります!
36 始動です!
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クロエは早速パリステラ家の今後の運営について、家令たちと話し合った。
交渉の結果、母の仕事を引き継ぐにあたり、まずは簡単な書類仕事から始めることになった。
それに慣れたら徐々に実務も増やして、数ヶ月から半年後には、完全に彼女が中心の体制に移行することに決まったのだった。
(そんなに悠長に待てないわ……)
彼女は目覚めた翌日から、精力的に執務をこなした。早く家令たちに能力を認めてもらって、屋敷を任せられるようにするのだ。
仕事には、逆行前に図書館で蓄えた知識が、大いに役に立った。
あの頃は時間だけはたっぷりあったので、魔導書以外にも多種多様の書物を貪るように読み漁っていたのだ。
その中には、政治、経済、法律などの内容の本もあった。それらは彼女にとって難しい内容も多かったが、ユリウスに教えてもらって、基礎的な部分は学び終えていた。
だから、家令たちの説明もすんなり理解できて、難なく書類仕事に取りかかることができた。
これには彼らも驚いて、既にこんなに実力があるのなら……と、当初の予定より早く他の仕事もやらせてもらえることになったのだ。
(ユリウスに会いたいな……)
黙々と執務をこなしていると、図書館で勉強していた日々を思い出す。その流れで、どうしてもユリウスの顔が彼女の脳裏をかすめた。
今、何気なく見ている数字の並んだ書類の見方も、彼から教えてもらったから読めるようになったのだ。
時間がたつにつれ、現在の彼のことが気になって仕方がなかった。
(もう一度、彼とお友達になれないかしら?)
あの日――衝動的に鐘塔の上まで登って行って、雷に撃たれる前に、最後に彼の姿を見た気がする。
……もしかすると、本当に彼が来てくれたのだろうか。
逆行前は、彼のお陰で生き延びることができた。身体も心も、彼に救われたのだ。
だから今回は、自分がなにか彼の役に立ちたい。ただ幸せを与えられる関係じゃなくて、こちらからも幸福を与えられるような、友人に。
(……駄目、今は仕事に集中しなくちゃ)
クロエは頭を振ってから、再び書類に目をやった。
現在、自分がやらなければいけないことは、パリステラ家内の地盤を固めることだ。
いずれ来る継母と異母妹への対抗策を企てるのが先決だ。
それに、ユリウス自身も、まだこちらに来ていないのかもしれない。
だから確実に彼と会えるように、逆行前と同じくらいの時期に図書館へ行ったほうがいいだろう。
クロエは焦がれる気持ちを抑えて、まずは目の前のことに全力で取り組むと決めたのだった。
屋敷全体の人事には、マリアンにも携わってもらうことにした。
彼女は、逆行前はクロエの唯一の味方だった。更に、清廉潔白で不正を嫌う性格と、なにより人を見る目がある。
仮に、継母たちの息のかかった使用人が入り込んでも、彼女に強い人事権を与えていたら、逆行前のような勝手放題は避けられるだろう。
そしてクロエ自身も、従者たちとはこれまでより積極的に関わることにした。
全員の名前を覚えるのはもちろん、一人一人の性格や嗜好も知るようにして、彼らと良好な関係を築けるように努力した。どうせこの後に継母たちに使われるのなら……と、彼らの待遇も以前より良くして、働きやすい環境を与えた。
もちろん、主人としての威厳は失わないように。
誰からも絶対に侮られたらいけないと、逆行前に痛いほど理解したから……。
屋敷の運営は従者たちの協力が必要不可欠だ。だから、継母らが来る前に、彼らと結束を固めておきたかった。
それに、あの頃――幽霊令嬢だと揶揄されていたとき、彼女は侍女やメイドをはじめとする使用人たちの存在の有難みをひしひしと感じていた。
自分は、多くの人たちから支えられて生きている。
侯爵令嬢として快適な生活が送れるのも彼らの努力の賜物なのだ、と。そのことは、彼女の価値観に大きく影響を及ぼしていたのだった。
◆◆◆
それは、前触れもなく突然やって来た。
母の代行見習いとして、初日の仕事が終わった頃だった。
クロエが執事と翌日の打ち合わせをしていると、
「お嬢様、スコット様がお見舞いにいらっしゃいましたよ!」
