【短編】王太子の婚約破棄で逆ところてん式に弾き出された令嬢は腹黒公爵様の掌の上

あまぞらりゅう

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「何をしている」

 次の瞬間、三人の間をアルベルトの険しい声が引き裂いた。
 峻厳な声音に全員がビクリと肩を揺らせて振り返る。

「そ、総司令官……」

「こ、これはですね……」

 部下の二人は、しどろもどろになって言い訳を探す。アルベルトの威圧感は、彼らの心臓を鷲掴みにしているようだった。

 一拍して公爵は首を振って、

「お前たちは直ぐに持ち場に戻るように」

「は、はいっ!」

「失礼いたします!」

 傲慢な部下たちを追い払った。

 ディアナだけが、その場に残される。彼女は俯き、婚約者と目を合わせようとしなかった。

「私の部下がすまなかった。何かされたのか?」

 婚約者の不穏な様子を察知して、アルベルトは不安げに彼女の顔を覗き込んだ。

「っ……」

 二人の視線が合う。途端に、彼女の瞳からポロポロと涙がこぼれだした。

「ど、どうした!?」

 彼は慌てた様子でポケットからハンカチを出して、婚約者の涙を拭った。
 だがしずくはどんどん溢れてきて、ついに彼女はしゃくり上げて泣いてしまった。

「か……」

 涙にまぎれて、彼女のか細い声が聞こえてくる。

「彼らの……言う通りなんです……」

「そんなことは……」

 彼の言葉を否定するかのように、彼女はぶんぶんと大きく首を横に振った。

「私は……子供の頃から、ハインリヒ殿下の婚約者でした……。それはもう、長い時間を共に過ごしてきたのです……。ですが……」

 ふと、ディアナはアルベルトをじっと見つめた。
 一瞬だけ時が止まったように感じて、彼の脈が跳ねる。

「私は……わ、私は、アルベルト公爵に惹かれているんです……。人生の半分以上を王子の婚約者として生きていたのに、なんて……なんて、軽薄な…………」

 ディアナの泣き声が大きくなった。
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