マリアンが顔を上気させながら、急いで主人に知らせに来たのだ。
交渉の結果、母の仕事を引き継ぐにあたり、まずは簡単な書類仕事から始めることになった。
それに慣れたら徐々に実務も増やして、数ヶ月から半年後には、完全に彼女が中心の体制に移行することに決まったのだった。
(そんなに悠長に待てないわ……)
彼女は目覚めた翌日から、精力的に執務をこなした。早く家令たちに能力を認めてもらって、屋敷を任せられるようにするのだ。
仕事には、逆行前に図書館で蓄えた知識が、大いに役に立った。
あの頃は時間だけはたっぷりあったので、魔導書以外にも多種多様の書物を貪るように読み漁っていたのだ。
その中には、政治、経済、法律などの内容の本もあった。それらは彼女にとって難しい内容も多かったが、ユリウスに教えてもらって、基礎的な部分は学び終えていた。
だから、家令たちの説明もすんなり理解できて、難なく書類仕事に取りかかることができた。
これには彼らも驚いて、既にこんなに実力があるのなら……と、当初の予定より早く他の仕事もやらせてもらえることになったのだ。
(ユリウスに会いたいな……)
黙々と執務をこなしていると、図書館で勉強していた日々を思い出す。その流れで、どうしてもユリウスの顔が彼女の脳裏をかすめた。
今、何気なく見ている数字の並んだ書類の見方も、彼から教えてもらったから読めるようになったのだ。
時間がたつにつれ、現在の彼のことが気になって仕方がなかった。
(もう一度、彼とお友達になれないかしら?)
あの日――衝動的に鐘塔の上まで登って行って、雷に撃たれる前に、最後に彼の姿を見た気がする。
……もしかすると、本当に彼が来てくれたのだろうか。
逆行前は、彼のお陰で生き延びることができた。身体も心も、彼に救われたのだ。
だから今回は、自分がなにか彼の役に立ちたい。ただ幸せを与えられる関係じゃなくて、こちらからも幸福を与えられるような、友人に。
(……駄目、今は仕事に集中しなくちゃ)
クロエは頭を振ってから、再び書類に目をやった。
現在、自分がやらなければいけないことは、パリステラ家内の地盤を固めることだ。
いずれ来る継母と異母妹への対抗策を企てるのが先決だ。
それに、ユリウス自身も、まだこちらに来ていないのかもしれない。
だから確実に彼と会えるように、逆行前と同じくらいの時期に図書館へ行ったほうがいいだろう。
クロエは焦がれる気持ちを抑えて、まずは目の前のことに全力で取り組むと決めたのだった。
屋敷全体の人事には、マリアンにも携わってもらうことにした。
彼女は、逆行前はクロエの唯一の味方だった。更に、清廉潔白で不正を嫌う性格と、なにより人を見る目がある。
仮に、継母たちの息のかかった使用人が入り込んでも、彼女に強い人事権を与えていたら、逆行前のような勝手放題は避けられるだろう。
そしてクロエ自身も、従者たちとはこれまでより積極的に関わることにした。
全員の名前を覚えるのはもちろん、一人一人の性格や嗜好も知るようにして、彼らと良好な関係を築けるように努力した。どうせこの後に継母たちに使われるのなら……と、彼らの待遇も以前より良くして、働きやすい環境を与えた。
もちろん、主人としての威厳は失わないように。
誰からも絶対に侮られたらいけないと、逆行前に痛いほど理解したから……。
屋敷の運営は従者たちの協力が必要不可欠だ。だから、継母らが来る前に、彼らと結束を固めておきたかった。
それに、あの頃――幽霊令嬢だと揶揄されていたとき、彼女は侍女やメイドをはじめとする使用人たちの存在の有難みをひしひしと感じていた。
自分は、多くの人たちから支えられて生きている。
侯爵令嬢として快適な生活が送れるのも彼らの努力の賜物なのだ、と。そのことは、彼女の価値観に大きく影響を及ぼしていたのだった。
◆◆◆
それは、前触れもなく突然やって来た。
母の代行見習いとして、初日の仕事が終わった頃だった。
クロエが執事と翌日の打ち合わせをしていると、
「お嬢様、スコット様がお見舞いにいらっしゃいましたよ!」
マリアンが顔を上気させながら、急いで主人に知らせに来たのだ。
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